あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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菜食主義者と炭酸水

炭酸を使うデザートです

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リーアさんと特訓する様になって、かつライコに料理を教える様になって早3日……

ライコはレシピをスポンジで水を吸い込む様に覚えてくれるのは有難いのですが、こっちはかなり難航しています。

まさかあたしの学習能力は猿以下……いやまさかそんなはずはない……ですよね?

きっとライコが特別物覚えが良いだけ……だと信じたい。

「はい、隙だらけですよ」

「しmごふぅっ!?」

ぐぬぬ……綺麗なフォームの踵落としがあたしの脳天に。

というかクティ(のコピー)って足技ばかりですね!

出来れば魔拳の対策で手技の方が見たいのですが……まあ魔拳は同じ師匠に習った身ですし、リーアさんは知らないでしょう。

戦闘スタイルもほぼムエタイっぽいから元々蹴りの方が得意なんでしょうね。

「最初に比べたら割と打ち合える様にはなってますけどね……私の知る限りとはいえ普通の人間がお嬢様と張り合えるって凄い事ですよ?」

「そう言われても今一実感がありませんが……」

何せ連敗続きですし。

「……忘れているのかも知れませんが、お嬢様は中級神であるハイドラ様の娘にしてアルラ様の眷属ですからね?そんなのに普通の人間が戦うというのは、木刀を持った子供が甲冑を着込んだ騎士に挑むのと同じ事ですよ」

あー……成程?

よく解りませんが元の地力が違い過ぎる、というのは伝わりました。

というか仮にも主人の上司の娘をそんなのとか言っていいんでしょうか?




さて、今日の夕飯は全てライコに作らせてみましたが……

因みにライコは今、ナクアちゃんのメイド服のセットになっているエプロンを身に付けています。

……意外と似合っていたのは内緒ですよ。

「唐揚げ、味噌汁、リンゴ入りのサラダ、それにシジミの酒蒸しか?」

「まさか僅か3日でここまで作れる様になれるとは……」

本当に有能な猿ですね。

此方としても教え甲斐がありますよ。

「コノカラアゲ、ケッコウウマイガ……カンダトキニじゅわっトスルカンジガナイナ」

「ウギィ……」

ふむ……確かに肉汁が滴る感覚がありませんね。

原因は恐らく揚げ過ぎでしょう。

鶏肉は二度揚げする必要がありますし、よくある失敗という奴です……あたしも何度かやりました。

まあ味噌汁と酒蒸しは美味しく作れていますから及第点ですけどね。

というかライコ、ペンを走らせていますが貴方字を書けたんですか?

後で筆談が出来るかどうか試してみるとしましょう。

「このサラダ……何だか、不思議な味がする」

入っているのはグリンとリンゴ、モロシにピンクの果物?

何やら甘酸っぱくてグミみたいな食感ですね……一体何でしょうか?

ドレッシングはすりおろしたリンゴとタマネギにレモン果汁とダイズ豆から絞った油を混ぜて作った様で……フルーツだらけなこのサラダに良く合ってます。

「これって豆汁の実かい?初めて食ったが結構イケるじゃないか」

あ、豆汁の実でしたか……

コーヒーの実も食べれば凄く美味しい、という話は聞きますし豆汁の実が美味しいのも納得です。

これでジャムを作ったら凄く美味しくなりそうですが……

「ウギィ」

「小腹が空いてた時にたまたま見つけた実を食べてみたら美味しかったから使ってみた、だって!」

「それ、農家が栽培してる実じゃないですよね?」

「ウギィ!」

「農家は中の種だけ取って残りは棄ててたから問題ないぜ、って!」

ならば良し。

廃棄した物を拾うな、と言いたい所ではありますがちゃんと洗っていたのは見ましたし、美味しいので今回だけは黙っておきましょう。

一応明日にでも断りを入れるとして、本当に物を覚えるのが早いですね……この吸収の早さは羨ましくもあります。

「やっぱ私も料理を覚えた方がいいのかな……でもライコがここまで美味しく作ってるし……いやでも」

何やら翡翠さんが葛藤をなさっておりますが……

覚えたいなら幾らでも教えますけどね。




そして向かえた特訓4日目……

「……やった!」

あたしの拳がようやくクティ(のコピー)に入ったぁ!

そのまま蹴り返されてダウンしてしまいましたが……まあ進展はあったので良しとしましょう。

次は全力の鋼をぶち混んでやります。

「驚きました……女神様達からの称号を持っているとはいえ、まさかたった4日でここまで」

あ、あたしが頂いた称号はご存知だったんですね?

別に隠していた訳ではありませんけど。

「……実を言うと本物のお嬢様は紙装甲でして、今のキュアさんの攻撃なら当たりさえすれば何とかなるかと」

まさかの弱点がここで判明した……もっと早くに聞きたかったのですがそれは置いておきます。

とはいえ紙装甲はお互い様なので気が抜けない事に変わりはないですね。

そもそも神様基準の紙装甲だとしたらアテには出来ませんし。





さて、出立ギリギリまではあのコピーで鍛練を続けたかったのですが目標は達成したから後は身体を休めろと指示されてしまいましたよ。

そういえば師範も「試合の前は身体を休めて挑め」とか言ってましたね。

当時10歳のあたしは中学生部門にごり押しで参加させられましたが……因みに結果は4位でしたけど割と奮闘出来た方じゃないですかね?

その翌年は高校生部門にごり押しされて2回戦敗退でしたけど!

まあ休めと言われつつもアプさんとの組手は続けますけどね……もはや日課ですし。

「……ジャガイモよし、ダイズ豆よし、リンゴにアマミズの補充もよし、と」

今日の夕飯はコカちゃんが作るのでメニューを考える必要はないし……おや?

「ウギィ!」

「また来たな、持ってくか?」

ライコ……既に農家の方と仲良くなってるし。

日本じゃ猿は害獣扱いか、見せ物扱いでしたけど……よく見たら中身の種を取り出す作業を手伝ってますし。

確かにあの果肉は美味しかったんでまた食べられるなら嬉しいですが……いい物を閃きました。




さてと、アマミズと重曹とレモン果汁を用意しまして……

屋台で安売りしていたリンゴ、オレンジ、イチゴ……それと豆汁の実を同じ大きさになる様に切り揃えたらガラスの器で冷やしておいて、と。

同時に牛乳を温めながらアマミズの粉とゼラチンを溶かした物を冷やしておけば杏仁豆腐もどきが出来ます。

もどきなのは杏仁霜がないからですが……まあ牛乳ゼリーでも美味しいので問題はありません。

後は食べる直前に甘さ控えめに作った炭酸水に浸せば今日のデザート……フルーツポンチの出来上がりです。

ナタデココとかがあれば良かったのですが……生憎あたしは作り方を知りませんし、以前デストさんに聞いたら解らんとか言われましたよ。

おっと、呑兵衛なアプさんには……アマミズの代わりにお酒から作った炭酸水も用意しておきます。

確か日本でもスパークリング焼酎とか、炭酸入りの日本酒なんて物が流行っていたそうだし、(多分)美味しく食べられる筈です。

レモン果汁は最小限の量にしたしフルーツを多目に入れたから酸味はキツくない筈ですから大丈夫でしょう。

流石にお酒の味見は出来ませんからね……興味はあるんですがあたしはまだ未成年ですし。

あ、一応間違えない様にお酒には目印を着けておきます。

万が一お酒がナクアちゃんの口に入ってしまったら一大事ですからね。

「……ウギィ」

おっと、豆汁の実はライコが手に入れた物……

勿論ライコの分も用意してありますとも。

此方はリンゴと豆汁の実だけで、炭酸も弱めに作った物です。

ちゃんと味わって食べるのですよ。



「フルーツポンチって美味しーね!」

「シュワシュワして……甘くて、美味しい」

「コノシロイカタマリガイケルナ」

「ミャア」

ピーニャとトウカまでフルーツポンチ……というか杏仁豆腐もどきだけ拾って食べてるし。

元が牛乳だから興味が出たんでしょうけど。

こんな事ならもう少し多目に作っておくんでした。

「まさか酒がこんなに甘くなっても美味かったなんてねぇ……」

甘いのはフルーツや杏仁豆腐もどきなのでお酒自体が甘くなった訳ではありませんよ?

まあ甘いお酒は梅酒の要領で作れはしますけど……確実にナクアちゃんが飛び付いて大変な事になってしまうから成人するまでは作りません。

「ピー……」

あ、リコッタが寂しそうに見ていました……

そういえばリコッタは普通の鳥でしたね……後で甘く茹でたトウモロコシをあげますよ。
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