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エルフで菜食主義だったら駄目なのかよ

意外な有機肥料・マリアの安定期添え

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アメーラの姉とかいうクアバとやらに命を狙われたがトーフのお陰で助かった……まあ予想通り、翌朝には姿がなかったけどな。

可愛い妹が亀甲縛りにして窓のない地下室に幽閉したってのに、どうやって逃げたのやら。

それはいいんだがこの大量のナイフはどうした物か。

俺に向けて投げた分に加えてクティが押収したのも含めて凄い量になっているんだが……

本当に、どこに隠していやがったんだ?

「マリア、これ売れたりするか?」

「それは無理、刃の素材は動物……イノやクマ辺りの骨みたいだし、取手も安価な銅……むしろお金を払わなきゃ引き取ってすら貰えない」

そんな物を人に投げやがったのかあのアマ……てか野菜狂信者なら動物に優しくしやがれ。

それと、どうせならもう少し金になる金属を投げろや。

「銅だけならキロ10バランで売れなくもない、けど骨が邪魔」

「そんならウメオの技能で何とかなるんちゃうか?」

ふむ、とりあえず試してみるか。

取手の部分だけを……持ちやすい延べ棒みたいにするイメージで、と。

「……自分で言っといて何やけどホンマに便利やな、その技能」

「我ながらそう思うよ、これならどうだ?」

「大体8キロ……これなら売れる、後は骨を処分するだけ」

確かキロ10バランとか言ってたから……トーフがあんなに苦労して得たのが僅か80バランか。

今まではほぼ無償だったから得られる物があるだけマシだけど。

しかしこの尖った骨はどうした物かね?

「放置しとったら子供達が踏む可能性があるし危ないさかい、砕いて埋めるしかあらへんやろな」

「ほなその骨はワイにくれへんか?」

おお、オヤッサンか……

「それは構わないけど、骨なんて何に使うんだ?」

「ワイが若い頃に迷い人から聞いた事なんやけどな、動物や魚の骨とか貝殻を乾燥させて砕くと土の栄養になるらしいで……そうすると野菜がよう育つっちゅー話や」

成程、いわゆる有機肥料って奴だな。

ナイフにされて大分経ってるみたいだし、これなら砕けばすぐにでも肥料になるだろ。

「ついでにベーコンと、余分に作ったスモークチキンも持って行ってくれ」

「おおきに!」

次からもグロムがナイフを投げてきたら銅を換金しつつ骨はオヤッサンに引き取って貰おう。

もし他の武器を使うならもう少し金になる物にしやがれよ。




「ではペスカタまでの手紙1通で3バラン頂きます」

「宜しく」

これでよし、と。

後は到着次第、領主が俺を呼び出すなりスモークチキンを取りに来るなりするだろ。

まあ手紙はタープに書いて貰ったんだけどな。

「お兄ちゃん、いきなりアメーラさんが来てお兄ちゃんに話があるって言ってるんだけど」

アメーラが……十中八九あのグルンとかいう姉の件だろうな。

とりあえず聞くしかなさそうだ。

「今朝になって聞いたが姉上に命を狙われたそうだな?」

「返り討ちにしてお前と同様に肉をおみまいしたが……俺は謝らないぞ」

「構わん、姉上の事だ……どうせ貴様の話も聞かずに問答無用だったのだろう?昔から思い込みが激しく、例え両親や代表から事実を聞いても一切信じない自己至上主義者だからな」

野菜狂信者な上に自己至上主義者とか救い様がねぇ……

話が出来る様になるまでどんだけ肉や魚を食わせる必要があるのやら。

「悪い事は言わん、姉上と話をしようとは思うな……あれは同じ言語で喋っているだけで会話が通じる相手ではない」

「弟のお前が言うと説得力があるな……なら会話はせずに肉か魚をおみまいしてやろう」

「やはり肉か魚は食わせるのか?」

「ピットマスターだからな」

俺と相対して何も食わないなんてありえん、というのはお前がよく解っているだろ。

野菜狂信者の中で最も多くおみまいしたのは他ならぬお前だぞ。

「これはあくまでも私の一人言だが……姉上が肉や魚を嫌うのは解るだろうが実は野菜の中でもキノコだけは苦手でな、あくまでも一人言だが」

成程、キノコか。

ペスカタで襲われたら大量の魚と一緒にエリンギもおみまいしてやる。

「それと、フィオレ様からの伝言があってな……【年明けにベーコンが欲しいからウシとブタのベーコンを2塊ずつ用意して欲しい、それとジョニーと一緒に予定は空けておけ】との事だ」

「年明けだな、用意しておくよ」

当日俺とジョニーさんに何をさせるつもりかは知らんがまあベーコンは個人で食う為だろうし、2塊ずつならすぐ作れる。

むしろフィオレさんの食欲的に足りるのか?

追加するのは構わんけど早めに言ってくれよ?

「最後にあの、ワガラシとかいう調味料を分けてはくれないか?あの時はああ言ったが……あの刺激が段々癖になってきてな、無性に食べたいのだ」

唐辛子の辛味は苦手らしいが芥子にはハマったのか……

まあ和芥子ならすぐ用意出来るから待ってろ。

「……念のために確認したいんだが、あの話を聞かない姉以外に俺の命を狙う兄弟とか居ないよな?」

「安心しろ、妹なら居るが穏健派だし職業も従者……戦闘には向かんし姉上とは犬猿の仲、むしろフィオレ様の話を聞いて貴様に興味を持っているぐらいだ」

つまり頭がおかしいのはあの姉だけなんだな……良かった。

てかお前は妹も居たんだな。

「先に言っておくが姉上になら何をしようと一向に構わん、だが妹に無理矢理肉を食わせよう物なら貴様を八つ裂きにするぞ」

「お前もシスコンかよ……まあ、家族や俺の命を狙わんなら無理に食わせたりしないから安心しろ」



和芥子を受け取ったアメーラが足早に帰ったが、何に付けて食うつもりなんだかな?

まあ何であろうが個人の楽しみ方に口出しはするまい。

「おおウメオ、タープはまだやがマリアは安定期に入ったさかい……来週にでもマリアを連れて実家に顔を出したれや」

マリアが一足先に安定期か……一応手紙で報告はしたがやはり顔は出した方がいいよな。

それにチーズはまだ食わせられんが米や酒粕、紫芋も補充したいし。

来週ならスモークチキンを領主に渡した後だろうから問題はない筈だ。

「となるとタープは留守番になるから……苺心とキャリにクティはどうする?」

「わたくしは留守番しますがイチゴさんは同行した方が宜しいですわよ」

「なら行こうかな」

「じゃあトーフ、サシミと一緒にタープママとじいじを守ってね!」

「承知した」

つまりクティとトーフが留守番で、可愛い妹とキャリが一緒に行くのか……

「主の父上よ、心配はいらん……気配の察知ならベーコンの方が優れているし戦闘も主のお……姉上が居れば問題なかろう」

危ない所だったなトーフ……可愛い妹が一瞬で大量の塩を用意しかけていたぞ。

道中は可愛い妹に負担を掛けてしまうが、近い内に好きな物でも作ってやろう。

行くのはカーニズだし、到着さえすればマットさんも居るから大丈夫だろうけど。

留守番するタープもレクタさんやクティが居るしトーフのバリアが凄いのは身を持って知ったからな、安心して行けそうだ。
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