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第三章
我恋歌、君へ。第三部:19 復帰と援護
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あれから間もなく自宅へ戻ったものの、声が戻った喜びと車内でしでかしてしまったことへの羞恥心で眠れなかった。
窓の外が明るくなってきたので、眠ることはあきらめて起き出した。
(……そうだ)
少し早いけど朝食を作ろうとして、その前にいたずらを思いつき、神音の部屋にそっと忍びこんだ。
枕元に書きかけの五線譜が散っている中で、神音が気持ちよさそうに眠っている。
自分とよく似た顔をじっと凝視する。
「……ぅ~ん……」
人の気配に気づいたらしく、眠りが浅くなった神音がかすかに唸り、もぞもぞと寝返りを打つ。
「…………ぁ、れ……ひびき?」
俺に背中を向けて、もう一度眠り直そうとしていた神音が、やにわに顔を振り向け、寝ぼけ眼を何度もまばたきさせながら名前を呼んできた。
「うん。おはよう、神音」
「……はよ……どしたの、朝から……」
目を擦りながら仰向けになり、むにゃむにゃと話し続けていた神音が急に動きを止める。
がばっと起き上がると、鼻がつきそうな距離まで顔を近づけて凝視してきた。
「響、だよね?」
「そうだけど?」
「…………そうだけど、って……」
声をつまらせ、神音が俯いて肩を震わせる。
「響ーっ!」
「うわぁっ」
大音量で泣き叫びながら、神音が飛びついてきた。耐えきれず、ふたりして床へ転がり落ちたけど、そんなに高い位置から落ちたわけじゃないから痛みはない。
それよりも確認するみたいに、何度も名前を呼びながら顔を擦り寄せてくる神音がくすぐったい。
「良かったよ~、今度こそぼくは生きた心地がしなかったんだからね! ぼくたちの判断が間違っていたんだって、何度後悔したことかっ」
「ごめん、ごめん」
「……待って。なんで急に話せるようになったわけ? 何があったの?」
馬乗りになった神音がはたと動きを止め、また俺の顔を覗きこんでくる。
じっとまばたきもせず凝視してきて、答えるまで断固として動かないぞと態度で示してくる。
(しまった……こうなると引かないからなぁ)
適当なごまかしを言うと、すぐに見破って食い下がってくることは経験済みだ。
こんなことならいたずらするべきじゃなかったかも、と少し後悔したけれど、知られてしまうのも時間の問題だっただろうとも思う。
「昨夜アレンさんと話をしたんだ……その……嫌いにならないでください、みたいなことを」
「それで?」
「……いろいろあったんだ」
「いろいろ?」
「…………とにかく、また歌えるようになるから。それでいいだろ?」
「だ~め~っ。弟として知っておくべきだと思いマス!」
「兄として、知っていなくてもいいと思います!」
「あ、待てっ」
もがいて、神音の下から何とか抜け出して部屋から逃げたんだけど、当然ながら逃げ続けることは出来ず。
結局、朝食を食べながらすべて白状させられてしまいました。
「まぁねぇ~いつかふたりは、こうなるだろうと思ってましたけど~」
たまご焼きを箸でつまみ、口へ運びながら神音がため息混じりにそう言った。
「思っていたなら聞かなくてもいいのに」
「ん~……でもはっきりさせとかないと癪だし? アレンも男だ、暴走しないように見張りが必要になるし」
暴走って何だ。神音が頭の中で今何を想像しているのか、知りたいような複雑な気分だ。
「うちの大切なヴォーカル様を独り占めされちゃ困るよ」
「……神音、あのさ……」
腕を組んで、何やら難しい表情でぶつぶつ言い始めた双子の片割れへ、無駄と知りつつ声をかけたらやっぱり無視された。
「ほら、ぼくたちまだ駆け出しじゃん。これからやるべきこと、積もり積もって天高くウナギ登り~なのに、アレンのせいで響が動けなくなったら大損害もいいところ。リーダーのくせにそんなことしちゃダメだよねぇ」
「……天高くウナギ登りって、そんな表現はじめて聞いたよ」
苦笑する俺へ、神音がびしっと指を突き付けてきた。
「甘いね。響の鈍さはぼくが保証する」
「……いや、だからさっきから何を言っているのかって聞いているんだけど……」
「恋人たちの夜を妨害する計画に決まってるでしょ」
「…………」
今度は俺が口を開けたまま、茫然と神音を見返すはめになった。
「……こ、恋人……」
「え、違うの? アレンとキスしたんでしょ? 好きだって言ったんじゃないの。だったら立派に恋人同士じゃん」
神音の声を聞いている間に、みるみる頭に血が上って顔が燃えそうなほど熱くなってきた。
「い、言ってないよ、好きだとか、そんなことは」
「…………響。今だけはぼく、アレンの味方をするよ。苦労するなぁ、あいつ」
はぁ、と盛大にため息を吐き出して、神音が肩を落とす。
「とにかく、響は今後、ぼくの許可なくアレンとふたりっきりにならないこと。いいね?」
「……なんで……」
「いいから、返事」
「は、はい……?」
神音の迫力に押されて、よくわからないまま約束させられてしまった。
朝食後に富岡さんへ電話連絡をしてからは、雪崩のように物事が展開して、スケジュールが変更された。
差し迫った大問題がレコーディングだ。
「グフフ……こいつぁ鍛え甲斐があるってもんよ。覚悟しな」
「……ジュノさん、気持ち悪いです」
ヴォイストレーナーであるジュノさんの元へ朝一番で駆けつけると、マッドサイエンティストのような笑顔でジュノさんが不気味に近づいてきた。
俺の両肩をがしっと掴む。
「いいか。納得できるまで帰さねぇぞ?」
そして有言実行のジュノさんにより、徹底的に鍛え直されることになり、レコーディングが終了するまで鬼教官の指導が続いた。
幼い頃に閉じ込められたことが原因で息苦しさを感じてしまうレコーディングブースに足を踏み入れると、心臓が駆け足になりかすかに目眩を感じた。
(っ……ようやくここまで戻ってきたんだ。いまさら歌えないなんて、冗談じゃない!)
しっかりしろ、と自分自身に活を入れてマイクの前に立つ。
震える手で準備を終えて、開始を待っていると向かい合うスタッフたちの背後に見慣れない影が現れた。
(……へ?)
緊張も息苦しさも一瞬忘れて、驚いている様子のスタッフたちが振り返る先を俺も凝視してしまった。
もこもこな毛並みの白い猫の着ぐるみがスタッフたちの背後に立ち、こちらに向かって両手を振っている。
愛くるしい大きめな目と、笑っている口元が見ているだけで楽しい気分にさせてくれる。
さらに白い猫着ぐるみの背後から、にょきっと別の着ぐるみが三体も現れた。
(パンダ、うさぎ、犬……)
遊園地や商業施設のイベントスペースにこそふさわしい彼らの姿が、とてつもなく浮いて見える。
もちろんスタッフたちも動揺して、立ち合っていた富岡プロデューサーへオロオロと視線を投げかけていた。
額に青筋を浮かべそうな富岡さんは、腕組みをしながらも渋い顔で小さく頷き、レコーディングの続行を指示しているようだ。
『キョウ。準備はいいか……背後の物体は気にするな、歌に集中しろ』
「はい……」
(今、物体って言ったよね……)
富岡さんからの指示に頷きながら、こみ上げてくる笑いを抑えるのに必死だった。
突然乱入してきた場違いな動物キャラクターたちの着ぐるみの中にだれがいるのかがわかったから。富岡さんが追い出さないのがその証拠だ。
(後でだれが何を着ていたのか、聞いてみよう)
アイドルのコンサートみたいにキラキラな装飾をつけたうちわを持ちこんだ着ぐるみたちに、堪え切れずに吹き出してしまうと、富岡さんがすかさず注意してくる。
「す、すみません……お願いします」
深呼吸をしてから富岡さんやスタッフたちに向けて軽く頭を下げる。
ヘッドフォンから先に録音されていたメンバーたちの音が流れ出す。リズムを追いかけながらふと視線を上げると、着ぐるみの動物たちが縦一列に並び、最前列の猫しか見えなくなった。
何だろうと思いながら、歌いだしのタイミングが近づき意識を切り替える。
譜面へ視線を戻し、口を開く。
声が出せなかった間に何度もイメージして描いていた理想へ近づけたい。それだけを考えて歌い続ける。
間奏に入り、富岡さんの表情を伺うとその背後にいた着ぐるみたちの様子も目に映り、危うく笑いだしそうだった。
縦一列に並んでいた着ぐるみたちが、少しずつタイミングをずらして円を描くように体を移動させている。
ダンサーたちが同じことをしたなら格好いい動きも、愛嬌のある顔の動物着ぐるみたちがやると、どうしてこうも笑いを誘うのだろう。
(こ、堪えろ……レコーディング中なんだから……っ)
腹筋に力を入れて吹き出さないよう、自分を律する間にも曲は進んでいく。
俺の様子に気付いた富岡さんが背後をちらっと見た後、額を手で押さえた。
別の意味で苦労したレコーディングは無事に終わり、神音も驚くほど仕上がりが良くなった新曲が、冬のはじめ頃に世の中へ飛び出して行った。
余談だけど新曲のジャケットの裏面に、PV撮影時と同じ制服を着た俺を先頭に、『前ならえ』をしている着ぐるみ姿のメンバーたちが並んで映っている。
「たまには面白いだろう。歌詞にも合っている」
富岡さん指示で急遽追加されたカットだ。
メンバーたちは顔が映らないので複雑な気分になっていた。たぶん、レコーディング中に苛立ちを誘われた富岡さんの仕返しだと思う。
幸いにも購入してくれた人たちにも受けが良かったらしく、だれが何を着ているのかを問い合わせる人も多かったけど、答えは決まって、『想像にお任せします』だった。
新曲の宣伝活動もはじまり、制作とは違う忙しい日々が続く。
仕事があることはうれしいのだけれど、ひとつだけ困ったことがある。
当然ながら『i-CeL』としての仕事なので、メンバー全員と毎回顔を合わせる。そこにはアレンさんも含まれているわけで。
夜景を見下ろす車内でキスをした夜から、俺たちはまともに会話をしていなかった。
声が戻った俺は復帰するための訓練が最重要課題となっていたし、アレンさんもそれがわかっている。
だからちゃんと顔を会わせる初日はどんな顔をしたらいいのやら、と実はかなり緊張していたのだ。
「おっはよ~響くん。今日も可愛いね」
「……おはようございます。可愛くはありません」
顔を合わせるなり、にこにこ満面の笑みで可愛いと言われ、俺は仏頂面で返事をするのが日常となりつつある。
他のメンバーたちがにやにや笑って俺たちを見ているのが居たたまれない。
(な、んだよ……この人はっ)
俺が困る姿を楽しんでいるんじゃないかと疑いたくなる。
初日は正直なところ、救われた心地がしたのだ。
(でも、会うなり可愛いはないよなぁ)
最近は何気ない瞬間に視線を感じて振り向くと、すごく優しい表情でじっと見つめられていることも増えてきた。
(あんな風に見られると、落ち着かない気分になって困る)
今日は地方のローカル番組にゲスト出演する為、控え室で準備をしているところだ。
キャスター付きの椅子に座ったまま、コロコロと音を立てながら神音が近づいてくる。
「……響、あれからアレンと進展あった?」
椅子の背に両腕を重ね、そこに頭を載せながら神音が急に切り出した。
「え、進展って?」
「会う暇はなくても、メールとかしてるでしょ? ふたりは普段何を話しているのかなって少し興味が湧いてさぁ」
ちらっと出入り口近くで準備しているアレンさんを確認した神音は、ぐっと首を伸ばして俺に近づいた。
「デートのお誘いは無いの?」
「無いよ、そんなの……それに俺が忙しかったことアレンさんもわかってたから、連絡とか無かったし……」
「なぬっ! あやつは我が兄君を誘惑しておきながら、逃げおったのか!」
「……時代劇でも観たの、神音」
口調から推測すると、てへっと舌を出しながら神音が笑った。
「ふざけるのはともかく。響はちゃんと話しなよ。ふたりきりで会わせるのは不安だけど」
神音が手を伸ばして俺の頬をつねった。
「好きなら好きだって、しっかり相手に伝えなきゃ。怖がってはっきり言わないままだったら、いくら純情なアレンでも遠ざかってしまうかもしれないよ。そうなったら困るでしょ?」
「…………」
俺は神音に何も言い返せなかった。
ずっと一緒にいたからわかるよと、神音が深みのある笑みを浮かべた。
「樫部さんの時みたいに、手が届かなくなっても響が平気ならぼくも言わない。でも、違うでしょ?」
「……う、ん……」
神音が俺と額を合わせてきた。
「響はだれかを好きになってもいい。だれかに好かれてもいい。その価値がないとか、権利がないとかそんなことは絶対にない。声が出なくなっても努力し続けてきた響をぼくやみんなも見てきたし、成し遂げた響を尊敬しているんだ。もっと自信を持って……響はぼくの大切な唯一無二の相棒なんだからね」
「……うん。ありがとう」
ためらう俺の心を神音は見透かしているようだった。
(敵わないな、神音には)
口に出さないことまで神音には見抜かれてしまう。
すると神音が少し顔を離すと、にやりと笑った。何かを企んでいる顔だ。
「ぼくには下心もあってね。純粋に応援しているだけじゃないんだよ」
「……下心?」
「そぅそう。ヴォーカルって心理的影響が大きいポジションで、体感したことで変化するって聞いてさ。響の声がどんな風に変わるのか興味があるんだ」
「……?」
いまいちよくわかっていない俺の耳元に口を寄せて、神音が囁いた。
「例えば好きな人とセックスしたら、声にも色気が増すとか、ね?」
「……な、何を言ってんの、神音っ!」
思わず大声を放って立ち上がってしまい、何だ何だと他のメンバーやスタッフたちから注目を浴びてしまった。
一言謝ってから椅子に座り直す。
「何や、ケンカしとるの?」
「いきなり顔を突っ込むヤッシーはお節介ですね」
にょっ、と八代さんと文月さんも神音のそばに来て会話に参入してきた。
「ケンカじゃないよ。ぼくは響に活を入れてんの。それとアレンの忍耐強さに関心しているところ」
すると新規参入したふたりが揃って、納得したように相槌を打つ。
「それはおれもつくづく思うわ」
「僕としてはキスだけで響君を帰した先輩が逆に心配でしたよ」
「だよね~」
「……な、何の話をしているんです?」
文月さんたちの口ぶりから嫌な予感がして、俺は慎重に確かめてみた。
あっけらかんと八代さんが打ち明ける。
「響ちゃんが話せるようになったきっかけの出来事は、アレンから聞いとるよ~」
「正確には神音から又聞きして、先輩に確かめた流れです」
「…………」
「……響、生きてる?」
神音が俺の目の前で手を振ってるけど、俺はそれどころじゃない。
(つ、つまり俺がアレンさんと何をしたのかって、みんな知ってるってこと?)
驚きすぎて息が止まってることは自覚しているけど、衝撃的すぎて立ち直れない。
(……恥ずかしすぎる)
ひとり会話に参加していなかったアレンさんが、俺たちの方を向いて不思議そうに首を傾げている。
「……神音、俺もアレンさんも男だよ?」
「だから?」
「だから、さ……出来るわけない。神音が期待していることなんて起きないから」
俯いてぼそぼそと呟くと、神音がしばらく間を置いた。
「……響、それはどういう意味で言ってんの? したくないってことか、やり方がわからないってこと?」
「いや、だって……体の構造からして無理じゃない」
神音は何とも言えない表情になって、じっと俺の顔を見た後で長く息を吐いた。
「……怖いからしたくないってわけじゃなくて、単純に思い至っていないんだね……さすが響だよ」
あまりにもしみじみと神音が言うので、俺は少し落ち込んだ。
「声が出せなくなった原因は覚えているよね? あの時、どこを触られて何をされたのか忘れた? 男同士でも出来るんだよ、もちろん受け入れる側の場所は女性とは違うけど」
会話の流れから事情を察したらしく、八代さんと文月さんが慎重に口を開く。
「響ちゃん、どんな目に遭ったのか、わかってなかったん?」
「一般教養とは外れた行為ですし、純真な響君が理解できていなかったとしても責められません」
「…………」
ずいぶん不快な体験をさせられて、忘れようにも忘れられないほどだけれど、あれは悪意から発生した行為だと思っていた。
「そんな……好きな人にもしたいと思うこと、だったの?」
「……あぁ、どうしよう……ぼくはいま、穢れない相棒を汚してしまったみたい。もしかして敵に塩を送っちゃったかも」
なぜか頭を抱えてしまった神音を両脇から八代さんたちが肩を叩いて労わっている。
「遅かれ早かれ、いずれ到達しとったやろうから気にせんでええよ」
「むしろ先輩が暴走して響君を傷つける可能性が低くなったと思われます。いいですか、響君。たとえ相手が先輩であろうと、嫌なら嫌だとはっきり断るべきです」
ずいっと顔を寄せて真剣に言い聞かせてくる文月さんに面喰いながら、衝撃の事実が少しずつ思考へ浸透していく。
「……みなさんもしたいと思いますか、その……好きな人に、あんなことを……」
嫌な印象の方が強い記憶だから、どうしても腑に落ちない。
「まぁ、生き物の本能やし。性別の問題は別としても気持ちは止められへんやん」
「肉体面だけでなく、精神面でも真に望んだ相手とならば例えようもなく濃密に満たされますよ」
「うわ~穢れた大人たちの言い分だぁ」
神音が茶化すと、すかさずふたりから後頭部を小突かれていた。
「とにかく、可能性があるんだってことだけは忘れないでいてよ」
本番ですとスタッフが呼ぶ声にそれぞれ立ち上がりながら、最後にそう神音が締めくくった。
窓の外が明るくなってきたので、眠ることはあきらめて起き出した。
(……そうだ)
少し早いけど朝食を作ろうとして、その前にいたずらを思いつき、神音の部屋にそっと忍びこんだ。
枕元に書きかけの五線譜が散っている中で、神音が気持ちよさそうに眠っている。
自分とよく似た顔をじっと凝視する。
「……ぅ~ん……」
人の気配に気づいたらしく、眠りが浅くなった神音がかすかに唸り、もぞもぞと寝返りを打つ。
「…………ぁ、れ……ひびき?」
俺に背中を向けて、もう一度眠り直そうとしていた神音が、やにわに顔を振り向け、寝ぼけ眼を何度もまばたきさせながら名前を呼んできた。
「うん。おはよう、神音」
「……はよ……どしたの、朝から……」
目を擦りながら仰向けになり、むにゃむにゃと話し続けていた神音が急に動きを止める。
がばっと起き上がると、鼻がつきそうな距離まで顔を近づけて凝視してきた。
「響、だよね?」
「そうだけど?」
「…………そうだけど、って……」
声をつまらせ、神音が俯いて肩を震わせる。
「響ーっ!」
「うわぁっ」
大音量で泣き叫びながら、神音が飛びついてきた。耐えきれず、ふたりして床へ転がり落ちたけど、そんなに高い位置から落ちたわけじゃないから痛みはない。
それよりも確認するみたいに、何度も名前を呼びながら顔を擦り寄せてくる神音がくすぐったい。
「良かったよ~、今度こそぼくは生きた心地がしなかったんだからね! ぼくたちの判断が間違っていたんだって、何度後悔したことかっ」
「ごめん、ごめん」
「……待って。なんで急に話せるようになったわけ? 何があったの?」
馬乗りになった神音がはたと動きを止め、また俺の顔を覗きこんでくる。
じっとまばたきもせず凝視してきて、答えるまで断固として動かないぞと態度で示してくる。
(しまった……こうなると引かないからなぁ)
適当なごまかしを言うと、すぐに見破って食い下がってくることは経験済みだ。
こんなことならいたずらするべきじゃなかったかも、と少し後悔したけれど、知られてしまうのも時間の問題だっただろうとも思う。
「昨夜アレンさんと話をしたんだ……その……嫌いにならないでください、みたいなことを」
「それで?」
「……いろいろあったんだ」
「いろいろ?」
「…………とにかく、また歌えるようになるから。それでいいだろ?」
「だ~め~っ。弟として知っておくべきだと思いマス!」
「兄として、知っていなくてもいいと思います!」
「あ、待てっ」
もがいて、神音の下から何とか抜け出して部屋から逃げたんだけど、当然ながら逃げ続けることは出来ず。
結局、朝食を食べながらすべて白状させられてしまいました。
「まぁねぇ~いつかふたりは、こうなるだろうと思ってましたけど~」
たまご焼きを箸でつまみ、口へ運びながら神音がため息混じりにそう言った。
「思っていたなら聞かなくてもいいのに」
「ん~……でもはっきりさせとかないと癪だし? アレンも男だ、暴走しないように見張りが必要になるし」
暴走って何だ。神音が頭の中で今何を想像しているのか、知りたいような複雑な気分だ。
「うちの大切なヴォーカル様を独り占めされちゃ困るよ」
「……神音、あのさ……」
腕を組んで、何やら難しい表情でぶつぶつ言い始めた双子の片割れへ、無駄と知りつつ声をかけたらやっぱり無視された。
「ほら、ぼくたちまだ駆け出しじゃん。これからやるべきこと、積もり積もって天高くウナギ登り~なのに、アレンのせいで響が動けなくなったら大損害もいいところ。リーダーのくせにそんなことしちゃダメだよねぇ」
「……天高くウナギ登りって、そんな表現はじめて聞いたよ」
苦笑する俺へ、神音がびしっと指を突き付けてきた。
「甘いね。響の鈍さはぼくが保証する」
「……いや、だからさっきから何を言っているのかって聞いているんだけど……」
「恋人たちの夜を妨害する計画に決まってるでしょ」
「…………」
今度は俺が口を開けたまま、茫然と神音を見返すはめになった。
「……こ、恋人……」
「え、違うの? アレンとキスしたんでしょ? 好きだって言ったんじゃないの。だったら立派に恋人同士じゃん」
神音の声を聞いている間に、みるみる頭に血が上って顔が燃えそうなほど熱くなってきた。
「い、言ってないよ、好きだとか、そんなことは」
「…………響。今だけはぼく、アレンの味方をするよ。苦労するなぁ、あいつ」
はぁ、と盛大にため息を吐き出して、神音が肩を落とす。
「とにかく、響は今後、ぼくの許可なくアレンとふたりっきりにならないこと。いいね?」
「……なんで……」
「いいから、返事」
「は、はい……?」
神音の迫力に押されて、よくわからないまま約束させられてしまった。
朝食後に富岡さんへ電話連絡をしてからは、雪崩のように物事が展開して、スケジュールが変更された。
差し迫った大問題がレコーディングだ。
「グフフ……こいつぁ鍛え甲斐があるってもんよ。覚悟しな」
「……ジュノさん、気持ち悪いです」
ヴォイストレーナーであるジュノさんの元へ朝一番で駆けつけると、マッドサイエンティストのような笑顔でジュノさんが不気味に近づいてきた。
俺の両肩をがしっと掴む。
「いいか。納得できるまで帰さねぇぞ?」
そして有言実行のジュノさんにより、徹底的に鍛え直されることになり、レコーディングが終了するまで鬼教官の指導が続いた。
幼い頃に閉じ込められたことが原因で息苦しさを感じてしまうレコーディングブースに足を踏み入れると、心臓が駆け足になりかすかに目眩を感じた。
(っ……ようやくここまで戻ってきたんだ。いまさら歌えないなんて、冗談じゃない!)
しっかりしろ、と自分自身に活を入れてマイクの前に立つ。
震える手で準備を終えて、開始を待っていると向かい合うスタッフたちの背後に見慣れない影が現れた。
(……へ?)
緊張も息苦しさも一瞬忘れて、驚いている様子のスタッフたちが振り返る先を俺も凝視してしまった。
もこもこな毛並みの白い猫の着ぐるみがスタッフたちの背後に立ち、こちらに向かって両手を振っている。
愛くるしい大きめな目と、笑っている口元が見ているだけで楽しい気分にさせてくれる。
さらに白い猫着ぐるみの背後から、にょきっと別の着ぐるみが三体も現れた。
(パンダ、うさぎ、犬……)
遊園地や商業施設のイベントスペースにこそふさわしい彼らの姿が、とてつもなく浮いて見える。
もちろんスタッフたちも動揺して、立ち合っていた富岡プロデューサーへオロオロと視線を投げかけていた。
額に青筋を浮かべそうな富岡さんは、腕組みをしながらも渋い顔で小さく頷き、レコーディングの続行を指示しているようだ。
『キョウ。準備はいいか……背後の物体は気にするな、歌に集中しろ』
「はい……」
(今、物体って言ったよね……)
富岡さんからの指示に頷きながら、こみ上げてくる笑いを抑えるのに必死だった。
突然乱入してきた場違いな動物キャラクターたちの着ぐるみの中にだれがいるのかがわかったから。富岡さんが追い出さないのがその証拠だ。
(後でだれが何を着ていたのか、聞いてみよう)
アイドルのコンサートみたいにキラキラな装飾をつけたうちわを持ちこんだ着ぐるみたちに、堪え切れずに吹き出してしまうと、富岡さんがすかさず注意してくる。
「す、すみません……お願いします」
深呼吸をしてから富岡さんやスタッフたちに向けて軽く頭を下げる。
ヘッドフォンから先に録音されていたメンバーたちの音が流れ出す。リズムを追いかけながらふと視線を上げると、着ぐるみの動物たちが縦一列に並び、最前列の猫しか見えなくなった。
何だろうと思いながら、歌いだしのタイミングが近づき意識を切り替える。
譜面へ視線を戻し、口を開く。
声が出せなかった間に何度もイメージして描いていた理想へ近づけたい。それだけを考えて歌い続ける。
間奏に入り、富岡さんの表情を伺うとその背後にいた着ぐるみたちの様子も目に映り、危うく笑いだしそうだった。
縦一列に並んでいた着ぐるみたちが、少しずつタイミングをずらして円を描くように体を移動させている。
ダンサーたちが同じことをしたなら格好いい動きも、愛嬌のある顔の動物着ぐるみたちがやると、どうしてこうも笑いを誘うのだろう。
(こ、堪えろ……レコーディング中なんだから……っ)
腹筋に力を入れて吹き出さないよう、自分を律する間にも曲は進んでいく。
俺の様子に気付いた富岡さんが背後をちらっと見た後、額を手で押さえた。
別の意味で苦労したレコーディングは無事に終わり、神音も驚くほど仕上がりが良くなった新曲が、冬のはじめ頃に世の中へ飛び出して行った。
余談だけど新曲のジャケットの裏面に、PV撮影時と同じ制服を着た俺を先頭に、『前ならえ』をしている着ぐるみ姿のメンバーたちが並んで映っている。
「たまには面白いだろう。歌詞にも合っている」
富岡さん指示で急遽追加されたカットだ。
メンバーたちは顔が映らないので複雑な気分になっていた。たぶん、レコーディング中に苛立ちを誘われた富岡さんの仕返しだと思う。
幸いにも購入してくれた人たちにも受けが良かったらしく、だれが何を着ているのかを問い合わせる人も多かったけど、答えは決まって、『想像にお任せします』だった。
新曲の宣伝活動もはじまり、制作とは違う忙しい日々が続く。
仕事があることはうれしいのだけれど、ひとつだけ困ったことがある。
当然ながら『i-CeL』としての仕事なので、メンバー全員と毎回顔を合わせる。そこにはアレンさんも含まれているわけで。
夜景を見下ろす車内でキスをした夜から、俺たちはまともに会話をしていなかった。
声が戻った俺は復帰するための訓練が最重要課題となっていたし、アレンさんもそれがわかっている。
だからちゃんと顔を会わせる初日はどんな顔をしたらいいのやら、と実はかなり緊張していたのだ。
「おっはよ~響くん。今日も可愛いね」
「……おはようございます。可愛くはありません」
顔を合わせるなり、にこにこ満面の笑みで可愛いと言われ、俺は仏頂面で返事をするのが日常となりつつある。
他のメンバーたちがにやにや笑って俺たちを見ているのが居たたまれない。
(な、んだよ……この人はっ)
俺が困る姿を楽しんでいるんじゃないかと疑いたくなる。
初日は正直なところ、救われた心地がしたのだ。
(でも、会うなり可愛いはないよなぁ)
最近は何気ない瞬間に視線を感じて振り向くと、すごく優しい表情でじっと見つめられていることも増えてきた。
(あんな風に見られると、落ち着かない気分になって困る)
今日は地方のローカル番組にゲスト出演する為、控え室で準備をしているところだ。
キャスター付きの椅子に座ったまま、コロコロと音を立てながら神音が近づいてくる。
「……響、あれからアレンと進展あった?」
椅子の背に両腕を重ね、そこに頭を載せながら神音が急に切り出した。
「え、進展って?」
「会う暇はなくても、メールとかしてるでしょ? ふたりは普段何を話しているのかなって少し興味が湧いてさぁ」
ちらっと出入り口近くで準備しているアレンさんを確認した神音は、ぐっと首を伸ばして俺に近づいた。
「デートのお誘いは無いの?」
「無いよ、そんなの……それに俺が忙しかったことアレンさんもわかってたから、連絡とか無かったし……」
「なぬっ! あやつは我が兄君を誘惑しておきながら、逃げおったのか!」
「……時代劇でも観たの、神音」
口調から推測すると、てへっと舌を出しながら神音が笑った。
「ふざけるのはともかく。響はちゃんと話しなよ。ふたりきりで会わせるのは不安だけど」
神音が手を伸ばして俺の頬をつねった。
「好きなら好きだって、しっかり相手に伝えなきゃ。怖がってはっきり言わないままだったら、いくら純情なアレンでも遠ざかってしまうかもしれないよ。そうなったら困るでしょ?」
「…………」
俺は神音に何も言い返せなかった。
ずっと一緒にいたからわかるよと、神音が深みのある笑みを浮かべた。
「樫部さんの時みたいに、手が届かなくなっても響が平気ならぼくも言わない。でも、違うでしょ?」
「……う、ん……」
神音が俺と額を合わせてきた。
「響はだれかを好きになってもいい。だれかに好かれてもいい。その価値がないとか、権利がないとかそんなことは絶対にない。声が出なくなっても努力し続けてきた響をぼくやみんなも見てきたし、成し遂げた響を尊敬しているんだ。もっと自信を持って……響はぼくの大切な唯一無二の相棒なんだからね」
「……うん。ありがとう」
ためらう俺の心を神音は見透かしているようだった。
(敵わないな、神音には)
口に出さないことまで神音には見抜かれてしまう。
すると神音が少し顔を離すと、にやりと笑った。何かを企んでいる顔だ。
「ぼくには下心もあってね。純粋に応援しているだけじゃないんだよ」
「……下心?」
「そぅそう。ヴォーカルって心理的影響が大きいポジションで、体感したことで変化するって聞いてさ。響の声がどんな風に変わるのか興味があるんだ」
「……?」
いまいちよくわかっていない俺の耳元に口を寄せて、神音が囁いた。
「例えば好きな人とセックスしたら、声にも色気が増すとか、ね?」
「……な、何を言ってんの、神音っ!」
思わず大声を放って立ち上がってしまい、何だ何だと他のメンバーやスタッフたちから注目を浴びてしまった。
一言謝ってから椅子に座り直す。
「何や、ケンカしとるの?」
「いきなり顔を突っ込むヤッシーはお節介ですね」
にょっ、と八代さんと文月さんも神音のそばに来て会話に参入してきた。
「ケンカじゃないよ。ぼくは響に活を入れてんの。それとアレンの忍耐強さに関心しているところ」
すると新規参入したふたりが揃って、納得したように相槌を打つ。
「それはおれもつくづく思うわ」
「僕としてはキスだけで響君を帰した先輩が逆に心配でしたよ」
「だよね~」
「……な、何の話をしているんです?」
文月さんたちの口ぶりから嫌な予感がして、俺は慎重に確かめてみた。
あっけらかんと八代さんが打ち明ける。
「響ちゃんが話せるようになったきっかけの出来事は、アレンから聞いとるよ~」
「正確には神音から又聞きして、先輩に確かめた流れです」
「…………」
「……響、生きてる?」
神音が俺の目の前で手を振ってるけど、俺はそれどころじゃない。
(つ、つまり俺がアレンさんと何をしたのかって、みんな知ってるってこと?)
驚きすぎて息が止まってることは自覚しているけど、衝撃的すぎて立ち直れない。
(……恥ずかしすぎる)
ひとり会話に参加していなかったアレンさんが、俺たちの方を向いて不思議そうに首を傾げている。
「……神音、俺もアレンさんも男だよ?」
「だから?」
「だから、さ……出来るわけない。神音が期待していることなんて起きないから」
俯いてぼそぼそと呟くと、神音がしばらく間を置いた。
「……響、それはどういう意味で言ってんの? したくないってことか、やり方がわからないってこと?」
「いや、だって……体の構造からして無理じゃない」
神音は何とも言えない表情になって、じっと俺の顔を見た後で長く息を吐いた。
「……怖いからしたくないってわけじゃなくて、単純に思い至っていないんだね……さすが響だよ」
あまりにもしみじみと神音が言うので、俺は少し落ち込んだ。
「声が出せなくなった原因は覚えているよね? あの時、どこを触られて何をされたのか忘れた? 男同士でも出来るんだよ、もちろん受け入れる側の場所は女性とは違うけど」
会話の流れから事情を察したらしく、八代さんと文月さんが慎重に口を開く。
「響ちゃん、どんな目に遭ったのか、わかってなかったん?」
「一般教養とは外れた行為ですし、純真な響君が理解できていなかったとしても責められません」
「…………」
ずいぶん不快な体験をさせられて、忘れようにも忘れられないほどだけれど、あれは悪意から発生した行為だと思っていた。
「そんな……好きな人にもしたいと思うこと、だったの?」
「……あぁ、どうしよう……ぼくはいま、穢れない相棒を汚してしまったみたい。もしかして敵に塩を送っちゃったかも」
なぜか頭を抱えてしまった神音を両脇から八代さんたちが肩を叩いて労わっている。
「遅かれ早かれ、いずれ到達しとったやろうから気にせんでええよ」
「むしろ先輩が暴走して響君を傷つける可能性が低くなったと思われます。いいですか、響君。たとえ相手が先輩であろうと、嫌なら嫌だとはっきり断るべきです」
ずいっと顔を寄せて真剣に言い聞かせてくる文月さんに面喰いながら、衝撃の事実が少しずつ思考へ浸透していく。
「……みなさんもしたいと思いますか、その……好きな人に、あんなことを……」
嫌な印象の方が強い記憶だから、どうしても腑に落ちない。
「まぁ、生き物の本能やし。性別の問題は別としても気持ちは止められへんやん」
「肉体面だけでなく、精神面でも真に望んだ相手とならば例えようもなく濃密に満たされますよ」
「うわ~穢れた大人たちの言い分だぁ」
神音が茶化すと、すかさずふたりから後頭部を小突かれていた。
「とにかく、可能性があるんだってことだけは忘れないでいてよ」
本番ですとスタッフが呼ぶ声にそれぞれ立ち上がりながら、最後にそう神音が締めくくった。
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