エルフの森をキャンプ地とする!

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(野菜狂信者は)何とか肉食できんのか?

弟子への課題・ベーコンエクスプロージョン添え

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さて、と……シーバスが来るまで後13日でベーコンを作り貯めておかねばならんのだが、平行してマレスに試験を出さねばならん。

確か俺があのピットメンバーから試験を出された時は……

牧場長がダチョウの捕獲と解体、クラッシュさんはあんこうの吊るし切り、ティーチャーは仔牛を丸焼きで、スコッチさんがバーベキューのサイドメニュー20品を同時に作れ、だったな。

スコッチさんだけやけに難易度が高かったのは前日に医者から禁酒を命じられたから、らしい。

ジョニーさんは……あの時のワニがそれに当たるだろ、多分。

そしてダチョウはこの前やったばかり、サイドを教えるのは可愛い妹に一任したから俺が触れる必要はなし、仔牛はサーマならまだしもマレスの筋力ではキツいだろうし……

あんこうは居るかどうかも解らんしワニに至っては俺でも一杯一杯だからな。

となればやはりダニエルさんの試験を使わせて貰おう。

「マレス、今日の夕飯は自分で作ったベーコンを使ってあのコンロで最も美味く食えると思う料理を1品だけ作ってみろ……ベーコン以外の食材は肉が必要ならマリアに、野菜が必要ならオヤッサンに言ってくれ」

「わ、解りました!」

以前食った時は余分に使われた塩が原因で固くなっていたが、今回はどうかな?

まあ合格点が出せなくても最終日にまた同じ試験を出してやるつもりではいるし、別に不合格だからって邪険にするつもりもないけどな。

だが合格した時に備えて作った、魔鉄製の燻製用ドラム缶はちゃんと渡せるだろうか?

「師匠、このミンサーをお借りしてもいいですか?」

「おう、好きに使っていいぞ」

よし、今日のノルマは終わってるから……って危ない、マリアが妊娠中なのに俺が酒を飲む訳にはいかん。

あいつに会う時やトゥール様やアンカー、ジョニーさん辺りから付き合わされるなら飲むがなるべく禁酒せねばマリアが我慢できなくなっちまう。

「ホゥ、生意気にもボーイがマスター面をするとはなぁ……俺も歳を取る訳だぜ」

「本当に唐突に来やがるなジョニーさん!」




「ったく、ボーイが【バーボンが必要になったから分けてくれ】って言うから態々届けに来てやったんじゃないか」

「あー、まあそれは助かるし有難いけど背後から声を掛けるのは止めてくれ」

次の物々交換がいつになるかは解らんが備えておいた方が安心だからな。

酒や酢、醤油に味噌なんかはすぐに腐る物でもないし。

これはレクタさんに頼んで教会の貯蔵庫に保管しておいて貰おう。

目の前にあったら無意識に飲みかねん。

「しかしボーイがマレスにあの課題を出すか……腕前は中々に期待している様だな」

「期待はしてるが、妙に含みのある言い方だな?」

「考えてもみろよボーイ、バーベキューでベーコンを使う料理が幾つあると思っているんだ?」

そういや数えた事はなかったな。

薄切りに限定しても俺がパッと思い付くだけで100はあるし、厚切りや拍子木切り、賽の目切り等々……

ただ焼くだけで何種類もあるし、スープに使うか挽肉に混ぜるか……更にメインかサイドか、いかん頭がパンクしそうだ。

「まあ落ち着け、実を言うと俺でも幾つあるかは知らん」

「知らねぇのかよ!?」

「それだけ選択肢が多い、だがその中から1品だけを選ばなくてはならない、他の何よりも難しい課題って事だ……ま、それでも禁酒中のスコッチよりは優しいがな」

そうと知らずに気軽な気持ちで課題を出してしまったのを後悔するぞ。

でも俺がダニエルさんにこの課題を出されたのは13歳の時だったからなぁ……軽く考えてしまうのも仕方ないだろ。

うん、結果は関係なく渡してやる事にしよう。

そしてジョニーさんから見てもあの時のスコッチさんは厳しかったんだな……なら止めてくれても良かったろうに。

せめて半分のノルマなら何とかなったんだかなぁ。

「ボーイ、その反応からして深く考えずに課題を出しやがったな……結果はマレス次第だがその事は口に出すんじゃないぞ?」

「わ、解った……」




よし、夕飯の時間だ。

いつになく真剣なマレスを見たからか可愛い妹とキャリが物凄く心配していたが、2人には事前に言っておけば良かったな。

どれぐらい真剣かと言うと、つまみ食い常習犯のタープとベーコンですら調理台に近付けなかったぐらいだ。

俺がやった時は本当に気楽な物だったんだがなぁ……

「確かあの時のボーイはベーコンステーキにベーコンソースを掛けるとかいう頭の悪い事をやっていやがったな」

「ちょっと待て、それをやったのは苺心がまだ産まれてすらない小学生の頃だ……」

「おっと、そうだったな」

頭の悪い事というのは否定しないがな。

因みにベーコンソースとは刻んだベーコンを炒めて出した脂にすりおろしたニンニクと醤油に好みで酒を加えた物で、これはズッキーニやタマネギに良く合うんだ。

「お、お待たせしました!」

出来たか……さて、何を作ったのかな。

「ホゥ、網目に編んだベーコンを長方形にして焼いてある……俺が結婚式で焼いたベーコン・エクスプロージョンか」

何……だと!

ベーコン・エクスプロージョンを焼いておきながら俺に留守番させやがったのか!

「まあ、今なら言っても構わんか……ボーイを留守番させた最大の理由はベーコン・エクスプロージョンを焼くからで、見られたら確実に食っちまうからだ」

「くそぅ……全く否定が出来ん!」

「ホント、お兄ちゃんって正直だよね」

「そこがウメオのいい所」

「せやな」

何故か可愛い妹から冷ややかな視線が飛んでいるがベーコン・エクスプロージョンはそれだけ美味いんだから仕方ない。

しかしここには今ソーセージはなかった筈だが……

「そ、それでは切ります!」

これは……ちゃんとソーセージが入っている上に厚切りベーコンも入ってる。

ソーセージを挽肉で包んで厚切りベーコン2枚で挟んでから薄切りベーコンで巻き固定して、挽肉を乗せた網目のベーコンで巻いて焼いたのか。

そういやダチョウをやった時にソーセージの作り方だけは教えてあったな。

人数分に切った所で小鍋……オレンジソースか。

基本的にベーコン・エクスプロージョンは味付けして焼くからそのまま食う事が多いが好みでグレービーソースやデミグラスソース、チリソースなんかを使ってもいい。

だが素の状態でも1皿5000キロカロリーもある料理だからソースを使う時は注意が必要だ。

「ど、どうぞ……」

マレスのベーコン料理……課題を出しておいて言うのはアレだがこれを食うのに緊張してしまう。

多分だが端から見たら俺とマレスはガチガチに固まってるんだろうな。

だが普段は太りたくないからってこういう料理を避ける可愛い妹も文句を言わずに食っている以上、俺が弟子の料理から逃げる訳にはいかん。

「これ……ソーセージの中にもベーコンが入っとらん?」

「あ、はい……ブタの赤身とベーコンの脂身を挽いて作ったんです」

やるじゃないかマレス、余ったベーコンはミンチにして挽肉に混ぜたな……全てを無駄なく使っているのは評価できる。

オレンジソースも酸味を効かせているからか後口がサッパリして幾らでも食えちまうな。

そして肝心のベーコン……以前の問題はちゃんと改善されてるし味もいい。

キャリもベーコンやエビフライと一緒にガツガツ食っている。

「ハハハ、あの時ボーイが課題で作ったベーコン100パーセントのハンバーグも中々だったがマレスの方が一枚上手だな」

「だな……合格だよ」

「や……やった!」

本当に飲み込みの早い弟子だなぁ。

こうなるとロジーを鍛える時のノルマが更に上がっちまいそうだが……まあ可愛い妹を嫁にしたいと言うならそれぐらいはこなして貰わんとな。

まだ先の話だがロジーを連れて海に行く場合はマレスにも指導を手伝って貰うか。

「とはいえ改善点がない訳じゃあないぜ……ソーセージに詰めた赤身と脂身のバランス、挽肉の味付け、ソースの酸味、より美味くする余地は山ほどある」

「相変わらず相手が女の子でもバーベキューだと容赦がないな……」

「スマンな、ワイフと娘は全く料理が出来んからつい力が入っちまうのさ」

まあ、マレスも逐一メモってるし大丈夫か。

それにジョニーさんがこう言う時は決まって相手に素質がある場合に限る……もしかしたら近い内に肉でも俺を追い越しちまいそうだな。

「マスターの最大の喜びは教え子が自分を越えた瞬間だ、だが教え子に抜かされない様に努力するのもマスターの務めって奴だぜボーイ」

「マジか……頑張らないとなぁ」

少なくともマレスが成人するまで負けを認めてやるつもりはないからな。

確かエルフの成人は180だったがハーフエルフは普通の人間と同じ18らしいから……後4年か。

頑張れ、俺。
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