あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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祭りと刺身

一矢は報いていた様です

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残念ツァトゥ様にペンダントを貰って2日……遂に全力のアプさんと対峙する時が来てしまいました。

まあ折角のペンダントですが組手の間は外しておきますよ。

盗まれたりしない様に、かつ誤作動を起こさない様、魔法が使えないロウに預けておきますけど。

因みに鑑定して貰ったあの宝石はラピスラズリという宝石だった様です。

確か石言葉は【健康】と【永遠の誓い】……他にもあった様な気がしますが思い出せませんね。

何せ日本に居た頃はとことん興味がありませんでしたから……値段はアレ1つで600ハウト、合計で2400ハウトだそうです。

意外と高いですね……

まあ永遠の誓いというワードは気に入りましたし、星空の様な見た目はナクアちゃんも気に入ってる様だし……指輪の宝石はラピスラズリで決まりでしょう。

ロウとコカちゃんも賛成していましたからね。

そういえば銀は手に入ったんでしょうか?



……何て現実逃避してても仕方ありませんね。

ほぼ毎日組手をしているアプさんですが、今回はラスカさんと対峙した時以上のプレッシャー……師範と対峙した時以上の圧が。

いや、下手したらあの時のクティ並かもしれませんね。

薄々思っていましたがアプさんは師範より強いのかも……そうなるとアプさんと引き分けたマリー様と、そのマリー様に勝ったという王様って相当ヤバかったんでしょうか?

仲良くなれたのは非常に幸運でしたよ……ありがとうございます、サーグァ様。

「さて、と……準備はいいかい?」

「……何時でも」

「これはあくまでも組手だ、いつも通り足以外が地面に着いたら終わりだよ」

「解りました」

いつも通りのルールなら死ぬ事はなさそうで安心しました。

さて……現状だとあの手甲がない場合、鋼は発動に4秒、持続時間は8秒……攻撃すると一撃で解けてしまいます。

アプさんは悠長に発動を待ってはくれないでしょうし、だからって光や雷だけで勝てる様な甘い相手ではありません。

そもそも職業がタンクだから耐久力もずば抜けていますし……この騒動ってアプさん1人で全部解決出来るんじゃないですか?

あたしの技能で唯一アプさんに通用しそうな攻撃は鋼だけ……やはり一発に賭けるしかありませんね。

「……考え事は終わったかい?」

っていつの間にか目の前にアプさんの拳が!

首を捻って回避、反撃……ってもう離れてる!

危なかった……声を掛けられなかったらあっという間に一撃を貰ってダウンする所でした。

っていいますか、基本的に前線で耐えるのがお仕事のタンクが何でそんなに素早いのですか?

「割と長く旅をしたんだ……あたい以外のタンクを何度か見た筈だが、何か気付かないかい?」

そういえばンガイのイノシシ狩りの時にも居ましたね……

やけに重そうな鎧を着込んで、大きい盾を構えていましたが……あ。

言われてみればアプさんが鎧を着ている所は見た事がない?

「そういえばトゥグア様が降臨なさったあの時、アプさんには何もなかったですが」

ってアプさんの背後にコボルト!?

「ま、行商の邪魔になるからっていうのが本音だけどねぇ……あたいにとって鎧は」

コボルトの爪がアプさんの首筋に……当たってるのに何ともない所か爪の方が折れた!?

そのまま裏拳一発で水晶になったぁ!

「今見た通り、必要がないのさ」

……一体どんな鍛え方をすればそんなに硬くなれるのですか?

何かもう、鋼すら通用しない気がしてきたんですが。

「あたいはタンクに転職した時に女神から【守護者】って称号を貰っててねぇ……確か効果は耐久力と生命力の上昇らしいよ」

成程、トゥグア様の御加護であれば……って、それを加味しても硬過ぎますし素早さの説明になってませんが!

まあアプさんですし……補正に頼らず相当な努力を積んだ、って事で納得しておきます。

素早さも鎧がない分だけ早い、と思っておきましょう。

それはさておき勝てないのは始めから解っていた事です。

今の会話の間に鋼の発動は出来ました……後はこれを、全力でぶつけるのみ!

「……いいよ、撃ってみな」

ゑ……避けるつもりはないと?

自惚れるつもりはありませんけどこれかなりの威力で……アプさんなら平気そうですね。

じゃあ遠慮なく!





はい、結果から言いますが鋼を掌で受け止められて、そのまま投げ飛ばされました。

思いっきり背中を打って痛い……

「久しぶりに痛いと思ったよ……鋼は耐性や耐久力を無視する効果でもあるみたいだねぇ、もし盾で受けてたら確実に割れちまってたろうよ」

ぐぬぬ……思わぬ効果が解りましたが背中から腰が痛くて立てない。

あ、ロウとコカちゃんが肩を貸してくれました……宿に戻ったらサンクチュアリで回復しておきましょう。

「前から思ってたが……キュアは一撃より手数で押した方がいいんじゃないかい?」

それ、日本に居た時から言われてました。

とはいえあたしの体力は人並みですし……下手に攻めるとあっという間にバテてしまいます。

体力作りとか、肉体改造なんかも試したのですが……もやしがゴボウになった程度の成果しか出ませんでしたし。

攻撃力だけは跳ね上がりましたけど。

まあこの世界に来て色々ありましたし、また体力作りを再開してみますか。

もしかしたら成長期に入って格段に増えるかもしれませんし。

本当にやる事ばかり増えますね……

「キュアちゃん……歩ける?」

「……スミマセンが宿まで引きずってくれると助かります」

ぎっくり腰になると多分こんな感じになるんでしょうね……

これ回復魔法で治せるんでしょうか?




まあ結局魔法じゃ痛みを止めるのが精々でしたが翡翠さんの焦げ茶色の薬(オレンジ味)で多少はマシになりましたよ。

薬代と称して夕飯にから揚げを作る羽目になりましたが……致し方ありません。

……おや?

食堂にまだ明かりが?

「はい、骨折に効くお薬(ニンジン味)……これ飲めば一晩で治るよ」

「ッぅ……助かるけどこの赤紫色はどうにかならないのかい?」

「あ、薬の効き目が薄れるから今日はお酒を飲まない様に」

「ああ、解ったよ……ってか色については無視かい」

アプさん……まさかあたしの魔拳で折れてしまったのですか?

組手の時は平然としていたのに……

「それで、端から見てるだけじゃ解り辛いんだけど……キュアちゃん、強くなってるの?」

「今でも充分強いさ……後半年もすればあたいを越えるだろうよ、調子に乗せたくないから本人には言わないけどねぇ」

スミマセン、バッチリと聞いてしまいました。

ここまで強くなれたのはアプさんのお陰ですよ……本当に、ありがとうございます。

うん、明日はアプさんの好物を沢山作っておきますか。
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