あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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決戦

戦闘……の直前です

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ムリアを立って2日……遂にクティと対決する時が来てしまいましたね。

流石に荷車や屋台は邪魔になるので休憩所に押し込んで、盗まれない様にスコルとバイコとライコが見張りをしてくれる事になっています。

それとサーグァ様(分体)も留守番になります。

翡翠さんは7体中3体が居なくて戦闘は大丈夫かと思いましたが……まあリーアさんも強いし何とかなるでしょう。

というかライコとスコルは信頼していますがバイコは……まあ盗人の貞操がどうなろうがあたし達の知った事ではありませんか。

「それじゃ最後の確認ね、お嬢様が来たらザトーって娘とスライム以外は倒しちゃって良し、戦闘中にはぐれたらこの先にあるイレムの村で集合、その場合荷車や屋台はスコル達が運ぶよ、一応戦闘が終わったら私かアプさんに連絡……テレパスのスクロールは皆持ったよね?」

前日になって翡翠さんが提案してきたから急遽作ったスクロールですね……最もスクロールでは送れるメッセージは予め決めておいた定型文のみになる様ですけど無事は確認出来ます。

まさかコカちゃんのコンバートであたしの魔法までスクロールに出来るとは思いませんでした。

ついでにヒールや支援魔法のスクロールも作って持たせようかと思いましたが使うのにも魔力を消費するし、どうせなら売った方が役に立つと言われたので諦めました。

まあ数を持てばその分邪魔になるのは間違いないですからね……

レイスやゴーストが相手ならまだしも実体があって物理攻撃が通じる相手なのは解っていますし。

多分コカちゃんが戦う事になるだろう、魔法が通じないイケボスライムも対策を用意してある様だし、大丈夫でしょう。

それはそうと翡翠さん、仮にも上司の娘を倒しちゃって構わないと言ってる様に聞こえましたが?

「あ、お嬢様に折檻するのはキュアちゃんに任せるから好きにやっちゃって」

はい、言質を頂きました。

とはいえあたしが勝てるとは限りませんが、後からやり過ぎだって言われても知りませんからね?

怪我なら簡単に治せますけども……って、初めてクティに会った時の様な圧迫感?

ようやくお出ましですか。




ってクティだけ?

他のモンスター……あのザトーとかいう奴とイケボスライムにその他が見当たりませんね。

「お久しぶりですわね、キュアさん」

「出来れば襲撃するのを忘れてて欲しかったのですがね……レンのコンテストの時みたいに」

あの後クティに急用が出来たから、って誤魔化すの大変だったんですよ?

何かを察したらしいセバスチャンさんが居なかったらコンテストの中止もありえましたし。

「う……し、仕方ないではありませんか!あの時はまだ翡翠に見付かる訳にはいかなかったのですから!」

「……だったら最初からコンテストに来るなって話になりますが?」

「……キュアさんは釣り立ての魚を目の前にして我慢が出来ますの?」

出来ませんね。

そういえばクティは蕎麦が好物とか言ってましたっけ……成程、あの時のクティの気持ちは理解しました。

「ってわたくしは態々こんな話をする為にここまで来た訳ではありませんわ!」

「知ってます」

ロウを殺すとかほざいていたのはちゃんと覚えておりますとも。

その為に今まで鍛えてきたのですから。

「お嬢様、ここにはキュアちゃんと漫才をする為に来たの?」

「「漫才ではありません!?」」

おいクティ……何であたしの声に重ねるんですか?

「ちょっとキュアさん、何でわたくしの声に重ねますの?」

「キュアとクティって割と息が合うな」

「うん……ちょっと、妬けちゃうな」

否定したいのに全く出来ないのは何故でしょうね……本当に。

ですがコカちゃん、あたしはコカちゃん以外の嫁を持つ気はありませんよ!



「ああもう……【転移】!」

転移……って確か瞬間移動をする従者の習得必須技能?

って……いつの間にか皆が居なくなった!?

まさかあれだけの動作であたし以外の全員を!

「少なくともロウさんは確実に殺さなくてはなりませんし、わたくしとキュアさんの戦いは誰にも邪魔をされたくありませんの……よって他の皆様には移動して頂きましたわ」

うかつでした……他のモンスターを連れていない時点でこうなるのは察する事が出来た筈なのに。

というか転移って自分以外を移動させる事も出来るとは知りませんでした。

「……皆を何処へ?」

「ロウさんとナクアはルルイ、コカさんはセラエ、翡翠とアプさんはンガイに送らせて頂きましたわ」

セラエなら魔術ギルドのウィラコさんが居るからコカちゃんはとりあえず安心ですが……

ンガイはアプさんの故郷だし、翡翠さんも一緒ならまず負ける事はないでしょう。

ルルイは確か王様達がカチコミに向かった場所で……知り合いが全く居ないのは不安です。

まあ……今は皆を信じるしかありませんね。

それに皆の居場所がここからそんなに離れていないのも助かりました……早ければ10日程で集合出来るでしょう。

「というかロウとナクアちゃんは一緒にしたんですね?」

「仮に離した所でロウさんが呼べば直ぐに合流してしまいますし、ザトーの希望でもありますわ」

あのサイコパスシスコン……そんなにナクアちゃんに会いたかったのですか?

でもそれとなくナクアちゃんに聞いてみたら姉はアトラさんだけだとか言っていた様な?

まあそれは置いといて……

「最後に1つ……何故クティがあたしとなんですか?」

ぶっちゃけあたしよりアプさんの方が強いですからね……

「何故でしょうね……正直わたくしにも解りませんが、キュアさんだけはわたくしが戦わなくてはならない、と思っただけですわ」

自分でも解らないって……まあ理解出来なくもないですが。

あたしも空手の団体戦とかでは【こいつだけは自分が倒さないと】って、明確な根拠もなしに思った時がありました。

どういう訳かその感覚は的中率が高いんですよね……個人戦では他のメンバーがそいつに負けていましたし。

多分ですが空手に限らず、武道や格闘技を経験した人にしか解らない感覚でしょうけれど。

この世界に来てからそういうのはご無沙汰ですがね……だってこの世界、あたしより強い人しか居ないのですから。

「では……そろそろ始めましょう、わたくしとキュアさんの、最初で最後の勝負を」

「ええ……受けて立ちますよ」

相変わらずあの圧迫感や威圧感がありますが、棒立ちしか出来なかったあの時とは違います。

あたしだってこの世界に来てから遊んでいただけではありませんからね。

色んな方々から学び、代わりに料理を教えて、時には戦って、料理を振る舞って、魚を釣って、料理して、調味料を布教して、料理して……

何故でしょうか……鍛練も修行も特訓も濃密にしていた筈なのに、思い出せるのはほぼ料理をしている所ばかりなんですけど?

あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?




「あ、そういえばレンの領主からクティに渡す予定だった参加賞の蕎麦粉を預かっているのですが……どうします?」

「……これが終わったら頂きますわ」
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