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決戦
何か間違ってるスライムの使い道です
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アプさん達と合流した翌朝……
あの薬のお陰か身体の調子は良いのですがクティのうめき声のせいでロクに寝れませんでしたよ。
何にせよ今日はまだ組手も鍛練も出来ないので、ライコと一緒に朝食でも作りますか。
「ライコ、食料を用意してくれますか?」
「ウギィッ!」
ふむふむ……アプさんは卵と日持ちする根菜、それにビフー肉を追加で買って来てくれたんですね。
卵は病人にとって有難い食材ですから新鮮な内に食べます。
それに翡翠さんが買って来たとかいう、羽根を毟り取っただけの丸ごとのクックー肉が2羽……何故に丸ごと?
別にクックーなら解体は簡単だし、クックーの内臓も食べたいと思っていたので構いませんけども。
「今回ピーニャが凄く頑張ってくれたからねぇ……ご褒美のリクエストを聞いたらクックー1羽を抱えて食べたいって」
ああ……ピーニャに1羽、あたし達が1羽で2羽でしたか。
ならばピーニャの希望を聞いておかねばいけませんね、リーアさんの時の様な事がないとも言い切れませんし。
「丸ごとを御所望との事ですが、それは手羽先、内臓、頭や足までを含めた丸ごとですか?」
「アタマトアシハドウデモイイケド、テバサキハタベタイ……ソレニきゅあノツクルナイゾウリョウリハウマイカラコベツニタベタイデス」
ふむ、頭と足はどうでもよくて手羽先と内臓は食べたいと……
ならばアレを作るとして、内臓はあたし達の分と一緒に作ればいいですね。
どっちも手間が掛かるのが欠点ですが。
「今からクックーの内臓を血抜きしたり出汁を取ったりするので早くても夕飯になりますが構いませんか?」
「ダイジョウブダ、モンダイナイ」
その台詞は死亡フラグだった様な……まあ精々美味しく作らせて頂きますよ。
さて、朝食に卵かけご飯と味噌汁を食べた所で仕込みに入りますか。
因みにあたし以外は卵を生で食べるのに抵抗があるらしく焼いて食べましたよ。
卵かけご飯、美味しいんですけどねぇ。
「そういえばライコはまだ肉の解体をやった事がありませんでしたね……都合良く2羽ありますし、やってみますか?」
「ウギッ!」
良い返事ですね、ではしっかりと覚えて下さい。
まずは肛門から指が2本入るぐらいの切れ目を入れて内臓を掻き出して、と。
当然この内臓も食べるから傷付けない様に丁寧に取り除きますよ。
って2羽とも雌でしたか……生まれる前の卵、通称キンカンが詰まってました。
それにレバー、丸肝、砂肝、背肝、心臓……さがりは少々溶けかけているので止めておきましょう。
とりあえず内臓は塩水に漬けて血抜きして、首と足を切り落としたら水洗いして、よく拭き取ってと。
足といっても切り落とすのは先端のもみじと呼ばれる部分だけですけどね。
今回は丸ごと料理するので丸のクックーは重曹を溶かした水に漬けておけば夕方には柔らかくなっているでしょう。
「ウギィ!?」
「ふむ、流石はライコ……見事な処理です」
キンカンの一部が潰れているのに目を瞑ればデストさんばりの仕上がりですよ。
「まずこのキンカンという部位とレバー、心臓からいきましょう……水とお酒、醤油、それからアマミズもしくはハチミツを合わせて弱火で煮るだけですが肝は火を通し過ぎるとパサパサになるから注意です」
「ウギッ!」
クックーに限らずレバーは特に好き嫌いの別れる部位で、嫌われる理由の大半はそのパサパサ、もしくは独特な臭みが挙げられます。
臭みは下処理や下拵えでカバー出来ますしパサパサは火を通し過ぎなければ済む話ではありますが……クックーのレバーは生、半生だと当たる可能性がありますからね。
ってレバーについて考えていたらビフーのレバ刺しが食べたくなってしまいました……生食可能ならばボリアに戻った時にでもデストさんに作って貰いましょう。
「他の部位は食べやすい大きさに切ったら串に刺して、焼きながら塩を振れば美味しく頂けます」
いわゆる焼き鳥という奴です。
丸ごとのクックーを料理するのでなければぼんじりや尻脂、後はキンカンと一緒に煮た心臓なんかも美味しく食べられる料理ですが……今回の場合、全部ピーニャが食べる事になりますね。
あ、焼き鳥は串に刺して焼くだけだから料理じゃないだろとか抜かす奴はその場で鼻の骨をへし折られたって文句は言えませんからね。
それを居酒屋なんかで言ったら他のお客からジョッキやビール瓶を投げつけられた挙げ句に中身入りの一升瓶で殴られますよ、あたしの父がされた様に。
「おっと、次はこの頭ともみじを弱火で煮込んで出汁を取りましょう……その間にライコは昼食の用意を」
「ウギッ!?」
夕方……丸のクックー肉がいい感じに柔らかくなった所でクティが目覚めて、コカちゃんも合流しましたよ。
よっぽど急いだのか息も絶え絶えですけど……体力はあたし以下なのに無茶をしますね。
まあ、毒で寝たきりになってたあたしを見られなくて良かったと思っておきます。
「ほら……黒いスライム、何とか……捕まえられたよ」
「……申し訳ありませんクティ様、不覚をとりました」
「まあ、いいですわ……スパウンが捕まるのは想定内ですし」
相変わらず仏頂面で女子高生に名刺を突きだすアイドルプロデューサーみたいなイケボをしてますねこのスライムは……
そしてイケボスライムがコカちゃんに勝てないのも想定済と。
どうやらコカちゃんの策が上手く行った様で縮んで瓶に入っておりますが……水に浮いていたら黒い毬藻みたいになりますかね?
うん、想像してみましたが……喋らない毬藻の方がまだ可愛げがあります。
「あの……皆さんと合流なさった様だし、そろそろ水だけでも」
「ロウくんと、ナクアちゃん……まだだから……駄目」
意外と厳しいですねコカちゃん。
まあ、このイケボスライムはまだ敵ですから……ロウが契約するまでは安心出来ませんよね。
というか最初に会った時に比べて随分と卑屈になっている様な?
もしかしてスライムって身体の大きさと態度の大きさが比例しているのでしょうか?
「……そういえばアプさんと翡翠さんが倒したモンスターの水晶はどうしたのですか?」
「それなら私からハイドラ様に送っておいたよ、今はトゥグア様と一緒に居るみたいだから大丈夫でしょ」
成程、それなら問題はありませんね。
あたしが送る場合何かしら食べ物を要求されそうで、移動中だからロクな物を渡せませんし。
さて、続きを作っていきますか。
調理はあたしとライコでやりますが何故かコカちゃんとクティが見学してますけど……言えば教えますよ?
コカちゃんには。
よし、水気を拭き取った丸のクックー肉にリーアさんに生やして貰ったハーブのみじん切りを刷り込んで……
内臓を取り除いて空洞になったお腹に米とみじん切りのタマネギを積めて、料理用の糸で切り口を縛ってと。
大量の塩に卵白を混ぜて、それをクックー肉が埋まるぐらいに塗りたくって……
「き、キュアちゃん……そんなに塩、使って……大丈夫なの?」
「安心して下さい、これは間違いなく美味しい物です」
勿論ただ塩を塗りたくるだけではルイエのお魚みたいに塩辛くなるだけですが、卵白を混ぜる事で中の食材は必要以上の塩を吸収しなくなるのです。
難しい理屈は解りませんけど、つまりはそういう事です。
ルイエのお魚は本当に塩しか使っていませんでしたからね……せめて塩に卵白を混ぜていれば美味しかったでしょうに。
余った黄身はオヤツの時間に豆乳、アマミズの水と合わせてプリンを作って……アプさんと翡翠さん、ピーニャとロシンが美味しく頂きました。
あたしも食べたかった……
おっと、塩で包んだ後は石釜で1時間……じっくりと焼けば出来上がりです。
この塩釜焼きはいわゆる蒸し焼きで、普通に焼くより柔らかく仕上がりますし……丸ごとだから贅沢感があります。
去年のクリスマスはお小遣いを貯めて買った丸鶏で同じ物を作って、ロウと2人きりで食べましたが後始末が大変でしたね……まあ今回その心配は要らないでしょう。
「随分と手間が掛かる割に大雑把な料理ですわね?」
そりゃ極論を言えば塩で包んで焼くだけですからね……
さて焼いてる間に、頭ともみじから取った出汁にほぐしたもみじと首の肉を入れて塩、醤油で味付けすれば美味しいスープになります。
出来れば青ネギがあればよかったのですが、流石のリーアさんも見た事すらない物は生やせないと言ってましたから諦めます。
後は食べる時に甘辛く煮たキンカンを温めて串に刺した内臓を焼けばよし。
「ウマイ、メチャクチャウマイゾ!ヤワラカクテくっくーノアジガコイ、シオカゲンモチョウドイイシ、ナカノコメガマタウマイ!」
ふふふ、仕込みと焼きに手間が掛かるから余り作りたくはないのですが好評ですね。
あたし達はライコが作った方を食べていますが味はバッチリでした。
「コノクシニサシタナイゾウトすーぷモウマイシ、アマカラクニテアルノモイケル!」
やはりピーニャも味が解る鳥ですね。
幻獣使いと契約した幻獣って皆がグルメになるのでしょうか?
「皆が味に五月蝿くなる訳じゃないよ、種族的に食べれない物があったりするし元々の好き嫌いが治る訳でもないから」
「……つまりスコルは生まれつきベジタリアンだったんですか?」
「まあね」
どんな生き方をすれば狼がベジタリアンに……
気になりはしますが今は聞かなくてもいいですね。
「本当に……丁度良い塩加減……あんなに、塩……使ってたのに」
「あんな料理のやり方でこんなに美味しいとは思いませんでしたわ……というかキュアさん、わたくしの分にタマネギ入れ過ぎではありません?」
ハハハ、まさかそんな……まあライコが詰めたせいかタマネギが寄っていた部分があって、そこをクティに分けたりはしましたけどわざとではありませんよ。
「しかし塩は叩いて壊して、それは食べないってんだからねぇ……贅沢過ぎやしないかい?」
「大丈夫です、使い道は考えてありますから」
さて全員食べ終わった所で……
「コカちゃん、ちょっとイケボスライムを瓶から出して下さい」
「え……うん」
「ふぅ、やっと出られるのか……ってここは鍋の中?しかもツルツルしてて動き難い!」
因みにその鍋はこの休憩所に置き去りにされていた物で、所々に錆が出ていたのを洗って油を塗っておいたのです。
流石に料理に使う気にはなりませんがスライムを入れるのには丁度良いでしょう。
残った骨はこのイケボスライムに食べて貰えばゴミを出さずに済みますからね、お腹一杯お食べなさい。
「……おい娘、確かに我は味が解らんと言ったが幾ら何でもこれは酷くないか?」
「黙って食べなさい、塩漬けにしますよ?」
スライムの癖に贅沢を言うんじゃありませんよ。
食べさせるだけ有難いと思いなさい。
「ぐぬぬ……こんなサイズでなければ断固拒否していた物を!」
よし、残さず食べましたね。
次はこの焼いて砕いた塩を食べさせて、と。
「ん?また身体が縮んで……まさかまた塩か!?」
サイズが元に戻ったらまた瓶に詰めて、これで良し。
このゴミの処理はちょっとした思い付きでしたが意外と便利かもしれません。
「おいコラ、まさか貴様はこの我をゴミ箱代わりに使ったというのか!」
「何を言っているのですか、貴方はゴミ箱よりも役に立っていますよ」
「全く嬉しくないぞ!」
ゴミ箱では溜まった中身を埋めるか燃やす必要がありますが、スライムならそれがありませんからね。
もし日本に居たら一気にゴミ問題が解決していたでしょう。
あ、でもこのイケボスライムから出た黒い液体はどうしますかね?
「もしかしてそれスライムの魔力?なら私が貰っていいかな?」
「……これ、大量の塩が混じってますが使い道あるんですか?」
「スライムの魔力はエーテル……解りやすく言えば麻酔や痛み止めの材料になるんだよ、塩は分離すれば済む話だし問題はないね」
これ薬になるんですか!?
……もしかしてこれ、売ればお金になるのでは?
「アルケミストでなければ使い道がないし、売るなら先に専用の顧客を見付けた方がいいかもね……私が買ってもいいけど、もう少しでハイドラ様の世界に帰らなきゃいけないし難しいかな」
そういえば翡翠さんの目的は今回の事で果たされたんでした……寂しくなりますね。
ともかくロウがこのイケボスライムと契約すれば、水晶集め以外の集金手段になり得ます。
頑張って稼いで貰わねば……5年後の結婚式の為にも。
あの薬のお陰か身体の調子は良いのですがクティのうめき声のせいでロクに寝れませんでしたよ。
何にせよ今日はまだ組手も鍛練も出来ないので、ライコと一緒に朝食でも作りますか。
「ライコ、食料を用意してくれますか?」
「ウギィッ!」
ふむふむ……アプさんは卵と日持ちする根菜、それにビフー肉を追加で買って来てくれたんですね。
卵は病人にとって有難い食材ですから新鮮な内に食べます。
それに翡翠さんが買って来たとかいう、羽根を毟り取っただけの丸ごとのクックー肉が2羽……何故に丸ごと?
別にクックーなら解体は簡単だし、クックーの内臓も食べたいと思っていたので構いませんけども。
「今回ピーニャが凄く頑張ってくれたからねぇ……ご褒美のリクエストを聞いたらクックー1羽を抱えて食べたいって」
ああ……ピーニャに1羽、あたし達が1羽で2羽でしたか。
ならばピーニャの希望を聞いておかねばいけませんね、リーアさんの時の様な事がないとも言い切れませんし。
「丸ごとを御所望との事ですが、それは手羽先、内臓、頭や足までを含めた丸ごとですか?」
「アタマトアシハドウデモイイケド、テバサキハタベタイ……ソレニきゅあノツクルナイゾウリョウリハウマイカラコベツニタベタイデス」
ふむ、頭と足はどうでもよくて手羽先と内臓は食べたいと……
ならばアレを作るとして、内臓はあたし達の分と一緒に作ればいいですね。
どっちも手間が掛かるのが欠点ですが。
「今からクックーの内臓を血抜きしたり出汁を取ったりするので早くても夕飯になりますが構いませんか?」
「ダイジョウブダ、モンダイナイ」
その台詞は死亡フラグだった様な……まあ精々美味しく作らせて頂きますよ。
さて、朝食に卵かけご飯と味噌汁を食べた所で仕込みに入りますか。
因みにあたし以外は卵を生で食べるのに抵抗があるらしく焼いて食べましたよ。
卵かけご飯、美味しいんですけどねぇ。
「そういえばライコはまだ肉の解体をやった事がありませんでしたね……都合良く2羽ありますし、やってみますか?」
「ウギッ!」
良い返事ですね、ではしっかりと覚えて下さい。
まずは肛門から指が2本入るぐらいの切れ目を入れて内臓を掻き出して、と。
当然この内臓も食べるから傷付けない様に丁寧に取り除きますよ。
って2羽とも雌でしたか……生まれる前の卵、通称キンカンが詰まってました。
それにレバー、丸肝、砂肝、背肝、心臓……さがりは少々溶けかけているので止めておきましょう。
とりあえず内臓は塩水に漬けて血抜きして、首と足を切り落としたら水洗いして、よく拭き取ってと。
足といっても切り落とすのは先端のもみじと呼ばれる部分だけですけどね。
今回は丸ごと料理するので丸のクックーは重曹を溶かした水に漬けておけば夕方には柔らかくなっているでしょう。
「ウギィ!?」
「ふむ、流石はライコ……見事な処理です」
キンカンの一部が潰れているのに目を瞑ればデストさんばりの仕上がりですよ。
「まずこのキンカンという部位とレバー、心臓からいきましょう……水とお酒、醤油、それからアマミズもしくはハチミツを合わせて弱火で煮るだけですが肝は火を通し過ぎるとパサパサになるから注意です」
「ウギッ!」
クックーに限らずレバーは特に好き嫌いの別れる部位で、嫌われる理由の大半はそのパサパサ、もしくは独特な臭みが挙げられます。
臭みは下処理や下拵えでカバー出来ますしパサパサは火を通し過ぎなければ済む話ではありますが……クックーのレバーは生、半生だと当たる可能性がありますからね。
ってレバーについて考えていたらビフーのレバ刺しが食べたくなってしまいました……生食可能ならばボリアに戻った時にでもデストさんに作って貰いましょう。
「他の部位は食べやすい大きさに切ったら串に刺して、焼きながら塩を振れば美味しく頂けます」
いわゆる焼き鳥という奴です。
丸ごとのクックーを料理するのでなければぼんじりや尻脂、後はキンカンと一緒に煮た心臓なんかも美味しく食べられる料理ですが……今回の場合、全部ピーニャが食べる事になりますね。
あ、焼き鳥は串に刺して焼くだけだから料理じゃないだろとか抜かす奴はその場で鼻の骨をへし折られたって文句は言えませんからね。
それを居酒屋なんかで言ったら他のお客からジョッキやビール瓶を投げつけられた挙げ句に中身入りの一升瓶で殴られますよ、あたしの父がされた様に。
「おっと、次はこの頭ともみじを弱火で煮込んで出汁を取りましょう……その間にライコは昼食の用意を」
「ウギッ!?」
夕方……丸のクックー肉がいい感じに柔らかくなった所でクティが目覚めて、コカちゃんも合流しましたよ。
よっぽど急いだのか息も絶え絶えですけど……体力はあたし以下なのに無茶をしますね。
まあ、毒で寝たきりになってたあたしを見られなくて良かったと思っておきます。
「ほら……黒いスライム、何とか……捕まえられたよ」
「……申し訳ありませんクティ様、不覚をとりました」
「まあ、いいですわ……スパウンが捕まるのは想定内ですし」
相変わらず仏頂面で女子高生に名刺を突きだすアイドルプロデューサーみたいなイケボをしてますねこのスライムは……
そしてイケボスライムがコカちゃんに勝てないのも想定済と。
どうやらコカちゃんの策が上手く行った様で縮んで瓶に入っておりますが……水に浮いていたら黒い毬藻みたいになりますかね?
うん、想像してみましたが……喋らない毬藻の方がまだ可愛げがあります。
「あの……皆さんと合流なさった様だし、そろそろ水だけでも」
「ロウくんと、ナクアちゃん……まだだから……駄目」
意外と厳しいですねコカちゃん。
まあ、このイケボスライムはまだ敵ですから……ロウが契約するまでは安心出来ませんよね。
というか最初に会った時に比べて随分と卑屈になっている様な?
もしかしてスライムって身体の大きさと態度の大きさが比例しているのでしょうか?
「……そういえばアプさんと翡翠さんが倒したモンスターの水晶はどうしたのですか?」
「それなら私からハイドラ様に送っておいたよ、今はトゥグア様と一緒に居るみたいだから大丈夫でしょ」
成程、それなら問題はありませんね。
あたしが送る場合何かしら食べ物を要求されそうで、移動中だからロクな物を渡せませんし。
さて、続きを作っていきますか。
調理はあたしとライコでやりますが何故かコカちゃんとクティが見学してますけど……言えば教えますよ?
コカちゃんには。
よし、水気を拭き取った丸のクックー肉にリーアさんに生やして貰ったハーブのみじん切りを刷り込んで……
内臓を取り除いて空洞になったお腹に米とみじん切りのタマネギを積めて、料理用の糸で切り口を縛ってと。
大量の塩に卵白を混ぜて、それをクックー肉が埋まるぐらいに塗りたくって……
「き、キュアちゃん……そんなに塩、使って……大丈夫なの?」
「安心して下さい、これは間違いなく美味しい物です」
勿論ただ塩を塗りたくるだけではルイエのお魚みたいに塩辛くなるだけですが、卵白を混ぜる事で中の食材は必要以上の塩を吸収しなくなるのです。
難しい理屈は解りませんけど、つまりはそういう事です。
ルイエのお魚は本当に塩しか使っていませんでしたからね……せめて塩に卵白を混ぜていれば美味しかったでしょうに。
余った黄身はオヤツの時間に豆乳、アマミズの水と合わせてプリンを作って……アプさんと翡翠さん、ピーニャとロシンが美味しく頂きました。
あたしも食べたかった……
おっと、塩で包んだ後は石釜で1時間……じっくりと焼けば出来上がりです。
この塩釜焼きはいわゆる蒸し焼きで、普通に焼くより柔らかく仕上がりますし……丸ごとだから贅沢感があります。
去年のクリスマスはお小遣いを貯めて買った丸鶏で同じ物を作って、ロウと2人きりで食べましたが後始末が大変でしたね……まあ今回その心配は要らないでしょう。
「随分と手間が掛かる割に大雑把な料理ですわね?」
そりゃ極論を言えば塩で包んで焼くだけですからね……
さて焼いてる間に、頭ともみじから取った出汁にほぐしたもみじと首の肉を入れて塩、醤油で味付けすれば美味しいスープになります。
出来れば青ネギがあればよかったのですが、流石のリーアさんも見た事すらない物は生やせないと言ってましたから諦めます。
後は食べる時に甘辛く煮たキンカンを温めて串に刺した内臓を焼けばよし。
「ウマイ、メチャクチャウマイゾ!ヤワラカクテくっくーノアジガコイ、シオカゲンモチョウドイイシ、ナカノコメガマタウマイ!」
ふふふ、仕込みと焼きに手間が掛かるから余り作りたくはないのですが好評ですね。
あたし達はライコが作った方を食べていますが味はバッチリでした。
「コノクシニサシタナイゾウトすーぷモウマイシ、アマカラクニテアルノモイケル!」
やはりピーニャも味が解る鳥ですね。
幻獣使いと契約した幻獣って皆がグルメになるのでしょうか?
「皆が味に五月蝿くなる訳じゃないよ、種族的に食べれない物があったりするし元々の好き嫌いが治る訳でもないから」
「……つまりスコルは生まれつきベジタリアンだったんですか?」
「まあね」
どんな生き方をすれば狼がベジタリアンに……
気になりはしますが今は聞かなくてもいいですね。
「本当に……丁度良い塩加減……あんなに、塩……使ってたのに」
「あんな料理のやり方でこんなに美味しいとは思いませんでしたわ……というかキュアさん、わたくしの分にタマネギ入れ過ぎではありません?」
ハハハ、まさかそんな……まあライコが詰めたせいかタマネギが寄っていた部分があって、そこをクティに分けたりはしましたけどわざとではありませんよ。
「しかし塩は叩いて壊して、それは食べないってんだからねぇ……贅沢過ぎやしないかい?」
「大丈夫です、使い道は考えてありますから」
さて全員食べ終わった所で……
「コカちゃん、ちょっとイケボスライムを瓶から出して下さい」
「え……うん」
「ふぅ、やっと出られるのか……ってここは鍋の中?しかもツルツルしてて動き難い!」
因みにその鍋はこの休憩所に置き去りにされていた物で、所々に錆が出ていたのを洗って油を塗っておいたのです。
流石に料理に使う気にはなりませんがスライムを入れるのには丁度良いでしょう。
残った骨はこのイケボスライムに食べて貰えばゴミを出さずに済みますからね、お腹一杯お食べなさい。
「……おい娘、確かに我は味が解らんと言ったが幾ら何でもこれは酷くないか?」
「黙って食べなさい、塩漬けにしますよ?」
スライムの癖に贅沢を言うんじゃありませんよ。
食べさせるだけ有難いと思いなさい。
「ぐぬぬ……こんなサイズでなければ断固拒否していた物を!」
よし、残さず食べましたね。
次はこの焼いて砕いた塩を食べさせて、と。
「ん?また身体が縮んで……まさかまた塩か!?」
サイズが元に戻ったらまた瓶に詰めて、これで良し。
このゴミの処理はちょっとした思い付きでしたが意外と便利かもしれません。
「おいコラ、まさか貴様はこの我をゴミ箱代わりに使ったというのか!」
「何を言っているのですか、貴方はゴミ箱よりも役に立っていますよ」
「全く嬉しくないぞ!」
ゴミ箱では溜まった中身を埋めるか燃やす必要がありますが、スライムならそれがありませんからね。
もし日本に居たら一気にゴミ問題が解決していたでしょう。
あ、でもこのイケボスライムから出た黒い液体はどうしますかね?
「もしかしてそれスライムの魔力?なら私が貰っていいかな?」
「……これ、大量の塩が混じってますが使い道あるんですか?」
「スライムの魔力はエーテル……解りやすく言えば麻酔や痛み止めの材料になるんだよ、塩は分離すれば済む話だし問題はないね」
これ薬になるんですか!?
……もしかしてこれ、売ればお金になるのでは?
「アルケミストでなければ使い道がないし、売るなら先に専用の顧客を見付けた方がいいかもね……私が買ってもいいけど、もう少しでハイドラ様の世界に帰らなきゃいけないし難しいかな」
そういえば翡翠さんの目的は今回の事で果たされたんでした……寂しくなりますね。
ともかくロウがこのイケボスライムと契約すれば、水晶集め以外の集金手段になり得ます。
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異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
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