62 / 122
蕎麦粉を求めて
襲撃が来ました
しおりを挟む
セバスチャンさんから風の女神の言伝を聞いた翌朝……
ミラさんの屋台の設置が完了したのでアプさん達はンガイへ向かい、コカちゃんはあたしの屋台を代理で出して、ロウとピーニャは特訓に向かい……
デュロックさんは現地で集めた人達と警備に当たっています。
そしてあたしは……
「……ここですね」
本番までは屋台でも出そうと思いましたが、姉さんからの指示にして王様の命令でしたし、ミラさんも一緒に神殿の視察に来ました。
決して今まで忘れていて、アプさんが立つ前に話題にしてくれたから思い出したという訳ではありませんよ?
ミラさんも見張りという名目で同行している訳ではありませんからね?
まあここの神殿は崇める対象が違いましたから、様子を報告するだけに留めておきましょう。
とりあえず挨拶する前にあたしのお尻を触ろうとした神官と、ミラさんに握手する振りをしながら胸に手を伸ばそうとした司教は1発殴っておきましたが処罰を下すのが決まりました。
勿論、触れられる前に対処しましたよ。
「ジェネからは炎の神殿にはロクな神官が居ないと聞いていましたが、他も似たような物らしいですね……少し探りを入れてみます」
「宜しくお願いします」
因みにレンの神殿は風の女神を崇めていました……まあ眷属であるセバスチャンさんが居る事からも予想はしてましたけど。
それを知って暴れなかったあたしは誉められるべきではないでしょうか?
「いや、普通は別の神を崇めてるって理由で殴ったりはしないからな?」
「ロウ……特訓はどうしたんですか?」
「ピーニャが怪しい気配を感じたみたいでな……切り上げてきた」
怪しい気配?
「早ければ今夜にでも襲撃がある、ってデュロックのオッサンは言ってたぞ」
確かにネクロマンサーなら夜の方が力を出せるでしょうからね……
ならばコカちゃんも早目に切り上げて貰い、備えておきましょう。
「トウカ、明日も干物を食べたければしっかり働くのですよ」
「ミャッ!」
「ここに来てからトウカがキュアの言う事をよく聞く様になったな……何でだ?」
「餌付けの効果ですよ」
異論?当然、認めません。
はい、あっという間に夜となりました。
この村の入口は東西南北の4ヵ所にあり、デュロックさんは東、ミラさんは南、ロウとトウカとピーニャが北でコカちゃんが西を受け持っています。
因みにサーグァ様は宿でお休みです……まあ詩人な上に掌サイズでは何も出来ませんし、乱戦になったら庇っている余裕もないでしょうからね。
あたしも入口で控えた方がいいかと思いましたが、この場でアンデットを殲滅出来る魔法を使えるのがあたしだけというのもあって中央……領主邸の前で待機させられています。
何でもミラさんが見つけた悪事の証拠によればここの神殿の神官は多くの女性に、それも無理矢理に手を出しまくっていたらしく……しかも子供が出来ても知らん顔をしていたそうで夕方頃に投獄されました。
残ったのはヒールと簡単な支援魔法しか使えない、ヒーラーになったばかりの駆け出し(しかも全員女の子)が10人だけ……とりあえず回復は任せましたよ。
あたしは攻撃に専念しますから。
それとデュロックさんが現地で集めた有志の方々はヒーラーの子達を庇いつつ4人の援護をして貰います。
因みに有志の中にはアーチさんも居ました……ってアーチさんはアプさんの知り合いなら強いんでしょうから前線で戦って下さいよ!
おっと、早くも西側から炎柱……おでましですか。
「コカさんとミラ様が交戦に入りました、ロウさんとデュロック様の方も間もなく始まるでしょう」
状況の報告をありがとうございます、セバスチャンさん。
といいますかですね……
「まるで見てきたかの様な報告なのが気になるのですが?」
「従者たる者、転移が出来なければ一人前とは言えませんよ……自分の場合は従者の技能ではなく、眷属としての技能を使っておりますが」
本当に瞬間移動してたんですか!?
まあ、正確な情報が得られるのは助かりますが……それって眷属の力の悪用になりませんか?
「今の自分はプラトー様の執事ですから」
うん、本人がそう言っているんですから、きっと大丈夫なんでしょう。
って言ってる間に北から水の弾が飛んでいるのが見えますね……ロウ達も交戦に入りましたか。
「キュアさん、足元から魔力が迫っています……数はおおよそ30程かと」
魔力……という事はネクロオバサンの魔法で生み出したアンデットですね。
出てきたのはゾンビが15にスケルトンが15……数は合っていました。
それにしても地中の気配まで察知出来るとは……有能過ぎやしませんかね?
さて、覚えたばかりの魔拳でも倒せなくはないでしょうが……戦いが長引くとこっちが不利になりますし、多勢に無勢では領主とプラトーちゃんが危ないですね。
いざとなればセバスチャンさんが2人を連れて逃げてくれるでしょうけれど。
残り5個しかない貴重な赤ですが、ここは使うしかありません。
「そういえばこれを使うのはグヌット以来ですね……【サンクチュアリ・Ver赤】!」
む……スケルトンはあっという間に消えましたがゾンビは少し時間が掛かりましたね。
まあ何事もなく倒せましたけど。
「あの数を1つの魔法で倒すとは、想像以上の力をお持ちですね……トゥール様が気にかけた理由がよく解ります」
「え、あたしはトゥール様とは会った事がなかった筈ですが?」
あたしはトゥグア様と地の女神にしか会ってませんよ?
「それはそうでしょう……トゥール様が一方的にキュアさんを見ていただけでしたから」
トゥール様はあたしのストーカーなのですか?
あたしの両手はロウとコカちゃんで目一杯ですよ?
後、崇める対象を代える気はありませんからね。
「ですが近い内……そうですね、皆さんがンガイの揉め事を解決した頃に何かしらの接触をすると思いますよ」
一体何の用で現れると……十中八九料理関係なんでしょうけれど。
本当に料理する為にこの世界へ来たんじゃないんですがね……
「とりあえず、集めた緑は空き部屋に纏めておきますので……戦闘後の分配は要相談でお願いします」
いつの間に水晶を……って壁の穴から見えた水晶は明らかにこの場以外からも集めている量じゃないですか!?
あたしと話ながら水晶集めて、各地の情報まで……もう有能を通り越して怪物じみていますね。
セバスチャンさんと敵対していないのが救いですよ、本当に。
「……キュアさん、上空から此方に向かってくる気配があります、数は3つです」
このまま物量で押してくると思っていたら3体だけ?
ふと上を見れば2体のレイスに運ばれている、いつぞやのネクロオバサンが……
成程、まずはあたしを潰す為にボス自ら……ですか。
「久しぶりだねぇ、小娘」
「もう会いたくなかったんですけれど……何しに来たのですか?」
「小娘のせいで領地と財産を失い、全治1ヶ月の怪我を負って、更に資金源を失ったからねぇ……手っ取り早く奪い返しに来たんだよ」
領地と財産に関してはあたしのせいではないですし、怪我をさせたのはミラさんではないですか……というか元を正せば自業自得でしょうに。
それと資金源ってこのレンの村の事ですか?
それこそネクロオバサンの物ではないでしょう!
「ゴーストの偵察によればこの場に居る天敵は小娘だけ、なら先に始末すれば後が楽になるさね」
確かにアンデットの殲滅が出来るのはあたしだけですけど……って唐突に緑の水晶を取り出して飲み込んだ!?
ちょっと、それお腹を壊しますよ!
「【死霊術・憑依】!」
ヒョロヒョロだったネクロオバサンが、ムキムキのマッチョになった!
そういえば翡翠さんからネクロマンサーの技能について聞いていましたが……あれが憑依ですか。
本当に厄介そうです。
端から見たら憑依というよりドーピングじゃないかと思いますが……まあ言わないでおきましょう。
「キュアさん、あの方は見た目こそ強化されていますが……恐らく自我を失うのを嫌っているせいで完全ではありません、なので戦闘技術は大した事がないかと」
成程……確かに身体を鍛えたからって強くなれる訳ではありませんからね。
筋トレだけで勝てるならジムも道場も必要ない、つまりそういう事でしょう。
「フゥゥ……死になぁ!」
中々鋭いストレートですが見てからでも余裕で避けられますね、お返しにリバーブローを差し上げます!
「ガ、ハ……」
かなり強く打った上にカウンターで入ったんですが大して効いてなさそうですね……耐久力は見た目通りの様で。
「いえ、あれは相当効いていますよ?」
「そうですか?アプさんやデュロックさんなら微動だにせず反撃してきますが」
「それは比較対象がおかしい、としか……」
アプさんもデュロックさんも滅茶苦茶強いですからね……
やっぱり女神の眷属から見てもおかしな強さなんでしょう。
「チィ……まだだぁ!」
ふむ……ネクロオバサンはまだまだやる気ですし、ここは1つ試してみましょう。
「フゥ……【ホーリーライト】!」
「ハッ、そんな軟弱な魔法が効くもんかい!」
そんな見え見えのハンマーパンチに当たるあたしではありませんよ。
「これを握って……セイッ!」
打ち下ろされたハンマーパンチに魔拳のアッパーを合わせてみたら……上に3メートル程ふっとんで顔面から不時着しましたね。
うん、余程の悪人でなければ、なるべく人に向けて打たない様にしましょう。
習っておいて何ですがこれはちょっと……危険です。
起きる前にふん縛ろうと思いきや、鼻血を流しながら立ち上がってしまいましたね……やはり悪人はしぶとい様で。
憑依は解けたみたいですが。
「こうなったら最後の手段……【死霊術・反魂】!」
反魂?一体どんな魔法なんですか?
「反魂は周囲を漂う魂に仮の肉体を与える魔法です、自身より強い者を呼べる可能性はありますが、術者に従うとは限らないというデメリットもありますね」
自分じゃ勝てないから他の誰かに丸投げですか……
って何かオバサンがみるみる窶れていますが?
「恐らくは自身の許容量を越える魔力を使っているせいでしょう……魔力の代わりに生命力を消費しているのでは?」
ああ……レンは大きめな村で、その周囲を包囲する程のアンデットを呼び出していましたからね。
魔力を回復する薬もありますがやたらと高いから、無一文で放り出されたんじゃまず買えないでしょうし。
魔法を使い終わったオバサンは最初30台後半な見た目から軽く70台は行ってそうな状態に……
うん、あたしも魔法の使い過ぎには注意します。
「ヒヒヒ……さあ、あの小娘を血祭りにあげな!」
『………』
呼び出されたのは……デストさん!?
「あの人あたしの知り合いっぽいのですが……反魂って生きてる人の魂まで呼べるんですか?」
「いえ、それは例え女神であろうと不可能です……多分あの方がキュアさんの知り合いに似ているだけかと」
デストさんのソックリさん……って何処かで聞いた事がある様な気が?
「……周囲を確認しましたが包囲していたアンデットは全て倒されました、残るはグヌット元伯爵とあの霊魂だけです」
オバサンは既に満身創痍だから……あのソックリさんさえ倒せばいいのですね。
何か引っ掛かる物がありますが、やるしかないですね。
ミラさんの屋台の設置が完了したのでアプさん達はンガイへ向かい、コカちゃんはあたしの屋台を代理で出して、ロウとピーニャは特訓に向かい……
デュロックさんは現地で集めた人達と警備に当たっています。
そしてあたしは……
「……ここですね」
本番までは屋台でも出そうと思いましたが、姉さんからの指示にして王様の命令でしたし、ミラさんも一緒に神殿の視察に来ました。
決して今まで忘れていて、アプさんが立つ前に話題にしてくれたから思い出したという訳ではありませんよ?
ミラさんも見張りという名目で同行している訳ではありませんからね?
まあここの神殿は崇める対象が違いましたから、様子を報告するだけに留めておきましょう。
とりあえず挨拶する前にあたしのお尻を触ろうとした神官と、ミラさんに握手する振りをしながら胸に手を伸ばそうとした司教は1発殴っておきましたが処罰を下すのが決まりました。
勿論、触れられる前に対処しましたよ。
「ジェネからは炎の神殿にはロクな神官が居ないと聞いていましたが、他も似たような物らしいですね……少し探りを入れてみます」
「宜しくお願いします」
因みにレンの神殿は風の女神を崇めていました……まあ眷属であるセバスチャンさんが居る事からも予想はしてましたけど。
それを知って暴れなかったあたしは誉められるべきではないでしょうか?
「いや、普通は別の神を崇めてるって理由で殴ったりはしないからな?」
「ロウ……特訓はどうしたんですか?」
「ピーニャが怪しい気配を感じたみたいでな……切り上げてきた」
怪しい気配?
「早ければ今夜にでも襲撃がある、ってデュロックのオッサンは言ってたぞ」
確かにネクロマンサーなら夜の方が力を出せるでしょうからね……
ならばコカちゃんも早目に切り上げて貰い、備えておきましょう。
「トウカ、明日も干物を食べたければしっかり働くのですよ」
「ミャッ!」
「ここに来てからトウカがキュアの言う事をよく聞く様になったな……何でだ?」
「餌付けの効果ですよ」
異論?当然、認めません。
はい、あっという間に夜となりました。
この村の入口は東西南北の4ヵ所にあり、デュロックさんは東、ミラさんは南、ロウとトウカとピーニャが北でコカちゃんが西を受け持っています。
因みにサーグァ様は宿でお休みです……まあ詩人な上に掌サイズでは何も出来ませんし、乱戦になったら庇っている余裕もないでしょうからね。
あたしも入口で控えた方がいいかと思いましたが、この場でアンデットを殲滅出来る魔法を使えるのがあたしだけというのもあって中央……領主邸の前で待機させられています。
何でもミラさんが見つけた悪事の証拠によればここの神殿の神官は多くの女性に、それも無理矢理に手を出しまくっていたらしく……しかも子供が出来ても知らん顔をしていたそうで夕方頃に投獄されました。
残ったのはヒールと簡単な支援魔法しか使えない、ヒーラーになったばかりの駆け出し(しかも全員女の子)が10人だけ……とりあえず回復は任せましたよ。
あたしは攻撃に専念しますから。
それとデュロックさんが現地で集めた有志の方々はヒーラーの子達を庇いつつ4人の援護をして貰います。
因みに有志の中にはアーチさんも居ました……ってアーチさんはアプさんの知り合いなら強いんでしょうから前線で戦って下さいよ!
おっと、早くも西側から炎柱……おでましですか。
「コカさんとミラ様が交戦に入りました、ロウさんとデュロック様の方も間もなく始まるでしょう」
状況の報告をありがとうございます、セバスチャンさん。
といいますかですね……
「まるで見てきたかの様な報告なのが気になるのですが?」
「従者たる者、転移が出来なければ一人前とは言えませんよ……自分の場合は従者の技能ではなく、眷属としての技能を使っておりますが」
本当に瞬間移動してたんですか!?
まあ、正確な情報が得られるのは助かりますが……それって眷属の力の悪用になりませんか?
「今の自分はプラトー様の執事ですから」
うん、本人がそう言っているんですから、きっと大丈夫なんでしょう。
って言ってる間に北から水の弾が飛んでいるのが見えますね……ロウ達も交戦に入りましたか。
「キュアさん、足元から魔力が迫っています……数はおおよそ30程かと」
魔力……という事はネクロオバサンの魔法で生み出したアンデットですね。
出てきたのはゾンビが15にスケルトンが15……数は合っていました。
それにしても地中の気配まで察知出来るとは……有能過ぎやしませんかね?
さて、覚えたばかりの魔拳でも倒せなくはないでしょうが……戦いが長引くとこっちが不利になりますし、多勢に無勢では領主とプラトーちゃんが危ないですね。
いざとなればセバスチャンさんが2人を連れて逃げてくれるでしょうけれど。
残り5個しかない貴重な赤ですが、ここは使うしかありません。
「そういえばこれを使うのはグヌット以来ですね……【サンクチュアリ・Ver赤】!」
む……スケルトンはあっという間に消えましたがゾンビは少し時間が掛かりましたね。
まあ何事もなく倒せましたけど。
「あの数を1つの魔法で倒すとは、想像以上の力をお持ちですね……トゥール様が気にかけた理由がよく解ります」
「え、あたしはトゥール様とは会った事がなかった筈ですが?」
あたしはトゥグア様と地の女神にしか会ってませんよ?
「それはそうでしょう……トゥール様が一方的にキュアさんを見ていただけでしたから」
トゥール様はあたしのストーカーなのですか?
あたしの両手はロウとコカちゃんで目一杯ですよ?
後、崇める対象を代える気はありませんからね。
「ですが近い内……そうですね、皆さんがンガイの揉め事を解決した頃に何かしらの接触をすると思いますよ」
一体何の用で現れると……十中八九料理関係なんでしょうけれど。
本当に料理する為にこの世界へ来たんじゃないんですがね……
「とりあえず、集めた緑は空き部屋に纏めておきますので……戦闘後の分配は要相談でお願いします」
いつの間に水晶を……って壁の穴から見えた水晶は明らかにこの場以外からも集めている量じゃないですか!?
あたしと話ながら水晶集めて、各地の情報まで……もう有能を通り越して怪物じみていますね。
セバスチャンさんと敵対していないのが救いですよ、本当に。
「……キュアさん、上空から此方に向かってくる気配があります、数は3つです」
このまま物量で押してくると思っていたら3体だけ?
ふと上を見れば2体のレイスに運ばれている、いつぞやのネクロオバサンが……
成程、まずはあたしを潰す為にボス自ら……ですか。
「久しぶりだねぇ、小娘」
「もう会いたくなかったんですけれど……何しに来たのですか?」
「小娘のせいで領地と財産を失い、全治1ヶ月の怪我を負って、更に資金源を失ったからねぇ……手っ取り早く奪い返しに来たんだよ」
領地と財産に関してはあたしのせいではないですし、怪我をさせたのはミラさんではないですか……というか元を正せば自業自得でしょうに。
それと資金源ってこのレンの村の事ですか?
それこそネクロオバサンの物ではないでしょう!
「ゴーストの偵察によればこの場に居る天敵は小娘だけ、なら先に始末すれば後が楽になるさね」
確かにアンデットの殲滅が出来るのはあたしだけですけど……って唐突に緑の水晶を取り出して飲み込んだ!?
ちょっと、それお腹を壊しますよ!
「【死霊術・憑依】!」
ヒョロヒョロだったネクロオバサンが、ムキムキのマッチョになった!
そういえば翡翠さんからネクロマンサーの技能について聞いていましたが……あれが憑依ですか。
本当に厄介そうです。
端から見たら憑依というよりドーピングじゃないかと思いますが……まあ言わないでおきましょう。
「キュアさん、あの方は見た目こそ強化されていますが……恐らく自我を失うのを嫌っているせいで完全ではありません、なので戦闘技術は大した事がないかと」
成程……確かに身体を鍛えたからって強くなれる訳ではありませんからね。
筋トレだけで勝てるならジムも道場も必要ない、つまりそういう事でしょう。
「フゥゥ……死になぁ!」
中々鋭いストレートですが見てからでも余裕で避けられますね、お返しにリバーブローを差し上げます!
「ガ、ハ……」
かなり強く打った上にカウンターで入ったんですが大して効いてなさそうですね……耐久力は見た目通りの様で。
「いえ、あれは相当効いていますよ?」
「そうですか?アプさんやデュロックさんなら微動だにせず反撃してきますが」
「それは比較対象がおかしい、としか……」
アプさんもデュロックさんも滅茶苦茶強いですからね……
やっぱり女神の眷属から見てもおかしな強さなんでしょう。
「チィ……まだだぁ!」
ふむ……ネクロオバサンはまだまだやる気ですし、ここは1つ試してみましょう。
「フゥ……【ホーリーライト】!」
「ハッ、そんな軟弱な魔法が効くもんかい!」
そんな見え見えのハンマーパンチに当たるあたしではありませんよ。
「これを握って……セイッ!」
打ち下ろされたハンマーパンチに魔拳のアッパーを合わせてみたら……上に3メートル程ふっとんで顔面から不時着しましたね。
うん、余程の悪人でなければ、なるべく人に向けて打たない様にしましょう。
習っておいて何ですがこれはちょっと……危険です。
起きる前にふん縛ろうと思いきや、鼻血を流しながら立ち上がってしまいましたね……やはり悪人はしぶとい様で。
憑依は解けたみたいですが。
「こうなったら最後の手段……【死霊術・反魂】!」
反魂?一体どんな魔法なんですか?
「反魂は周囲を漂う魂に仮の肉体を与える魔法です、自身より強い者を呼べる可能性はありますが、術者に従うとは限らないというデメリットもありますね」
自分じゃ勝てないから他の誰かに丸投げですか……
って何かオバサンがみるみる窶れていますが?
「恐らくは自身の許容量を越える魔力を使っているせいでしょう……魔力の代わりに生命力を消費しているのでは?」
ああ……レンは大きめな村で、その周囲を包囲する程のアンデットを呼び出していましたからね。
魔力を回復する薬もありますがやたらと高いから、無一文で放り出されたんじゃまず買えないでしょうし。
魔法を使い終わったオバサンは最初30台後半な見た目から軽く70台は行ってそうな状態に……
うん、あたしも魔法の使い過ぎには注意します。
「ヒヒヒ……さあ、あの小娘を血祭りにあげな!」
『………』
呼び出されたのは……デストさん!?
「あの人あたしの知り合いっぽいのですが……反魂って生きてる人の魂まで呼べるんですか?」
「いえ、それは例え女神であろうと不可能です……多分あの方がキュアさんの知り合いに似ているだけかと」
デストさんのソックリさん……って何処かで聞いた事がある様な気が?
「……周囲を確認しましたが包囲していたアンデットは全て倒されました、残るはグヌット元伯爵とあの霊魂だけです」
オバサンは既に満身創痍だから……あのソックリさんさえ倒せばいいのですね。
何か引っ掛かる物がありますが、やるしかないですね。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説

ダークナイトはやめました
天宮暁
ファンタジー
七剣の都セブンスソード。魔剣士たちの集うその街で、最強にして最凶と恐れられるダークナイトがいた。
その名を、ナイン。畏怖とともにその名を呼ばれる青年は、しかし、ダークナイトをやめようとしていた。
「本当に……いいんですね?」
そう慰留するダークナイト拝剣殿の代表リィンに、ナインは固い決意とともにうなずきを返す。
「守るものができたからな」
闇の魔剣は守るには不向きだ。
自らが討った聖竜ハルディヤ。彼女から託された彼女の「仔」。竜の仔として育てられた少女ルディアを守るため、ナインは闇の魔剣を手放した。
新たに握るのは、誰かを守るのに適した光の魔剣。
ナインは、ホーリーナイトに転職しようとしていた。
「でも、ナインさんはダークナイトの適正がSSSです。その分ホーリーナイトの適正は低いんじゃ?」
そう尋ねるリィンに、ナインは平然と答えた。
「Cだな」
「し、C!? そんな、もったいなさすぎます!」
「だよな。適正SSSを捨ててCなんてどうかしてる」
だが、ナインの決意は変わらない。
――最強と謳われたダークナイトは、いかにして「守る強さ」を手に入れるのか?
強さのみを求めてきた青年と、竜の仔として育てられた娘の、奇妙な共同生活が始まった。
(※ この作品はスマホでの表示に最適化しています。文中で改行が生じるかたは、ピンチインで表示を若干小さくしていただくと型崩れしないと思います。)


出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる