上 下
42 / 94

42誘拐

しおりを挟む
何も収穫がないまま俺たちは彷徨い歩いていた。敵も居ないし村人も居ない。アテもなく無駄に歩いていた。クーニャと俺が偵察がてら少し前を歩き3人は並んでついてきていた。しかしその状態は突然破られた。

キーン。ブスッ「きゃっ」「うっ」「ちっ」3人が突如叫んだ。慌てて振り向き確認すると着物が切れ腕から血を流すリンドウ。フェルが支えテオが折れた物を拾い上げている。俺も3人に近づこうとすると「きゃ~」突如横から悲鳴が上がる。クーニャが霧の人のようなものに捕まり連れて行かれていた。「クソっフェル。リンドウ連れて帰っててくれ。テオそれを保管しといてくれ。俺はクーニャを追う」それだけ言うと全速力で連れ去られていく方向を追った。

高級栄養剤を飲みまくり走り続けるがついにクーニャの気配が消えてしまった。消えた辺りには黒い霧が漂っているだけである。

黒い霧に入ると身体を蝕まれるような感覚があるが気にせず突き進んだ。あまり効果も無いが回復ドリンクも無駄に飲んで少しでも霧に抵抗する為回復をし続けている。

くそーなんで油断した。なんで手を繋いでなかった。なんで…くそ~自分の心が憎悪に潰されそうになり様々な不安が襲ってくる。俺自身が壊れそうになっていた。そんな時霧の影に小動物が横たわっているように見えた。瞬間俺は駆け始めていた。あれはクーニャの猫姿だと思って。

「おいクーニャ!…違う…クーニャじゃない」
駆け寄り抱き起こし呼ぶがそれはクーニャじゃなかった。猫姿のクーニャと同じくらいの子狐だった。しかしまだ息がある。こんな所にいるくらいだ何か知っているかもしれない。回復薬を飲ませながら村に帰ることにした。



####
「リン姉聞こえる?テオまずい意識が無い。急いで帰らないと」
「ここじゃ無理だ手当出来ない。急いで連れて帰ろう。ここでリンドウまで失ったらあるじ殿が壊れてしまう」
テオはフェルとリンドウを抱え最短距離で村を目指した。2人は自分の疲労も気にせず走った。回復薬を飲ませても効果が出ないがそれでも飲ませながら走った。村に近付くと異様な様子を察した猫人族の人が手伝いにきてくれて。族長の家に運び込まれ、いろいろな薬草が運ばれ調合してくれた。そのおかげでリンドウの顔色が落ちつき呼吸も安定してきた。

レオード「お前達の主人はどうしたんだ?」
テオ「クーニャが攫われて追いかけて行っちまった」
フェル「私達はリン姉任されて別れちゃったの」
レ「なに!?ルーシアだけでなくクーニャもなのか…敵は見たのか?手がかりは?」
テ「姿は見えなかったね。正確には霧が攫った」
フェ「テオ姉マスターが拾っとけって言ったのは?」
テ「これか…何か手がかりになればいいんだが…」
レ「折れた剣か…それだけではわからぬな」
テ「フェルあとは任せた」
フェ「ダメよテオみんながバラバラになっちゃう」
フーペ「そうよ貴女まで居なくなったらあの人本当に壊れちゃうわよ」
フェ「フーペ様!?」
テ「しかしこのままじゃ」
フ「大丈夫よあの人もう戻り始めてるわ」
テ「それは本当か!?クーニャ見つけたんだな!」
フ「いいえそれは叶わなかったみたい。ただ手掛かりになりそうな子を見つけて連れてくるようよ」
レ「そなたは妖精の女王か?クーニャは見つけられんのか?」
フ「族長…今はまだ見つからないわ」
レ「そうか…」
部屋を沈黙が支配していった。


####

ぴちゃっぴちゃっ
地下通路に水滴の垂れる音がこだまする。
カツカツカツ
誰かが近づいているようだ。
私の部屋の前で止まった。
ガチャガチャ。カチャン。ギギギギ~
扉を開けて入ってきた。
ドサッ。チャリチャリチャリ。ガシャン
誰かを連れてきて鎖に繋いだようだ。
「お前の仲間を連れてきてやったぜ。まだ起きないが感動の再会ってやつか?せいぜい今のうちに語り合うんだな。明日から地獄が待ってるんだ。ヒッヒッヒ」

ギギギギ~バタン。カシャン。
さて行ったようね。仲間?誰のことかしら?振り向いて確認するとそこには
「まっまさかそんな…生きて会えるなんて……私のクーニャ」


####

「貴方が冷静を失うとみんなバラバラになっちゃうわよ。少しは落ち着いたかしら?」
「フーペ様。そうですね。落ち着きましたよ。向こうはどうでした?」
「早く帰って確かめなさいな。ところでその子は?」
「クーニャを見失った辺りで見つけたんです。どこにいっても誰にも会わなかったから、もしかしたら唯一の手がかりかもしれないので連れてきました。」
「そうねその子はきっかけになるかもね」
「何か捜す方法ありませんか?」
「その子が目覚めるの待ちましょう。もしかしたら私の考えより良い手があるかもしれないわ。そんな気がするもの」
「ただ俺の持ってる薬じゃ何も効かないんですよ。」
「それも大丈夫じゃないかしら?貴方からの魂の力を浴びて回復してるように見えるわ」
「ん~なんかスッキリしないですね。騙されたつもりでそういう事にしときましょう」
そう言いながら俺は子狐をしっかり抱きしめたのである。


村の入り口が見える頃、村からテオが飛び出してきて抱きつかれた。
「あるじ~もう帰ってこないかと思った。クーニャ捜すのはあたいも手伝うから1人で行かないで」
「うん。頼むねテオ」
目を潤ませて上目遣いで訴えられると抱きしめたくなっちゃうが今は手の中に子狐がいる。テオを伴って村に入った。
リンドウの寝てる部屋に向かいながら状態を聞くがまだ起きないが状態は安定していると言うので一安心。
部屋に入るとフェルが「マスター帰ってきた~よかった~」と言って抱きついてきた。リンドウの様子を見ると確かに穏やかに寝てるようだ。

子狐を猫人族の神官に見せ治療をしてもらうと別にどこも怪我はしてないようである。ただ昏睡な魔法がかかっているようでそれの解除を行ってくれた。リンドウも麻痺と昏睡なの状態異常で魔法エネルギーもかなり吸われていたようである。

今は自然回復を待つしか無いようである。
「あるじ~これ」
テオが差し出したのはリンドウを襲った時に折れたと思われる剣の刃先それを受け取りながら「なんで急に呼び方変わったんだ?」「だって~言いやすいから…」そんなやりとりも俺の表情が急変した事によりテオも黙ってしまった。

そうこの剣には見覚えがあった。昔刃を潰して痺れ薬を塗り込んだ盗賊に作らされた剣
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...