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(野菜狂信者に肉を)おみまいするぞー
二日酔いの朝・納豆汁添え
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酒盛りをした翌朝……うん、見事な二日酔いだ。
それも俺だけじゃなく、女神様達を含めた参加していたほぼ全員が、だ。
正直途中から記憶が曖昧だし、余分に持ってきた筈のベーコンが無くなってるし、一体何処から持ってきたんだと言いたくなる酒瓶の山が積まれていたり……そりゃ二日酔いにもなるわ。
だが後悔はしていない。
「まったく、あれしきで二日酔いとは皆さんお酒に弱過ぎやしませんか?」
「本当に、介抱する身にもなって下さいよ」
何で一番多く飲んでいた筈の桃花と赤い髪の女神様が何ともないんだ?
あの2人は途中から酒をツマミに酒を飲んでいた様な気がするんだが……
「ああ……キュアの嬢ちゃんはいわゆるうわばみって奴でな、幾ら飲んでも酔えないらしい」
「あー、トゥグアが平気なんはそういう体質らしいで」
うわばみって都市伝説かと思っていたんだが実在したのか……
それと女神にも体質があるとか、知りたくはなかった。
「はい、朝ご飯はモモちゃんがお土産でくれたのを使った納豆汁」
「か、可愛い妹よ……俺は納豆とグリーンピースだけは食えないと知ってる筈じゃ」
というか桃花、何て物を土産にしていやがる。
いや、麹菌や梅干しにソースまで作ったとか聞いてたし、納豆を作るのはある意味自然な流れではあるけど。
「何だ梅夫、お前まだ納豆を克服してなかったのか?」
くそぅ、こいつにだけはバレたくなかった。
「はいデスト、朝食はピーマンのスープですよ」
「お、おいミラ……俺はピーマンだけは食えないんだって」
「何だ勇一、お前こそピーマンを克服してないのか?」
「くそぅ、お前にだけは知られたくなかったぜ」
そいつはお互い様って奴だな。
まあアレだ、傷を拡げたくはないから余り触れない様にしよう。
「何でやろ、このネバネバの豆は食えなくはあらへんけど口にした途端に嫌な気分になるで」
「そう?私は結構好き……コメにも合いそう」
「ネバネバのお豆美味しい!」
うどんの時もそうだったがタープは昔の関西人のイメージをそのまま具現化した様な好みをしているらしい。
その割にタコは食えんけど。
「はい、二日酔いの皆さんは此方を飲んでおいて下さいね」
ん……これは何だ?
「レモン果汁と黒砂糖を水で薄めた擬似的なスポーツドリンクで、大体2リットルの水に大さじ1杯ずつ入れてます」
「そいつは有難い」
ふぅ、飲んだ瞬間に頭がスッキリする様な気分になる。
よし、そろそろ解散前に振る舞う昼飯の準備を……
「お昼は私やマレスちゃんとモモちゃんと、お酒を飲まなかった人達でやるからお兄ちゃんはこれ食べて休んでて」
……どうやら納豆から逃げる事は出来ないらしい。
「キャリちゃん、あっちで遊ぼ!」
「うん、遊ぼ!」
昨夜の内に子供達は全員仲良くなった様だな……まあ友達が増えるのは良い事だ。
「パパ、スパウンちゃんとも遊びたい!」
「だそうだ、世話は頼むぞスパウン」
「ぐぬ……仕方あるまい」
……あの黒い物体は生き物だったのか。
しかもイケボで喋っていやがる。
「所でベリーちゃん、昨夜からウチの息子達を熱心に見つめていますが……少しは腕を上げましたか?」
「え、えっと……」
「ではお昼の前に組手と行きましょうか」
可愛い妹よ、少しは自重しような?
……うっぷ、幸か不幸か味噌汁だったから噛まずに飲み込む事に成功したぜ。
だが納豆の臭いと粘りはいつまで経っても好きになれん。
「うっぷ、ピーマンの苦味だけはいつまで経っても好きになれねぇ」
「何つーか、兄貴と梅夫さんって妙にソックリな所があるよな……誰も見てない内に取り換えりゃ良かったのに」
「「……全く否定が出来ん」」
まああの時の大喧嘩も似た者同士だからこそ、って奴だろう。
それだけは認めざるを得ない。
ってか取り換えたのがバレたら可愛い妹に嫌われてしまうじゃないか。
「パパー!スパウンちゃんがおっきいワニと戦ってるー!」
「何で海からワニが出て来るんだよ!」
「梅夫、ここは異世界だぜ?ワニが海を泳ぐぐらいはするさ」
そうだな、それで納得するのもどうかと思わなくもないが、そういう物だと思っておこう。
「って、子供達は大丈夫なのか!」
「安心しろ、ウチの嫁達も一緒に居るから」
「スパウンも居るし、ワニ程度なら大丈夫だ」
何この信頼感……
ウチだと可愛い妹とレクタさん以外に戦えるのは居ないし、比べるのが間違いだというのは解るが……
「パパー!モモお姉ちゃんがアリゲをやっつけたからカラアゲにしてー!」
「昼飯は苺心達が用意するとか言ってた気がするけど……まあ食材を無駄にするのは勿体ないか」
「え、何?お前ワニの解体と料理ができるのか?」
「出来るぞ、覚えたのはつい最近だけどな」
ま、復習を兼ねてやってやるか。
何故か解体を勇一と桃花にライコ、女神様達や子供達、更に可愛い妹や嫁達にマレスまで見ているが……そんな面白い物でもないぞ。
しかしデカいワニだな、大体3から4メートルぐらいありやがる。
まあ解体の手順なんかは変わらんだろ。
「そういやこのワニの皮は何かに使うか?」
「あたしはお洒落とかブランドとかには興味がありませんし、どうでもいいです」
「蛇の皮なら鞭なんかの素材に使えるがワニの皮は滑るしな……どうでもいい」
なら廃棄する方向でいいな。
正直その方が楽だし。
魚の鱗をそぐ様に剥いていって、膜や脂肪を徹底的に取り除く、と。
内臓を傷付けない様に腹を開いたら内側の脂肪と一緒にそっと取り出して……この内臓と脂肪も廃棄する。
「あ、誰か水を頼む……このワニの中身を洗うから」
「よしトウカ、【水縛】」
「ミャッ!」
ほう、ワニが水の球に包まれたな……あの猫はこんな事が出来るのか。
っていうか……
「その頭に乗ってる猫に、自分の嫁と同じ名前を付けたのか?」
「仕方ないだろ、他に思い付かなかったんだから」
それなら仕方ない。
「トウカちゃんはベーコンと仲良しなんだよ!」
「ンナー!」
「ミャア!」
「あのねキャリちゃん、名前はもう少しよく考えた方が……」
可愛い妹よ……気持ちは解るがもう手遅れだ。
よし、解体終了。
我ながらこのまま丸焼きにも出来る見事な出来映えだ。
これを丸ごと入れられるコンロなんざ存在しないがな。
「キャリちゃんの父ちゃんすげー!」
「うわー、このブニョブニョしたのメッチャ臭い!」
「この赤いのもスッゲー臭い!」
……何でか知らんがあれぐらいの男子ってこういうの好きだよなぁ。
俺も身に覚えがないとは言わんけど。
「一応言っておくがその脂肪と内臓は既に腐り始めているからな、間違っても食おうとするなよ」
「ではスパウン、あの脂肪と皮と内臓を残さず処理しておいて下さいよ」
「やむを得まい」
あの黒い物体はそんな事が出来るのか……一家に一匹は是非とも欲しい。
帰ったら探して手懐けてみるかな?
「ゆーとくけどあのスライムが特別なだけで、普通のスライムは全く喋らへんよ」
……残念だが諦めよう。
さて、今回は唐揚げだが……ジョニーさんの使っていたコーンスターチはないから日本風に作ろう。
小麦粉、香辛料、醤油、酒、タマネギ、ニンニク、ショウガ、臭み消しのオレンジ……って油はどうするかな?
「これ使いますか?日本でいう大豆から絞った油ですけど」
「有難く使わせて貰う」
まずはワニを一口大に切り揃えて、酒と醤油にすりおろしたタマネギとニンニク、ショウガ、オレンジ果汁を混ぜた中に漬けて、と。
この辺の作業は可愛い妹とマレス、あいつや桃花とライコにも手伝って貰おう。
その間に小麦粉を用意して塩コショウ、ガーリックパウダー、パプリカパウダーを混ぜて振るいに掛けて……
「とりあえず魔法で3時間ぐらい漬けた状態にしましたが」
「便利だな……なら早速揚げるか」
最初は油の温度を確認する意味を兼ねて尾の先端に粉をまぶして、はたいて……揚げる。
肉は子供が食べるのを意識して小さくしてあるしこの尾も細い、よって2度揚げする必要はないから……よし。
どれ……成程、少し固いが先端はカリカリ、サクサクとした噛み応えで噛む程に味が出る。
舌とはまた違う、独り占めしたくなるのも納得の味だ。
「あーっ!キャリちゃんの父ちゃんがつまみ食いしてるー!」
「何を言う、最初に食うのとワニの尻尾の先を食うのはピットマスターの特権という奴だ」
こればかりは女神様達であろうと覆す事は出来ない、この世の真理だ。
異論は認めん。
「そんな特権なんて聞いた事……いや、アメリカではバーベキューで有名だとかいうオッサンがそんな事を言ってた気がするな」
「あー、何か動画配信とかもしてたあのオッサンか……英語で喋ってたから内容はサッパリ解らなかったけど」
「一応言っておくとその人が俺にバーベキューを教えてくれたんだ」
「何だその羨ましい状況は……」
実を言うと俺もその動画にチラッと移った事がある。
言わないけどな。
「成程、固いんですが味わい深い……いい肉ですね」
「嬢ちゃん、今度ワニを見掛けたら一緒に解体しねえか?流石に一度見ただけだと一人でやれる自信がねぇ」
「やりましょう」
手順ぐらいなら書いて渡すが俺も苦労して覚えたからな……最低限の情報以外は教えんぞ。
まあ、頑張れよ。
「ワニも中々美味しいですね……」
「固いけど美味しい!」
「なら来年はウチの世界に来るか?年に一度はこれの丸焼きを食う祭りがあるで」
トゥール様……レクタさんが大変な事になるから他の女神様達を連れて来るのは自重してくれ。
「あ、お兄ちゃんオレンジ取って」
「ほれ」
「うん、味付けは日本風だけどやっぱりオレンジに合うね」
一応下味にも使っているけどな。
だが絞りたてのフレッシュな果汁がある方が美味いのは確かだ。
「そういやお前達の居る世界にはオレンジあるのか?」
「ありますよ、これと違って甘味が強いんですが」
そのまま食った方が美味いタイプのオレンジか……まあ臭みを抜くなら問題はないだろ。
「ミャー!」
「ンナー!」
「トウカちゃんとベーコンも美味しいって言ってる!」
ほう、中々味が解る猫達だな。
って2匹が俺の肩に乗っ……くすぐったいから首筋にスリスリするな!
「珍しいな……トウカが俺とナクア以外になつくなんて」
「昨日もライコが服従を誓ってたからねぇ、そりゃこんなに美味しい物を作れば仲良くしたくもなるよ」
「ウメオの弱点は首筋……覚えておく」
「次の夜が楽しみやなぁ」
おのれ……必死に隠していた弱点を嫁達に知られてしまったじゃないか!
仕方ない、その時はあのトカゲを食って応戦するしかないな。
それも俺だけじゃなく、女神様達を含めた参加していたほぼ全員が、だ。
正直途中から記憶が曖昧だし、余分に持ってきた筈のベーコンが無くなってるし、一体何処から持ってきたんだと言いたくなる酒瓶の山が積まれていたり……そりゃ二日酔いにもなるわ。
だが後悔はしていない。
「まったく、あれしきで二日酔いとは皆さんお酒に弱過ぎやしませんか?」
「本当に、介抱する身にもなって下さいよ」
何で一番多く飲んでいた筈の桃花と赤い髪の女神様が何ともないんだ?
あの2人は途中から酒をツマミに酒を飲んでいた様な気がするんだが……
「ああ……キュアの嬢ちゃんはいわゆるうわばみって奴でな、幾ら飲んでも酔えないらしい」
「あー、トゥグアが平気なんはそういう体質らしいで」
うわばみって都市伝説かと思っていたんだが実在したのか……
それと女神にも体質があるとか、知りたくはなかった。
「はい、朝ご飯はモモちゃんがお土産でくれたのを使った納豆汁」
「か、可愛い妹よ……俺は納豆とグリーンピースだけは食えないと知ってる筈じゃ」
というか桃花、何て物を土産にしていやがる。
いや、麹菌や梅干しにソースまで作ったとか聞いてたし、納豆を作るのはある意味自然な流れではあるけど。
「何だ梅夫、お前まだ納豆を克服してなかったのか?」
くそぅ、こいつにだけはバレたくなかった。
「はいデスト、朝食はピーマンのスープですよ」
「お、おいミラ……俺はピーマンだけは食えないんだって」
「何だ勇一、お前こそピーマンを克服してないのか?」
「くそぅ、お前にだけは知られたくなかったぜ」
そいつはお互い様って奴だな。
まあアレだ、傷を拡げたくはないから余り触れない様にしよう。
「何でやろ、このネバネバの豆は食えなくはあらへんけど口にした途端に嫌な気分になるで」
「そう?私は結構好き……コメにも合いそう」
「ネバネバのお豆美味しい!」
うどんの時もそうだったがタープは昔の関西人のイメージをそのまま具現化した様な好みをしているらしい。
その割にタコは食えんけど。
「はい、二日酔いの皆さんは此方を飲んでおいて下さいね」
ん……これは何だ?
「レモン果汁と黒砂糖を水で薄めた擬似的なスポーツドリンクで、大体2リットルの水に大さじ1杯ずつ入れてます」
「そいつは有難い」
ふぅ、飲んだ瞬間に頭がスッキリする様な気分になる。
よし、そろそろ解散前に振る舞う昼飯の準備を……
「お昼は私やマレスちゃんとモモちゃんと、お酒を飲まなかった人達でやるからお兄ちゃんはこれ食べて休んでて」
……どうやら納豆から逃げる事は出来ないらしい。
「キャリちゃん、あっちで遊ぼ!」
「うん、遊ぼ!」
昨夜の内に子供達は全員仲良くなった様だな……まあ友達が増えるのは良い事だ。
「パパ、スパウンちゃんとも遊びたい!」
「だそうだ、世話は頼むぞスパウン」
「ぐぬ……仕方あるまい」
……あの黒い物体は生き物だったのか。
しかもイケボで喋っていやがる。
「所でベリーちゃん、昨夜からウチの息子達を熱心に見つめていますが……少しは腕を上げましたか?」
「え、えっと……」
「ではお昼の前に組手と行きましょうか」
可愛い妹よ、少しは自重しような?
……うっぷ、幸か不幸か味噌汁だったから噛まずに飲み込む事に成功したぜ。
だが納豆の臭いと粘りはいつまで経っても好きになれん。
「うっぷ、ピーマンの苦味だけはいつまで経っても好きになれねぇ」
「何つーか、兄貴と梅夫さんって妙にソックリな所があるよな……誰も見てない内に取り換えりゃ良かったのに」
「「……全く否定が出来ん」」
まああの時の大喧嘩も似た者同士だからこそ、って奴だろう。
それだけは認めざるを得ない。
ってか取り換えたのがバレたら可愛い妹に嫌われてしまうじゃないか。
「パパー!スパウンちゃんがおっきいワニと戦ってるー!」
「何で海からワニが出て来るんだよ!」
「梅夫、ここは異世界だぜ?ワニが海を泳ぐぐらいはするさ」
そうだな、それで納得するのもどうかと思わなくもないが、そういう物だと思っておこう。
「って、子供達は大丈夫なのか!」
「安心しろ、ウチの嫁達も一緒に居るから」
「スパウンも居るし、ワニ程度なら大丈夫だ」
何この信頼感……
ウチだと可愛い妹とレクタさん以外に戦えるのは居ないし、比べるのが間違いだというのは解るが……
「パパー!モモお姉ちゃんがアリゲをやっつけたからカラアゲにしてー!」
「昼飯は苺心達が用意するとか言ってた気がするけど……まあ食材を無駄にするのは勿体ないか」
「え、何?お前ワニの解体と料理ができるのか?」
「出来るぞ、覚えたのはつい最近だけどな」
ま、復習を兼ねてやってやるか。
何故か解体を勇一と桃花にライコ、女神様達や子供達、更に可愛い妹や嫁達にマレスまで見ているが……そんな面白い物でもないぞ。
しかしデカいワニだな、大体3から4メートルぐらいありやがる。
まあ解体の手順なんかは変わらんだろ。
「そういやこのワニの皮は何かに使うか?」
「あたしはお洒落とかブランドとかには興味がありませんし、どうでもいいです」
「蛇の皮なら鞭なんかの素材に使えるがワニの皮は滑るしな……どうでもいい」
なら廃棄する方向でいいな。
正直その方が楽だし。
魚の鱗をそぐ様に剥いていって、膜や脂肪を徹底的に取り除く、と。
内臓を傷付けない様に腹を開いたら内側の脂肪と一緒にそっと取り出して……この内臓と脂肪も廃棄する。
「あ、誰か水を頼む……このワニの中身を洗うから」
「よしトウカ、【水縛】」
「ミャッ!」
ほう、ワニが水の球に包まれたな……あの猫はこんな事が出来るのか。
っていうか……
「その頭に乗ってる猫に、自分の嫁と同じ名前を付けたのか?」
「仕方ないだろ、他に思い付かなかったんだから」
それなら仕方ない。
「トウカちゃんはベーコンと仲良しなんだよ!」
「ンナー!」
「ミャア!」
「あのねキャリちゃん、名前はもう少しよく考えた方が……」
可愛い妹よ……気持ちは解るがもう手遅れだ。
よし、解体終了。
我ながらこのまま丸焼きにも出来る見事な出来映えだ。
これを丸ごと入れられるコンロなんざ存在しないがな。
「キャリちゃんの父ちゃんすげー!」
「うわー、このブニョブニョしたのメッチャ臭い!」
「この赤いのもスッゲー臭い!」
……何でか知らんがあれぐらいの男子ってこういうの好きだよなぁ。
俺も身に覚えがないとは言わんけど。
「一応言っておくがその脂肪と内臓は既に腐り始めているからな、間違っても食おうとするなよ」
「ではスパウン、あの脂肪と皮と内臓を残さず処理しておいて下さいよ」
「やむを得まい」
あの黒い物体はそんな事が出来るのか……一家に一匹は是非とも欲しい。
帰ったら探して手懐けてみるかな?
「ゆーとくけどあのスライムが特別なだけで、普通のスライムは全く喋らへんよ」
……残念だが諦めよう。
さて、今回は唐揚げだが……ジョニーさんの使っていたコーンスターチはないから日本風に作ろう。
小麦粉、香辛料、醤油、酒、タマネギ、ニンニク、ショウガ、臭み消しのオレンジ……って油はどうするかな?
「これ使いますか?日本でいう大豆から絞った油ですけど」
「有難く使わせて貰う」
まずはワニを一口大に切り揃えて、酒と醤油にすりおろしたタマネギとニンニク、ショウガ、オレンジ果汁を混ぜた中に漬けて、と。
この辺の作業は可愛い妹とマレス、あいつや桃花とライコにも手伝って貰おう。
その間に小麦粉を用意して塩コショウ、ガーリックパウダー、パプリカパウダーを混ぜて振るいに掛けて……
「とりあえず魔法で3時間ぐらい漬けた状態にしましたが」
「便利だな……なら早速揚げるか」
最初は油の温度を確認する意味を兼ねて尾の先端に粉をまぶして、はたいて……揚げる。
肉は子供が食べるのを意識して小さくしてあるしこの尾も細い、よって2度揚げする必要はないから……よし。
どれ……成程、少し固いが先端はカリカリ、サクサクとした噛み応えで噛む程に味が出る。
舌とはまた違う、独り占めしたくなるのも納得の味だ。
「あーっ!キャリちゃんの父ちゃんがつまみ食いしてるー!」
「何を言う、最初に食うのとワニの尻尾の先を食うのはピットマスターの特権という奴だ」
こればかりは女神様達であろうと覆す事は出来ない、この世の真理だ。
異論は認めん。
「そんな特権なんて聞いた事……いや、アメリカではバーベキューで有名だとかいうオッサンがそんな事を言ってた気がするな」
「あー、何か動画配信とかもしてたあのオッサンか……英語で喋ってたから内容はサッパリ解らなかったけど」
「一応言っておくとその人が俺にバーベキューを教えてくれたんだ」
「何だその羨ましい状況は……」
実を言うと俺もその動画にチラッと移った事がある。
言わないけどな。
「成程、固いんですが味わい深い……いい肉ですね」
「嬢ちゃん、今度ワニを見掛けたら一緒に解体しねえか?流石に一度見ただけだと一人でやれる自信がねぇ」
「やりましょう」
手順ぐらいなら書いて渡すが俺も苦労して覚えたからな……最低限の情報以外は教えんぞ。
まあ、頑張れよ。
「ワニも中々美味しいですね……」
「固いけど美味しい!」
「なら来年はウチの世界に来るか?年に一度はこれの丸焼きを食う祭りがあるで」
トゥール様……レクタさんが大変な事になるから他の女神様達を連れて来るのは自重してくれ。
「あ、お兄ちゃんオレンジ取って」
「ほれ」
「うん、味付けは日本風だけどやっぱりオレンジに合うね」
一応下味にも使っているけどな。
だが絞りたてのフレッシュな果汁がある方が美味いのは確かだ。
「そういやお前達の居る世界にはオレンジあるのか?」
「ありますよ、これと違って甘味が強いんですが」
そのまま食った方が美味いタイプのオレンジか……まあ臭みを抜くなら問題はないだろ。
「ミャー!」
「ンナー!」
「トウカちゃんとベーコンも美味しいって言ってる!」
ほう、中々味が解る猫達だな。
って2匹が俺の肩に乗っ……くすぐったいから首筋にスリスリするな!
「珍しいな……トウカが俺とナクア以外になつくなんて」
「昨日もライコが服従を誓ってたからねぇ、そりゃこんなに美味しい物を作れば仲良くしたくもなるよ」
「ウメオの弱点は首筋……覚えておく」
「次の夜が楽しみやなぁ」
おのれ……必死に隠していた弱点を嫁達に知られてしまったじゃないか!
仕方ない、その時はあのトカゲを食って応戦するしかないな。
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