115 / 122
決戦
新しい姿です
しおりを挟む
サーグァ様を満腹にさせて早5日……屋台を出していたらようやくロウとナクアちゃんが合流しましたよ。
無事だと聞いてはいましたが中々来なくて心配だったけど、これでようやく元通りです。
「ほれザトー、出てこい」
「……不覚、でも、指輪の中、意外と快適」
「あの指輪の中って快適なんですか?」
「ウギッ!」
「サンショクヒルネニオヤツツキダカラナ……ソレニゼンシンまっさーじモアル」
食事やオヤツに全身マッサージまであるのにビックリですが追求は止めておきます。
あたしは中に入れませんし。
その後はロウがイケボスライムと契約して、此方の経緯とロウ達の経緯を聞いて……
「後1回、命令出来るんなら……それで、ちゃんとした契約……出来ない……かな?」
「……翡翠さん、出来るのか?」
「出来なくはないけど、流石の私もその発想はなかったよ」
どうやら出来る様ですね……
何にせよ地の女神の企みは潰せましたから……急いでする必要はないですよね?
「断る、そんな事したら、童貞、感染る」
「いやどうやったって感染らねーよ!」
「なら今から卒業を……」
「しないぞ?」
残念……とはいえ初めては2人きりがいいですからね。
「ねぇキュアお姉ちゃん、どーてーってなぁに?ロウお兄ちゃんは、ナクアにはまだ早いって教えてくれなかったの!」
「……ナクアちゃんが知るのは5年程早い物です」
まだ子供のナクアちゃんに言える訳がありません!
うん、今回は流石にあたしが軽率過ぎましたね……
今後は控えます。
「むー、ロウお兄ちゃんと同じ事言ってる……スパウンちゃんは知ってる?」
「知ってはいるが教える事は出来んぞ……我がクティ様に叱られてしまうからな」
「ナクア、ザトーの事は忘れてたのにそのスライムの事は覚えてたのか?」
「うん!スパウンちゃんは、ナクアといっぱい遊んでくれたんだよ!」
ほほう……それならイケボスライムはナクアちゃんの遊び相手にしとけば安全ですね。
「スパウン……ナクアは、ザトーの事、忘れてた……なのに、何故?」
「いや我に聞かれても……というか怖いからその血の涙を止めろ!」
血の涙ってリアルに流れる物だったんですね……
実際に見たら確かに怖いです。
「ナクアはやはりザトーの事を覚えていなかったのですわね?」
「ああ、ザトーの事はスッパリと忘れてたな……それにクティの事も」
「あ、オマンジュウのお姉ちゃん!」
「わたくしの名前はクティですわよ、覚えておいて下さいまし」
「はーい!」
ああ、オマンジュウのお姉ちゃんと記憶していたから本名が解らなかったんですね……
というか、ナクアちゃんがクティの事を呼んだ瞬間にザトーが血反吐を吐いて倒れましたが……まあ、放っておきましょう。
あたしの屋台は売り切れになったのでロウとナクアちゃん、何故かクティにイケボスライムと一緒に水晶集め……
ってナクアちゃんが一緒なのにトウカとリコッタはまだ屋台を出してるアプさんが預かっていますし。
「ザトーの件が片付いた時に新しい技能を覚えたみたいでな……見ておいた方がいいと思って」
成程……融合の時の様に確認が目的でしたか。
「ナクアには疎通と融合以外の技能は与えていなかった筈ですわよ?」
という事はクティも知らない、と……
まあ粘糸も後から覚えた技能ですからね……それに融合も幅が広くなりましたよ。
「手頃なコボルトが居るな……よしナクア、【変身】」
「はーい!」
変身……名前的に嫌な予感しかしませんね。
ナクアちゃんが光ったと思いきや背後からズシンと地響き、振り返れば……やはりいつぞやの大蜘蛛!?
光ってたからか変化する光景を見なくて済んだのは幸いでした。
……って動く気配がありませんね?
「俺も初めて使ったから良く解らん……指輪で効果を調べたけど詳しい説明がなかったし」
疎通の時は詳しい効果も解ったのに……
まあ、だからこその確認なんでしょうけど。
「まさか……1番戦いに向いていなかったナクアが、わたくしの想像を越えた成長を?」
「ナクアまで強くなられたら我の立場がないのだが……」
クティですら想定していなかった成長……そう考えるとナクアちゃんの伸び代って凄まじい物があるのでは?
おや、大蜘蛛の身体にヒビが……そのまま砕けた?
ってナクアちゃんは無事なんですか!
「ナクア、ぱわーあーっぷ!」
ショートヘアーからセミロングに伸びた髪、身長も20センチ程伸びて、胸がクティよりも大きくなって、仁王立ちで現れたぁ!?
着ている服もメイド服に変わって全体的に黒を強調しつつ白いフリフリが付いていて、スカートには蜘蛛の巢みたいな刺繍を施したゴスロリ衣装?
背中には蜘蛛の足みたいな物が8本……その衣装だと首輪もちょっとしたオシャレになっていますね。
「ロウお兄ちゃん、この格好どう?可愛い?」
「「「「カワイイ(カワイイ)」」」」
全員の意見が一致した貴重な瞬間でした。
見た目は大幅に変わりましたが中身は全く変わっていませんね……安心しましたよ。
「ってあれ?ナクアの技能が変わってる……しかも名称以外がサッパリ解らん」
技能が変わる……ってそんな事があるのですか?
まあ1から確認するしかありませんね。
「よしナクア、【鋼糸】」
ほう、粘糸は掌から出ていましたが鋼糸は背中の蜘蛛の足から出るんですね。
ってコボルトを縛ったと思いきや一気に引いて……輪切りになったぁ!?
ちょっと、えげつなさが増していませんか!
「ナクアちゃん、ちょっとその糸を触ってもいいですか?」
「うん、いいよー!」
どれどれ……成程、糸は粘りがなくてかなりの硬度があります。
触った感じだとワイヤーとか、釣り糸に近い気がしますね。
確かにこれなら武器にもなります。
「次は……ナクア、【同化】」
「はーい!」
「おわぁっ!?」
おや、先程の糸がイケボスライムを掴んで……背中の蜘蛛の足に捕まった?
「ふむふむ……そーだったんだ」
ナクアちゃん……一体何を?
「どーてー、性行為を行った事がない男性の」
「ストーップ!それは声に出してはいけません!?」
これ、何がどうなっているのですか!?
「1回使ったからか効果が頭に入って来たな……つまり同化は背中の蜘蛛の足で捕まえた相手の技能が使えたり、知識を見る技能って事か?」
「そーみたい……でもスパウンちゃんはスライムだから、技能は種族的に無理かな?」
つまりあの魔法を消す魔法は技能ではないと……
「……ねぇキュアお姉ちゃん、クティお姉ちゃん、ちょっとだけナクアと同化して欲しいんだけど、いい?」
「それは構いませんが……」
「わたくしも構いませんわよ」
まあナクアちゃんなら悪用はしないでしょうし、魔法は使えないならあたしやクティの技能でナクアちゃんにも使えそうな物はないですからね。
ってこの蜘蛛の足、やけに力強いですね!
「んー……うん、覚えたー!」
ふぅ、解放されましたか。
って同時にナクアちゃんが元に戻って、服もいつものメイド服になりましたね?
「成程な、どうやらあの変身は1日に3分しか出来ないらしい……技能も元に戻ったぞ」
何処の光の巨人ですか……ナクアちゃん、岩に向かって何を?
「んー……」
……………………………は?
ナクアちゃんの右拳に黒い気が集まって……まさか、魔拳!?
「あれは……闇属性、ですわね」
「えーいっ!」
非力なナクアちゃんの1撃で岩が砕けて……威力も申し分ありませんね!
「……あたし、最初の属性を拳に宿すのに3日は掛かったのですが?」
「……わたくしもそれぐらいでしたわよ」
「次は……こっち!」
また別の岩に向かって、今度は左拳に炎が……こちらは魔力が集まっていますね。
1撃で地面まで焦げてるし此方も威力が凄まじいです。
「あたし、2つ目と3つ目の属性は7日程掛かったのですが?」
「わたくしは2つ目が6日で、3つ目は10日ぐらいでしたわ」
「……ナクアちゃん、1日所か僅か数分でアレですか?しかもあたしは左拳にしか発動しないのに対して両拳」
「スパウン所か、わたくし達の立場すらありませんわね……因みにわたくしは右拳にしか発動しませんわ」
しかしこうして見ると同化……恐ろしい技能ですね。
その気になれば世界征服も容易でしょうが……ナクアちゃんが良い子で本当に良かった。
当のナクアちゃんは何やら不機嫌ですが。
「むー……ライコちゃんと仲良くしたかったのに、キュアお姉ちゃんみたいにビリビリしない!」
あー……ライコと仲良くしたくて、あたしの雷を使いたかったんですね。
あたしもクティも、アッサリ魔拳を習得されたのはショックですが理由が可愛いのでよしとしましょう。
「そういやキュアの鋼は魔力と気を混ぜて出すんだよな?」
「確かにそうですが……」
「なら……こうかな?」
おっと、闇と炎を同時に出してそれを合わせて……って難易度高そうな事を平然と実行しないで!
「気と魔力を同時に操るのも充分に難易度が高いですわよ?」
「まあ、狂信者だから出来たんだろうけどな……何故かナクアも同じ事してるが」
何か気になる事を言っておりますがそれはさておき、闇と炎は消えて何やら微かな光が両手を覆ってますが……妙な耳鳴りがしますね?
って周辺を彷徨いていたゴブリンやコボルトが耳を抑えながら悶えて、次々と水晶に!?
「これは……音波攻撃か?」
「成程……ナクアの3つ目は音属性ですわね」
つまりナクアちゃんの属性は闇、炎、音……音属性とか初めて聞きましたよ。
「……あたしの光とナクアちゃんの炎って交換出来ませんかね?」
「……わたくしの毒とナクアの音って交換出来ないでしょうか?」
「お前等、本当に良く似てるよな……」
夜……ロウがクティに呼ばれて郊外に行ったので後を着けています。
またロウを殺そうというならばあたしが止めなければ……とはいえクティに殺気はないしそんな雰囲気でもありませんね。
「……で、用って何だ?」
「ロウさんにだけはお話しておきますわ……昼間のナクアの姿と技能、あれこそわたくしが最初に造ろうとしたアトラ・ク・ナクアそのものでした」
あの姿のナクアちゃんが……クティが造ろうとしていた本来のアトラク=ナクア?
「ですがわたくしの力ではそれを生み出す事は出来ませんでした、そこで思い付いたのが人と蜘蛛の役割を別け必要に応じて融合するモンスター、ロウさんもよく知るアトラとナクアですわ……最も融合した姿はわたくしの理想とは違いましたけれど」
成程……人としての頭脳と、蜘蛛の力を1体ではなく2人に別ける事で安定させたのですか。
「はっきりと申し上げますがあの姿のナクアは、アトラと融合した本来の姿よりも強いでしょう……きっとロウさんと出会った事がナクアの成長に繋がったのですわね」
「えっと……この場合はどういたしまして、でいいのか?」
それは何かが違う気がしますが、後を着けたのがバレるから黙っておきます。
「……ですが貴方は、ナクアのあの力をどうお使いになるつもりですの?」
それを聞き出すのがクティの目的だったんですね。
って、あの時以上の威圧感が……返事次第でロウを殺すつもりですか!?
「まあ……たまに水晶集めるのに使うぐらいだな」
「…………はぁ?」
何で素っ頓狂な声を出してるんですかクティ……気持ちは解りますけども。
あの姿のナクアちゃんが水晶集めってオーバーキルにも程がありますよ。
「俺は別に、ナクアが強いからって理由で契約した訳じゃないからな……俺にとってナクアはキュアと同じぐらい大切にしたい存在だから傍に居て欲しい、それだけだ」
ロウ……ナチュラルにあたしの体温を急上昇させるは止めてくれませんかね?
いや、凄く嬉しいんですけども。
「まさか……あれだけの力を手に入れておきながら、何の野心もないんですの?」
「やっぱり親子だな、さっき翡翠さんを通じてハイドラ様にも同じ事を聞かれたぞ……俺はキュアとナクアが傍に居ればそれで満足だ、それ以上は望まないよ」
あ、もう心臓が限界です……鼻血が出そうです。
ってあの威圧感が消えた?
「……どの道キュアさんと引き分けた時点でわたくしの負け、アルラ様の計画も潰された以上ロウさんを殺しはしませんわ」
「そうか……それは助かった」
正直ですねロウ……そこがいいんですけど。
「ロウさん……ナクアは非常にヤンチャな娘ですが、宜しくお願い致します」
「……絶対に幸せにすると約束するよ」
終わってみれば只の結婚の挨拶でしたね……
まあ無事に終わったんなら何よりです。
さて、気付かれる前に戻って寝ますか。
無事だと聞いてはいましたが中々来なくて心配だったけど、これでようやく元通りです。
「ほれザトー、出てこい」
「……不覚、でも、指輪の中、意外と快適」
「あの指輪の中って快適なんですか?」
「ウギッ!」
「サンショクヒルネニオヤツツキダカラナ……ソレニゼンシンまっさーじモアル」
食事やオヤツに全身マッサージまであるのにビックリですが追求は止めておきます。
あたしは中に入れませんし。
その後はロウがイケボスライムと契約して、此方の経緯とロウ達の経緯を聞いて……
「後1回、命令出来るんなら……それで、ちゃんとした契約……出来ない……かな?」
「……翡翠さん、出来るのか?」
「出来なくはないけど、流石の私もその発想はなかったよ」
どうやら出来る様ですね……
何にせよ地の女神の企みは潰せましたから……急いでする必要はないですよね?
「断る、そんな事したら、童貞、感染る」
「いやどうやったって感染らねーよ!」
「なら今から卒業を……」
「しないぞ?」
残念……とはいえ初めては2人きりがいいですからね。
「ねぇキュアお姉ちゃん、どーてーってなぁに?ロウお兄ちゃんは、ナクアにはまだ早いって教えてくれなかったの!」
「……ナクアちゃんが知るのは5年程早い物です」
まだ子供のナクアちゃんに言える訳がありません!
うん、今回は流石にあたしが軽率過ぎましたね……
今後は控えます。
「むー、ロウお兄ちゃんと同じ事言ってる……スパウンちゃんは知ってる?」
「知ってはいるが教える事は出来んぞ……我がクティ様に叱られてしまうからな」
「ナクア、ザトーの事は忘れてたのにそのスライムの事は覚えてたのか?」
「うん!スパウンちゃんは、ナクアといっぱい遊んでくれたんだよ!」
ほほう……それならイケボスライムはナクアちゃんの遊び相手にしとけば安全ですね。
「スパウン……ナクアは、ザトーの事、忘れてた……なのに、何故?」
「いや我に聞かれても……というか怖いからその血の涙を止めろ!」
血の涙ってリアルに流れる物だったんですね……
実際に見たら確かに怖いです。
「ナクアはやはりザトーの事を覚えていなかったのですわね?」
「ああ、ザトーの事はスッパリと忘れてたな……それにクティの事も」
「あ、オマンジュウのお姉ちゃん!」
「わたくしの名前はクティですわよ、覚えておいて下さいまし」
「はーい!」
ああ、オマンジュウのお姉ちゃんと記憶していたから本名が解らなかったんですね……
というか、ナクアちゃんがクティの事を呼んだ瞬間にザトーが血反吐を吐いて倒れましたが……まあ、放っておきましょう。
あたしの屋台は売り切れになったのでロウとナクアちゃん、何故かクティにイケボスライムと一緒に水晶集め……
ってナクアちゃんが一緒なのにトウカとリコッタはまだ屋台を出してるアプさんが預かっていますし。
「ザトーの件が片付いた時に新しい技能を覚えたみたいでな……見ておいた方がいいと思って」
成程……融合の時の様に確認が目的でしたか。
「ナクアには疎通と融合以外の技能は与えていなかった筈ですわよ?」
という事はクティも知らない、と……
まあ粘糸も後から覚えた技能ですからね……それに融合も幅が広くなりましたよ。
「手頃なコボルトが居るな……よしナクア、【変身】」
「はーい!」
変身……名前的に嫌な予感しかしませんね。
ナクアちゃんが光ったと思いきや背後からズシンと地響き、振り返れば……やはりいつぞやの大蜘蛛!?
光ってたからか変化する光景を見なくて済んだのは幸いでした。
……って動く気配がありませんね?
「俺も初めて使ったから良く解らん……指輪で効果を調べたけど詳しい説明がなかったし」
疎通の時は詳しい効果も解ったのに……
まあ、だからこその確認なんでしょうけど。
「まさか……1番戦いに向いていなかったナクアが、わたくしの想像を越えた成長を?」
「ナクアまで強くなられたら我の立場がないのだが……」
クティですら想定していなかった成長……そう考えるとナクアちゃんの伸び代って凄まじい物があるのでは?
おや、大蜘蛛の身体にヒビが……そのまま砕けた?
ってナクアちゃんは無事なんですか!
「ナクア、ぱわーあーっぷ!」
ショートヘアーからセミロングに伸びた髪、身長も20センチ程伸びて、胸がクティよりも大きくなって、仁王立ちで現れたぁ!?
着ている服もメイド服に変わって全体的に黒を強調しつつ白いフリフリが付いていて、スカートには蜘蛛の巢みたいな刺繍を施したゴスロリ衣装?
背中には蜘蛛の足みたいな物が8本……その衣装だと首輪もちょっとしたオシャレになっていますね。
「ロウお兄ちゃん、この格好どう?可愛い?」
「「「「カワイイ(カワイイ)」」」」
全員の意見が一致した貴重な瞬間でした。
見た目は大幅に変わりましたが中身は全く変わっていませんね……安心しましたよ。
「ってあれ?ナクアの技能が変わってる……しかも名称以外がサッパリ解らん」
技能が変わる……ってそんな事があるのですか?
まあ1から確認するしかありませんね。
「よしナクア、【鋼糸】」
ほう、粘糸は掌から出ていましたが鋼糸は背中の蜘蛛の足から出るんですね。
ってコボルトを縛ったと思いきや一気に引いて……輪切りになったぁ!?
ちょっと、えげつなさが増していませんか!
「ナクアちゃん、ちょっとその糸を触ってもいいですか?」
「うん、いいよー!」
どれどれ……成程、糸は粘りがなくてかなりの硬度があります。
触った感じだとワイヤーとか、釣り糸に近い気がしますね。
確かにこれなら武器にもなります。
「次は……ナクア、【同化】」
「はーい!」
「おわぁっ!?」
おや、先程の糸がイケボスライムを掴んで……背中の蜘蛛の足に捕まった?
「ふむふむ……そーだったんだ」
ナクアちゃん……一体何を?
「どーてー、性行為を行った事がない男性の」
「ストーップ!それは声に出してはいけません!?」
これ、何がどうなっているのですか!?
「1回使ったからか効果が頭に入って来たな……つまり同化は背中の蜘蛛の足で捕まえた相手の技能が使えたり、知識を見る技能って事か?」
「そーみたい……でもスパウンちゃんはスライムだから、技能は種族的に無理かな?」
つまりあの魔法を消す魔法は技能ではないと……
「……ねぇキュアお姉ちゃん、クティお姉ちゃん、ちょっとだけナクアと同化して欲しいんだけど、いい?」
「それは構いませんが……」
「わたくしも構いませんわよ」
まあナクアちゃんなら悪用はしないでしょうし、魔法は使えないならあたしやクティの技能でナクアちゃんにも使えそうな物はないですからね。
ってこの蜘蛛の足、やけに力強いですね!
「んー……うん、覚えたー!」
ふぅ、解放されましたか。
って同時にナクアちゃんが元に戻って、服もいつものメイド服になりましたね?
「成程な、どうやらあの変身は1日に3分しか出来ないらしい……技能も元に戻ったぞ」
何処の光の巨人ですか……ナクアちゃん、岩に向かって何を?
「んー……」
……………………………は?
ナクアちゃんの右拳に黒い気が集まって……まさか、魔拳!?
「あれは……闇属性、ですわね」
「えーいっ!」
非力なナクアちゃんの1撃で岩が砕けて……威力も申し分ありませんね!
「……あたし、最初の属性を拳に宿すのに3日は掛かったのですが?」
「……わたくしもそれぐらいでしたわよ」
「次は……こっち!」
また別の岩に向かって、今度は左拳に炎が……こちらは魔力が集まっていますね。
1撃で地面まで焦げてるし此方も威力が凄まじいです。
「あたし、2つ目と3つ目の属性は7日程掛かったのですが?」
「わたくしは2つ目が6日で、3つ目は10日ぐらいでしたわ」
「……ナクアちゃん、1日所か僅か数分でアレですか?しかもあたしは左拳にしか発動しないのに対して両拳」
「スパウン所か、わたくし達の立場すらありませんわね……因みにわたくしは右拳にしか発動しませんわ」
しかしこうして見ると同化……恐ろしい技能ですね。
その気になれば世界征服も容易でしょうが……ナクアちゃんが良い子で本当に良かった。
当のナクアちゃんは何やら不機嫌ですが。
「むー……ライコちゃんと仲良くしたかったのに、キュアお姉ちゃんみたいにビリビリしない!」
あー……ライコと仲良くしたくて、あたしの雷を使いたかったんですね。
あたしもクティも、アッサリ魔拳を習得されたのはショックですが理由が可愛いのでよしとしましょう。
「そういやキュアの鋼は魔力と気を混ぜて出すんだよな?」
「確かにそうですが……」
「なら……こうかな?」
おっと、闇と炎を同時に出してそれを合わせて……って難易度高そうな事を平然と実行しないで!
「気と魔力を同時に操るのも充分に難易度が高いですわよ?」
「まあ、狂信者だから出来たんだろうけどな……何故かナクアも同じ事してるが」
何か気になる事を言っておりますがそれはさておき、闇と炎は消えて何やら微かな光が両手を覆ってますが……妙な耳鳴りがしますね?
って周辺を彷徨いていたゴブリンやコボルトが耳を抑えながら悶えて、次々と水晶に!?
「これは……音波攻撃か?」
「成程……ナクアの3つ目は音属性ですわね」
つまりナクアちゃんの属性は闇、炎、音……音属性とか初めて聞きましたよ。
「……あたしの光とナクアちゃんの炎って交換出来ませんかね?」
「……わたくしの毒とナクアの音って交換出来ないでしょうか?」
「お前等、本当に良く似てるよな……」
夜……ロウがクティに呼ばれて郊外に行ったので後を着けています。
またロウを殺そうというならばあたしが止めなければ……とはいえクティに殺気はないしそんな雰囲気でもありませんね。
「……で、用って何だ?」
「ロウさんにだけはお話しておきますわ……昼間のナクアの姿と技能、あれこそわたくしが最初に造ろうとしたアトラ・ク・ナクアそのものでした」
あの姿のナクアちゃんが……クティが造ろうとしていた本来のアトラク=ナクア?
「ですがわたくしの力ではそれを生み出す事は出来ませんでした、そこで思い付いたのが人と蜘蛛の役割を別け必要に応じて融合するモンスター、ロウさんもよく知るアトラとナクアですわ……最も融合した姿はわたくしの理想とは違いましたけれど」
成程……人としての頭脳と、蜘蛛の力を1体ではなく2人に別ける事で安定させたのですか。
「はっきりと申し上げますがあの姿のナクアは、アトラと融合した本来の姿よりも強いでしょう……きっとロウさんと出会った事がナクアの成長に繋がったのですわね」
「えっと……この場合はどういたしまして、でいいのか?」
それは何かが違う気がしますが、後を着けたのがバレるから黙っておきます。
「……ですが貴方は、ナクアのあの力をどうお使いになるつもりですの?」
それを聞き出すのがクティの目的だったんですね。
って、あの時以上の威圧感が……返事次第でロウを殺すつもりですか!?
「まあ……たまに水晶集めるのに使うぐらいだな」
「…………はぁ?」
何で素っ頓狂な声を出してるんですかクティ……気持ちは解りますけども。
あの姿のナクアちゃんが水晶集めってオーバーキルにも程がありますよ。
「俺は別に、ナクアが強いからって理由で契約した訳じゃないからな……俺にとってナクアはキュアと同じぐらい大切にしたい存在だから傍に居て欲しい、それだけだ」
ロウ……ナチュラルにあたしの体温を急上昇させるは止めてくれませんかね?
いや、凄く嬉しいんですけども。
「まさか……あれだけの力を手に入れておきながら、何の野心もないんですの?」
「やっぱり親子だな、さっき翡翠さんを通じてハイドラ様にも同じ事を聞かれたぞ……俺はキュアとナクアが傍に居ればそれで満足だ、それ以上は望まないよ」
あ、もう心臓が限界です……鼻血が出そうです。
ってあの威圧感が消えた?
「……どの道キュアさんと引き分けた時点でわたくしの負け、アルラ様の計画も潰された以上ロウさんを殺しはしませんわ」
「そうか……それは助かった」
正直ですねロウ……そこがいいんですけど。
「ロウさん……ナクアは非常にヤンチャな娘ですが、宜しくお願い致します」
「……絶対に幸せにすると約束するよ」
終わってみれば只の結婚の挨拶でしたね……
まあ無事に終わったんなら何よりです。
さて、気付かれる前に戻って寝ますか。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説

ダークナイトはやめました
天宮暁
ファンタジー
七剣の都セブンスソード。魔剣士たちの集うその街で、最強にして最凶と恐れられるダークナイトがいた。
その名を、ナイン。畏怖とともにその名を呼ばれる青年は、しかし、ダークナイトをやめようとしていた。
「本当に……いいんですね?」
そう慰留するダークナイト拝剣殿の代表リィンに、ナインは固い決意とともにうなずきを返す。
「守るものができたからな」
闇の魔剣は守るには不向きだ。
自らが討った聖竜ハルディヤ。彼女から託された彼女の「仔」。竜の仔として育てられた少女ルディアを守るため、ナインは闇の魔剣を手放した。
新たに握るのは、誰かを守るのに適した光の魔剣。
ナインは、ホーリーナイトに転職しようとしていた。
「でも、ナインさんはダークナイトの適正がSSSです。その分ホーリーナイトの適正は低いんじゃ?」
そう尋ねるリィンに、ナインは平然と答えた。
「Cだな」
「し、C!? そんな、もったいなさすぎます!」
「だよな。適正SSSを捨ててCなんてどうかしてる」
だが、ナインの決意は変わらない。
――最強と謳われたダークナイトは、いかにして「守る強さ」を手に入れるのか?
強さのみを求めてきた青年と、竜の仔として育てられた娘の、奇妙な共同生活が始まった。
(※ この作品はスマホでの表示に最適化しています。文中で改行が生じるかたは、ピンチインで表示を若干小さくしていただくと型崩れしないと思います。)


出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる