あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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決戦

VSヘビ ※アプ視点

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目の前が真っ白になったと思ったらいつの間にか森の中?

転移って技能は他者には使えないとか聞いてたんだが……どうやら聞いた相手には出来ないって事だったらしい。

まあ聞いたのも150年前だし、その間に技能自体が強化された可能性もあるが……他の従者はアトラとナクアぐらいしか知らない上にナクアは転移が出来ないらしいし。

で、この見覚えがありまくる森は……間違いなくンガイだねぇ。

まさかこんな形で里帰りする羽目になるとは思わなかったが……ここに居るのはあたいだけか?

「おっと、アプさんは一緒だったみたいだね」

「翡翠もここに来てたのかい……」

となるとナクアは元々クティの部下で戦闘向きじゃあないと知ってるだろうし……こっちに正体不明の2体が居ると見て間違いないだろうね。

「で、この森の何処にお嬢様のモンスターが居るのか解る?近くに居るなら幻獣ならではの気配を感じられるんだけどサッパリで」

……何で幻獣使いではないあたいが知ってると思ったんだい?

地の利はあるから多少の予測は付くけど、アテにされても困るんだよ?

「この木の並びからして……この先に視界の開けた広場があった筈だ、そこなら木々に邪魔されず戦えるから居るとすればそこが怪しいね」

昔はそこでアーチの奴とよく喧嘩してたもんだが……

200年前に子供が作れない身体と知った途端女装が趣味になって、そのまま同性愛に目覚めちまいやがって。

確かに妊娠させるのは不可能だが自分で妊娠するなら可能性があるとは言われたらしいけど。

別にあたいは気にしないって言ったのに……まあ、お陰でパクと出会えてコカを授かれたと思えばあたいにとってはむしろ良かったけどねぇ。

度々持ってくる厄介事がなければ、だけど。



「おお、確かに広いね……」

「念のために言っとくが植物に影響が出る薬なんかをバラまくのは止めとくれよ、この辺りには緑じゃ育たない貴重なキノコがあって、そいつだけは弁償が出来ないからねぇ」

今更ながらヤバい場所で喧嘩してやがったもんだよ……あたいとアーチは。

ま、あの時は基本取っ組み合いで魔法なんかは使ってなかったしセーフだろ。

「となるとコレとコレは使えないか……なら代わりにアレとアレを準備して」

本当にあったのかい……先に言っといて良かったよ。

……ん?

「木々がざわめいてるねぇ……お出ましかい?」

「……みたいだね」

さて、どんなモンスターが来るのやら。

ゴーストやレイスじゃなければいいんだが……

「メェーッ!」

「シャーッ!」

あたいの2倍はありそうな背丈で太くて黒い蛇と……確かあれはイレムにしか生息してないヤギとかいう生き物だったか?

ヤギの体毛は白か茶色だと思ったがあいつは黒い……あのスライムといいタコといい、クティが作るモンスターは見た目が黒くなり易いのかねぇ?

アトラとナクアは色白だったけど。

で、よく見たら2匹とも首輪にプレートが……蛇は【モルディ】、ヤギは【ニグラス】……名前か?

態々書いてある辺り奴等は喋れないと思って良さそうだ。

まあ、ロウが契約するモンスターは既に決まってるから奴等は遠慮なく始末が出来るが……

「さて、翡翠はどっちを……ん?」

……何で翡翠はガタガタと震えてあたいに抱き付いているんだい?

あんた、間違いなくあたいより強いだろ?

「無理、ムリ、むり、むぅーりぃーっ!?わ、私、ヘビだけは駄目なのぉーっ!?」

おおい!?

何でこんな状況になるまでそれを言わなかったんだい!

……いや、あたいも人の事は言えないか。

特にグヌットじゃキュアが居なかったら全滅もありえた。

「きっとあのヘビはお嬢様が私の対策に作ったんだ!私の苦手な物を知ってるのはハイドラ様とお嬢様だけだもん!」

いや、苦手なのは解ったがちゃんと戦って貰わないとねぇ……流石のあたいも初見のモンスターを重り付で2対1はキツいんだよ?

とはいえ幽霊が苦手なあたいが言っても効果はないだろうし、方法は1つしかないねぇ。

「……なら、あの蛇が視界から消えればいいんだね?翡翠はあのヤギになら勝てるのかい?」

「ヘビじゃなければ死んでも勝つよ!」

戦えないよりはいいけど、死なれたらそれはそれで困るんだが……まあ、いいさ。

だったらあたいが蛇を始末すれば済む話だ。

「リーア、聞こえてるだろう?あたいが蛇を掴んだら、そのまま隔離しな!」

悪いとは思ったが翡翠を振り払って蛇の尾を掴んだ……のはいいがやけに硬くてヌメヌメしてやがる!

流石にナメクジとかいうスライムの亜種が出してた触手程じゃあないが、このヌメりと硬さは厄介そうだねぇ。

おっと、弦が壁の様にびっしりと生えたのは……リーアの隔離が上手く行ったみたいだ。

「シャーッ!」

「……そう慌てんじゃないよ、今から存分に相手をしてやるさ」

さあ、狩りを始めようじゃないか。




「シャーッ!」

図体はデカいのが厄介だが攻撃は頭突き、噛みつき、巻き付き、尾の殴打か刺突……後は叩き付けるぐらいか。

普通のヘビと大差ないならやり様は幾らでもあるねぇ。

だが、あの皮膚のヌメりと硬さはどうした物やら……

硬いだけなら何とかなるんだが……あのヌメりのせいでこっちの攻撃がズラされちまう。

締め上げようにも巻き付かれたらあたいが力負けするのは目に見えてるし、皮膚を裂こうにも刃物がないときた。

父さんなら手刀で行けただろうけどあたいじゃ無理だろうね。

もしくはキュアの鋼ならあのヌメりを弾いて皮膚を砕けたんだろうが……まあ、ない物は仕方がない。

「シャーッ!?」

そういやあの首輪、あのヌメりで落ちたりはしないのかい?

力任せに締め付けてる様には見えないし針みたいな物で固定してる訳でもなさそうだが。

……ちょいと試してみるか。

頭突きに来た所で首輪を狙って盾!

「シャァーッ!?」

……効いてる?

痛みのせいか一段とヌメりが出てやたらとテカテカしていやがるが……成程、あの首輪を境にヌメりが出てない部分があるねぇ。

つまり狙うなら首から上って事かい。

だが解った所で……あたいはそこまで高くは跳べないし、盾を警戒したのか頭突きと噛みつきをしなくなっちまった。

だからって盾を投げても届きやしないだろうし……あのヌメりじゃ走って登るのも無理だねぇ。

やっぱり胴体に攻撃するしかないか、となるとヌメりをどうにかしないと……待てよ?

そういえばあのナメクジと戦った時、キュアがヌメりは塩で取れるとか言ってたね。

行商人が行き来する様になる前のンガイじゃ山から採ってきたピンク色の岩を削った物を塩の代わりに使っていた……

それは2ヶ月に1度エルフの男達が集めに行って、この森の中に建てた小屋で保管していた筈……イノシシ騒ぎがあったしまだあるかどうかは解らないが、やってみるか。

となるとこの蛇を小屋まで誘導しないとねぇ……幸いここから近いんだが、無駄足にならない事を祈るよ。





よし、小屋は無事だったね。

後は中にあるかどうか……

「シャーッ!!」

っく、もう追い付きやがった!

デカい図体してどんだけ素早いんだい!

早く見つけないと……ってあたいの掌ぐらいの塊しかないじゃないか!?

まあないよりはマシか……出来れば削った奴が欲しかったんだが仕方ない、割と硬いからこれでも武器の代わりぐらいにはなるだろ。

投げて眼にでも当たってくれりゃ有難いが……

「シャーッ!」

しまった!

あたいとした事が捕まっちまうとは……締め上げる力はそんなでもないがこのままじゃ体力切れで負けちまう。

しかも盾まで一緒に締め上げられちまったら攻撃が……効くとは思えないがこの岩で何とかするしかないか。

って良く見ればこいつの皮膚……米粒ぐらいの鱗がビッシリとくっついてんのかい?

つまり硬いのは皮膚じゃなくて鱗?

そういや、鱗といえば確か……




『いいかお嬢、蛇の鱗を剥がす時はな……ちゃんと仕留めてから塩で擦りながらヌメりを取って水洗いして、頭を切り落としたら包丁かナイフを尾から頭に向けて動かすんだ……ほら、簡単だろ?』

『う、うん……でも、蛇って……食べられるの?』

『勿論だ、蛇の肉と皮はキチンと下処理をすれば美味いし栄養も豊富なんだぜ……まあ頭と内臓には毒がある場合があるから食わない方がいいし、蛇の血は色々と効き過ぎるからしっかり抜けよ』




あの時に食ったスイギョウザとやらはスープに入ってた蛇の皮が固かったけど本当に美味かったねぇ。

その場に酒が無かったのは悔やまれるが……あの蛇の餃子を肴に酒を飲んでみたい物だよ。

「鱗を剥がすには尻尾から頭、だったねぇ…………ふぅ、おらぁっ!」

「シャ、シャァーッ!」

何でかバキバキって音がしながら……ヌメりと一緒に鱗も取れた様だね。

よっぽど痛かったのか投げ飛ばされちまったが、そのままグネグネドスンドスンと暴れていやがるよ。

成程、仕留めてからってのはあんな風に暴れちまうからか。

あの鱗もよっぽど硬かったのかあたいが握ってた岩も砕けちまったが、これだけ隙間が出来れば盾で充分切れる筈だ。


「スゥゥ……おらぁっ!」

「ギシャーッ!」

よし、切れた!

後はこの切り傷に腕を突っ込んで……核を握り潰してやるよ!

「シャァァァーッ!シャアアアーッ!」

この感触、例の水晶だね!

ならこいつを引っこ抜けば……あたいの勝ちだ!

「あんたも運がなかったねぇ……相手があたいでなければ長生き出来たろうに」




水晶を身体から引き剥がして暫くは暴れていたが跡形もなく消えちまったねぇ。

……まあ、あたいが浴びた血しぶきはそのままなんだが。

どうせならこの血ごと消えりゃ良かった物を。

ふぅ、それにしても今回はキュアとデストに助けられちまったかい。

結婚の御祝儀は弾んでやらなきゃバチが当たっちまいそうだよ。

おっと、コカからのテレパス……無事に終わったみたいだね。

流石はあたいの娘だ。

「さて、と……翡翠の方はどうなってるのやら」

ま、翡翠なら大丈夫だろ……キュアとロウが不安だが無事ならいいんだけどねぇ。

……とりあえず、戻る前にあの蛇が暴れたせいで壊れた小屋を直すとするか。
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