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図書館と安食堂のスライム騒動
いわゆる理科の実験です
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セラエの魔術ギルドに来て、早くも7日が過ぎました……
コカちゃんはずっと図書館に通いつめて、ロウはその護衛、アプさんは翡翠さんと一緒に屋台を出しています。
ナクアちゃんはトウカやリコッタ、構成員の皆さんと一緒に接客をしていますが中々頑張っていますね。
そしてあたしは……
「キュアお姉ちゃん、唐揚げ5皿追加だよー!」
「キュアさん、串カツ3皿追加でーす!」
「こちらチャーハン8皿追加でーす!」
「はい気分のサラダとビフーシチュー3皿、それとパンが入りましたー!」
何ですかこの忙しさは!?
昼からずっと、熱した油の前から離れられないんですけれど!
ウィラコさんもずっとチャーハンを作り続けるだけになっていますし!
幸いシチューや煮込みなんかは仕込みさえすれば後は皿に盛り付けるだけだから誰でも出来ますし、メイドさんはサラダの盛り付けぐらいなら出来るから何とかなっていますが……
ボリアの行商市も、ンガイ中を巻き込んだイノシシ料理の振る舞いでもこんなに大変ではありませんでしたよ……本当に。
「……おっと、申し訳ありませんが唐揚げと串カツは品切れとなりました」
「「「「「「な、なんだってー!?」」」」」」
「こっちももう米がないから、チャーハンは終わりだよ!」
「「「「「「「チクショーッ!?」」」」」」」
初日から比べると4倍以上も仕込んだというのに……
この町の住民は貴族ばかりとか聞きましたけど、何で安食堂にお客がこんな沢山居るのですか?
いや、図書館目当ての旅人も居るんでしょうけどね。
「いやぁ、流石は噂のシェフだねぇ……こんなに売れるとは思わなかったよ」
「あの……その噂って一体何ですか?」
あたしはプリーストであってシェフではありませんが……
【破壊僧】の称号ならトゥグア様から頂きましたけど。
「曰く【固くて臭いクックー肉を第3夫人が絶賛する料理にした】とか、【塩辛く生臭い魚を絶品に仕上げた】とか、【甘味に五月蝿い第1夫人を唸らせた】とか、【酸っぱいだけの果実で新しい酒を産み出した】とか……他にも幾つかあるけど聞くかい?」
「……遠慮しておきます」
察するにラーメン、干物、ホットケーキ、梅酒の事ですか……
確かに全て事実ではありますけれど!
というか梅酒を作ってまだ2週間も経ってないのにもうここまで広まっているんですか!
営業が終わった辺りでコカちゃんとロウ、アプさんと翡翠さんが帰って来たのでようやく夕飯が食べられます。
売れ残りの野菜スープとパンにクックーの皮をカリカリになるまで焼いて塩を振った物と干物を付けて、と。
後はジャガイモを塩茹でして潰して、同じく売れ残ったサラダを刻んで一緒にマヨネーズを和えたポテトサラダも出しましょう。
「このポテトサラダとやらも美味しいね……これも売れそうじゃないか」
「それは売るなら11ハウトは取らないと採算が合わなくなりますよ?」
ウィラコさんが出した条件は10ハウト以内で出せて利益のある料理ですからね……
この条件がなければラーメンも提案したかった所ですが、あたしが旅立った後でも作れる料理でなければ意味がありませんから。
因みにあたしの作るラーメンの原価は1杯につき5ハウト、それに人件費なんかを足しつつ屋台では14ハウトで売っています。
計算はコカちゃんがやってくれたんですけどね。
それにしても……戻って来てからずっとコカちゃんが元気ありませんね。
心なしか疲れてもいるみたいですし。
「ロウ、コカちゃんは図書館で何を調べているのですか?」
「スライムの生態観察記録とか禁止魔術の研究データとかを片っ端から読み漁っていたが……」
うん、あたしでは力になれないという事だけは解りました。
せめて明日の夕飯に何か甘い物を作ってあげましょう。
「支部長、大変です!」
おや?
あの人は先程まで接客をしていた構成員で、初日に案内をしてくれた方ではないですか。
「どうしたんだい?そんなに慌てて……ってあんた怪我してるじゃないか!」
「俺は後でいい……それより新入り2人が何者かに襲われて、重症です!」
ただ事ではありませんね……
まだ食べてる最中ですが人命には変えられません!
「怪我人はどこに?」
「今、空き部屋に寝かせています!」
「アプさん、黄を1つ借ります」
「あいよ」
急ぎ怪我人の居る部屋に向かいサンクチュアリを発動し、息があるのを確認したら翡翠さんが作った小豆色の回復薬(トマト味)も飲ませて……
よし、呼吸も落ち着いたしもう大丈夫でしょう。
それにしてもこのお2人はほぼ初対面ですが……魔術ギルドの構成員ならば弱くはない筈。
あの人もあたしが気配を察知出来ないぐらいの強者なのに、ここまでやられてしまうとは。
「それで、何があったんだい?」
「それが……今まで見た事がないモンスターが1人のプロフェッサーに連れられて……有無を言わせず襲って来まして」
「これまでの件もそいつの仕業、で間違いなさそうだね……それで?」
「プロフェッサー自体はそんなに強くはなさそうでした……ですが、あのモンスターは……こっちの魔法を取り込んで、この宿ぐらいに巨大化して」
魔法を取り込んで巨大化……つまり魔法を食べる?
はて、何処かで聞いた事がある様な……っていつの間にかあたしの手にヌメり?
良く見たら怪我をした皆さんの服、それにあの人の服がテカテカしてますが……治療した時に付いたんでしょうか?
これは……まるでカタツムリの様な臭いがしますね。
「それじゃ、動機なんかは解らないかい?」
「スミマセン、逃げるのに必死で……」
「いや、皆の命があっただけでも良かったよ」
ふむ、とりあえずこのヌメりに塩を掛けて少し放置して、と。
……思った通り、固まって取りやすくなりましたね。
「……犯人の事は解りませんが、そのモンスターはどうにか出来ると思いますよ」
「「……え?」」
残った夕飯を食べて片付けたら作戦会議です。
それと、ちょっと目を離した隙にあたしの分の干物を食べてしまったトウカ……明日は覚悟しておきなさい。
「あたしの故郷にはナメクジという、やり方さえ解れば子供でも倒せるモンスターが居ましてね……」
厳密にはモンスターではなく害虫ですけどね。
説明の為に2人が着ていた服を脱がして、付着していたヌメりに塩をぶちまけておきます。
「この様に、塩を掛けてやれば……ヌメりが固まってしまうのです」
「成程……しかしヌメりをどうにかしただけでは」
「塩の効果はそれだけではありませんよ……身体中の水分を奪ってくれるのです」
「水分を奪う……つまり、身体が……縮む?」
「このヌメりと臭いからして犯人の使役しているモンスターはナメクジに近い性質ではないかと推測出来ます、つまり」
「塩で倒せる、もしくは無力化させられるかも知れない……か」
因みに料理でも塩は味付けだけではなく、余分な水分と一緒に臭みを抜いて旨味を凝縮したりします。
人間も塩は生きていく上で大事な物ですが食べ過ぎると水太りの原因になったり、病気になりやすくなってしまいますからね……程々に摂取しましょう。
「では作戦ですが……モンスターに塩を掛けるのはナクアちゃんにお願いします」
「はーい!」
話を聞く限りかなりの魔法を取り込んで大きくなっている様ですからね……塩は頭から掛けなければ効果が薄いとなれば、空を飛べるナクアちゃんにしか出来ません。
「ウィラコさんや他の構成員の皆さんは塩の調達と付近の方々を避難させて下さい」
「はいよ」
「ロウとコカちゃんはナクアちゃんに塩を中継して下さい」
「解った」
「そしてモンスターの足止めはあたしがやります」
魔法が効かないとなれば、魔法以外の攻撃で戦うしかありませんからね。
あたしの雷なら取り込まれる事だけはない筈です。
「キュアは怪我人の治療に専念しな、足止めはあたいがやるよ」
アプさんが……なら、お任せします。
「それならスコルも連れて行って、スコルは魔法なしでも戦えるから」
スコル……水の技能が使える狼でしたっけ。
確かアプさんにお腹を見せるぐらいには信頼していましたね。
「決行は明日の夜……それに備えて早目に休んでおくよ」
さて、これはあくまでもナメクジみたいなモンスターと想定しての作戦ですが……
ハズレてたらご免なさい。
その時は何としても犯人だけはふん縛っておきます。
コカちゃんはずっと図書館に通いつめて、ロウはその護衛、アプさんは翡翠さんと一緒に屋台を出しています。
ナクアちゃんはトウカやリコッタ、構成員の皆さんと一緒に接客をしていますが中々頑張っていますね。
そしてあたしは……
「キュアお姉ちゃん、唐揚げ5皿追加だよー!」
「キュアさん、串カツ3皿追加でーす!」
「こちらチャーハン8皿追加でーす!」
「はい気分のサラダとビフーシチュー3皿、それとパンが入りましたー!」
何ですかこの忙しさは!?
昼からずっと、熱した油の前から離れられないんですけれど!
ウィラコさんもずっとチャーハンを作り続けるだけになっていますし!
幸いシチューや煮込みなんかは仕込みさえすれば後は皿に盛り付けるだけだから誰でも出来ますし、メイドさんはサラダの盛り付けぐらいなら出来るから何とかなっていますが……
ボリアの行商市も、ンガイ中を巻き込んだイノシシ料理の振る舞いでもこんなに大変ではありませんでしたよ……本当に。
「……おっと、申し訳ありませんが唐揚げと串カツは品切れとなりました」
「「「「「「な、なんだってー!?」」」」」」
「こっちももう米がないから、チャーハンは終わりだよ!」
「「「「「「「チクショーッ!?」」」」」」」
初日から比べると4倍以上も仕込んだというのに……
この町の住民は貴族ばかりとか聞きましたけど、何で安食堂にお客がこんな沢山居るのですか?
いや、図書館目当ての旅人も居るんでしょうけどね。
「いやぁ、流石は噂のシェフだねぇ……こんなに売れるとは思わなかったよ」
「あの……その噂って一体何ですか?」
あたしはプリーストであってシェフではありませんが……
【破壊僧】の称号ならトゥグア様から頂きましたけど。
「曰く【固くて臭いクックー肉を第3夫人が絶賛する料理にした】とか、【塩辛く生臭い魚を絶品に仕上げた】とか、【甘味に五月蝿い第1夫人を唸らせた】とか、【酸っぱいだけの果実で新しい酒を産み出した】とか……他にも幾つかあるけど聞くかい?」
「……遠慮しておきます」
察するにラーメン、干物、ホットケーキ、梅酒の事ですか……
確かに全て事実ではありますけれど!
というか梅酒を作ってまだ2週間も経ってないのにもうここまで広まっているんですか!
営業が終わった辺りでコカちゃんとロウ、アプさんと翡翠さんが帰って来たのでようやく夕飯が食べられます。
売れ残りの野菜スープとパンにクックーの皮をカリカリになるまで焼いて塩を振った物と干物を付けて、と。
後はジャガイモを塩茹でして潰して、同じく売れ残ったサラダを刻んで一緒にマヨネーズを和えたポテトサラダも出しましょう。
「このポテトサラダとやらも美味しいね……これも売れそうじゃないか」
「それは売るなら11ハウトは取らないと採算が合わなくなりますよ?」
ウィラコさんが出した条件は10ハウト以内で出せて利益のある料理ですからね……
この条件がなければラーメンも提案したかった所ですが、あたしが旅立った後でも作れる料理でなければ意味がありませんから。
因みにあたしの作るラーメンの原価は1杯につき5ハウト、それに人件費なんかを足しつつ屋台では14ハウトで売っています。
計算はコカちゃんがやってくれたんですけどね。
それにしても……戻って来てからずっとコカちゃんが元気ありませんね。
心なしか疲れてもいるみたいですし。
「ロウ、コカちゃんは図書館で何を調べているのですか?」
「スライムの生態観察記録とか禁止魔術の研究データとかを片っ端から読み漁っていたが……」
うん、あたしでは力になれないという事だけは解りました。
せめて明日の夕飯に何か甘い物を作ってあげましょう。
「支部長、大変です!」
おや?
あの人は先程まで接客をしていた構成員で、初日に案内をしてくれた方ではないですか。
「どうしたんだい?そんなに慌てて……ってあんた怪我してるじゃないか!」
「俺は後でいい……それより新入り2人が何者かに襲われて、重症です!」
ただ事ではありませんね……
まだ食べてる最中ですが人命には変えられません!
「怪我人はどこに?」
「今、空き部屋に寝かせています!」
「アプさん、黄を1つ借ります」
「あいよ」
急ぎ怪我人の居る部屋に向かいサンクチュアリを発動し、息があるのを確認したら翡翠さんが作った小豆色の回復薬(トマト味)も飲ませて……
よし、呼吸も落ち着いたしもう大丈夫でしょう。
それにしてもこのお2人はほぼ初対面ですが……魔術ギルドの構成員ならば弱くはない筈。
あの人もあたしが気配を察知出来ないぐらいの強者なのに、ここまでやられてしまうとは。
「それで、何があったんだい?」
「それが……今まで見た事がないモンスターが1人のプロフェッサーに連れられて……有無を言わせず襲って来まして」
「これまでの件もそいつの仕業、で間違いなさそうだね……それで?」
「プロフェッサー自体はそんなに強くはなさそうでした……ですが、あのモンスターは……こっちの魔法を取り込んで、この宿ぐらいに巨大化して」
魔法を取り込んで巨大化……つまり魔法を食べる?
はて、何処かで聞いた事がある様な……っていつの間にかあたしの手にヌメり?
良く見たら怪我をした皆さんの服、それにあの人の服がテカテカしてますが……治療した時に付いたんでしょうか?
これは……まるでカタツムリの様な臭いがしますね。
「それじゃ、動機なんかは解らないかい?」
「スミマセン、逃げるのに必死で……」
「いや、皆の命があっただけでも良かったよ」
ふむ、とりあえずこのヌメりに塩を掛けて少し放置して、と。
……思った通り、固まって取りやすくなりましたね。
「……犯人の事は解りませんが、そのモンスターはどうにか出来ると思いますよ」
「「……え?」」
残った夕飯を食べて片付けたら作戦会議です。
それと、ちょっと目を離した隙にあたしの分の干物を食べてしまったトウカ……明日は覚悟しておきなさい。
「あたしの故郷にはナメクジという、やり方さえ解れば子供でも倒せるモンスターが居ましてね……」
厳密にはモンスターではなく害虫ですけどね。
説明の為に2人が着ていた服を脱がして、付着していたヌメりに塩をぶちまけておきます。
「この様に、塩を掛けてやれば……ヌメりが固まってしまうのです」
「成程……しかしヌメりをどうにかしただけでは」
「塩の効果はそれだけではありませんよ……身体中の水分を奪ってくれるのです」
「水分を奪う……つまり、身体が……縮む?」
「このヌメりと臭いからして犯人の使役しているモンスターはナメクジに近い性質ではないかと推測出来ます、つまり」
「塩で倒せる、もしくは無力化させられるかも知れない……か」
因みに料理でも塩は味付けだけではなく、余分な水分と一緒に臭みを抜いて旨味を凝縮したりします。
人間も塩は生きていく上で大事な物ですが食べ過ぎると水太りの原因になったり、病気になりやすくなってしまいますからね……程々に摂取しましょう。
「では作戦ですが……モンスターに塩を掛けるのはナクアちゃんにお願いします」
「はーい!」
話を聞く限りかなりの魔法を取り込んで大きくなっている様ですからね……塩は頭から掛けなければ効果が薄いとなれば、空を飛べるナクアちゃんにしか出来ません。
「ウィラコさんや他の構成員の皆さんは塩の調達と付近の方々を避難させて下さい」
「はいよ」
「ロウとコカちゃんはナクアちゃんに塩を中継して下さい」
「解った」
「そしてモンスターの足止めはあたしがやります」
魔法が効かないとなれば、魔法以外の攻撃で戦うしかありませんからね。
あたしの雷なら取り込まれる事だけはない筈です。
「キュアは怪我人の治療に専念しな、足止めはあたいがやるよ」
アプさんが……なら、お任せします。
「それならスコルも連れて行って、スコルは魔法なしでも戦えるから」
スコル……水の技能が使える狼でしたっけ。
確かアプさんにお腹を見せるぐらいには信頼していましたね。
「決行は明日の夜……それに備えて早目に休んでおくよ」
さて、これはあくまでもナメクジみたいなモンスターと想定しての作戦ですが……
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