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(野菜狂信者に肉を)おみまいするぞー
ケンタン領の祭り・ワニの舌添え
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あのピットメンバー達の遺言は俺の胸中に仕舞っておくとして……
まあ英語で書かれてるからタープやマリアは勿論だがキャリや可愛い妹も読む事は出来んだろうけど。
可愛い妹は数字には強いけど漢字や英語には弱いんだ。
俺か?5段階評価で英語と体育以外はオール2だったよ。
バーベキュー学なんてあれば最高得点を得られていただろうけどな。
「後1時間って所か……ボーイ、オレンジを用意しな」
「解った」
水洗いしたオレンジを皮や種ごと輪切りにして、焼いているワニの上に並べてやる。
この際にコーン油とバーボンの霧吹きも忘れずに、と。
「アリゲーターを始めとした爬虫類は柑橘類と相性がいいんだがレモンじゃ酸味が強過ぎるしグレープフルーツじゃ苦味がキツい、オレンジが一番だ……それに肉も柔らかくなる」
確かに唐揚げも少し固かったからな……
個人で作る機会があったら肉を柔らかくする方法を色々と試してみるか。
「……よし、最初のアリゲーターは焼けたぞボーイ」
「おう」
2人掛かりで何とかコンロから下ろして、オレンジをどけて少し休ませて縛っていた紐を切ったら尻尾の方は聖剣で骨ごと筒切りにしてやる。
長い時間をかけて焼いた骨は脆くなっているから、その気になればペティナイフでも砕けるだろう。
「待ちなボーイ、アリゲーターの尾の先端を食うのはピットマスターの特権だ……よってここは俺が貰う」
そういやダニエルさんもそこだけは誰にも譲らなかったな。
言う程美味いのかが気になるけど純粋な奪い合いになったら勝てる気がしないから諦めよう。
さて、腹の方はスペアリブの様にアバラに添って解体しながら詰めたスタッフィングを剥き出しにしてやればいい……筈だ。
「……オーケー上出来だ、そのまま残りの仕上げも頼むぜ」
そういやまだ19匹分のワニが……俺、ちゃんと食えるのか?
可愛い妹やレクタさんならその辺の配慮はしてくれるだろうがタープがなぁ……
……はぁ、やっと終わったぞ。
尻尾の先端は全部ジョニーさんが持って行っちまったし既に大半がスタッフィングも含めて食い尽くされていやがった。
まあ仕方ない、これもある意味ピットマスターの仕事って奴だからな。
飲み会で鍋奉行が中々食えないのと一緒だ。
ってあのロリババアがワニの腕の肉を噛み切れずに難儀していやがった……
「ウメオ、アリゲはこっちでちゃんと確保しとるよ」
「スマンなタープ」
まさか確保してくれていたとは……まあロリババアの方はマットさんが何とかするだろ。
ってかロジーが然り気無く可愛い妹の側に居やがった。
「むぅ、相変わらず噛み応えのある美味い肉やなぁ……噛む程に味が出て来とる」
「ホンマや、ウチはこの腹の骨の周りの肉が好きや」
レクタさんはワニの腕を丸ごと、タープはアバラの周りを好むか……覚えておこう。
可愛い妹は……尾の付け根付近をナイフとフォークで食っていやがった。
俺は……おっと、そうだ。
そういやジョニーさんはワニの頭は舌以外は食えないとか言ってたな……折角だし試してみるか。
ちょいと力はいるが口を開いて、舌の付け根を切り取って……よし。
この舌には味が付いてないし薄切りにしてからオレンジの果汁を混ぜた醤油にでも付けて食おう。
さて味は……
「……何じゃこりゃあ!?」
「ど、どうしたのお兄ちゃん?」
薄切りにしたにも関わらずぶ厚いホルモンの様な噛み応えと、豚の赤身を更に旨味を濃くした様な味……
なのにあのアブラトカゲの脂肪の様にサラッとした口当たりで幾らでも食えちまう!
「何やこの肉、メッチャ弾力あるけど美味いやんか!」
「ホンマや!こいつは酒に合いそうな肉やな!」
「あ、本当に美味しい!」
いつの間にかつまみ食いされていたが、そんな事が気にならないぐらい凄い肉だ……
ちょっとワニの舌を侮っていたな、反省せねばなるまい。
おっと、どうせ残らんから他の部位とスタッフィングも食っておかねば。
翌朝、後片付けを済ませて土産の生きたナマズとバーボンをリアカーに積み、新居に帰る時が来た。
「今回は世話になったな、ボーイ……また来年も頼むぜ」
ったく、教える事とやらは全部習ったというのにまだ俺をボーイ扱いか。
まあ今更名前で呼ばれたって違和感が凄そうだからなぁ……もう暫くはこのままでいいか。
「また遊びに来てねイチゴちゃん」
「うん、ベルちゃんも元気でね」
こっちはこっちでいつの間にか仲良くなってるし……
「じゃあレクタさん、兄にこのモロコシのお酒を渡しておいて下さい」
「おう、任しとき」
「ん?ラビナさんに兄貴が居たのか?」
「何や聞いとらんのか?ラビナはオヤッサの妹なんやで」
まさかのオヤッサンの妹だった!?
いやでもケンタンにも関わらず関西弁じゃなかったし、別の所から引っ越して来たんだとばかり思ってたわ。
顔も全然似てないからなぁ……気付かなくても無理はないだろ。
「おっと忘れ物だ……ほら、ダニエルのレシピだぜ」
「え……いいのか?」
「ああ、あの調子なら2~3年もすれば俺が居なくても大丈夫だろう……くれてやるさ」
「……有り難く受け取るよ」
さて、マリアと可愛い娘の待つ我が家に帰るとするか。
「……行っちまったか」
「フフ、あんなに楽しそうな貴方を見るのは久しぶりでしたよ」
「まぁな、ボーイ……いや、ウメオは俺達ピットメンバーにとって自慢の息子だからな、その成長が何よりも嬉しいのさ」
「あらあら、今日はお酒が凄く減りそうですね」
「ちゃんと節度は守るよハニー、もう少しぐらいは長生きして……あいつ等への土産話を増やしておかんとならんからな」
まあ英語で書かれてるからタープやマリアは勿論だがキャリや可愛い妹も読む事は出来んだろうけど。
可愛い妹は数字には強いけど漢字や英語には弱いんだ。
俺か?5段階評価で英語と体育以外はオール2だったよ。
バーベキュー学なんてあれば最高得点を得られていただろうけどな。
「後1時間って所か……ボーイ、オレンジを用意しな」
「解った」
水洗いしたオレンジを皮や種ごと輪切りにして、焼いているワニの上に並べてやる。
この際にコーン油とバーボンの霧吹きも忘れずに、と。
「アリゲーターを始めとした爬虫類は柑橘類と相性がいいんだがレモンじゃ酸味が強過ぎるしグレープフルーツじゃ苦味がキツい、オレンジが一番だ……それに肉も柔らかくなる」
確かに唐揚げも少し固かったからな……
個人で作る機会があったら肉を柔らかくする方法を色々と試してみるか。
「……よし、最初のアリゲーターは焼けたぞボーイ」
「おう」
2人掛かりで何とかコンロから下ろして、オレンジをどけて少し休ませて縛っていた紐を切ったら尻尾の方は聖剣で骨ごと筒切りにしてやる。
長い時間をかけて焼いた骨は脆くなっているから、その気になればペティナイフでも砕けるだろう。
「待ちなボーイ、アリゲーターの尾の先端を食うのはピットマスターの特権だ……よってここは俺が貰う」
そういやダニエルさんもそこだけは誰にも譲らなかったな。
言う程美味いのかが気になるけど純粋な奪い合いになったら勝てる気がしないから諦めよう。
さて、腹の方はスペアリブの様にアバラに添って解体しながら詰めたスタッフィングを剥き出しにしてやればいい……筈だ。
「……オーケー上出来だ、そのまま残りの仕上げも頼むぜ」
そういやまだ19匹分のワニが……俺、ちゃんと食えるのか?
可愛い妹やレクタさんならその辺の配慮はしてくれるだろうがタープがなぁ……
……はぁ、やっと終わったぞ。
尻尾の先端は全部ジョニーさんが持って行っちまったし既に大半がスタッフィングも含めて食い尽くされていやがった。
まあ仕方ない、これもある意味ピットマスターの仕事って奴だからな。
飲み会で鍋奉行が中々食えないのと一緒だ。
ってあのロリババアがワニの腕の肉を噛み切れずに難儀していやがった……
「ウメオ、アリゲはこっちでちゃんと確保しとるよ」
「スマンなタープ」
まさか確保してくれていたとは……まあロリババアの方はマットさんが何とかするだろ。
ってかロジーが然り気無く可愛い妹の側に居やがった。
「むぅ、相変わらず噛み応えのある美味い肉やなぁ……噛む程に味が出て来とる」
「ホンマや、ウチはこの腹の骨の周りの肉が好きや」
レクタさんはワニの腕を丸ごと、タープはアバラの周りを好むか……覚えておこう。
可愛い妹は……尾の付け根付近をナイフとフォークで食っていやがった。
俺は……おっと、そうだ。
そういやジョニーさんはワニの頭は舌以外は食えないとか言ってたな……折角だし試してみるか。
ちょいと力はいるが口を開いて、舌の付け根を切り取って……よし。
この舌には味が付いてないし薄切りにしてからオレンジの果汁を混ぜた醤油にでも付けて食おう。
さて味は……
「……何じゃこりゃあ!?」
「ど、どうしたのお兄ちゃん?」
薄切りにしたにも関わらずぶ厚いホルモンの様な噛み応えと、豚の赤身を更に旨味を濃くした様な味……
なのにあのアブラトカゲの脂肪の様にサラッとした口当たりで幾らでも食えちまう!
「何やこの肉、メッチャ弾力あるけど美味いやんか!」
「ホンマや!こいつは酒に合いそうな肉やな!」
「あ、本当に美味しい!」
いつの間にかつまみ食いされていたが、そんな事が気にならないぐらい凄い肉だ……
ちょっとワニの舌を侮っていたな、反省せねばなるまい。
おっと、どうせ残らんから他の部位とスタッフィングも食っておかねば。
翌朝、後片付けを済ませて土産の生きたナマズとバーボンをリアカーに積み、新居に帰る時が来た。
「今回は世話になったな、ボーイ……また来年も頼むぜ」
ったく、教える事とやらは全部習ったというのにまだ俺をボーイ扱いか。
まあ今更名前で呼ばれたって違和感が凄そうだからなぁ……もう暫くはこのままでいいか。
「また遊びに来てねイチゴちゃん」
「うん、ベルちゃんも元気でね」
こっちはこっちでいつの間にか仲良くなってるし……
「じゃあレクタさん、兄にこのモロコシのお酒を渡しておいて下さい」
「おう、任しとき」
「ん?ラビナさんに兄貴が居たのか?」
「何や聞いとらんのか?ラビナはオヤッサの妹なんやで」
まさかのオヤッサンの妹だった!?
いやでもケンタンにも関わらず関西弁じゃなかったし、別の所から引っ越して来たんだとばかり思ってたわ。
顔も全然似てないからなぁ……気付かなくても無理はないだろ。
「おっと忘れ物だ……ほら、ダニエルのレシピだぜ」
「え……いいのか?」
「ああ、あの調子なら2~3年もすれば俺が居なくても大丈夫だろう……くれてやるさ」
「……有り難く受け取るよ」
さて、マリアと可愛い娘の待つ我が家に帰るとするか。
「……行っちまったか」
「フフ、あんなに楽しそうな貴方を見るのは久しぶりでしたよ」
「まぁな、ボーイ……いや、ウメオは俺達ピットメンバーにとって自慢の息子だからな、その成長が何よりも嬉しいのさ」
「あらあら、今日はお酒が凄く減りそうですね」
「ちゃんと節度は守るよハニー、もう少しぐらいは長生きして……あいつ等への土産話を増やしておかんとならんからな」
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