エルフの森をキャンプ地とする!

ウサクマ

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俺は一生ピットマスターします!

祭りの終わり・恩人の理想添え

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結局あんこう鍋を4回も作り、エビフライは150尾分も揚げる羽目になったが……ようやく終わったな。

サーマの話によれば以降のあんこうとフグは気温が温かくなるまでなら採れる様だが、今回みたいな大漁にはならないらしい。

なのでフグはともかく、あんこうの解体ならマレスだけでも充分との事だ。

「さて、迎えも来たみたいだし私はそろそろ帰るわ」

お、アメーラが来たのか……風邪は治った様だな、って似てるけどあれは別人だな。

「あの子はアメーラの妹よ」

あ、そういや妹も居るとか言ってたな。

こうして見れば確かに似てるが……って何で俺の腕に間接技を極めていやがる!?

折れるから離せや!

「スミマセン、兄上を真人間にしてくれた事は感謝しているのですが……朝になると同時に聞こえた悲鳴の原因でもあると聞いてつい」

ああ、大量におみまいした唐辛子による地獄か。

確かに近所迷惑については配慮してなかったな……仕方ない、今回だけは甘んじて受けよう。

「……最後に教えておきましょうか、穏健派ではなく中立派が台頭に立った理由をね」

そういやそんな事も言ってたな。

確か人数なら穏健派の方が多かった筈だし、気にはなっていた。

それ以上に正体不明の野菜狂信者が気になり過ぎていたけど。

「私やダニエル達が目指した理想は既に形となっていたから、そしてそれを創ったのがダニエル達の教えを受けた坊やだったからよ」

え、俺が?

……そんな大層な事をした覚えは微塵もないんだが、気のせいじゃないか?

「そして残された私のするべき事はヴィガン族の意識を変えていく事しか残っていないし、それには今のままの立場でいた方が都合がいいのよ」

まあ、上に立ったら無理矢理やらせてるみたいになるからな……本心からの共存を目指すならその方がいいのか。

だが本当にダニエルさんの理想を形にした覚えが全くない。

「それじゃ、また会いましょう……年明けのベーコンは忘れない様にね、ウメオ」

「あ、ああ……解った」

まあ、気になるが今は教えちゃくれんだろうし……その内ダニエルさんのハンバーガーをおみまいしながら聞いておこう。

ってかフィオレさんは今、俺の名前を呼ばなかったか?

「ハハハ、ボーイもようやくフィオレに認められた様だな」

「マジか……でも何でまた急に?」

「本人も言っていたがダニエルの理想を形にした、それが理由だろう」

やっぱりそこなのか……

でもガチで心当たりがないぞ。

「知りたいならマイホームに帰ってから辺りをよーく見渡してみるんだな」

え、そんなんで解るのか?

「さて、俺達は先に帰らせて貰うぜ……そろそろバーの酒を飲みたがってる連中の我慢も限界だろうし、ビアーを冷やさなきゃならんからな」

ああ、本職がバーテンだったもんな……まあ、気を付けてな。

ラビナさんやベルが居るなら滅多な事にはならんと思うけど。




「客商売のノースはんとジョニーはんを優先せざるを得んから後回しになってスマンが先にノンアルコールが10樽、アルコール有が1樽な……残りは出来上がり次第で送ったるわ」

「スマンな兄貴、手間を掛ける」

「構へんよ、払うもんは払って貰うさかいな」

ちゃっかりしてやがる……身内なんだから割引しろよ。

「ああせや、カミはんが頑張ってくれたからラム酒も先に1樽出来たんを渡しとくで」

「え、もうラム酒できたの!」

「ちゅーてもホワイトやけどな、ゴールドやダークが欲しいんなら涼しい所で保管しときや」

その辺りは可愛い妹が作りたいスイーツにもよるが……ベーコンの貯蔵庫にでも置いとくか。

物々交換で飲むならダークにしたいし、追加が届いたらタープかレクタさんに早めて貰おう。

「おーイチゴちゃん、昨日話した入浴剤が出来たから幾つか持って行きや」

「わぁ、ありがとうございますバコアさん」

例のあんこうのヌメリを混ぜた入浴剤か……確かにハーブやレモンの香りがするな。

とはいえ俺に美肌効果は無用の長物だから管理は可愛い妹に一任しよう。

作り方なら聞いたし、物々交換で重曹を手に入れたら自分用を自作してやる。

「次は多分、春先にやるザブトン釣り……まあカレイなんやけど、そん時はまた一杯やろうや」

「おう、楽しみにしとくよ」




「まさかアンカーのみならずチェアの縁談まで結んでくれるとは思わなかったわい、本当にお主には頭が上がらんのう」

「とか言いながらどんだけベーコンエッグ・フライパンパイを作らせるつもりなんだよ」

帰る前に食いたいと言うから作ってやってるが、焼くのはこれで8回目だぞ。

「おじちゃん、ハチミツなくなった!」

「……マリア、ハチミツの追加を頼む」

「解った」

まあ仕方ない、今回は領主とアンカーにグリル、チェアとノースのオッサン、それにロジーとシェラフまで食ってるしな。

材料は全部ロリババアが用意したし、ハチミツの代金も後から請求してやるから焼けと言うなら焼いてやる。

てかロジー、お前は食う前に作り方を覚えろや。

一応マレスにも教えてあるし後から解らないとは言わせんぞ。

「ふむ、悪くはないがハチミツがない方が美味くないか?」

「解っとらんのう、これはベーコンの塩気とハチミツの甘さを合わせるからこそ美味いんじゃよ」

ロリババアの言い分も合ってはいるが、アンカーみたいな辛党ならハチミツがない方が美味く思えるのも正解だぞ。

極論を言うなら個人の好み次第って奴だ。

「所でこの中に入っているポテチの元になっているイモ……確かジャガイモと呼んでいたな、少し商談をしたいのだが?」

「私も店で使わせて頂きたいですな」

「ジャガイモは5個13バランで売っている、幾つ入り用で?」

流石マリア……商売が絡むと動きが素早い。

てか実際に栽培してるオヤッサン抜きで決めていいんだろうか?

「お兄ちゃん、今シェラフさんから聞いたんだけど……ロジーくんがマレスちゃんの元で修行するってどういう事?」

……遂に知られてしまったか、てかバラしやがったなシェラフ。

ま、これに関しては時間の問題だったし構わんけどな。

「直で俺の所に来たとしたら毎日連れ回す可能性があるだろ、それじゃロジーの為にならん……それとマレスが更に腕を磨くには誰かに指導するのが確実だからな」

「う……確かに否定は出来ない」

認めちまうのか可愛い妹よ……そこは嘘でも否定して欲しかったぞ。

だが素直になったのはいい事だ。

「まあ、マレスちゃんの為でもあるなら仕方ないか……」

意外とすんなり受け入れたな……これなら隠さなくても良かったか?

でも正直に言ったからって同じ結果になるとは限らんよな。

「でも、次からそういう事を決めるなら私にも相談してよね?」

「あ、ああ……善処する」




「それじゃマレス、アンキモの腸詰めを売る程作るのは大変だろうが任せたぞ」

「はい、頑張ります!」

元々クラッシュさんが遊び半分で作った物だが本当にビールに合うのもあって、試しに食ったノースのオッサンが店で売りたいと言ったらしい。

それに可愛い妹が作ったのは確かにクラッシュさんの腸詰めを再現できていたがマレスが作ったら更に美味くなっていたしな。

この世界じゃアンキモは人気がないから腐る程余っているし、それを美味しく食えるならあんこうも浮かばれるという物だ。

手助けの意味を兼ねてスタッファーを作って渡したし、誕生日が近いのもあってサンタマリアも作ってやれた……これで肩の荷が降りたぜ。

「マレスお姉ちゃん、また遊ぼうね!」

「うん、キャリちゃんも元気でね」

キャリも別れ際に泣かなくなったな……この前まではギャン泣きだったのに。

「マレスちゃん……くれぐれもロジーくんに手を出さない様にね?」

「あ、安心して……私はパパみたいな人が好みだから」

まさかのファザコンだったかマレス……

道理でサーマが嫁入り前の一人娘をすんなりと修行に出した訳だ。




「あ、そういやもうじきウメオとイチゴが来て一年が経つんやなぁ」

もうそんなになるのか……早いもんだ。

てか今は12月で、転移の時のバーベキューに向かったのは6月頃だった筈なんだが……まあ転移の際に時期がズレてても不思議じゃないか。

ダニエルさんや桃花に兄貴の例もあるし。

「この世界に来てから色んな事があったよね……何だか懐かしくなってきた」

「……なあ苺心、今更だが本当に日本に帰らなくて良かったのか?」

「本当に今更だね……日本に帰ったって私の居場所なんかないしモモちゃんやロジーくんに会えなくなっちゃうでしょ、それにトゥール様の話通りなら来年にはリリーちゃんも来るみたいだからね」

「そうか……」

「私なら後悔も未練もないから安心していいよ、むしろ私はさ……ダニエルさんが亡くなってからずっと我慢し続けてたお兄ちゃんにこそ好きな様に生きて欲しいかな」

俺の好きな様にか……

そうだな、とにかくバーベキューをしまくる生き方でもするか?

って、これだと今までと何も変わらないな。

「お、着いたで!」

おっと、我が家に着いたか。

ま、俺の生き方については追々考えよう。

「おー兄ちゃん、やっと帰って来たなぁ……ほな明日の宴会の料理は任せたで!」

「あ、イチゴさん!またスイーツの作り方を教えて下さい!」

「おおウメオ、スマンがまたベーコンを頼むわ」

「ウメオはん、なんや知らんけどビールっちゅー新しいお酒が手に入ったんやって?ウチも飲みたいわぁ」

ったく、帰って早々にこれかよ。

まあ仕方ない、これもまたピットマスターの役目って奴だからな。

「ねえお兄ちゃん、ダニエルさんの理想ってさ……あらゆる種族が仲良くする空間、だったよね?」

「ああ、確かにそう聞いたが……」

……あ、そうか。

ケンタンは元々色んな種族が闇鍋状態だったが、俺が来てから野菜狂信者の子供達も加わったんだったな……

そしてこの光景こそがダニエルさんの目指した理想だったのか。

「実際お兄ちゃんの技能がなければ子供達は助けられなかったし、お兄ちゃんの料理がなければトゥール様が気軽に来る事もなかっただろうから……これはお兄ちゃんが実現したと言ってもいいんじゃない?」

「そう……かもな」

とはいえケンタンの土地柄のせいかイマイチ実感が湧かないんだが……そういう事にしておこう。
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