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蕎麦粉を求めて
修行も終わりました
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コンテストの予選がようやく終わりました……連日食べていましたから暫くは蕎麦を控えましょう。
本戦前の二次予選には参加者の屋台の設置に2日、営業に3日、集計と撤去に1日使うからまだ留まる必要があります。
気になる話があったしンガイに向かいたいのは山々ですが、襲撃があると解っているここを放置する訳にもいきませんからね。
とりあえずミラさんの屋台を設置したらアプさんと翡翠さんにナクアちゃんが先に向かう事になったので余程の事態がなければ大丈夫でしょう。
因みにミラさんの屋台の撤去はロウとコカちゃんが手伝います。
「ナクアの奴……滅茶苦茶拗ねてたな」
そこは申し訳なかったですが、ネクロオバサンと戦うに辺りコカちゃんとトウカの力が必要でしたからね……トウカはロウの頭から絶対に降りませんし。
加えてこの国の地理を把握しているのはアプさんとコカちゃんだけで、あのオバサンとの戦闘を考えればコカちゃんにも残って貰わなければならないからこう分けざるを得なかったのです。
それにアプさんはアンデット……というか幽霊が大の苦手ですし。
うん、拗ねたままではいけませんしンガイに立つ前に黄粉とチーズを使って機嫌を取っておきましょう。
後、ロウを1日独占する権利をあげます。
「ロウくん……訓練中だけど、翡翠さんと離れて……良かったの?」
「ああ、後は幻獣の技能を俺も使える様になれればいいだけだしな……特訓はトウカが居れば何とかなる」
「ロウが段々と人間を辞めている気がします」
「それ、キュアにだけは言われたくないからな?」
失礼な!
「グルッヒャー!」
あ、ピーニャもここに残るんですね……
「ボウズノクンレンヲカンシシロ、トアルジニタノマレタ」
ロウはサボり魔ですからね……日本では気分が乗らないからって理由で授業を受けない事もありましたし。
まあ自分の命が掛かってる時まで怠けたりはしないと思いますけど。
「アト、ユウハンハくっくーノカラアゲガイイデス」
翡翠さんからは生でもいいとか聞きましたが……きっと料理が出来なかったからですね。
「コカちゃん、ちょっとクックー肉とリンゴに油を買ってきて下さい」
「う、うん……解った」
「そこで断らないのがキュアの良い所だよな」
ある意味あたしの欠点でもありますがね……直す気はありませんけど。
で、ここからは本格的に警備を強化するので、デュロックさんの指導を受けられるのはこれが最後になるのですが……
「おお……あたしの拳から電流が!」
「ほぅ、俺の雷と同等の力を感じるな……まさか本当に1週間で2つを習得するとは」
出来れば炎を出したかった所ですが、この際ですし贅沢は言いません。
クティと戦うのに付け焼き刃じゃ勝てないだろうし、身に付けた力を磨いた方がいいでしょうからね。
それにクティが水を使うなら、この電流は非常に役に立つ筈ですし。
「ここまで出来ればもう教えられる事はない……よくやったな」
「はい……ありがとうございました」
気のせいか魔拳の特訓からあたしの体術が上達してますし、後1つの属性は気長に見つけていきましょう。
「それと、これは俺が感じた事だが……」
デュロックさんが言うにはあたしの魔拳は光からは魔力、雷からは気を感じたそうで……
まあ光は魔法を握って殴ってたので間違ってないのですけど。
となると……ちょっと試してみましょう。
「光の様に魔力を込めて……雷の様に気を蓄えれば」
む……これはちょっとコントロールが難しいですね。
でも何とか拳に集められ……ってあたしの拳が真っ黒に!?
「驚いたな……嬢ちゃんの3つ目は鋼属性か」
鋼って属性があったんですね……初めて知りました。
つまりあたしの魔拳は光、雷、鋼の3つですか。
まさかリアルに鉄拳となる日が来るとは夢にも思っていませんでしたよ……それも比喩でなく物理的に。
まあ鋼はちょっと維持するのが難しいので、実戦で使えるのは暫く先ですね。
それにネクロオバサンと戦う時は光を多用するでしょうし。
「これで本当に教えられる事がなくなってしまったな……大したもんだ」
出会いはともかく、デュロックさんには感謝しかありませんね……
素質がありそうな人を見付けたら訪ねる様に言っておきます。
そんなこんなで夕飯タイムです。
明日の朝にはアプさん達がンガイに向かうのでちょっと豪勢にしましたよ。
「今日はミラさんとデュロックのオッサンもここで食うのか?」
「蕎麦も美味しいのですが、キュアさんの料理の方が美味しいので」
「ヴァレン殿から嬢ちゃんの料理は美味いと聞いていたからな……1度は食ってみたかった」
言ってくれれば作りましたのに……まあ特訓中で仕込みは出来なかったので大した物は出来なかったんですが。
「それと、セバスチャンさんが何故ここに?」
本当にこの世界の従者は神出鬼没ですね……アトラさんといいクティといい、瞬間移動が必須技能なんですか?
「急ぎではないのですがキュアさんに話がありまして……そうしたら不思議な香りに誘われました」
まあ、大食らいのサーグァ様も居ますし余分に作っていますから問題はありませんが。
せめて次からは事前に話を通して下さいね?
とりあえずメニューはピーニャのリクエストである唐揚げ、トウカが好きな干物、ナクアちゃんのお気に入りのプディングに黄粉餅……そして
「此方があたしがコンテストに出す予定だった蕎麦料理になります」
手打ちの四六蕎麦に昆布とクックーの骨を煮込んで魚醤と醤油で味付けしたスープ、クックーの皮から出た油で焼いた輪切りのタマネギ、クックーの肉団子、ついでに油を出し切った皮を乗せてあります。
因みに肉団子も骨のスープで煮込んでいます。
本当なら鴨肉で作りたかった所ですが……デストさんもこの世界じゃ鴨は見た事がないと言っていましたからね。
それに鰹節もないから少し物足りなさがありましたが、魚醤のお陰である程度はカバー出来ました。
確か鰹以外にも鮭や鮪でも作れるそうですし、ボリアに戻ったらデストさんに協力して貰いながら節の作成を検討してみましょうかね?
陸地だから魚の入手が難しいですが、やる価値はある筈です。
「久しぶりの蕎麦……美味ぇ」
「成程……ラーメンやウドンもそうだったが、キュアの故郷は粉を麺にして食うんだねぇ」
「うん……凄く、美味しい」
麺だけではないのですけどね……機会があれば他の粉物も作りたいのですがソースがないと美味しくなりませんし。
材料はともかく、あたしはソースの作り方を知らないのです……ああ、ソースについて考えてたらどろ焼きが食べたくなってしまいました。
カツの話をしてた時のロウとデストさんもこんな心境だったんですかね?
「でも何でまた蕎麦粉を使ったんだい?まだコンテストの最中だろう?」
「アプさん達は一足先に旅立ちますからね……その前にと思いまして」
特にナクアちゃんは後回しにしたら更に拗ねてしまいますし。
「まさかこの様な食べ方があったとは……」
まあ、何故かこの世界は麺料理がありませんからね……とはいえ少し所ではなく買い被られ過ぎてませんかね?
「これがダイズ豆から作ったという調味料か……確かに美味いな、何故か故郷を思い出す味だ」
「デュロックさんの故郷はダイズ豆の栽培が主なのですか?」
「俺の故郷はフサという……本当に何もない所だった」
ああ、未だに物々交換が主になっている……あたしとロウが初めて立ち寄った村の生まれでしたか。
「一攫千金を夢見て飛び出したが、いつの間にか魔拳を生み出す事に没頭し今に至る……まあ、後悔はしていないがな」
デュロックさんの人生も中々に重みがありそうですね。
そういえばナクアちゃんは……
「お蕎麦って美味しーね!」
「だろ?沢山食えよ」
うん、機嫌が治った様ですね。
さて、夕飯が終わったのでセバスチャンさんの話を聞きましょう。
コンテストに関する事なら他の方には聞かせられませんが、意見を聞きたいと思ってサーグァ様もコッソリ着いてきてます。
「それで、話とは?」
「要件は2つございます、1つはプラトー様の執事として、貴女に感謝をと……キュアさんのお陰で年相応の笑顔が戻りました」
あのネクロオバサンのせいで苦労したでしょうからね……子供は元気が1番です。
「2つ目は【風】と【喜】の女神、トゥール様の眷属として貴女に言伝を……」
風の女神……ってセバスチャンさんは眷属だったんですか!?
妹、僕、ペットときて最後に執事……初めてまともな読み方をしてるって思うのはあたしの気のせいでしょうか?
「正確に言うと自分は神に成る為の試験中ですので……そこにいらっしゃるサーグァ様と同様に、今はただの人間ですよ」
「……気付いていたのですか」
知られたからか、サーグァ様がポケットから出て来ましたね……
そういえばサーグァ様、自分ともう1人が試験中とか言ってました……セバスチャンさんがそうだったのですか。
「誤解のない様に言っておきますが、自分は皆様と敵対するつもりはございません……下手な事をして失格になりたくはありませんし、このまま平和にプラトー様に仕えていたいので」
「やけにプラトーちゃんを気に入っているんですね?」
「プラトー様には立派な領主になれる素質がありますので……それにプラトー様の掲げる理想はトゥール様の理想と似ております故」
成程……一瞬ロリコンなのかと疑ってしまいましたが、違いそうで安心しました。
「一応言っておきますが自分は既に結婚しておりますよ、妻は神界に居ますが」
まあ、眷属である事を差し引いても有能なのは間違いないですし……そりゃ相手なら幾らでも居ますよね。
「それで、風の女神の言伝とは?」
「そうでした、トゥール様の命ですので原文のままお伝えします……【何かトゥグアとハイドラが手ぇ組んだっぽいけど、ウチは試験とかどーでもええからアルラの協力は断ったで、だからそっちとは敵対せんけど、協力もせぇへんよ(はぁと】……以上です」
随分と軽い性格をした女神ですね……ですが何故に関西弁?
日本でいう所のギャル系って奴でしょうか?
「そういう訳ですので……アルラ様からの妨害の話は聞いていますが、要約すると被害がない限り此方は干渉しません、という事です」
まあ、敵が増える訳ではありませんしいいでしょう……その代わり味方も増えませんが。
「それはそうと、そういった話は直接トゥグア様に送るべきでは?」
「言伝にもありましたが向こうにはハイドラ様もいらっしゃいますので……何と言いますか、トゥール様とハイドラ様は犬猿の仲でして」
ああ、トゥグア様と地の女神も同じですからね……よく解りました。
トゥール様がギャル系ならハイドラ様は委員長系って所でしょうかね?
「あくまでも女神同士が敵視しているだけなので、自分は特に思う事はないのですがね……翡翠様はそうでもなさそうですが」
ペットは飼い主に似るといいますから……というか翡翠さんも眷属だと知っていたんですか?
「では、その話は私から姉さんに伝えておきます」
「宜しくお願い致します」
それならちゃんと伝わりますね……多分。
「まあ、トゥール様の眷属としての協力は出来ませんが……プラトー様の執事としてならある程度の助力はいたします」
それはそれで有難いので素直に受け取らせて頂きます。
「所でセバスチャンさんは何で人間になってまで執事をしているのですか?」
「そういう趣味の様な物、と思って頂ければ」
趣味だったんですか!?
本戦前の二次予選には参加者の屋台の設置に2日、営業に3日、集計と撤去に1日使うからまだ留まる必要があります。
気になる話があったしンガイに向かいたいのは山々ですが、襲撃があると解っているここを放置する訳にもいきませんからね。
とりあえずミラさんの屋台を設置したらアプさんと翡翠さんにナクアちゃんが先に向かう事になったので余程の事態がなければ大丈夫でしょう。
因みにミラさんの屋台の撤去はロウとコカちゃんが手伝います。
「ナクアの奴……滅茶苦茶拗ねてたな」
そこは申し訳なかったですが、ネクロオバサンと戦うに辺りコカちゃんとトウカの力が必要でしたからね……トウカはロウの頭から絶対に降りませんし。
加えてこの国の地理を把握しているのはアプさんとコカちゃんだけで、あのオバサンとの戦闘を考えればコカちゃんにも残って貰わなければならないからこう分けざるを得なかったのです。
それにアプさんはアンデット……というか幽霊が大の苦手ですし。
うん、拗ねたままではいけませんしンガイに立つ前に黄粉とチーズを使って機嫌を取っておきましょう。
後、ロウを1日独占する権利をあげます。
「ロウくん……訓練中だけど、翡翠さんと離れて……良かったの?」
「ああ、後は幻獣の技能を俺も使える様になれればいいだけだしな……特訓はトウカが居れば何とかなる」
「ロウが段々と人間を辞めている気がします」
「それ、キュアにだけは言われたくないからな?」
失礼な!
「グルッヒャー!」
あ、ピーニャもここに残るんですね……
「ボウズノクンレンヲカンシシロ、トアルジニタノマレタ」
ロウはサボり魔ですからね……日本では気分が乗らないからって理由で授業を受けない事もありましたし。
まあ自分の命が掛かってる時まで怠けたりはしないと思いますけど。
「アト、ユウハンハくっくーノカラアゲガイイデス」
翡翠さんからは生でもいいとか聞きましたが……きっと料理が出来なかったからですね。
「コカちゃん、ちょっとクックー肉とリンゴに油を買ってきて下さい」
「う、うん……解った」
「そこで断らないのがキュアの良い所だよな」
ある意味あたしの欠点でもありますがね……直す気はありませんけど。
で、ここからは本格的に警備を強化するので、デュロックさんの指導を受けられるのはこれが最後になるのですが……
「おお……あたしの拳から電流が!」
「ほぅ、俺の雷と同等の力を感じるな……まさか本当に1週間で2つを習得するとは」
出来れば炎を出したかった所ですが、この際ですし贅沢は言いません。
クティと戦うのに付け焼き刃じゃ勝てないだろうし、身に付けた力を磨いた方がいいでしょうからね。
それにクティが水を使うなら、この電流は非常に役に立つ筈ですし。
「ここまで出来ればもう教えられる事はない……よくやったな」
「はい……ありがとうございました」
気のせいか魔拳の特訓からあたしの体術が上達してますし、後1つの属性は気長に見つけていきましょう。
「それと、これは俺が感じた事だが……」
デュロックさんが言うにはあたしの魔拳は光からは魔力、雷からは気を感じたそうで……
まあ光は魔法を握って殴ってたので間違ってないのですけど。
となると……ちょっと試してみましょう。
「光の様に魔力を込めて……雷の様に気を蓄えれば」
む……これはちょっとコントロールが難しいですね。
でも何とか拳に集められ……ってあたしの拳が真っ黒に!?
「驚いたな……嬢ちゃんの3つ目は鋼属性か」
鋼って属性があったんですね……初めて知りました。
つまりあたしの魔拳は光、雷、鋼の3つですか。
まさかリアルに鉄拳となる日が来るとは夢にも思っていませんでしたよ……それも比喩でなく物理的に。
まあ鋼はちょっと維持するのが難しいので、実戦で使えるのは暫く先ですね。
それにネクロオバサンと戦う時は光を多用するでしょうし。
「これで本当に教えられる事がなくなってしまったな……大したもんだ」
出会いはともかく、デュロックさんには感謝しかありませんね……
素質がありそうな人を見付けたら訪ねる様に言っておきます。
そんなこんなで夕飯タイムです。
明日の朝にはアプさん達がンガイに向かうのでちょっと豪勢にしましたよ。
「今日はミラさんとデュロックのオッサンもここで食うのか?」
「蕎麦も美味しいのですが、キュアさんの料理の方が美味しいので」
「ヴァレン殿から嬢ちゃんの料理は美味いと聞いていたからな……1度は食ってみたかった」
言ってくれれば作りましたのに……まあ特訓中で仕込みは出来なかったので大した物は出来なかったんですが。
「それと、セバスチャンさんが何故ここに?」
本当にこの世界の従者は神出鬼没ですね……アトラさんといいクティといい、瞬間移動が必須技能なんですか?
「急ぎではないのですがキュアさんに話がありまして……そうしたら不思議な香りに誘われました」
まあ、大食らいのサーグァ様も居ますし余分に作っていますから問題はありませんが。
せめて次からは事前に話を通して下さいね?
とりあえずメニューはピーニャのリクエストである唐揚げ、トウカが好きな干物、ナクアちゃんのお気に入りのプディングに黄粉餅……そして
「此方があたしがコンテストに出す予定だった蕎麦料理になります」
手打ちの四六蕎麦に昆布とクックーの骨を煮込んで魚醤と醤油で味付けしたスープ、クックーの皮から出た油で焼いた輪切りのタマネギ、クックーの肉団子、ついでに油を出し切った皮を乗せてあります。
因みに肉団子も骨のスープで煮込んでいます。
本当なら鴨肉で作りたかった所ですが……デストさんもこの世界じゃ鴨は見た事がないと言っていましたからね。
それに鰹節もないから少し物足りなさがありましたが、魚醤のお陰である程度はカバー出来ました。
確か鰹以外にも鮭や鮪でも作れるそうですし、ボリアに戻ったらデストさんに協力して貰いながら節の作成を検討してみましょうかね?
陸地だから魚の入手が難しいですが、やる価値はある筈です。
「久しぶりの蕎麦……美味ぇ」
「成程……ラーメンやウドンもそうだったが、キュアの故郷は粉を麺にして食うんだねぇ」
「うん……凄く、美味しい」
麺だけではないのですけどね……機会があれば他の粉物も作りたいのですがソースがないと美味しくなりませんし。
材料はともかく、あたしはソースの作り方を知らないのです……ああ、ソースについて考えてたらどろ焼きが食べたくなってしまいました。
カツの話をしてた時のロウとデストさんもこんな心境だったんですかね?
「でも何でまた蕎麦粉を使ったんだい?まだコンテストの最中だろう?」
「アプさん達は一足先に旅立ちますからね……その前にと思いまして」
特にナクアちゃんは後回しにしたら更に拗ねてしまいますし。
「まさかこの様な食べ方があったとは……」
まあ、何故かこの世界は麺料理がありませんからね……とはいえ少し所ではなく買い被られ過ぎてませんかね?
「これがダイズ豆から作ったという調味料か……確かに美味いな、何故か故郷を思い出す味だ」
「デュロックさんの故郷はダイズ豆の栽培が主なのですか?」
「俺の故郷はフサという……本当に何もない所だった」
ああ、未だに物々交換が主になっている……あたしとロウが初めて立ち寄った村の生まれでしたか。
「一攫千金を夢見て飛び出したが、いつの間にか魔拳を生み出す事に没頭し今に至る……まあ、後悔はしていないがな」
デュロックさんの人生も中々に重みがありそうですね。
そういえばナクアちゃんは……
「お蕎麦って美味しーね!」
「だろ?沢山食えよ」
うん、機嫌が治った様ですね。
さて、夕飯が終わったのでセバスチャンさんの話を聞きましょう。
コンテストに関する事なら他の方には聞かせられませんが、意見を聞きたいと思ってサーグァ様もコッソリ着いてきてます。
「それで、話とは?」
「要件は2つございます、1つはプラトー様の執事として、貴女に感謝をと……キュアさんのお陰で年相応の笑顔が戻りました」
あのネクロオバサンのせいで苦労したでしょうからね……子供は元気が1番です。
「2つ目は【風】と【喜】の女神、トゥール様の眷属として貴女に言伝を……」
風の女神……ってセバスチャンさんは眷属だったんですか!?
妹、僕、ペットときて最後に執事……初めてまともな読み方をしてるって思うのはあたしの気のせいでしょうか?
「正確に言うと自分は神に成る為の試験中ですので……そこにいらっしゃるサーグァ様と同様に、今はただの人間ですよ」
「……気付いていたのですか」
知られたからか、サーグァ様がポケットから出て来ましたね……
そういえばサーグァ様、自分ともう1人が試験中とか言ってました……セバスチャンさんがそうだったのですか。
「誤解のない様に言っておきますが、自分は皆様と敵対するつもりはございません……下手な事をして失格になりたくはありませんし、このまま平和にプラトー様に仕えていたいので」
「やけにプラトーちゃんを気に入っているんですね?」
「プラトー様には立派な領主になれる素質がありますので……それにプラトー様の掲げる理想はトゥール様の理想と似ております故」
成程……一瞬ロリコンなのかと疑ってしまいましたが、違いそうで安心しました。
「一応言っておきますが自分は既に結婚しておりますよ、妻は神界に居ますが」
まあ、眷属である事を差し引いても有能なのは間違いないですし……そりゃ相手なら幾らでも居ますよね。
「それで、風の女神の言伝とは?」
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随分と軽い性格をした女神ですね……ですが何故に関西弁?
日本でいう所のギャル系って奴でしょうか?
「そういう訳ですので……アルラ様からの妨害の話は聞いていますが、要約すると被害がない限り此方は干渉しません、という事です」
まあ、敵が増える訳ではありませんしいいでしょう……その代わり味方も増えませんが。
「それはそうと、そういった話は直接トゥグア様に送るべきでは?」
「言伝にもありましたが向こうにはハイドラ様もいらっしゃいますので……何と言いますか、トゥール様とハイドラ様は犬猿の仲でして」
ああ、トゥグア様と地の女神も同じですからね……よく解りました。
トゥール様がギャル系ならハイドラ様は委員長系って所でしょうかね?
「あくまでも女神同士が敵視しているだけなので、自分は特に思う事はないのですがね……翡翠様はそうでもなさそうですが」
ペットは飼い主に似るといいますから……というか翡翠さんも眷属だと知っていたんですか?
「では、その話は私から姉さんに伝えておきます」
「宜しくお願い致します」
それならちゃんと伝わりますね……多分。
「まあ、トゥール様の眷属としての協力は出来ませんが……プラトー様の執事としてならある程度の助力はいたします」
それはそれで有難いので素直に受け取らせて頂きます。
「所でセバスチャンさんは何で人間になってまで執事をしているのですか?」
「そういう趣味の様な物、と思って頂ければ」
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