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肉と魚と炭火と危険
ウメオのガンボ・ガンボのレシピ添え
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大勢の野菜狂信者を護送しながら元国王や領主達が大量のスモークチキンも持って、ついでに私兵の皆さんには昼飯にでもとBLTサンドを配り帰って行った……
別れ際に見えた女王のとてつもなく悲しげな顔は当分夢にまで出て来そうだな……特に悪い事はしてない筈なのに罪悪感が半端ねぇ。
確かにあの顔を見たら悪事なんか働けんわ。
「さてと……ラリーさんがスモークチキンやベーコン、カトラさんがスイーツでいいのか?」
「お願い致します、それと呼び捨てで構いませんよ」
とはいえ既に昼過ぎ……可愛い妹は早速教え始めているが、燻製作りを今から始めたら徹夜する羽目になってしまう。
という訳でこっちは明日の朝から始める事にして夕飯の準備をする。
「……二人は何か嫌いな物はあるか?」
「カトラは苦い物、私は辛い物でなければ大体は平気です」
苦い物と辛い物ね……ならそれは避けよう。
今は子供が大勢居るのもあってどの道作れんけど。
だがあんこう祭りまで後6日、移動する時間を考えると3日後にはジョニーさんを唸らせるガンボを作らねばならんから急がないとならん。
因みに子供達はクティと一緒に後2日で帰る事になっている。
「お兄ちゃん、材料なら揃えておいたから試験まで夕飯はガンボでいいよ……一応マカロニは私が作っておくから」
「まあ、試作しておいた方がいいのは確かだな……解った」
「おじさん、ガンボって何だ?」
「とても美味い煮込み料理の名前だ」
そういえば俺が初めてガンボを作ったのはガドラと同じ9歳の時だったな……
オクラを入れ忘れたが為に拳骨を喰らったのは未だに納得していないが今では良い?思い出だ。
ふむ、勇一の教育方針に反する可能性が高いけどここは一つやってやるか。
もし何か言われたらレシピをくれてやっただけ、で押し通すしかないが文句を言われる筋合いもないからな。
確かあいつの居る世界はカタカナしかないって言ってたから俺でも書ける……よし、書けた。
「ガドラ、お前にこのガンボのレシピをやろう……お前の親父から料理の基本を習ったら作ってみろ」
「え、いいの?」
「ただしオクラがない時に作るのは止めておけよ、次元を越えて拳骨を喰らわせる……イドラよりも怖い存在が居るからな」
「わ、解った!」
ぶっちゃけ俺はイドラの方が怖いけどな……
言わないけど。
「よし、始めるか」
ガンボの作り方は至ってシンプルで、オリーブ油とバターで炒めた小麦粉で野菜に火を通してから他の具材と煮込むか、バターで炒めた野菜を煮込むかだが……
俺の作るガンボはジョニーさん風にする必要があるから後者で行く。
メインとなる鶏肉はモモ肉と手羽先、こいつを予め塩コショウしてアンドゥイユと一緒に焼いておこう。
その間にたっぷりとバターを溶かして、大量のタマネギとピーマンを炒めて……
「ちょっと、その料理はタマネギが多過ぎません?」
「これはそういう料理だからな、諦めてくれ」
セロリがあれば半分ぐらいになったんだが……まあ仕方ない。
ある程度火を通したら塩コショウにジンジャーパウダー、みじん切りにしたニンニク……ラズベリーのワインと鶏ガラを煮て作ったチキンストックに皮を剥いて潰したトマトを加えて、と。
沸騰したら焼いたチキンをそのまま入れて暫く待とう。
「パパ、皆でオクラ貰って来たよ!」
「おお、ありがとう」
オクラは頭を取ってそのままでもいいんだが、今回は塩揉みしてから水洗いして入れよう。
こうすると青臭さが抜けて更に美味くなるからな……好きな人に言わせるとその青臭さもオクラの醍醐味らしくそれを否定はしないが、俺には理解できん。
よし、水洗いまで済ませたら一旦置いといて……焼けたアンドゥイユは熱い内に一口大にカットする。
アンドゥイユと水煮にしたひよこ豆を突っ込んでパプリカパウダーで色を着けて、隠し味に小さじ一杯の醤油を加えよう。
水気の切れたオクラの頭を取って入れて……後は夕飯まで待てばいい。
「試験とやらに出す割にかなり大雑把な料理ですわね?」
「ガンボはいわゆるごった煮という奴だからな、特にこれと言った決まりはないんだ」
その代わり作る人によって物凄い拘りがあるけどな。
ジョニーさんの場合はオクラのトロミとアンドゥイユの香りが絶対必要で、それがないと殴られてしまう。
おっと、今の内に固ゆで卵も用意しておかねば。
「んー……ウメオのガンボも美味いんやけど、ジョニーはんのガンボより薄いっちゅーか、何かが足らへん気がすんで?」
「確かに、味の組み立てはほぼ同じ……でも何かが違う」
やはりそうか……日本に居た頃から何度も試作してはいたんだが、ジョニーさんのガンボに比べると何かが違う。
材料の違いという線はないだろう、肉はマリアが用意した物で野菜はオヤッサンが栽培した物だから品質の差はない筈だ。
調味料だって俺が技能で作った香辛料にこの世界で売っている物、トゥール様に買い出しを頼んだ物だし。
「んー……パパ、このガンボはオクラの匂いが薄いよ?」
オクラの匂い……あ、まさかそれが原因か?
試しに頭だけ取った生のオクラを入れて一煮立ち……よし。
「……マジかいな、ジョニーはんのガンボと遜色ないで?」
タープがそう言うならば間違いないな……お手柄だぞキャリ。
「まさかあの青臭さが味を引き立てる要素だとは思わなかったな……」
これまでの試作は全て塩揉みしてたが無駄な手間だったとは……言われてみればジョニーさんも癖が旨味に変わる料理もあるとか言ってたか。
それに考えてみればガンボはアメリカ料理……アメリカは大半の人がミネラルウォーターを買って使うからよっぽどの金持ちでもない限り使える水に限りがあるんだよな。
ジョニーさんは宵越しの銭を持たない性格だし、日本やこの世界でもその習慣が抜けてなかったんだろう。
だが、これでようやくスタートラインに立てた。
ジョニーさんを唸らせるには後1つ、俺ならではの何かが必要だ……
それも後2日で、しかもラリーさんにスモークチキンを教えながら見つけねば……厳しいなぁ。
別れ際に見えた女王のとてつもなく悲しげな顔は当分夢にまで出て来そうだな……特に悪い事はしてない筈なのに罪悪感が半端ねぇ。
確かにあの顔を見たら悪事なんか働けんわ。
「さてと……ラリーさんがスモークチキンやベーコン、カトラさんがスイーツでいいのか?」
「お願い致します、それと呼び捨てで構いませんよ」
とはいえ既に昼過ぎ……可愛い妹は早速教え始めているが、燻製作りを今から始めたら徹夜する羽目になってしまう。
という訳でこっちは明日の朝から始める事にして夕飯の準備をする。
「……二人は何か嫌いな物はあるか?」
「カトラは苦い物、私は辛い物でなければ大体は平気です」
苦い物と辛い物ね……ならそれは避けよう。
今は子供が大勢居るのもあってどの道作れんけど。
だがあんこう祭りまで後6日、移動する時間を考えると3日後にはジョニーさんを唸らせるガンボを作らねばならんから急がないとならん。
因みに子供達はクティと一緒に後2日で帰る事になっている。
「お兄ちゃん、材料なら揃えておいたから試験まで夕飯はガンボでいいよ……一応マカロニは私が作っておくから」
「まあ、試作しておいた方がいいのは確かだな……解った」
「おじさん、ガンボって何だ?」
「とても美味い煮込み料理の名前だ」
そういえば俺が初めてガンボを作ったのはガドラと同じ9歳の時だったな……
オクラを入れ忘れたが為に拳骨を喰らったのは未だに納得していないが今では良い?思い出だ。
ふむ、勇一の教育方針に反する可能性が高いけどここは一つやってやるか。
もし何か言われたらレシピをくれてやっただけ、で押し通すしかないが文句を言われる筋合いもないからな。
確かあいつの居る世界はカタカナしかないって言ってたから俺でも書ける……よし、書けた。
「ガドラ、お前にこのガンボのレシピをやろう……お前の親父から料理の基本を習ったら作ってみろ」
「え、いいの?」
「ただしオクラがない時に作るのは止めておけよ、次元を越えて拳骨を喰らわせる……イドラよりも怖い存在が居るからな」
「わ、解った!」
ぶっちゃけ俺はイドラの方が怖いけどな……
言わないけど。
「よし、始めるか」
ガンボの作り方は至ってシンプルで、オリーブ油とバターで炒めた小麦粉で野菜に火を通してから他の具材と煮込むか、バターで炒めた野菜を煮込むかだが……
俺の作るガンボはジョニーさん風にする必要があるから後者で行く。
メインとなる鶏肉はモモ肉と手羽先、こいつを予め塩コショウしてアンドゥイユと一緒に焼いておこう。
その間にたっぷりとバターを溶かして、大量のタマネギとピーマンを炒めて……
「ちょっと、その料理はタマネギが多過ぎません?」
「これはそういう料理だからな、諦めてくれ」
セロリがあれば半分ぐらいになったんだが……まあ仕方ない。
ある程度火を通したら塩コショウにジンジャーパウダー、みじん切りにしたニンニク……ラズベリーのワインと鶏ガラを煮て作ったチキンストックに皮を剥いて潰したトマトを加えて、と。
沸騰したら焼いたチキンをそのまま入れて暫く待とう。
「パパ、皆でオクラ貰って来たよ!」
「おお、ありがとう」
オクラは頭を取ってそのままでもいいんだが、今回は塩揉みしてから水洗いして入れよう。
こうすると青臭さが抜けて更に美味くなるからな……好きな人に言わせるとその青臭さもオクラの醍醐味らしくそれを否定はしないが、俺には理解できん。
よし、水洗いまで済ませたら一旦置いといて……焼けたアンドゥイユは熱い内に一口大にカットする。
アンドゥイユと水煮にしたひよこ豆を突っ込んでパプリカパウダーで色を着けて、隠し味に小さじ一杯の醤油を加えよう。
水気の切れたオクラの頭を取って入れて……後は夕飯まで待てばいい。
「試験とやらに出す割にかなり大雑把な料理ですわね?」
「ガンボはいわゆるごった煮という奴だからな、特にこれと言った決まりはないんだ」
その代わり作る人によって物凄い拘りがあるけどな。
ジョニーさんの場合はオクラのトロミとアンドゥイユの香りが絶対必要で、それがないと殴られてしまう。
おっと、今の内に固ゆで卵も用意しておかねば。
「んー……ウメオのガンボも美味いんやけど、ジョニーはんのガンボより薄いっちゅーか、何かが足らへん気がすんで?」
「確かに、味の組み立てはほぼ同じ……でも何かが違う」
やはりそうか……日本に居た頃から何度も試作してはいたんだが、ジョニーさんのガンボに比べると何かが違う。
材料の違いという線はないだろう、肉はマリアが用意した物で野菜はオヤッサンが栽培した物だから品質の差はない筈だ。
調味料だって俺が技能で作った香辛料にこの世界で売っている物、トゥール様に買い出しを頼んだ物だし。
「んー……パパ、このガンボはオクラの匂いが薄いよ?」
オクラの匂い……あ、まさかそれが原因か?
試しに頭だけ取った生のオクラを入れて一煮立ち……よし。
「……マジかいな、ジョニーはんのガンボと遜色ないで?」
タープがそう言うならば間違いないな……お手柄だぞキャリ。
「まさかあの青臭さが味を引き立てる要素だとは思わなかったな……」
これまでの試作は全て塩揉みしてたが無駄な手間だったとは……言われてみればジョニーさんも癖が旨味に変わる料理もあるとか言ってたか。
それに考えてみればガンボはアメリカ料理……アメリカは大半の人がミネラルウォーターを買って使うからよっぽどの金持ちでもない限り使える水に限りがあるんだよな。
ジョニーさんは宵越しの銭を持たない性格だし、日本やこの世界でもその習慣が抜けてなかったんだろう。
だが、これでようやくスタートラインに立てた。
ジョニーさんを唸らせるには後1つ、俺ならではの何かが必要だ……
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