あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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森とイノシシと奴隷商人

課題を出してみました

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トゥール様と友達になってラスカさんに戦いを挑まれた翌朝……

久しぶりにアプさんと手合わせをしているのは良いのですが、相変わらず1撃すら入らないんですけど!

「ほら、隙だらけだよ!」

「え、ぐひゅっ!」

ぐぬぬ……おかしいですね。

毎日の鍛練は欠かしていないし魔拳を収得して、トゥグア様とトゥール様に補正付きの称号まで頂いたというのに……

何故あたしは前のめりに倒れているのですか?

これまで感じていた差が縮まった所か……逆に突き放された気分なのですが。

「あらまぁ、アプちゃんが全力を出すなんていつ振りかしら?」

「ああ、パクの奴が結婚の挨拶に来た時以来じゃないかの?」

「冗談はよしとくれよ、今のは7割ぐらいだよ」

あれでまだ半分の少し上……だと!

「……参考程度に聞きたいのですが、ボリアやレンに居た時はどれぐらいだったんですか?」

「4割ぐらいだったねぇ」

一応縮まってはいた様です。

越えられる気が全くしませんが……



さて、朝食を食べたので残ったイノシシ肉を配布するとしましょう。

昨日のラーメン、モツ煮、牡丹鍋で半分しか減りませんでしたし……まあ骨と内臓は使いきりましたが。

昨日と同じでは皆さん飽きてしまいますからね、今回作るのはイノシシソテー、イノシシハンバーグ、それと前にも作った猪汁……

最後に唐揚げです。

「ではソテーはデストさん、ハンバーグはコカちゃん、猪汁はリベンさんにお願いします」

「領主邸の料理人達も手伝ってはくれてるが、真面目に人手が足りない……」

「せめてもう1人ずつ欲しいわねぇ」

「でも……キュアちゃんのレシピ、初見で料理出来るの……ボク達だけだし」

それなんですよね……まあ醤油や味噌といった調味料のせいなので仕方ないのですが。

ロウやアプさん、翡翠さんの料理の腕は絶望的だし、ナクアちゃんはおにぎりとサンドイッチしか作れませんし。

イブは出来なくはないですが今回作る料理だと猪汁ぐらいですし。

「なら手伝ってあげましょうか?」

おっと、アーチさんが来てくれたなら……ってアーチさん!?

「人に反乱分子を押し付けて、随分と遅いご到着ですね?」

「やぁねぇ、私だって遊んでた訳じゃないのよ?ちゃんと残党を捕まえて来たし皆に渡す報酬の用意もあったし、ね」

成程、残党を捕まえればエリオ様の負担が減るし報酬は大事ですからね……

「アーチの兄貴、本音は?」

「アトラちゃんが可愛過ぎて……つい長居しちゃった」

ちょっと魔拳をお見舞いしてもいいですか?

「キュアちゃん……止めた方が、いいよ……アーチさん、母さんと同じぐらい……強いから」

「アーチの兄貴の魔力はお嬢よりも高いし、回避力はミラ以上だからな……嬢ちゃんじゃまず当てられないだろうよ」

……今のあたしでは勝てない、という事は解りました。

「とりあえずアーチさんにはコカちゃんを手伝って貰うとして……イブを呼んでリベンさんを手伝って貰いましょう」

「俺の方はミラとジェネが居るから何とかなるが嬢ちゃんは……」

「まあ……何とかしますよ」

いざとなったら剣士の人に肉を切って貰いましょう。




で、剣士の人は見当たらなかったのですが代わりにイノシシ狩りの時に会った男の子……クロマ君が手伝ってくれました。

包丁の使い方は危なっかしかったけど何故か氷の刃なら綺麗に切ってます。

「クロマ君も料理が出来たのですか?」

「……自分でやらないと、何も食べられなかったから」

何か重そうな話が……

「……アーチさんに会うまでは何を食べても美味しくなかった、今思えば味付けのやり方が解らなかった」

うん、必要なら出来る限り教えてあげますから、そんな悲しい話は止めましょうね。

とりあえず切って貰ったイノシシ肉はすりおろしたタマネギとジンジャー、醤油、お酒に漬けて下味を付けて……

30分ぐらいしたら取り出して水気を切って……塩、唐辛子の粉末、小麦粉を纏わせ揚げれば出来上がりです。

鶏肉だと2度揚げする必要がありますが薄めに切ったイノシシ肉なら1回で充分、中まで火が通ります。

「1つ食べてみますか?」

「……ちょっと辛い、でも美味しい」

よし、これならナクアちゃんでも食べられますね。

他の皆さんの方は大丈夫でしょうか?

「……キュアさん、ちょっと聞いてもいい?」

「何でしょう?」

「……イノシシ狩りの時に居た、あのヒーラーの女の子、もうキュアさんと付き合っていたり」

「全くしていないので安心して下さい、イブはまだフリーですよ」

「……あの子、イブって名前なんだ……そっか」

色々言いたい事はありますが……頑張りなさい。

出来ればイブの好意を全て受け止められるぐらいになって下さい。




「このピリッとした辛味のある肉が美味いなぁ、酒にも合う」

「いや、この肉とは思えないぐらいに柔らかいのも中々……これには米が合うな」

「レッドとタマネギのソースが掛かった肉も、パンに挟んで食うと結構イケるぞ」

「このスープ、どこかホッとする味だなぁ」

「イブちゃんに蹴られtぐはぁっ!」

クロマ君……変態の口からイブの名前が出たからって氷の弾を打つのはやり過ぎですよ。

気持ちは解るので黙っておきますが。

まあ料理は好評だし、この分なら今日中には全て使い切れそうですね。

もし残ったら後は冷しゃぶサラダと角煮にするしかないですから。

「……キュアさん、もう肉がないです」

「マジですか……思ったよりも早かったですね」

となると他の皆さんは……

「ハンバーグ……もう品切れ、だよ」

「ソテーも売り尽くした」

「猪汁も売り切れよ」

狩ったイノシシは600頭以上は居たと思いましたが……まさか2日で全て捌けるとは。

本当にこの世界は肉が好きな人ばかりですね、助かりましたけど。

「んじゃ、俺は領主に依頼の終了を報せてくるか……」

「ワタシは農場に戻るわね」

「設備は明日……皆で片付けるから……ボク達も戻ろ」

とりあえず道すがら……夕飯の準備は終わってるから明日の朝食の材料を仕入れておきますか……っとその前に。

「ついでだしクロマ君も来なさい」

「……いいんですか?」

「イブも来ますし、問題はありません」

むしろ応援するからイブの気を引いて下さい。

あたしはこれ以上婚約者を増やすつもりはありませんから。




で、夕飯を作ろうと思ったら何故かサーグァ様(本体)とデストさんもおりました。

デストさんはまだ解りますがサーグァ様(本体)は何故ここに居るのですか!

「エリナお姉様がンガイまでマリーお姉様を説教に行くというので、王様と一緒に着いて来ちゃいました」

説教……ああ、マリー様はご妊娠なさっていましたからね。

恐らくそれがバレたんでしょう……そりゃ怒りますよ。

もしコカちゃんやナクアちゃんが同じ事したらあたしだって怒ります。

「後ほど本人からも報告があると思いますが……実はエリナお姉様も4ヶ月という事が解りました」

何……だと!

「つきまして、コカさんにはお姉様の出産に合わせて王城に勤めて貰う事になりますが……」

そういえば……コカちゃんは研究所に籍を置かない代わりに王様の子の教育係になる、そういう約束でした。

まあクティとの決戦まで後2ヶ月、デストさん達の結婚は半年、出産もそれぐらいですか。

あたしの目的であるトゥグア様の依頼は果たせますが、この旅が後5ヶ月程で終わってしまうのですね……

多分教育が終わればまた行商の旅を再開するでしょうけれど。

「所でサーグァ様、本日の夕食は……」

「勿論、ここで食べます!王様やお姉様達、領主邸の皆さんもですよ」

はい、知ってました。

「流石に分体と本体を同時に満腹にはさせられないのですが?」

「自分が居る状態で分体を出したりはしませんよ」

それもそうですよね……

でも言わなかったらサーグァ様ならばやりかねない、って思えてしまうのは何故でしょうか?




そんなこんなの夕飯……暫くイノシシ肉が続いたせいかアッサリしたのが食べたかったので豆腐尽くしです。

冷奴と炒り豆腐、豆腐の味噌汁、コカちゃんが作った豆腐ハンバーグ、デストさんが作った麻婆豆腐……卓上の飲み物は水と豆乳を用意しましたよ。

最後にリベンさんが育てたキノコとおからの煮物です。

後はトウカに干物とピーニャはチキンカツを作ればいいでしょう。

明日はラスカさんとの勝負ですし、沢山食べて早めに休まねば。

「この麻婆豆腐……ちゃんと山椒の香りもするけど、何処かに売ってたか?」

「それは俺が山で採った山椒を乾燥させたのを使ったんだ」

やりますねデストさん……今度分けて貰いましょう。

とはいえこれ、あたしにはちょっと辛いですね。

見た所コカちゃん、ナクアちゃん、イブ、あの男の子は平気で食べている辺り辛味を抑えて作ってそうですが……

何故あたしの分は通常のにしたのですか?

「このハンバーグの中にチーズが入ってて美味しー!」

まさかのチーズINハンバーグ……豆腐とチーズが意外と合いますね。

「エヘヘ……イノシシハンバーグ、作るのに使った……ビフーの挽き肉とチーズ、余っちゃったから」

イノシシハンバーグもチーズINだったのですか?

まあそれはさておき、材料を無駄にしないのは良い事です。

それにしてもあたしはチーズINなんて教えてなかった筈ですが……自分で閃いてしまったのでしょうか?

「このオカラという物、結構お腹に溜まりますね……」

材料が豆ですからそりゃ溜まりますよ……サーグァ様が言うと説得力がないですが。

ですが豆乳の絞り粕とはいえ栄養がありますし、食べないのは勿体ないでしょう。

さて、そろそろ冷奴を……

ジンジャーをすりおろした物を乗せて醤油を掛けて……これだけで美味しいですね。

やはり豆腐そのものを味わうなら冷奴が一番です。

「……この白い飲み物、豆腐みたいな味がする」

「気付きましたか?豆腐はその豆乳を固めて作った物です」

「え……これを固めるんですか?」

おっと、何気に豆腐を好きになってしまったイブも食い付いて来ましたね。

……いい事を閃きました。

「クロマ君、イブと一緒にどうやって固めるか考えてみなさい……材料は用意してあげますし、豆乳の作り方までなら教えますから」

「「ええっ!?」」

「ただし結果がどうあれ、あたし達は5日後にはここを立ちます……イブもレンの神殿に戻らなくてはいけませんからね」

「……やってみます」

よし、お膳立てはしましたよ。

後は2つの意味でクロマ君次第です、頑張るのですよ。





「なあキュア、ニガリなしで豆腐を作れるのか?」

「豆腐を作る方法はニガリを使う以外にも幾つかあるのを思い出しまして……今日使った豆腐もニガリを使わずに作った物ですよ」

「ああ、何か聞いた覚えがあるな……確かにこの世界のアレなら作れるな」

最悪豆乳だけでも作るのは可能ですが、初心者には向かないですね。

ゼラチンでも出来ますが肝心の物はデストさんでなければ作れませんからあの2人では無理でしょう。

変わった所では酢と卵の殻で作る方法もありますが……これは時間が掛かるのでオススメ出来ませんし、味もイマイチです。

まあ、それらのやり方を思い出せたのはトゥール様に頂いた称号のお陰で知力が上がったからなんですけどね。

因みにあたしが居なくても作れる様にコカちゃんには教えてあります。

勿論口止めはしますよ……キスをせがまれそうですけど。

因みにヒントはニガリ同様、海で採れる物を使う事です。
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