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番外編 裕&聡史編
4-forever
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両腕を広げて、聡史の首の後ろで手を組むと、聡史の目元が緩んだのがわかった。
聡史も裕と同じように、想いを告げることに緊張していたのかもしれない。
そう思うと、裕よりずっと大人の男だと感じていた聡史が、身近に感じられて裕は微笑んだ。
「聡史さん……かわいいね」
「……ヒロが私に言う台詞として、適正ではないな」
憮然となった聡史に、裕は声を上げて笑う。
こんな風に話が出来るようになるなんて、信じられない。
うれしくて、幸せで、不安だ。裕は聡史に抱きついた。
(あなたは俺でいいの?)
言葉にしたくても恐ろしくて出来ない代わりに、腕に力をこめると、まるで答えるみたいに抱き返してくれた。
「覚悟しろよ」
低く囁いた後、再びキスで裕の口を塞いだ聡史が覆いかぶさってきた。
ソファに倒され、聡史に思うさまキスで乱される。
いつ部屋に来てもひとりで曲を作っていた聡史の、欲をまるで感じさせない横顔を思い出して、裕は胸の中で苦笑する。
(俺……聡史さんのこと、何もわかってなかったのな)
静かで、どこか遠くを見つめていた横顔からは想像もできない荒々しさで口内を犯されて、裕の意識に火花がいくつも散る。
「あっ、ん……は、ぁ」
いつの間にか毛布を剥ぎ取られ、パジャマの裾をたくしあげた聡史の手が、空気に晒された裕の腰を撫で、少しずつ胸へ移動して飾りをつまんだ。
「んんーっ」
聡史が触っているのは胸なのに、つままれたとたんに足先まで電流が駆け抜けて、裕の体が突っ張った。
犯されたままの口元から、飲み下しきれなかった唾液があふれて、頬を滑っていく。
その感覚にまで背筋が震えてしまう。
(も……わけ、わかんなくなってきた……)
全身が熱くて、脳が溶けてしまったんじゃないかと思うほど、考えがまとまらなくなっていた。
下腹部はとうに昂ぶって、パジャマを押し上げている。
馬乗りになっている聡史がそれに気づいていないはずはないのに、胸を弄りながらキスを続けるだけで、そこには触ってくれない。
苦しいほど張りつめたそこをどうにかしたくて、足を擦り合わせていると、ようやく顔を離した聡史が、ふっと笑った。
「どうした、ヒロ?」
唾液で濡れた唇を艶めかせて笑う聡史が憎くて、裕は睨みつけた。
「わ……かってる、くせにっ」
こんな体に追いつめた唇に噛みついてやると、聡史がさらに楽しそうに声を上げて笑った。
そして裕の耳元に唇を寄せると、息を吹きかけるように言った。
「もっと気持ちよくなりたいか?」
「…あっ、ん……いや、そこ……」
ぞくりと腰に衝撃が生まれる。耳でこんな風に何かを感じることがあるなんて、知らなかった。
裕の反応が楽しいのか、聡史はふっとまた笑う。
その吐息にすら肩をすくめる体を抱き寄せて、首筋に顔を埋めた。
「どうして欲しい?」
舌を尖らせて首筋から耳の裏側を舐めると、裕は悲鳴のように声を上げて体を震わせた。
「聡史さ、ん……っ」
「ん?」
覆いかぶさる聡史の腹に、裕が腰を持ち上げて擦りつけるようにした。
見下ろす裕の顔は羞恥で赤く染まって、聡史の劣情を暴走させそうな色気を漂わせていた。
キスのせいで濡れた唇を震わせて、潤んだ目で裕が見上げてくる。
「さわ……って……もう、たまんない」
ぎゅっと目を閉じて言い切った裕の体を、もう一度強く抱きしめた。
たまらないのはこちらだ、と腕にこめた力で伝える。
片手を裕の下腹部へ移動させて、パジャマの上から指の腹で先端を撫でる。
びくびく痙攣するように裕の足が跳ねたかと思うと、足を突っ張って腰を揺らした。
「ヒロ、愛している」
耳元に顔を寄せて囁くと、それだけで裕が震えた。
「ずっとそばにいてくれ」
「あ、聡史さんっ……俺も、」
応えようとした裕のパジャマを引き下げて、熱く猛った性器を握りしめた。
「っ……ああ、んっ」
触っただけで身悶える裕が愛しくて、聡史はもう一度深くキスをする。
舌を絡めながら握りしめた性器の先端を、指の腹で円を描くように擦る。先端から絶え間なく汁が溢れ出て、聡史の手を濡らす。
裕はのけ反りながら、両腕で聡史の頭を抱いた。
口内と性器、鋭敏に感じる場所を同時に弄られて、裕はもう快感に飲みこまれていた。
「ん、んっ……聡史さ、ん。あっ、あ……はぁっ」
鼻から抜ける息すら甘く、何度も聡史の名前を呼ぶ声は上ずっている。自分の声じゃないみたいで、恥ずかしい。
「もう……限界か?」
張りつめて、解放を求めて震える裕の性器を、聡史が先端から根元へつぅ……と撫でた。
「いやぁっ……で、出るっ……」
「まだ、駄目だ」
腰をくねらせ、達しようとした裕の根元を握りしめて、放出を止めた聡史が笑う。
裕は恨めしそうに聡史を睨んだものの、快楽に溺れて濡れた目では効果がなかった。
むしろ聡史の目に、もっと暗く激しい欲情が宿った。
「私をもっと感じろ。ヒロをもっと感じさせてくれ。イくのはそれからだ」
リビングから寝室に運ばれてから、どれくらいが経っただろう。
もう裕は時間の感覚が、まるでわからなくなっていた。
「お、ねが……も、イかせて……っ」
ずぎゅっ、と粘り気のある水音をさせながら、裕の後ろの孔に指を入れる聡史に懇願する。喘ぎすぎて掠れた声で、もう何度願っただろう。
「ヒロ、手が止まっているぞ」
その度に聡史は意地悪く囁いた。
彼の性器を握る裕の手は、快感の波に意識が浚われて止まりがちで、確かにまだ一度も達していない。
「もっと感じさせてくれ。それができれば、ご褒美をやる」
「ん……」
何度も囁かれているからわかっている。裕ばかりが気持ちよくなっていて、聡史に何もしてあげられていない。
でも聡史の手が、ずるいほど的確に裕を追いつめて、昂ぶらせるのが悪い。
全身のどこをとっても性感帯になってしまったみたいで、聡史の手が触れるだけで電流みたいな快感が弾けるのだ。
ベッドヘットに背を預けて座る聡史にまたがり、聡史を気持ちよくさせようとすると、頭を引き寄せられてキスをする。
舌と舌が触れ合うだけで、頭が破裂するようだった。
「ほら……手が、止まっているぞ」
「あ……ん、……」
キスをしたまま、裕は聡史を握り、聡史は裕の内部をかき回した。
「は、んっ……あ、あっ……あっ」
熱くて全身が溶けてしまいそうだ。
胸の突起は立ち上がって、鼓動に合わせてじんじんと痛みにも似た快感を生みだし続けている。
聡史の片手で根本を締めつけられたままの性器からは、それでも白濁が滴となってこぼれ落ちていく。
体の奥底を蠢く聡史の指を、内壁がぎゅっと締まって咥えこむ。指を挿入されたばかりの違和感や痛みなんて、もうまるで感じない。
早く楽にして欲しくて、茫洋とした意識をかき集めて聡史の性器を扱いたけれど、どこもかしこも感じすぎてしまう体のせいで、すぐに意識が散り散りになってしまう。
「い、やぁ……聡史さ、ゆるして」
涙が自然にあふれて頬を流れ落ちた。
その感覚にすら体を震わせる裕を憐れに思ったのか、聡史は裕の中から指を引き抜くと、体を抱きしめた。
「はじめてなのに、よくがんばったな。ヒロ……お疲れさま」
「っ……あ、ああーっ!」
ようやく解放を許され、下腹部にさんざんせき止められていた熱がほとばしる。強すぎる感覚に、裕は悲鳴を上げて体を強張らせた。
過ぎ去った熱の代わりに、意識が飛びそうな虚脱感がどっと襲いかかってきた。
ぐったりと力を失った裕の体を聡史が受け止めて、胸に抱き寄せる。
汗に濡れた髪を梳くように撫でて、労わってくれる手が気持ちいい。
胸を合わせて、お互いの荒い呼吸と鼓動を聞いていた。
肌と肌が重なり、間には何もない。
だれよりも近い距離で、ふたりでいる。
何もしなくても、この時間が特別に思えて裕は目を閉じた。
しばらくして聡史の手が背中を滑り、尻の谷間へ触れた。
「……したい、の?」
裕が掠れた声で聞くと、聡史が吐息で答えた。
「ヒロをもっと……感じたい」
欲に濡れて、ひび割れた声は熱かった。
その声に聡史に触れられている部分が、ずくんと疼く。
「い、いよ。俺で……聡史さんが……満たせるなら」
さっきは気持ちよくさえてあげられなかった。
正直に言えば恐怖はある。さんざん指で弄られて、最後には快楽さえ感じた場所だけれど、さっき触っていたから聡史のものの大きさはわかる。
(あれが入っても、痛くない、わけないよな)
心臓がことさら大きく鳴った。
聡史に言った言葉は嘘じゃない。気持ちよくなるのなら、我慢しようと思う。
「このまま……うつ伏せで、腰だけ上げろ」
そっと体の下から抜け出した聡史が、低く指示をする。
素直に従い、ベッドにうつ伏せのまま膝をついて、腰を上げた。
聡史は枕を裕の腹の下に入れてから、腰を掴む。
「息を吐いて」
言われた通りに息を吐き出した。吐ききって、息を吸い、また吐き出す。
「裕……」
名前を、呼ばれた。
愛称ではなく、名前を呼んだと同時に、後ろに熱い塊が押し入ってきた。
「っ、あ……あっ」
「裕、裕。息を吐け」
「……はっ」
何とか息を吐き出した。きついと思ったのははじめだけで、呼吸をくり返していると少しずつ聡史が体内に収まっていく。
聡史の太く熱い欲望に、直接肉壁を擦られる感覚に体が震えた。
想像より痛みは少なかった。
手で触れるよりも鮮明に聡史を感じてしまう。
「ふっ、んぁ……あ……聡史さんっ」
もぞりと聡史が体を動かしたとたん、鋭敏な場所を擦られた。
つい聡史を締め上げてしまったらしい。背中で聡史が息を飲む気配がした。
「裕……そんなに煽るな」
「そん、な……つもりじゃ……やっ、あっ!」
「少し揺らすぞ」
根元まで押し入った聡史が、そう言って細かく腰を揺らした。
聡史の猛りに肉壁を押され、痺れが背筋をぞくりと突き上げる。
後ろをかき回されながら、同時に前を扱かれて裕は悲鳴を上げた。
「やあっ、あ、あんっ」
また違う場所を擦られ、声が勝手にほとばしる。
「気持ち、いいか」
「う、あ……さ、とし……は?」
裕の背中をかき抱いて、聡史は吐息で笑った。
「……裕の中、熱いな」
「い、言うな……っ、いや、あっあ、あ」
ずん、と腰を動かして引き抜いた聡史は、一気に根元まで押し込んだ。
くり返し、だんだんと深く大きく抜き差しされる。裕は声を上げ続けた。
「裕っ、く……うっ」
「あ、あっ!」
涎が落ちていくのに、激しく揺さぶられて、口を拭う間がない。
聡史はより一層動きを速めて、裕を突き上げる。
「あんっ、あぁ……っはぁ、あっ、ん」
吐息のような喘ぎ声が、震える喉から勝手に飛び出す。
鋭敏な部分を狙い撃ちされて、声は一際高くなった。
「はあ、んっ、あっ……ああっ……あ、あ」
脳天を貫く勢いで抜き差しする聡史の吐息も、裕の声に負けじと荒々しく変わる。
「裕、裕」
何度も名前を呼ぶ声や、荒々しい息遣い、体内を暴くものの熱さで、聡史が感じてくれていることがわかってうれしい。
裕は薄れる意識の中で微笑んだ。
「す、き……あっ、んぁっ……聡史さんっ」
尻が鳴るほど聡史が腰を打ち付けはじめた。
裕はただ喘ぐしかできない。
もう、何も考えられなくなっていた。
「あん、あっ、あっ」
「裕……裕っ」
いまにも擦りきれそうな意識の中で、裕は首を横に振って聡史に訴えた。
もういまにも意識が飛んでしまいそうだ。
「いくぞ、裕っ」
前と後ろを同時に、これ以上なく激しく責め立てられて、裕はついに限界を越えた。
「くっ……!」
体を強張らせ精を放った裕の中で、聡史もしばらく腰を揺らして熱を吐き出した。
遠くでだれかの話し声がして、裕は目を開いた。
熱が上がったのか、頭の芯が痺れて重く、何かを考えるのがとても辛い。
どうにかここが聡史の寝室で、いろんな液にまみれていた体は、いまはきれいにされていることだけを確認できた。
はぁ、と息を吐き出したところで、寝室に聡史が入ってきた。
聡史が腰かけてベッドが鳴る。
「義姉さんに電話しておいた。風邪を引いて、熱を出した。治るまでうちで預かるとね。具合はどうだ、ヒロ」
「……いいわけないだろ」
答えた時、喉は引きつれて激しく痛んだ。
声も枯れて、とても聞けたもんじゃない。
聡史はふふっと笑い、裕の額にキスをした。
「すまない。ヒロが良すぎて、制御できなかった」
「やめろ……も、頼むから……言うな」
裕は布団を頭まで持ち上げて、隠れた。
とても聡史の顔をまともに見られない。
じくりと痛む部分に、彼が入っていたわけで。
「いい歌を聞かせてもらったぞ」
「うるさいっ!」
はは、と声を上げて笑う聡史の腕を、八つ当たりで叩いてやった。
布団をはぎとろうとする聡史と、しばらくふざけあう。
「メリー・クリスマス」
突然動きを止めて、聡史が囁いた。
とても、とても愛しそうに。
裕はためらって、ゆっくりと布団から顔を出して、間近で見つめている聡史を見た。
そう言えば今日はクリスマスだった。
昨夜の雪は止んだだろうか。
「……メリー・クリスマス」
ぼそりと答えると、聡史がにかりと笑って顔を近づけてくる。
唇に触れるだけの、優しくて甘いキスだった。
聡史も裕と同じように、想いを告げることに緊張していたのかもしれない。
そう思うと、裕よりずっと大人の男だと感じていた聡史が、身近に感じられて裕は微笑んだ。
「聡史さん……かわいいね」
「……ヒロが私に言う台詞として、適正ではないな」
憮然となった聡史に、裕は声を上げて笑う。
こんな風に話が出来るようになるなんて、信じられない。
うれしくて、幸せで、不安だ。裕は聡史に抱きついた。
(あなたは俺でいいの?)
言葉にしたくても恐ろしくて出来ない代わりに、腕に力をこめると、まるで答えるみたいに抱き返してくれた。
「覚悟しろよ」
低く囁いた後、再びキスで裕の口を塞いだ聡史が覆いかぶさってきた。
ソファに倒され、聡史に思うさまキスで乱される。
いつ部屋に来てもひとりで曲を作っていた聡史の、欲をまるで感じさせない横顔を思い出して、裕は胸の中で苦笑する。
(俺……聡史さんのこと、何もわかってなかったのな)
静かで、どこか遠くを見つめていた横顔からは想像もできない荒々しさで口内を犯されて、裕の意識に火花がいくつも散る。
「あっ、ん……は、ぁ」
いつの間にか毛布を剥ぎ取られ、パジャマの裾をたくしあげた聡史の手が、空気に晒された裕の腰を撫で、少しずつ胸へ移動して飾りをつまんだ。
「んんーっ」
聡史が触っているのは胸なのに、つままれたとたんに足先まで電流が駆け抜けて、裕の体が突っ張った。
犯されたままの口元から、飲み下しきれなかった唾液があふれて、頬を滑っていく。
その感覚にまで背筋が震えてしまう。
(も……わけ、わかんなくなってきた……)
全身が熱くて、脳が溶けてしまったんじゃないかと思うほど、考えがまとまらなくなっていた。
下腹部はとうに昂ぶって、パジャマを押し上げている。
馬乗りになっている聡史がそれに気づいていないはずはないのに、胸を弄りながらキスを続けるだけで、そこには触ってくれない。
苦しいほど張りつめたそこをどうにかしたくて、足を擦り合わせていると、ようやく顔を離した聡史が、ふっと笑った。
「どうした、ヒロ?」
唾液で濡れた唇を艶めかせて笑う聡史が憎くて、裕は睨みつけた。
「わ……かってる、くせにっ」
こんな体に追いつめた唇に噛みついてやると、聡史がさらに楽しそうに声を上げて笑った。
そして裕の耳元に唇を寄せると、息を吹きかけるように言った。
「もっと気持ちよくなりたいか?」
「…あっ、ん……いや、そこ……」
ぞくりと腰に衝撃が生まれる。耳でこんな風に何かを感じることがあるなんて、知らなかった。
裕の反応が楽しいのか、聡史はふっとまた笑う。
その吐息にすら肩をすくめる体を抱き寄せて、首筋に顔を埋めた。
「どうして欲しい?」
舌を尖らせて首筋から耳の裏側を舐めると、裕は悲鳴のように声を上げて体を震わせた。
「聡史さ、ん……っ」
「ん?」
覆いかぶさる聡史の腹に、裕が腰を持ち上げて擦りつけるようにした。
見下ろす裕の顔は羞恥で赤く染まって、聡史の劣情を暴走させそうな色気を漂わせていた。
キスのせいで濡れた唇を震わせて、潤んだ目で裕が見上げてくる。
「さわ……って……もう、たまんない」
ぎゅっと目を閉じて言い切った裕の体を、もう一度強く抱きしめた。
たまらないのはこちらだ、と腕にこめた力で伝える。
片手を裕の下腹部へ移動させて、パジャマの上から指の腹で先端を撫でる。
びくびく痙攣するように裕の足が跳ねたかと思うと、足を突っ張って腰を揺らした。
「ヒロ、愛している」
耳元に顔を寄せて囁くと、それだけで裕が震えた。
「ずっとそばにいてくれ」
「あ、聡史さんっ……俺も、」
応えようとした裕のパジャマを引き下げて、熱く猛った性器を握りしめた。
「っ……ああ、んっ」
触っただけで身悶える裕が愛しくて、聡史はもう一度深くキスをする。
舌を絡めながら握りしめた性器の先端を、指の腹で円を描くように擦る。先端から絶え間なく汁が溢れ出て、聡史の手を濡らす。
裕はのけ反りながら、両腕で聡史の頭を抱いた。
口内と性器、鋭敏に感じる場所を同時に弄られて、裕はもう快感に飲みこまれていた。
「ん、んっ……聡史さ、ん。あっ、あ……はぁっ」
鼻から抜ける息すら甘く、何度も聡史の名前を呼ぶ声は上ずっている。自分の声じゃないみたいで、恥ずかしい。
「もう……限界か?」
張りつめて、解放を求めて震える裕の性器を、聡史が先端から根元へつぅ……と撫でた。
「いやぁっ……で、出るっ……」
「まだ、駄目だ」
腰をくねらせ、達しようとした裕の根元を握りしめて、放出を止めた聡史が笑う。
裕は恨めしそうに聡史を睨んだものの、快楽に溺れて濡れた目では効果がなかった。
むしろ聡史の目に、もっと暗く激しい欲情が宿った。
「私をもっと感じろ。ヒロをもっと感じさせてくれ。イくのはそれからだ」
リビングから寝室に運ばれてから、どれくらいが経っただろう。
もう裕は時間の感覚が、まるでわからなくなっていた。
「お、ねが……も、イかせて……っ」
ずぎゅっ、と粘り気のある水音をさせながら、裕の後ろの孔に指を入れる聡史に懇願する。喘ぎすぎて掠れた声で、もう何度願っただろう。
「ヒロ、手が止まっているぞ」
その度に聡史は意地悪く囁いた。
彼の性器を握る裕の手は、快感の波に意識が浚われて止まりがちで、確かにまだ一度も達していない。
「もっと感じさせてくれ。それができれば、ご褒美をやる」
「ん……」
何度も囁かれているからわかっている。裕ばかりが気持ちよくなっていて、聡史に何もしてあげられていない。
でも聡史の手が、ずるいほど的確に裕を追いつめて、昂ぶらせるのが悪い。
全身のどこをとっても性感帯になってしまったみたいで、聡史の手が触れるだけで電流みたいな快感が弾けるのだ。
ベッドヘットに背を預けて座る聡史にまたがり、聡史を気持ちよくさせようとすると、頭を引き寄せられてキスをする。
舌と舌が触れ合うだけで、頭が破裂するようだった。
「ほら……手が、止まっているぞ」
「あ……ん、……」
キスをしたまま、裕は聡史を握り、聡史は裕の内部をかき回した。
「は、んっ……あ、あっ……あっ」
熱くて全身が溶けてしまいそうだ。
胸の突起は立ち上がって、鼓動に合わせてじんじんと痛みにも似た快感を生みだし続けている。
聡史の片手で根本を締めつけられたままの性器からは、それでも白濁が滴となってこぼれ落ちていく。
体の奥底を蠢く聡史の指を、内壁がぎゅっと締まって咥えこむ。指を挿入されたばかりの違和感や痛みなんて、もうまるで感じない。
早く楽にして欲しくて、茫洋とした意識をかき集めて聡史の性器を扱いたけれど、どこもかしこも感じすぎてしまう体のせいで、すぐに意識が散り散りになってしまう。
「い、やぁ……聡史さ、ゆるして」
涙が自然にあふれて頬を流れ落ちた。
その感覚にすら体を震わせる裕を憐れに思ったのか、聡史は裕の中から指を引き抜くと、体を抱きしめた。
「はじめてなのに、よくがんばったな。ヒロ……お疲れさま」
「っ……あ、ああーっ!」
ようやく解放を許され、下腹部にさんざんせき止められていた熱がほとばしる。強すぎる感覚に、裕は悲鳴を上げて体を強張らせた。
過ぎ去った熱の代わりに、意識が飛びそうな虚脱感がどっと襲いかかってきた。
ぐったりと力を失った裕の体を聡史が受け止めて、胸に抱き寄せる。
汗に濡れた髪を梳くように撫でて、労わってくれる手が気持ちいい。
胸を合わせて、お互いの荒い呼吸と鼓動を聞いていた。
肌と肌が重なり、間には何もない。
だれよりも近い距離で、ふたりでいる。
何もしなくても、この時間が特別に思えて裕は目を閉じた。
しばらくして聡史の手が背中を滑り、尻の谷間へ触れた。
「……したい、の?」
裕が掠れた声で聞くと、聡史が吐息で答えた。
「ヒロをもっと……感じたい」
欲に濡れて、ひび割れた声は熱かった。
その声に聡史に触れられている部分が、ずくんと疼く。
「い、いよ。俺で……聡史さんが……満たせるなら」
さっきは気持ちよくさえてあげられなかった。
正直に言えば恐怖はある。さんざん指で弄られて、最後には快楽さえ感じた場所だけれど、さっき触っていたから聡史のものの大きさはわかる。
(あれが入っても、痛くない、わけないよな)
心臓がことさら大きく鳴った。
聡史に言った言葉は嘘じゃない。気持ちよくなるのなら、我慢しようと思う。
「このまま……うつ伏せで、腰だけ上げろ」
そっと体の下から抜け出した聡史が、低く指示をする。
素直に従い、ベッドにうつ伏せのまま膝をついて、腰を上げた。
聡史は枕を裕の腹の下に入れてから、腰を掴む。
「息を吐いて」
言われた通りに息を吐き出した。吐ききって、息を吸い、また吐き出す。
「裕……」
名前を、呼ばれた。
愛称ではなく、名前を呼んだと同時に、後ろに熱い塊が押し入ってきた。
「っ、あ……あっ」
「裕、裕。息を吐け」
「……はっ」
何とか息を吐き出した。きついと思ったのははじめだけで、呼吸をくり返していると少しずつ聡史が体内に収まっていく。
聡史の太く熱い欲望に、直接肉壁を擦られる感覚に体が震えた。
想像より痛みは少なかった。
手で触れるよりも鮮明に聡史を感じてしまう。
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もぞりと聡史が体を動かしたとたん、鋭敏な場所を擦られた。
つい聡史を締め上げてしまったらしい。背中で聡史が息を飲む気配がした。
「裕……そんなに煽るな」
「そん、な……つもりじゃ……やっ、あっ!」
「少し揺らすぞ」
根元まで押し入った聡史が、そう言って細かく腰を揺らした。
聡史の猛りに肉壁を押され、痺れが背筋をぞくりと突き上げる。
後ろをかき回されながら、同時に前を扱かれて裕は悲鳴を上げた。
「やあっ、あ、あんっ」
また違う場所を擦られ、声が勝手にほとばしる。
「気持ち、いいか」
「う、あ……さ、とし……は?」
裕の背中をかき抱いて、聡史は吐息で笑った。
「……裕の中、熱いな」
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ずん、と腰を動かして引き抜いた聡史は、一気に根元まで押し込んだ。
くり返し、だんだんと深く大きく抜き差しされる。裕は声を上げ続けた。
「裕っ、く……うっ」
「あ、あっ!」
涎が落ちていくのに、激しく揺さぶられて、口を拭う間がない。
聡史はより一層動きを速めて、裕を突き上げる。
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吐息のような喘ぎ声が、震える喉から勝手に飛び出す。
鋭敏な部分を狙い撃ちされて、声は一際高くなった。
「はあ、んっ、あっ……ああっ……あ、あ」
脳天を貫く勢いで抜き差しする聡史の吐息も、裕の声に負けじと荒々しく変わる。
「裕、裕」
何度も名前を呼ぶ声や、荒々しい息遣い、体内を暴くものの熱さで、聡史が感じてくれていることがわかってうれしい。
裕は薄れる意識の中で微笑んだ。
「す、き……あっ、んぁっ……聡史さんっ」
尻が鳴るほど聡史が腰を打ち付けはじめた。
裕はただ喘ぐしかできない。
もう、何も考えられなくなっていた。
「あん、あっ、あっ」
「裕……裕っ」
いまにも擦りきれそうな意識の中で、裕は首を横に振って聡史に訴えた。
もういまにも意識が飛んでしまいそうだ。
「いくぞ、裕っ」
前と後ろを同時に、これ以上なく激しく責め立てられて、裕はついに限界を越えた。
「くっ……!」
体を強張らせ精を放った裕の中で、聡史もしばらく腰を揺らして熱を吐き出した。
遠くでだれかの話し声がして、裕は目を開いた。
熱が上がったのか、頭の芯が痺れて重く、何かを考えるのがとても辛い。
どうにかここが聡史の寝室で、いろんな液にまみれていた体は、いまはきれいにされていることだけを確認できた。
はぁ、と息を吐き出したところで、寝室に聡史が入ってきた。
聡史が腰かけてベッドが鳴る。
「義姉さんに電話しておいた。風邪を引いて、熱を出した。治るまでうちで預かるとね。具合はどうだ、ヒロ」
「……いいわけないだろ」
答えた時、喉は引きつれて激しく痛んだ。
声も枯れて、とても聞けたもんじゃない。
聡史はふふっと笑い、裕の額にキスをした。
「すまない。ヒロが良すぎて、制御できなかった」
「やめろ……も、頼むから……言うな」
裕は布団を頭まで持ち上げて、隠れた。
とても聡史の顔をまともに見られない。
じくりと痛む部分に、彼が入っていたわけで。
「いい歌を聞かせてもらったぞ」
「うるさいっ!」
はは、と声を上げて笑う聡史の腕を、八つ当たりで叩いてやった。
布団をはぎとろうとする聡史と、しばらくふざけあう。
「メリー・クリスマス」
突然動きを止めて、聡史が囁いた。
とても、とても愛しそうに。
裕はためらって、ゆっくりと布団から顔を出して、間近で見つめている聡史を見た。
そう言えば今日はクリスマスだった。
昨夜の雪は止んだだろうか。
「……メリー・クリスマス」
ぼそりと答えると、聡史がにかりと笑って顔を近づけてくる。
唇に触れるだけの、優しくて甘いキスだった。
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懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない
りつ
BL
恋人にもっとあからさまに求めてほしくて浮気を繰り返すクズ攻めと上手に想いを返せなかった受けの薄暗い小話です。「#別れ終わり最後最期バイバイさよならを使わずに別れを表現する」タグで書いたお話でした。少しだけ喘いでいるのでご注意ください。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
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