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(野菜狂信者の)口を割って食わそう
BBQ式アヒージョ・弟子のカルパッチョ添え
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いよいよ巨大タコをバーベキューする時が来た。
捕らえる前の実物を見たがマジでデカかったな……てっきり大阪にある看板ぐらいだろうと思いきや、全長は通天閣並にありそうだった。
そりゃあんなのに捕まればタープでなくたってトラウマになるわ。
やはりタープが居る時にタコを料理は出来んな……うん。
「ウメオさん、何者かまでは解りませんが4人……敵意を持って此方に近付いています」
コッチに敵意を持つ……ああ、野菜狂信者が来たんだな。
前もって解れば落ち着いて対処が出来るが、俺は戦うには向かないとトゥール様のお墨付きだしセバスさんも荒事は苦手だとか言ってた様な……
マリアはキャリと一緒に宿で待ってるし、サーマはペグさんと漁に出てマレスも自分のコンロに火を入れてる最中……いや、流石にマリアとキャリやマレスを戦わせる訳にもいかんが。
「ご心配には及びませんよ、4人程度なら自分で対処が可能です」
そりゃ有難いけど……
「確か女神の眷属って人間を傷付けるのは禁止されてんじゃなかったか?」
この前焼きそばを食いながらそんな事を言ってた気がするんだが……
「普通ならばそうですが、ハイエルフに限って言えばトゥール様が自ら許可を出しておりますゆえ問題はありません」
そういや肉や魚を食わせる為なら手段や方法に生死も問わないとか言ってたっけ。
流石に生死を問わないのは冗談だと思うが……
「トゥール様は笑えない冗談は言わない主義ですから本気でしょう、といっても笑える冗談を言ってる所も見た事はありませんが」
ガチだったのかよトゥール様……
それだけ野菜狂信者共の行動が目に余ってたって証明でもあるが、でも生死は問おうぜ。
「とはいえ死なせないに越した事はありませんが、多少は懲らしめた方が良いでしょう……そういう意味で肉や魚を食べさせるのは丁度良いかと」
まあ、どの道俺に出来る事はバーベキューしかないからな……
精々美味く焼かせて貰うよ。
「き、貴様は……あの時の!」
おっと、来やがったな……あいつは確かカーニズ領でスジ肉と赤身で作った肉バーガーをおみまいした野菜狂信者じゃないか。
そういや名前は聞いてなかったな、興味もないけど。
「何だ、あの肉バーガーの味が忘れられなくなってまた食いたくなったのか?」
「そんな訳があるか!?」
そりゃあれはフォークで刺す事すらしなかったガッチガチの肉、しかも最も固いベリーウェルダンだしな……
流石の俺でも食うのは遠慮したい料理だ、嫌がるのも無理はない。
「なら巨大オクトパスを手懐けにでも来たのか?」
「そうだ、巨大オクトパスは女神を捕らえる為に必要な戦力となり得るからな」
「……なあセバスさん、オクトパスがトゥール様を捕まえられるのか?」
「まさか、タコヤキまたはソース味の料理にしたならまだしも、ただ体が大きいだけのオクトパス程度では足止めすら出来ませんよ」
だよな……てか本当にトゥール様はソースが好きなんだな。
何か仕事してる横でお好み焼きを焼いてるだけで真面目に仕事するんじゃないかと思えて来たんだが?
「特にこの10年の間にキュアさんがソースを自作して以来、更に好きになった様ですね……ウメオさんが今使っているソースもキュアさんが作った物ですよ」
あいつ、梅干しだけじゃなくてソースまで作りやがったのか……
今度会ったら作り方を聞いてみよう。
ダニエルさんが好んだ、あのレシピ本にも書かれていない辛味の強い自家製バーベキューソースを再現する為の参考になるかもしれん。
作った所で俺とマリアしか食えないだろうけど。
「本来なら今すぐ海に向かいたい所だが、貴様を見付けた以上は見逃す訳にはいかん!」
そういや野菜狂信者が居たのを忘れてた……
「やれやれ、相手の力量すら計れない癖に威勢だけは良いですね……【転移】」
あれ、消えた?
って背後から何かが海に落ちた音が……
「【転移】は従者の必須技能の1つで、自分か目視した者を別の場所に移動させるのですよ……当然ながら強いイメージが必要になりますが、海に落とすだけなら大した労力はありません」
従者……って確か執事やメイドさんの事だよな?
え、執事やメイドさんって瞬間移動が必須スキルだったの?
何て考えてたら野菜狂信者共が巨大オクトパスに捕まって、ひん剥かれていやがった。
野菜狂信者共は全員男らしいが、あのタコって雌だったのかな?
「師匠の所から凄く大きな声と音が聞こえましたけど大丈夫で……ってキャアーッ!」
「いかん、マレスがアレを見るのはまだ早い!」
「マレスさん、此方は大丈夫ですから持ち場に戻った方が宜しいかと……転移で送ります」
「わ、解りました!」
危なかった……マレスにタープとはまた違ったトラウマを植えてしまう所だったが、ほんの一瞬だったから大丈夫だろう。
もし手遅れだった場合は相応の責任を取らされる可能性もあるが……
「一応転移と同時にあの一瞬の出来事を記憶から消しておきましたのでご心配には及びませんよ……これは業務外なので貸しにしておきます」
シビアだな先輩……ってか俺は本当にバーベキューしか出来ないぞ。
「そう身構えずとも、明日の夕飯は牡蠣を使った料理を作ってくれればそれでいいですよ」
牡蠣ね……了解だ。
ならバーベキューならではの牡蠣料理を作らせて貰うよ。
仕留めた巨大オクトパスは足をたこ焼き、頭を他の料理にするらしい。
という訳で俺もタコの頭の一部を貰って早速仕込みをしよう。
「ウメオに言われた通り、あのヴィガン族共はふん縛って窓のない部屋に監禁しといたよ」
「スマンなサーマ、助かった」
奴等はあのマットさん達から逃げたって事実もあるからな……肉か魚を食わせるまでは大人しくして貰おう。
さて、タコは薄切りにして冷やしておいて……と。
炭火を全体に行き渡らせて……鉄鍋にタップリのオリーブオイル、潰したニンニク、乾燥させた唐辛子、粒のままのコショウ、手で裂いたエリンギを入れて大体90から120度辺りまで加熱する。
後はこの油で薄切りのタコを泳がせてやればバーベキュー式アヒージョの出来上がりだ。
そのまま食っても美味いが今回は炙ったコッペパンにオリーブオイルを垂らしてタコとエリンギ、薄切りのタマネギとトマトを挟んで出す事にする。
オリーブオイルを大量に使ってるからバターやマヨネーズがなくても充分に美味いし、好みでマスタードを塗ってもいい。
「挟んで提供するのは自分がやりましょう、ウメオさんは調理に専念を」
「お願いします」
「こんなに油まみれのオクトパスが凄く美味いな」
「焼いたパンのお陰で手が汚れないのは有難い」
「タマネギがいい仕事をしているし、このキノコも歯応えがあって美味い」
「トマトとオクトパスって相性がいいんだな……知らなかった」
「イチゴちゃんに踏まれたい」
「俺はマレスちゃんに踏まれたい」
因みにアヒージョはオリーブオイルとニンニクで煮る料理の名前で、タコの他にエビやキノコ、鶏肉辺りが使われる。
本来なら薄切りではなくぶつ切りで、コッペパンではなくバゲットかチェロスと一緒に食うんだが……どっちもないからな。
なので俺が作ったのは正確に言うとアヒージョ風タコしゃぶサンドとなる。
でも美味いのは確かだから機会があるなら試してみる事をオススメするぞ。
ってか最後の2人……俺の可愛い妹と弟子をどういう目で見ていやがるんだ?
「ピリッとした油とタコ、美味しい」
「ちょっと辛いけど美味しい!」
うむ、嫁と娘にも好評だな……だがキャリには少し辛かったか。
これは反省せねばなるまい。
そんなこんなでオクトパス祭りも終わって夕飯……
俺の作ったアヒージョサンドとマレスの作った特別料理とやらにセバスさんがいつの間にか作っていたサラダや魚介スープで済ませる。
……本当に、セバスさんはいつの間に作ったんだろうな?
「薄切りのオクトパスに刻んだニンニクとタマネギ、粗挽きのコショウとレモン果汁、醤油にオリーブオイルを混ぜたタレ……これがマレスの特別料理か」
「はい、カツのタタキみたいにしても美味しいんじゃないかと思って試してみました!」
まさか醤油を使ったカルパッチョを作るとは……しかも俺はマレスにカルパッチョなんて教えてないのに。
何故って?マリネと同じくバーベキューで作る料理じゃないからだ。
味は……本来のカルパッチョより此方の方が日本人向きかもしれんな、美味い。
「あ、キャリちゃんの分はニンニクを少なくしてるからおかわりが欲しかったら私に言ってね」
「はーい!」
あのマリネの一件で学んだか……流石だ。
もう魚介類に限って言えば俺を越えたんじゃないか?
とはいえここはやはり師匠らしく……
「この料理はクルエビで作っても美味いかもしれんな」
「成程!明日試してみます!」
うむ、作ったら食わせてくれよ?
確実にマリアとキャリも食いたがるだろうから。
さて、夕飯が終わった所でトゥール様の難題を片付けるとするか。
「じゃあスマンがサーマとベグさんはそいつらの口をこじ開けてこいつを食わせてくれ、それとセバスさんとマレスはどんどん追加を作ってくれ」
「はいよ」
「うむ」
「任されました」
「解りました!」
今回は折角の海辺の街だからイワシのから揚げを用意した。
それも小型のイワシに塩と小麦粉をまぶしカラッと揚げて、骨や頭も食える様にしたから揚げだ。
ご飯のオカズに、酒のツマミに、子供のオヤツにもなる美味い料理……後でまた揚げて俺のツマミにしよう。
因みにキャリにこの光景を見せるのは憚れるのでマリアと一緒に宿に戻って貰ったよ。
代わりに後で5回戦までやらされる事になったけどな!
「ふぁへっ、あふっ、あふいっ!?」
「おっと吐くなよ、折角の命を頂いてるんだから感謝しながら美味しく食うのが礼儀ってもんだ」
とはいえこいつはこの場で作っている揚げたての熱々だからな、ちょっとした拷問に匹敵するかもしれんが熱い内に食うのが美味いんだから仕方ない。
この小型のイワシはまだ大量にあるからな、遠慮はいらんぞ。
「待て、取引だ!我等の次の目的を教えるから見逃してくれ!」
「お、おい貴様!」
ふむ、仲間を見捨てる外道……だが確実な情報なら欲しい。
内容次第でこいつだけは見逃すのもアリかもしれんが……
「どうするセバスさん?」
「では彼の相手は自分が致しましょう、皆さんは引き続き作業を」
よし、食わせるか……特にカーニズ領で俺の命を狙った貴様は絶対に許さん。
「師匠、何だか私達の方が悪い事をしているみたいなんですけど?」
「大丈夫だ、これは女神様の指示だから問題ない」
なお、情報を吐いた奴はセバスさん次第で許してやるが他はタープの1回の食事と同じ量を食わせて、2度目のこいつにはその倍の量を食わせてやった。
これで少しは懲りただろ。
「彼からは有益な情報を引き出せましたよ、よってイワシ2匹分で許して差し上げました……トゥール様の許可も頂きましたので以前にも食べさせた方を含めてウメオさんのノルマに数えて良いそうです」
つまりこれで……後6人か。
まだ先は長いなぁ。
捕らえる前の実物を見たがマジでデカかったな……てっきり大阪にある看板ぐらいだろうと思いきや、全長は通天閣並にありそうだった。
そりゃあんなのに捕まればタープでなくたってトラウマになるわ。
やはりタープが居る時にタコを料理は出来んな……うん。
「ウメオさん、何者かまでは解りませんが4人……敵意を持って此方に近付いています」
コッチに敵意を持つ……ああ、野菜狂信者が来たんだな。
前もって解れば落ち着いて対処が出来るが、俺は戦うには向かないとトゥール様のお墨付きだしセバスさんも荒事は苦手だとか言ってた様な……
マリアはキャリと一緒に宿で待ってるし、サーマはペグさんと漁に出てマレスも自分のコンロに火を入れてる最中……いや、流石にマリアとキャリやマレスを戦わせる訳にもいかんが。
「ご心配には及びませんよ、4人程度なら自分で対処が可能です」
そりゃ有難いけど……
「確か女神の眷属って人間を傷付けるのは禁止されてんじゃなかったか?」
この前焼きそばを食いながらそんな事を言ってた気がするんだが……
「普通ならばそうですが、ハイエルフに限って言えばトゥール様が自ら許可を出しておりますゆえ問題はありません」
そういや肉や魚を食わせる為なら手段や方法に生死も問わないとか言ってたっけ。
流石に生死を問わないのは冗談だと思うが……
「トゥール様は笑えない冗談は言わない主義ですから本気でしょう、といっても笑える冗談を言ってる所も見た事はありませんが」
ガチだったのかよトゥール様……
それだけ野菜狂信者共の行動が目に余ってたって証明でもあるが、でも生死は問おうぜ。
「とはいえ死なせないに越した事はありませんが、多少は懲らしめた方が良いでしょう……そういう意味で肉や魚を食べさせるのは丁度良いかと」
まあ、どの道俺に出来る事はバーベキューしかないからな……
精々美味く焼かせて貰うよ。
「き、貴様は……あの時の!」
おっと、来やがったな……あいつは確かカーニズ領でスジ肉と赤身で作った肉バーガーをおみまいした野菜狂信者じゃないか。
そういや名前は聞いてなかったな、興味もないけど。
「何だ、あの肉バーガーの味が忘れられなくなってまた食いたくなったのか?」
「そんな訳があるか!?」
そりゃあれはフォークで刺す事すらしなかったガッチガチの肉、しかも最も固いベリーウェルダンだしな……
流石の俺でも食うのは遠慮したい料理だ、嫌がるのも無理はない。
「なら巨大オクトパスを手懐けにでも来たのか?」
「そうだ、巨大オクトパスは女神を捕らえる為に必要な戦力となり得るからな」
「……なあセバスさん、オクトパスがトゥール様を捕まえられるのか?」
「まさか、タコヤキまたはソース味の料理にしたならまだしも、ただ体が大きいだけのオクトパス程度では足止めすら出来ませんよ」
だよな……てか本当にトゥール様はソースが好きなんだな。
何か仕事してる横でお好み焼きを焼いてるだけで真面目に仕事するんじゃないかと思えて来たんだが?
「特にこの10年の間にキュアさんがソースを自作して以来、更に好きになった様ですね……ウメオさんが今使っているソースもキュアさんが作った物ですよ」
あいつ、梅干しだけじゃなくてソースまで作りやがったのか……
今度会ったら作り方を聞いてみよう。
ダニエルさんが好んだ、あのレシピ本にも書かれていない辛味の強い自家製バーベキューソースを再現する為の参考になるかもしれん。
作った所で俺とマリアしか食えないだろうけど。
「本来なら今すぐ海に向かいたい所だが、貴様を見付けた以上は見逃す訳にはいかん!」
そういや野菜狂信者が居たのを忘れてた……
「やれやれ、相手の力量すら計れない癖に威勢だけは良いですね……【転移】」
あれ、消えた?
って背後から何かが海に落ちた音が……
「【転移】は従者の必須技能の1つで、自分か目視した者を別の場所に移動させるのですよ……当然ながら強いイメージが必要になりますが、海に落とすだけなら大した労力はありません」
従者……って確か執事やメイドさんの事だよな?
え、執事やメイドさんって瞬間移動が必須スキルだったの?
何て考えてたら野菜狂信者共が巨大オクトパスに捕まって、ひん剥かれていやがった。
野菜狂信者共は全員男らしいが、あのタコって雌だったのかな?
「師匠の所から凄く大きな声と音が聞こえましたけど大丈夫で……ってキャアーッ!」
「いかん、マレスがアレを見るのはまだ早い!」
「マレスさん、此方は大丈夫ですから持ち場に戻った方が宜しいかと……転移で送ります」
「わ、解りました!」
危なかった……マレスにタープとはまた違ったトラウマを植えてしまう所だったが、ほんの一瞬だったから大丈夫だろう。
もし手遅れだった場合は相応の責任を取らされる可能性もあるが……
「一応転移と同時にあの一瞬の出来事を記憶から消しておきましたのでご心配には及びませんよ……これは業務外なので貸しにしておきます」
シビアだな先輩……ってか俺は本当にバーベキューしか出来ないぞ。
「そう身構えずとも、明日の夕飯は牡蠣を使った料理を作ってくれればそれでいいですよ」
牡蠣ね……了解だ。
ならバーベキューならではの牡蠣料理を作らせて貰うよ。
仕留めた巨大オクトパスは足をたこ焼き、頭を他の料理にするらしい。
という訳で俺もタコの頭の一部を貰って早速仕込みをしよう。
「ウメオに言われた通り、あのヴィガン族共はふん縛って窓のない部屋に監禁しといたよ」
「スマンなサーマ、助かった」
奴等はあのマットさん達から逃げたって事実もあるからな……肉か魚を食わせるまでは大人しくして貰おう。
さて、タコは薄切りにして冷やしておいて……と。
炭火を全体に行き渡らせて……鉄鍋にタップリのオリーブオイル、潰したニンニク、乾燥させた唐辛子、粒のままのコショウ、手で裂いたエリンギを入れて大体90から120度辺りまで加熱する。
後はこの油で薄切りのタコを泳がせてやればバーベキュー式アヒージョの出来上がりだ。
そのまま食っても美味いが今回は炙ったコッペパンにオリーブオイルを垂らしてタコとエリンギ、薄切りのタマネギとトマトを挟んで出す事にする。
オリーブオイルを大量に使ってるからバターやマヨネーズがなくても充分に美味いし、好みでマスタードを塗ってもいい。
「挟んで提供するのは自分がやりましょう、ウメオさんは調理に専念を」
「お願いします」
「こんなに油まみれのオクトパスが凄く美味いな」
「焼いたパンのお陰で手が汚れないのは有難い」
「タマネギがいい仕事をしているし、このキノコも歯応えがあって美味い」
「トマトとオクトパスって相性がいいんだな……知らなかった」
「イチゴちゃんに踏まれたい」
「俺はマレスちゃんに踏まれたい」
因みにアヒージョはオリーブオイルとニンニクで煮る料理の名前で、タコの他にエビやキノコ、鶏肉辺りが使われる。
本来なら薄切りではなくぶつ切りで、コッペパンではなくバゲットかチェロスと一緒に食うんだが……どっちもないからな。
なので俺が作ったのは正確に言うとアヒージョ風タコしゃぶサンドとなる。
でも美味いのは確かだから機会があるなら試してみる事をオススメするぞ。
ってか最後の2人……俺の可愛い妹と弟子をどういう目で見ていやがるんだ?
「ピリッとした油とタコ、美味しい」
「ちょっと辛いけど美味しい!」
うむ、嫁と娘にも好評だな……だがキャリには少し辛かったか。
これは反省せねばなるまい。
そんなこんなでオクトパス祭りも終わって夕飯……
俺の作ったアヒージョサンドとマレスの作った特別料理とやらにセバスさんがいつの間にか作っていたサラダや魚介スープで済ませる。
……本当に、セバスさんはいつの間に作ったんだろうな?
「薄切りのオクトパスに刻んだニンニクとタマネギ、粗挽きのコショウとレモン果汁、醤油にオリーブオイルを混ぜたタレ……これがマレスの特別料理か」
「はい、カツのタタキみたいにしても美味しいんじゃないかと思って試してみました!」
まさか醤油を使ったカルパッチョを作るとは……しかも俺はマレスにカルパッチョなんて教えてないのに。
何故って?マリネと同じくバーベキューで作る料理じゃないからだ。
味は……本来のカルパッチョより此方の方が日本人向きかもしれんな、美味い。
「あ、キャリちゃんの分はニンニクを少なくしてるからおかわりが欲しかったら私に言ってね」
「はーい!」
あのマリネの一件で学んだか……流石だ。
もう魚介類に限って言えば俺を越えたんじゃないか?
とはいえここはやはり師匠らしく……
「この料理はクルエビで作っても美味いかもしれんな」
「成程!明日試してみます!」
うむ、作ったら食わせてくれよ?
確実にマリアとキャリも食いたがるだろうから。
さて、夕飯が終わった所でトゥール様の難題を片付けるとするか。
「じゃあスマンがサーマとベグさんはそいつらの口をこじ開けてこいつを食わせてくれ、それとセバスさんとマレスはどんどん追加を作ってくれ」
「はいよ」
「うむ」
「任されました」
「解りました!」
今回は折角の海辺の街だからイワシのから揚げを用意した。
それも小型のイワシに塩と小麦粉をまぶしカラッと揚げて、骨や頭も食える様にしたから揚げだ。
ご飯のオカズに、酒のツマミに、子供のオヤツにもなる美味い料理……後でまた揚げて俺のツマミにしよう。
因みにキャリにこの光景を見せるのは憚れるのでマリアと一緒に宿に戻って貰ったよ。
代わりに後で5回戦までやらされる事になったけどな!
「ふぁへっ、あふっ、あふいっ!?」
「おっと吐くなよ、折角の命を頂いてるんだから感謝しながら美味しく食うのが礼儀ってもんだ」
とはいえこいつはこの場で作っている揚げたての熱々だからな、ちょっとした拷問に匹敵するかもしれんが熱い内に食うのが美味いんだから仕方ない。
この小型のイワシはまだ大量にあるからな、遠慮はいらんぞ。
「待て、取引だ!我等の次の目的を教えるから見逃してくれ!」
「お、おい貴様!」
ふむ、仲間を見捨てる外道……だが確実な情報なら欲しい。
内容次第でこいつだけは見逃すのもアリかもしれんが……
「どうするセバスさん?」
「では彼の相手は自分が致しましょう、皆さんは引き続き作業を」
よし、食わせるか……特にカーニズ領で俺の命を狙った貴様は絶対に許さん。
「師匠、何だか私達の方が悪い事をしているみたいなんですけど?」
「大丈夫だ、これは女神様の指示だから問題ない」
なお、情報を吐いた奴はセバスさん次第で許してやるが他はタープの1回の食事と同じ量を食わせて、2度目のこいつにはその倍の量を食わせてやった。
これで少しは懲りただろ。
「彼からは有益な情報を引き出せましたよ、よってイワシ2匹分で許して差し上げました……トゥール様の許可も頂きましたので以前にも食べさせた方を含めてウメオさんのノルマに数えて良いそうです」
つまりこれで……後6人か。
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