エルフの森をキャンプ地とする!

ウサクマ

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どーも野菜狂信者さん、知ってるでしょ?ピットマスターでございます

新しい課題・親子丼添え

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マリアの両親との顔合わせは……まあ上手く行った、と思いたい。

確か次はここの族長と会うんだったか……

エルフとはいえ族長となれば大層な婆さんなんだろうなぁ……しかもオークと結婚したそうだし。

そんな話を聞く限りじゃ腹筋の割れたアマゾネスみたいなエルフを想像してしまうんだが……俺、生きて帰れるのか?




……………何て考えていた時があったんだがなぁ。

「よく来たな、ワシが族長のインナーじゃ!」

「あー、その夫でマットという」

どう見てもランドセルが似合いそうな小学生です、本当に……ゲフンゲフン。

これはアレか、いわゆるロリババアって奴なのか?

確かに可愛いとは思うが、俺にそっちの趣味はないからな……可愛い妹より幼く見える様な相手に劣情は抱かんぞ。

そしてマットさんは……全身が緑色で下顎から立派な牙が生えてる、しかも筋肉モリモリマッチョマンという典型的なオークだ。

これが夫婦って絵面がヤバ過ぎやしないか?

日本だったら間違いなく通報案件だわ。

「何じゃ、ワシの顔に何か付いとるか?」

「いや……予想以上に若々しくてビックリしてた」

「ヒャッヒャッヒャ、ここに来た迷い人にはよく言われとるわ!」

よく言われるのか……そりゃそうだな。

「見た目は確かに若いけど、族長はれっきとした580歳……この街の住民は誰も逆らえない、因みにマットさんは3回目の再婚相手で80歳」

完全にロリババアじゃねーか……しかも3回も再婚してんのか。

まあ、普通の人間より寿命が長いエルフだし……そういう奴も居るよな。

ってマットさんも中々の高齢者じゃないか!

その歳でその筋肉……侮れん。

「さて、自己紹介した所で本題に入るかの……ウメオとやら、例の物は作って来たかの?」

「ああ、これだ」

例の物とはコンテストに出す為の肉バーガーの事だ。

これを族長とその旦那……何故かタープとマリアの分まで作らされた。

最もタープは可愛い妹と一緒にマリアの実家で留守番してるんだけどな。



「ふむふむ、成程……流石はマリアが見込んだだけあっていい腕をしておるのう」

「うむ、これなら予選は合格でいいだろう」

……予選ってどういう事だ?

っていうか夫婦揃ってハムハムと食ってんじゃねぇよ、可愛いな。

「ああ、そういえばマリアには言っておらんかったか……今回のコンテストじゃが、余りにも希望者が多過ぎてのう」

「カーニズ族からは勿論、外からも大勢が来てな……流石に1日では決められないと思い予選でふるい落とす事にした」

そんなに多かったのか……確かにマリアは美人だし、行商をしてるから顔もアチコチに知られてるだろうからなぁ。

「因みに合格者はウメオを含めて3人じゃ」

少なっ!?

どんだけ来たかは知らんが、通過したのは俺を入れてたった3人って……

「仕方なかろう、よってたかって肉をただ重ねただけ、肝心の調理はただ焼くか茹でるかぐらいで……味付けも塩かソースぐらいしか使わん奴ばかりで工夫も独自性もなかったんじゃから」

「マリアはこの地の稼ぎ頭だからな、誰でも作れる様な物しか作れない者にはやれんよ」

流石にそれは酷過ぎる料理だな……落とされた奴等は自業自得だ。

最初聞いた時はカーニズ族は掟が第一の偏屈家ばかりかと思っていたんだが、愛されてるなぁマリア……

しかしあのお題で俺以外に通過した2人ってのは気になるな。

「それでの、本戦の課題はこれじゃ」

あ、課題は変わるのか……まあ同じ物ばかり食ってたら飽きるからな。

出て来たのはいかにもな牛のサーロインステーキ……焼き加減はミディアムレアだな。

「これはあえて味付けをしておらん、課題は【この焼き加減の肉に合う味付け】じゃ……それとこの肉以外に形が残る食材を使うのは禁止にするぞ」

「なお、本戦で使う肉は不正がない様に当日こっちで用意するが……自分でこれと同じ様に焼いて貰う」

つまり自分でミディアムレアに焼いた肉に合う味付けをしろ、と。

……こりゃ難しいお題だな。

「因みにこの肉の味見はしてもいいのか?」

「構わんぞ、そんな事を言うたのはウメオだけじゃがな」

ふむ……サーロインには違いないけど脂が少ない、いわゆる牧草だけで育てたグラスフェッドだな。

輸入肉とか、OGビーフと言えば解りやすいか。

この手の肉は脂が少ないせいで固いって欠点があるんだが、レアかミディアムレアなら気にならない程度だ。

というか他2人、どんな肉かも確かめずに合う味付けが出来ると思ってんのか?

「ワシとしてもマリアが自分で見付けた相手と結ばれて欲しいからの、期待しとるぞ……それで本戦は来週じゃ」

「まあ、やってみるよ……ってそういや逃げたら一族の独身男全員の子供を産まされるとか聞いたんだが」

「その掟が適用されるのは一向に働こうとせんニイトという者に限った話じゃ、ここの稼ぎ頭でもあるマリアにそんな事はさせんわい」

「それと掟だが、本来なら200歳までに相手を見付けなくてはいかん所を50年も遅らせたのはその功績があっての事だ……この恩恵が適用されたのはマリアともう一人しか居ないらしいがな」

この世界にもニートが居るのかよ……

まあ、働かないならせめて働き者の子孫は残せって事だな……倫理的にどうかと思わなくはないが納得した。

そしてマリアが相当稼いでいたのも解った。




マリアはまだあのロリババアが話す事があるそうで俺だけ戻って……タープと可愛い妹に経緯を説明してみた。

「それってそんなムズいんか?」

「私でも色々と思い付くけど?」

料理が出来ないタープと肉には詳しくない苺心ならそういう反応が返ってくると思ったよ。

「色々あり過ぎるのが問題なんだ……」

オーソドックスなら塩コショウとガーリックパウダー、醤油、柑橘類の果汁を混ぜた味噌……大量のタマネギを使ったシャンピニオンステーキがある。

日本のレストランとかならデミグラスソースとか、溶かしバターにバルサミコ酢を混ぜたソース、肉汁にマディラ酒を混ぜたソース、おろしポン酢なんかもあるな。

またバーベキューならバーベキューソースやチリソース、バジルソースにレモンバターなんかもイケる。

が、これ等はあくまでも日本なら……だ。

この世界では手に入らない物もあるし、あってもあのロリババアの口に合わない可能性がある。

確証はないがあのロリババア、チリソースだけは絶対口に合わない筈だ……あれスゲー辛いし。

「形の残る食材が使えないという事はベーコンやシャンピニオンステーキ、苺心のレモンジャムも使えない……まさに難題だ」

「そっか……ベーコン禁止は痛いわぁ」

「いや、ベーコンは調味料じゃないし、レモンジャムも肉に使うのはあれきりだからね」

うーん……やはりただ考えてるだけじゃ思い付かん。

「……少し市場でも覗いてみるか」



何故かタープと可愛い妹も着いて来たな……別に構わんけど。

今は懐が寂しいからねだったって何も買わんぞ?

「あ、ミルクが安い!」

ほう、家畜が多いだけあって乳製品は安いのか。

となれば卵なんかも……1個5バランかよ!

まあケンタンやペスカタじゃ12バランだったし、比べれば安いんだが……

卵があってもステーキの味付けには使えんか。

黄身とオリーブオイルを混ぜたソースをステーキに掛けて出す店はあったが正直に言って肉には合ってなかったし、オリーブの匂いが鼻について食うのがキツかった。

しかもその店、翌月には潰れてたしな。

「ねぇお兄ちゃん、私が卵と鶏肉を買うから……夕飯はアレ作ってくれる?」

「卵と鶏肉……ああ、親子丼か」

可愛い妹は肉を余り食わないが親子丼は大好きなんだよな……

しかもここなら米もあるから作ろうと思えば出来る。

専用の鍋はないが、本格的でなければ小型のフライパンで充分だ。

「ウメオ、そのオヤコドンって何や?」

この世界には親子丼がないのか?

まあ牛丼もなかったらしいし、基本的に米の上に何かを乗せた料理という物が存在しないんだろうな。

……ほんの一瞬だけ下ネタをぶっ混みたくなったが、可愛い妹も居るから自重しよう。

「親子丼っていうのは、ニワの肉と卵を一緒に煮た物をコメにぶっかけて食う料理の事だ」

「……それ、美味いんか?」

「お兄ちゃん、説明は間違ってないけどそれじゃ美味しさが伝わらないよ」

いや、そうは言うけどな……他に何て言えばいいんだ?

ま、実際に作って食わせるのが一番か。




よし、コンロに火を入れて人数分の小型フライパンを並べて、と。

コメはマリアのお袋さんが炊いてくれて、今は蒸らしている所だそうだ。

「苺心、人数分の溶き卵の用意をしとけ」

「はーい」

ニワの皮を炒めて出した脂で、薄切りのタマネギとニワ肉に火を通したら鰹節の出汁を入れて煮てやる。

頃合いを見計らって醤油と、溶き卵を流し入れたらコンロに蓋をして、しばし待つ。

個人的に卵は半熟が美味いと思うが、露店のオッチャン曰くこの辺りの卵は生食するには向かないそうだからな……多分マヨネーズが上手く出来なかったのもそれが原因だろう。

最も可能性が高い理由である食中毒は怖いからしっかりと火を通しておく。

後は卵に火が通れば完成だ、こいつを深皿に盛ったコメにぶっかけて親子丼の出来上がりってな。

……どうせなら半熟で食いたかった。

「ホンマに美味いやんか!」

「不思議、ただ煮ただけで何故?」

半熟ならもっと美味かったんだがなぁ……それが口惜しい。

「親子丼が美味しいのはね、ニワの肉をニワが産んだ卵と一緒に煮るからだよ……確か相乗効果っていうのが働くとか何とか」

まあ、簡単に言えば鶏肉に足りない物を鶏卵が補って、逆に卵に足りない物を鶏肉が補うという事だな。

こういう料理は他にも幾つかあるが、解りやすいのはチーズバーガー辺りか。

牛肉で作られたパテに牛乳から作られたチーズを合わせる事で親子丼と同じ様な……

「……これだぁ!?」

「またかいな!今度はどれなんや!?」

一応試作はするが、これなら行けると確信が持てる!

って、そういえば……

「アレってどうやって作ればいいんだ?」

「いや、知らんわ!?」

「アレって、ウメオがよく使ってるあれ?私も知らない」

うーむ、いい考えだと思ったんだがなぁ。

肝心の物が作れなければ意味がない。

「アレなら私、作れるけど?でも確かまだあった筈だよね?」

え……まさかの可愛い妹が知っていた?

あ、よく考えたらアレは製菓材料でもあるからな……

可愛い妹の守備範囲だった訳か。

「これをこうして、こうしたアレが欲しいんだが……出来るか?」

「注文が多いけどそれぐらいなら出来るよ、ハチミツ200グラムね」

ちと痛い出費になるが80バランで作ってくれるなら安い買い物と思う事にしよう。
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