上 下
67 / 140
(野菜狂信者に肉を)おみまいするぞー

ちょっとした疑惑・スペアリブ添え

しおりを挟む
野菜狂信者にバッファローウィングを食わせてから解放して……もう夕方か。

数えたらノルマの10人を達成していたから戻り次第、物々交換の準備を始めなくてはならんから羊は後回しにしないとならないな。

どの道マスタードやローズマリーがないから食わせる事が出来んけど。

それに今はアンカーからの依頼もあるし、気になる事も出てきた。

「ヴィガンの連中の内通者だと?」

「ああ、あの2人の内のどっちか、または両方かまでは解らんが……その可能性がある」

無論、根拠ならある。

カーニズで生活しているにも関わらず肉の解体をしたがらない、血の臭いで吐きそうになるってか吐いた、野菜狂信者に肉を食わせている最中は目を反らす等……

解体と血の臭いはまだ解るが、肉を食わせた時はギャラリーの中に同じぐらいの歳の女の子が数人居てジーっと見ていたからな。

解放した後にマレスが作り過ぎた素揚げの手羽先をギャラリーに振る舞ったが、あの2人以外は美味しく頂いていた。

加えて人手が手薄になったアンカーがタイミングよく襲撃されたという事実、疑う理由としては充分だろう。

「……考えたくはないが辻褄は合っているか」

「勿論これは俺の想像にすぎないが、例え内通者でなくてもあの2人は止めておけ、俺に言えるのはそれだけだ」

「解った、貴様の意見を尊重させて貰う……しかしそうなると後任が」

マレスには面と向かって断られていたからな……

とはいえ住んでもない街の人事に関しては口出しが出来ん。

「そういや候補は後1人居るとか言ってなかったか?」

「確かに居る、だが奴は戦闘面は文句ないが非常に頭が悪くてな……もう50歳になるのに未だに字が読めんのだ」

それこそ俺には口出しが出来んのだがそれは……この世界に限って言えば字が読めないのはお互い様だ。

だが他に候補が居ないんなら仕方ない。

「なら残りの期間、ってか今からそいつを俺に同行させてみろ……少なくともあの2人よりはマシだろ」

「解った、頼む」




「とゆー訳でお世話になりまっす!アタシはグリルっす!」

グリルね……覚えやすい名前だな。

50歳とか聞いたがマレスと可愛い妹の中間という見た目をしている。

無論、身長の話だぞ。

「タープ、確か子供達に勉強を教えてたよな……こいつは字を読めないらしいんだ」

「マジかいな……まあウチのやり方でええんならキャリと一緒に教えたるわ」

「それと苺心、こいつは戦闘に自信があるらしくてな……ちょっと腕前を見てやってくれ」

「はーい」

さて、マレスには明日のダチョウ以外のサイドに使う食材の仕入れを頼んでいるし……

あの2人は適当な理由を付けて帰したしダチョウ肉の血抜きは明日まで掛かる……夕飯の準備でもするか。

「そういやグリル、何か食いたい物はあるか?」

「お、夕飯を奢ってくれるっすか!アタシはウシのあばら骨の回りに付いてるお肉が好きっす!」

あばら骨……いわゆるスペアリブだな。

アメリカではバーベキューといえばスペアリブと言われるぐらい定番の部位、中々いい趣味をしているじゃないか。

「マリア、今から手に入るか?」

「余裕」

流石だな……もう一生頭が上がる気がしないぞ。

上げる気は更々ないが。




よし、始めるか。

夕飯まで余り時間がないから小さじ1杯の重曹を水に溶かし、そこにスペアリブを漬ける。

30分ぐらいで取り出し、水気を拭き取ったら表裏に鹿の子の切れ目を入れつつ油を塗って、塩コショウ、ガーリックパウダー、パプリカパウダーをよく刷り込んで焼く。

焼き目を付けたら直火から離してコンロに蓋をして……20分おきに酒と醤油を混ぜた物を霧吹きで掛けてやる。

その間にベーコンを薄切りにしておいて、と。

ウシの挽肉にタマネギのみじん切りとおろしニンニク、おろしショウガ、刻んだキャベツとレモン果汁を混ぜたらよく捏ねて……

折角カーニズに来たならばと買っておいたチーズと一緒にベーコンで包んで、焼く。

いわゆるベーコン餃子という奴だ。

見た目はアスパラの豚肉巻きみたいだが、作った俺が餃子と言えば餃子になる。

これもまたピットマスターの特権という奴だ。

おっと、スペアリブはいい感じに焼けたしアルミホイルで包んで休ませよう。

「うへぇ……イチゴっち強いっすねぇ」

「グリルちゃんも結構強いよ」

もう仲良くなったのか?

可愛い妹は気難しい所があるし、マレスでも2日掛けて仲良くなったというのに……グリルのコミュ力はかなりの物だな。

ずっと平社員だった俺だが人の上に立つにはコミュ力が重要だというのは解る。

……そう考えるとあのクズ上司は何で出世できたんだろうか?

まあいい、ベーコンもそろそろ焼けるし飯にするか。




「こ、こんなに美味しく焼けてるお肉は初めてっす!ポロッと骨から剥がれる柔らかさ、噛む度に溢れる肉汁、塩加減も丁度良くて幾らでも食えるっすよ!」

随分と美味そうに食うじゃないか……釣られてキャリとタープまでがっつき始めてしまったぞ。

しかし大量のスペアリブを頬張るグリルを見てるとリスかハムスターの世話をしている気分になるのは何故だ?

「ンナー!」

「チーとハンバーグを包んだベーコン、美味しい」

「お兄ちゃん、追加のパン炙って」

それにしても今日の夕飯は忙しいな……いつもより早く肉が消えている気がする。

「成程、姉が自慢したがる訳だ……確かに美味い」

「……別に食うなと言うつもりはないが、せめて先に一言ぐらいよこせや」

道理で早い訳だよ!

ってか俺の分まで食うんじゃねぇ!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

処理中です...