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肉と魚と炭火と危険

アングラー祭・現地の集合添え

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無事?に試験も終わって、カトラさんとラリーさんに必要な事を全て教え終わった所で……ようやくペスカタに到着したぜ。

ただ出発前に領主から手紙が来て【今年のアングラー祭は氾濫が予測される為、専用の会場で行う】と教えられたんだが……せめてもう1日ぐらい早く教えてくれや。

氾濫って確か川や湖の水が溢れて洪水を起こす現象の事だった気がするけど、この世界の場合は獲物やモンスターが増え過ぎた際に使われるらしい。

因みに場所は領主やシェラフの居る街とマレスやサーマの居る街の中間辺りだな。

「安定期に入るのがアングラー祭に間に合って良かった」

「せやなぁ、羊やらシーバスやら口惜しい思いやったさかいなぁ」

ちゃんと土産で用意しただろ……そりゃ現地で食った方が美味いのは確かだが。

なお、今回は領主がわざわざ馬車まで用意してくれたんだが……まあ出発直前に教えられたお詫び的な物としてお世話になった。

タープとマリアも安定期に入ってるとはいえ余り無茶はさせたくなかったしな。

何故かグリルとマットさんにロリババアまで一緒に乗っていたし、やけに体格がいいマッチョな執事まで居たけど。

レクタさんとオヤッサン、ジョニーさんとラビナさんにベル、それにカーゴや見知った腕利きの皆さんは警護の為かカトラさんとラリーさんの瞬間移動で先に向かっていた。

ジョニーさんの場合は料理を担当させる為だろうけど……見たら今は兄貴と酒を飲んでたわ。

「でも、何で今回は馬車まで用意してくれたのかな?」

「さあなぁ……また面倒事でも頼まれるのか?」

「いえいえ、今回はヴィガン族に狙われそうな人物を中心に警護せよと元国王様より命じられまして……特にウメオ様とキャリ様、フィオレ様は厳重にと」

あ、そういう事か。

確かにトゥール様の無茶振りで野菜狂信者に大量の肉や魚を食わせている俺と幻獣を手懐けられるキャリ、過激派と敵対しているフィオレさんは真っ先に狙われるだろう。

てかフィオレさんもあんこうを食いに来てるんだな……となるとアメーラも居るかもしれん。

「さて、ではウメオよ……ワシ等は領主や娘に挨拶しに行くからの、スピナの子守りは任せたぞ」

「また夕飯時にな」

「アタシも前街長に挨拶しに行くっす!」

おのれロリババア……マットさんと二人きりになりたいが為に娘を押し付けやがったな。

スピナはキャリと仲がいいから別に構わんけど。

となれば……ジョニーさんや兄貴より先にマレスを探すか。

ってマレスも今は忙しいだろうし、後にしよう。

「あら、奇遇ね坊や」

「フィオレさんか……本当に来てたんだな」

「アングラーはクラッシュの得意な食材だもの、毎年来てるわよ」

そういやそうだった……

日本でも冬は2週間に一度はクラッシュさんのあんこう鍋をつついてたっけ。

何故か普通に味噌味の鍋だったけど、今思えば異様な光景ではあった。

「……って、フィオレさんが居るのにアメーラが見当たらないな」

「アメーラは先日風邪を引いてしまったから、今回は留守番よ」

あいつ風邪を引いたのか、運の悪い奴め。

まあ季節の変わり目に体調を崩し易い奴ってのは少なからず居るから仕方ない。




「そうそう、坊やには感謝しなきゃいけないわね……過激派の幹部を含めた半数以上が投獄されたお陰で今は中立派が台頭に立っているわ」

「マジか、確かに大多数が俺を殺しに来たけど……そんなに早く影響があったのか?」

「それだけ過激派が疎まれていたという事よ」

まあ過激派はあの性格で人の話を聞かないからなぁ……敵が多いのは間違いないだろう。

でもフィオレさんは穏健派なのに中立派が指揮を取るのはいいのか?

そりゃ過激派よりはマシなんだろうけど。

「それと一応坊やにも教えておくけど、過激派の代表は老衰で亡くなっていたわ……調べた限り、死後2ヶ月は経っていた様ね」

「過激派の代表って確か幻獣を生け捕りにしようとしていた奴か……ってそれこそマジかよ!」

なら何で大量の白を集めていたんだ?

例の噂とやらも含めて謎が多過ぎやしないか?

……何か子供に聞かせていい話じゃなさそうな予感がするし、可愛い妹にキャリ達を避難させて貰うか。

「現場の証拠や本人の残した日記、加えて私の推測も混ざるけど……続きを聞く気はあるかしら?」

「中途半端は気分が悪いから頼む」

まあ、聞いた所で何かできる訳でもないけどな。

「まず幻獣を探していた理由は白を確保する為、これは知っているわね?」

「ああ……」

「じゃあ、白の効果が何かは?」

確か黒が保存で白は回復……だったか?

滅多に見ない貴重品らしいからよく解らんが。

「多分だけど例の伝承と一緒よ、回復の効果を持つ白を取り込む事で寿命を延ばそうとしていた様ね……当然そんな効果はなかったんだけど」

ああ、野菜狂信者特有の思い込み……それを疑いもせずに信じて暴走しやがったのか。

「間違いを進言する者も居なかった訳じゃなさそうだけど、そういう人達は残らず歯を砕いてクマの生息する集落へ棄てたと日記に書いてあったわ」

成程な、ミディの居た集落の連中に歯がなかったのはそれが原因か。

それならそうと教えて欲しかったが歯を砕かれた原因を思い出したくはなかったろうからなぁ……仕方ない。

そしてアメーラが聞いた噂とやらの正体はその進言した者達、って事だな。

「因みに実行犯は3人の幹部で……ルビンズ、クルド、ルティカという名前らしいわよ」

「はて、何処かで聞いた事がある様な名前があったな?」

「クルドってあのアメーラさんの姉とかいうオバサンの名前じゃなかった?」

ああ、クサヤの事か……そういやそんな名前だった。

って可愛い妹よ、キャリ達は……あ、レクタさんと一緒に居るなら大丈夫だな。

「ルビンズって確か……トングっちとヘラっちの両親を殺した罪で投獄された奴の名前じゃなかったっすか?」

ああ、ダチョウの時の……あいつそんな名前だったのか。

てかグリル、いつの間に来た?

「坊や、少しは人の名前を覚える努力をしなさいな……それだけでも説明の手間が増えてしまうのよ」

それは申し訳なく思うが野菜狂信者の名前を覚えるつもりは微塵もないから諦めてくれ。

「ウメオっち、実は意外とアホの子だったっすか?」

否定はしきれないがグリルにだけは言われたくねぇ!?



「まあでも判明しているのは今言ったのが全てよ……何でそんな事をしたかまでは解らなかったけど、肝心の代表が死んでいる以上そんな事を続ける理由はない筈だわ」

つまりキャリ達が襲われる心配は減ったと見て間違いないんだな。

「ただ、ルティカという幹部には注意なさい……私やアメーラにも何者なのか、性別すら解らない不気味な存在だから」

言うだけ言ってジョニーさんの方へ行っちまった……しかし元過激派のアメーラにも解らない幹部か。

ゲームだとそういう奴は知略を尽くすタイプで戦えないってのが定番だが……ラスボスってパターンもなくはないな。

「あ、そうだった……マレスっちがそろそろ夕飯の用意が出来るって言ってたっすよ!」

ああ、それでグリルが俺達を呼びに来たのか。

解らん事を考えても仕方ないし……今はあんこうを食おう。
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