エルフの森をキャンプ地とする!

ウサクマ

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どーも野菜狂信者さん、知ってるでしょ?ピットマスターでございます

出来立てベーコン・ストロベリーパイ添え

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昨日の美人なダークエルフからウシとブタのバラ肉を大量に買う事が出来た。

それとオマケでイノのバラ肉の塩漬けを貰ってしまったぞ。

後、何故か可愛い妹は有り金はたいて大量のイチゴとレモンに小麦粉を買っていたが……まあいいか。

今は豚バラに香辛料を混ぜた塩を刷り込んだり、牛バラを塩水に漬けたりしている所だが……

「はぁ……まだかいな?」

タープの今にも噛り付きそうな視線が怖い。

どんだけベーコンに飢えてるんだよ。

とはいえタープにベーコンの味を教えたのは他でもない俺だからな……ちゃんと責任は取る。

「タープ、ベーコンは早くても朝までは出来ないから紅茶を飲んで待ってろ」

「見るぐらいええやんか、別に減るもんやないやろ?」

お前の視線が怖くて俺の精神力がすり減っているんですがそれは……

「あー苺心、俺にも紅茶を頼む」

「はーい」

俺は普段コーヒーばかり飲むがベーコンを作る時は決まって緑茶か紅茶を飲む。

というのも茶を抽出した後の茶殻、これをスモークチップに混ぜて肉を燻す事でベーコンに爽やかな香りを付けるのが目的だ。

因みにスモークチップはオニグルミを使っているが……まあこの辺は作る側の好みだな。

「そうだ、まだ塩漬け作業に時間が掛かるからな……今ならコンロを使ってもいいぞ」

「え、ホントに!?」

「ただ使い終わった後も炭火は絶やすなよ、改めて着火するのも面倒だ」

「はーい!」



ふぅ、ようやく塩漬けが終わった……

オマケで貰ったイノのバラ肉もいい具合に塩抜き出来たし、これだけなら朝には出来る。

「これ、もう食ってええんか!」

「……駄目に決まってんだろ、このまま2~3日置いて塩抜きしてから燻製しなきゃベーコンにならんし、これも下茹でして燻さなきゃ食えん」

……今のタープはまるで餌の前でお預けさせられる子犬の様だが、全く可哀想に見えないのは何でだろうか?

というかバラ肉を生で食おうとするな。

「そろそろ苺心が美味いお菓子を完成させてる筈だから、それ食って待ってろ」

「しゃあないなぁ……」

さて、コンロが空いた所でイノのバラ肉を軽く茹でて、水気を切っておかないと……

今日はこのイノバラ1つだけだし、茹で汁は朝のスープにでも使うか。

幾つも茹でた後じゃギトギトの脂が胃袋に重くのし掛かるがこれぐらいなら美味いスープになる。

この世界に来る前もそうやって作ったスープは可愛い妹に好評だったしな。

他の家族には食わせた事はおろか匂いすら嗅がせた事がないけど。




「はい、たっぷりイチゴのシカゴピザ風ストロベリーパイ!」

ほう、あのコンロでこれを作ったか。

俺が尊敬するピットマスター(故人)が発行したレシピ本にシカゴピザみたいなアップルパイを掲載していて、それを見せてみたら「私もこれ作ってみたい!」とか言ってたなぁ。

可愛い妹もまさか異世界でそれが叶うとは思っていなかっただろう。

というかこんなデカいパイを3人で食い切れるのかが心配なんだが?

「……このパイ生地はどうやって作ったんだ?強力粉はともかく薄力粉はなかったろ?」

パイ生地は強力粉と薄力粉、それにバターで作る。

焼そば作った後に改めて調べたがやはり強力粉しかなかったし、市場も似た様な物だったが……

「果物探してる時にたまたま孤児院の前を通ったんだけど、パンが作れない麦しか育たないとか言ってたから多分薄力粉なんじゃないかなーと思って、150バランで買えるだけ貰ってきた」

成程……それでパイを作ったんだな。

薄力粉は色々と使えるしベーコン作りが終わったら案内して貰おう。

小麦粉は女神様の頼みを実行するのに強い味方となり得るし、たまにはうどんを打って食いたい。

「はぁぁ……これ甘酸っぱくて美味いやん!この紅茶っちゅー飲み物にもよう合うし、幾らでも食えてまうやん!」

おいタープ、何で1人で4分の1も抱えてるんだ?

残るよりはいいんだがそんなに食ったら太るぞ?

いや、あえて食わせる事でベーコンが出来るまでの時間稼ぎになるか……

味も美味いし、ちゃんと中心まで火が通ってるし甘味と酸味のバランスも見事だ、やはりお菓子は可愛い妹が作った方が美味い。

「いい匂いがしたから来てみたら、大量の脂肉を買ったお兄さん?」

お、肉屋のダークエルフ……脂肉ってバラ肉の事か?

確かに脂は多いけどその呼び方はどうなんだ?

「って店はいいのか?」

「お兄さんのお陰で、今日の商品は全部売れた」

あー、確かに誰かが大量に買うのを見たら「これはいい物らしいぞ!」って心理が働くらしいからな……

それが食い物なら余計に広まりやすいし、売り子が美人なら尚更だろう。

「そういや名乗ってなかったな、俺は梅夫で、こっちは可愛い妹の苺心、そこのワンコがタープだ」

「誰がワンコや!」

「私は行商人のマリア、今後ともご贔屓に」

ダークエルフのマリアか、よし覚えたぞ。

「まあ折角だ、マリアも食うか?」

「モロコシ以外なら喜んで食べる」

モロコシ……ああ、トウモロコシか。

確かに皮が歯に詰まったり独特な匂いがあったりで苦手な奴は居るみたいだしな……

マリアと飯を食う時はトウモロコシを使わない様にしよう。

ってマリアも4分の1を抱えてる……エルフって皆が大食いなのか?




よし、イノバラの水気も切れたし仕上げるか。

スモークチップと紅茶の茶殻をアルミホイルで包んで炭に乗せて、煙が出て来たら網を挟んでアルミホイルの受け皿を敷いて、金属加工で作った一斗缶の中にバラ肉を吊るして被せる。

後は3~4時間ぐらい燻したら一晩寝かせて完成だ。

「はぁ……朝が楽しみやなぁ」

流石にあのサイズのパイを食った後はベーコン食いたいって言わないか……

言われても対処に困るが。

「これがベーコン?」

「ああ、こうやってじっくりと火を通しながら脂を落として、燻製する事で保存が出来る様にするんだ……出来上がったベーコンは肉の旨味を凝縮していて最高の調味料になる」

「……調味料?お肉なのに?」

何でマリアは困惑しているんだ?

ベーコンが調味料というのは常識……ってそういやこの世界にベーコンはないんだった。

「ウメオ、口で説明しただけじゃ絶対に解らへんよ……実際に食わせたらんと」

「それもそうか……マリア、明日の朝にまたここへ来てくれないか?美味いベーコンを食わせてやるぞ」

「確かにベーコンとやらは気になる……けど会ったばかりの異性に言われても警戒する、眠らされて10000バランで売られる可能性がある」

まあ正論ではある……なら何でストロベリーパイ食ったんだって話になるが、作ったのは可愛い妹だしな。

ってやけに具体的な値段だが、まさか売られた経験があるのか?

「安心しぃ、ウメオの作る料理は美味いしタダでええよ」

「タダ飯……絶対行く!」

言っておいて何だが警戒はどうした?

まあいいか、朝からコンロに火を入れるのは疲れるがマリアみたいな美人とお近付きになるチャンスだ、頑張らないとな。

「お兄ちゃん、下心が顔に出てるよ」

「え……マジで?」




早くも朝になった。

朝飯の下拵えもあったし夕飯は外食にして、エールとかいう炭酸のないビールの様な酒を飲んでみたが……妙に生温いし後味も酷かった。

あれで1杯6バランとか詐欺じゃないのか?

他にもイチゴやレモンで作ったワインなんかがあって、やはり生温かったがこれは美味かったな……しかもグラス1杯ではなく瓶1本で3バランと値段も良心的。

特にイチゴのワインは気に入ったから街を出る前にしこたま買い込んでおこう。

そして飲む時はキンキンに冷やしてから飲む。

「おはよう、タダ飯頂戴」

おっと、マリアが来たな……それじゃ仕上げるか。

というかその挨拶はどうかと思うぞ、タダ飯で釣った俺が言うのも何だが美人でなければグーで殴ってる所だ。



予め焼いて脂を落としたベーコンを刻んで溶き卵に混ぜて、ベーコンの脂が残っているフライパンでこれを焼いて、スクランブルエッグにする。

そして昨日の茹で汁は夜の内に角切りにしたタマネギを入れて煮込んであって、そこに角切りにしたニンジン、ジャガイモ、トマトを加えたスープにした。

更にベーコンを厚目のスライスにして、軽く炙った物を出せば出来上がりだ。

主食はこの前と同じくコッペパンを買っておいたから炙りたければ言ってくれ。

「これが……あの脂肉?程よい塩気、適度な歯応え、噛む程に溢れる旨味……美味しい!」

「あぁぁぁ……久しぶりのベーコンや!美味過ぎるわぁ!」

久しぶりって……たった2日食えなかったぐらいで大袈裟な。

というかベーコン食いながら泣くな。

しかしタープの奴、もし俺が日本に帰ると言ったら……ベーコンなしで生きていけるのか?

今から心配になってきたんだが。

「何て言うか……今のタープさんなら【俺のベーコンを毎日食ってほしい】って言えばすんなり結婚してくれそうだよね」

「うわぁ……全く否定が出来へんわ」

「自分で認めちまうのかよ……だがそんなプロポーズをするのは嫌過ぎる」

いくら俺でも、もう少しムードという物を大事にしたい……

その言葉だとベーコン以外を見られてない気がしてならないからな。

どうせ結婚するならベーコンより俺自身を見て欲しい。

「それはそうとお兄ちゃん、パン炙って」

「お、おう」

ま、もしもの時はベーコンの作り方ぐらいは教えてやるけどな。

何ならタープをピットマスターに育てるのもアリか?
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