あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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図書館と安食堂のスライム騒動

翡翠さんの戦闘を見ました

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雪に降られた翌朝……って、まだ止んでいませんね。

別に急ぐ必要はないにしろ、こうも動けないのはもどかしいです。

「ナクア、こんなに雪が降ってるのは初めて見たよ!」

「確かにこう長く降ったのは60年振り……まさか」

おや、アプさんが慌てて外に?

「やっぱり……この雪はタクァの仕業かい」

「あらら、こっちの世界にもタクァが居たんだねぇ」

「あの、タクァって何ですか?」

名前的に風属性の邪神っぽいのは解りますが、あの神話通りに考える訳にもいきませんよね。

「タクァは風で雪を運んでくる精霊の一種でね……基本的に無害なんだけど、発情期になるとこんな感じに暴走しちゃうんだよ」

この大雪は精霊が暴走したせいだったんですね。

理由が発情期というのが解せませんけど。

「因みに見た目は凄い美人なんだけど……好みの男を見たらあっという間に連れ去っちゃうから、念のためロウ君は見られない様に注意してね」

邪神というより雪女みたいな奴ですね。

しかしうっすらと見えた姿は透き通る様な白い肌に白い髪と、確かに美人ではあります。

「とりあえず倒した方がいいんでしょうか?」

「基本的に無害って言ったでしょ?たまにこういう事をするけど、普段は氷を売ったりして人間に友好的な存在だよ……様は落ち着かせればいいだけだからね」

成程……言われてみれば氷屋は女性が多かった気がします。

「それにタクァは精霊だけど神格持ちだから人間じゃ勝負にもならないよ、まともに戦えるのはハイドラ様級の神かその眷属……後は人間を辞めた存在だけだね」

あ、翡翠さんも外に……

「という訳だから、ここは私に任せて頂戴」

「確かに以前はあたいとアーチが死にかけたってのに追い払うのが精一杯だったからねぇ、そういう事なら任せるよ」

アプさんとアーチさんのタッグが死にかけて……って、強いなんて次元じゃないですよ!

あ、そういえば翡翠さんが戦うのを見るのはこれが初めてですね……イノシシ狩りの時はピーニャに指示を出していただけでしたし。

ロウと同じ幻獣使いだとは聞きましたがどんな戦い方をするのでしょうか?




「さて、まずはこの雪をどうにかしないとね……スコル、おいで!」

最初に出てきたのは……トウカと同じ水色の体毛をしている狼?

「いきなりスコルか……翡翠さん、ガチでる気か?」

「ロウ、部屋の隅に居ながら解るんですか?」

「今はナクアと視覚と聴覚を共有してるからな……これなら隠れてても解る」

中々便利ですねその技能……

「スコル、【豪雨】!」

「はい!」

うわ……雪と雨がぶつかり合って地面に凄い量の水が!

「スコルはトウカと同じ技能に加えて雨を降らせたり出来てな……威力や範囲もトウカ以上だ」

トウカも凄いと思いますがあの狼はそれ以上ですか……

「因みにスコルは10歳以下にしか興味のない重度のショタコンだ」

あの狼って雌だったんですか!?

「よし次……おいで、クル!ライコ!」

今度は黄色い日本猿と……緑の毛玉?

「ライコは電気を操れる猿で、クルはよく解らんが結界を張るのが得意だな……」

電流と結界……あ、成程。

一応こっちもこの休憩所にシールドを張っておきます。

「クルは私達に【防壁】!ライコ、【落雷】!」

「ウギィッ!」

「キュー!」

うん、大量の雨水に雷が流れてタクァが感電していました。

あれは効きます、というか下手したら死ねます。

「ラスト!おいで、リーア!」

下半身が植物の根な女性……あれは解ります、確かドリアードという種族ですね。

「リーアさんはいわゆる肉食系な百合の聖霊でな……翡翠さんが近くに居れば無害だけど離れてる時は注意しろよ」

……その時は絶対に近付かない様にします。

「リーア、【束縛】!」

「はい、御姉様!」

おお、複数の植物の蔓や根がタクァをふん縛って……

「はぁ、私の蔓や根に縛られた女性……美しいわぁ」

……翡翠さん、ちゃんと監視をして下さいね?

「さてさて、ここで取り出しますは私お手製の鎮静剤(リンゴ味)、さあお飲みなさい!」

黄土色をした鎮静剤をタクァ……それとリーアさんにも飲ませるんですか!?

飲ませるというよりは瓶を無理矢理喉の奥に突っ込んだという感じですけど。

「ちょ、待っ、気管に入っ、ゴボォッ!」

「ンブッ、御姉さ、ゴボォッ!」

噎せて吐き出す事すら叶わず流し込まれ続けるってある意味拷問なのでは?

まあタクァが落ち着いた様だからいいでしょう。




落ち着いたタクァに温かい飲み物を出して、昼食を一緒に食べたら元気になった様で……翡翠さんにお礼を言って去って行きました。

あのタクァは普段ムリアで氷屋をしているそうですから見掛けたら買ってあげましょう。

「リーア、出てくる度に欲情するの止めてって何度も言ったでしょ?次はその根っこを熱した油でカラッと揚げるからね」

「お、御姉様!それだけはお許しを!」

ドリアードの土下座って中々レアな映像ですね……

「さて、それじゃ改めて……この子はドリアードのリーア、植物を操ったり出来てね……貴重な薬草を栽培してくれたりするからアルケミストの私には有難い幻獣だね」

デメリットの塊だと思いましたが、一応メリットはあるんですね。

「因みに御姉様の指示がなくても、種さえあればあらゆる野菜をその場で、収穫まで育てる事も可能です」

成程……ジャガイモの芽さえ残しておけば旅の途中で食料が尽きる事はないですね。

性癖的に余り関わりたくはないですが。

「次にこの子はスコル、水の魔狼で雨を降らせる事も出来るよ」

「よろしくね」

先程見せて頂きましたが凄い力でしたね……

「因みにスコルとリーアは野菜しか食べないから」

狼……なんですよね?

ドリアードが野菜しか食べないのはまあ解りますが、狼が野菜しか食べないって……ええ?

「次は雷猿らいえんのライコ、雷や電流を使えるよ」

「ウギィッ!」

あ、この子は喋れないんですね……

「ライコは気性が荒いけど根は良い子だから……後リンゴしか食べない」

ある意味あたしの知ってる猿のままでした……

バナナでもあればあげてみたかったですね。

「それとこの子がクル……ちょっと恥ずかしがり屋だけど防御は凄いよ」

「キュー……」

「因みに種族はカーバンクルって言ってね……今の所心を開いてるのは私とロウ君ぐらいかな」

翡翠さんの後ろに隠れてるのはそういう事ですか……

それを手懐けたロウも凄いです。

「ついでだし他の子も紹介しちゃおっか……ロシン、バイコ」

「くぉん!」

「お呼びで?」

本当に燃えてる狐と角がある馬、あの馬はファンタジーならお馴染みのユニコーンですね。

「この子は狐火のロシン、人懐っこくて可愛いよ」

「なくあ、あそぼ!」

「遊ぼー!」

確かによく懐いてますね……毛が炎だからうかつには触れませんけど。

ってナクアちゃん普通に触っていますが熱くないんですか?

「あれは炎に見えるだけの体毛だからね……実際に燃やす事も出来るけど」

成程……オンオフの切り替えが可能なんですか。

「で、最後にこの子がバイコ……種族はユニコーンだよ」

「よろしく頼む、という訳で少年……やらないか?」

「やらねえよ!?何度も言わせんな!」

最後に出てきたのが同姓愛者の馬……本当にロウはお尻ばかり狙われてますね。

ってユニコーンは確か……

「あの……ユニコーンって清らかな乙女を好むのでは?」

「それは偏見という物だ……確かに気を許した人間に性癖を暴露してしまった同族が居て、その時の話が後世にまで伝わったという笑い話はよく聞いたが全てのユニコーンがロリコンの処女房という訳ではない」

あの話は確か神聖な話として伝わっていた気がしますが……ユニコーンにとっては笑い話なんですね。

それは死ぬまで知りたくなかったです。

「それなら何で女性の翡翠さんと契約を?」

「戦いに負けてその強さに惹かれたのだ……だから今はここに居る、因みにスコルとライコも同じ理由で主に仕えているぞ」

喧嘩をした後は友達になる、的なアレでしょうか?




「で、ロウ君が手懐けたのはバイコ、クル、スコル、ロシンの4体ね」

「少なくともバイコを手懐けた覚えはないけどな……割とマジで」

勝手に懐いたんですね、解ります。

「所で……ライコがあたしの左手にくっついているのは何故でしょう?」

「キュアちゃんは左手から電流を出せるから、力比べでもしたいんじゃない?」

つまり電流の強さを比べたいと……

まあ、ちょっとぐらいなら付き合ってあげますか。

「なら行きますよ……【雷(強)】!」

「ウギィィィッ!」

うわ……電流を流している拳からライコの電流がビリビリ伝わってきますね。

しかしこれは……かなり痺れますが気のコントロールを鍛えるのに最適かもしれません。

最大出力だと30秒が限界ですけど、何度か続ければより長く使えるかも。

「ウギィ……」

おっと、先にライコがダウンしてしまいました。

ふむ、体感で大体31秒ぐらいですか……ちょっとだけ伸びました。

ってライコ、何故あたしの足に手を当てて……いわゆる反省のポーズを?

「おやおや、どうやらライコはキュアちゃんを気に入ったみたいだねぇ」

力比べで勝ったから懐いたという事でしょうか?

よく見たらスコルはアプさんにお腹を見せていて、クルはコカちゃんの肩に乗っていて、ロシンとピーニャはナクアちゃんに抱っこされていて、リーアさんは翡翠さんに抱きつこうとして叩かれていました。

まあ、打ち解けられたなら良しと思っておきましょう。

「俺は全くよくないけどな……」

バイコはロウのお尻を狙っていますからね……

ですがロウの貞操はあたしが守りますから安心して下さい。




「さて、雪はどうにかなったがこの泥濘じゃ荷車を出せないねぇ……」

ある意味積もった雪より厄介ですからね……

少なくとももう一晩はここに留まるしかありません。

「それじゃスコルは残った雪を雨で溶かして、リーアは朝までにあの地面を何とかしておいてね」

「解りました」

「待って御姉様、流石にこの範囲を私1人で何とかするのは厳しいんですけれど?」

「キュアちゃん、料理的な方法で植物が嫌がる事って何かある?」

そこであたしに振るんですか?

まあ幾つか思い付きはしますけど。

「葉に塩を振ってみるか、根に塩水を掛けてみますか?」

「やります!朝までに何とかします!」

リーアさんは弄られキャラらしいので今後は遠慮なく弄らせて貰いましょう。

とりあえず……夕飯は幻獣の皆さんのリクエストに答えつつ作ってあげますか。

ただしバイコ、貴方は唐辛子を山盛りにしておきますからね。
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