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蕎麦粉を求めて
予選が終わりました
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クティに色々聞かされた夜……
ナクアちゃんとデュロックさんを除く全員に聞いた事を説明しましたよ。
デュロックさんも当事者と言えなくはないですが、宮仕えの身ですからね。
「まあ、何時かはその時が来ると思ってたよ」
意外とロウが冷静でした……てっきり慌てたりすると思っていましたよ?
「クティよりも前に宣戦布告されてたしな……相手も予想が付いてる」
何があったのかは後日聞かせて貰いましょう。
「ボクの相手は……きっと、あのスライム……だよね」
ロウを殺す、とは言っていましたがあたし達もとは言ってませんからね……
狙いがロウを殺すまでの足止めなら充分ありえます。
というかあのイケボなスライムの能力だとそれ以外の使い道がなさそうですし。
「あたいの相手が不明なのは不安だが……幽霊だけはないと思いたいねぇ」
数少ないアプさんの弱点ですからね……まあアンデット系ではないとは思いますけども。
「というより1番不安なのはキュアだろう?」
相手がクティだと宣言されてしまいましたからね……
あたしって戦闘ではそんなに重要な立ち位置ではないと思うのですが、何でクティがあたしと戦うのかが未だに解りません。
「いや、回復と支援を担うヒーラーが重要でなければ何なんだ?」
「そういえばそうでした」
まあそれはさておき、残り2体のモンスターが悪魔かアンデットというなら話は変わりますが、育てていると言ってたからそれはなさそうですね。
「ま、お嬢様の考えは解らないけど……今は強くなる事だけ考えればいいんじゃない?」
全くもってその通りですが……
「クティの狙いが幻獣使いの抹殺なら翡翠さんも危ないんじゃないですか?」
「私はこの世界では契約が出来ないからね……指輪も一杯一杯だし」
まあハイドラ様の世界から期限付きで来た訳ですから……
そういえば翡翠さんと契約した幻獣は一切知りませんね。
「何なら1体だけ呼んであげよっか?」
「あ、お願いします」
おお、翡翠さんの指輪から青い光が!
出てきたのは……魚の尾を持つインコ?
「この子は歌声が気に入ったから契約したセイレーンでね、名前はピーニャっていうんだよ」
「グルッヒャー!」
「それ、鳴き声ですか?」
「タダノアイサツデス」
どんな挨拶ですか!
というか一応会話は出来るんですね……通じなければナクアちゃんに頼れば済む話でしたけど。
一体どんな歌を歌うんでしょうか?
「因みにこの子の主食はクックー肉ね」
共食いじゃないですか!?
それしか食べないと言うなら用意はしますけど。
「見た目に騙されるなよキュア……あいつはかなり危険な奴だ」
ロウは既に見ていたんですね……何があったのかは聞かないでおきます。
「訓練の後に聞くあいつの演歌は凄く胸に来る物があるんだが、如何せん凶悪だからな」
よりによって演歌なんですか!?
逆に興味が湧いて来たんですけど……今度聞かせて貰いましょう。
日が進んでコンテストの予選最終日……
予選の最後に相応しい……かどうかは不明ですが、蕎麦のシフォンケーキやガレット、ビスケットなんかが並んでいます。
ビスケットは美味しかったので今度蕎麦粉でクッキーでも作ってみましょうかね?
うん、組み合わせはくじ引きで決めたとか言ってましたけどこれが本戦でもいいぐらいです。
ちょっと前日まではソバがきが固まり過ぎてましたね。
「さて、最後はどれがいいかね?」
「わたしはケーキがいーとおもいます」
シフォンケーキも悪くはなかったのですが個人的に一味足りない気がしたんですよね……
まあ、ケーキなのに甘くなかっただけなんですけれど。
「あたしはこのビスケットを推したいですね」
個人的に好きな味でしたし、こっそり食べてるサーグァ様が1番良い反応を見せましたからね。
「ふむ……私はこのガレットがいいと思ったのだかな」
パリパリのガレットに包まれたリンゴとチーズは確かに美味しかったのですが蕎麦の風味が消えてましたからね……論外です。
「ではこんかいもキュアのいけんをさいよーということで」
「うむ」
結局クティ以外の全員があたしの意見で決まってしまいましたね……
「ビスケットをだしたミラ、よせんつーかだぞ!」
「ありがとうございます」
何やってるんですかミラさん!?
もう何度言ったか知りませんが、マリー様の護衛はどうしたんですか!
あたし、この予選だけで4人の知り合いに遭遇してるんですけど……内2人は名前も知らない変態でしたが。
「今回はそのマリー様の御命令ですよ……以前逃がしたグヌット元伯爵を捕らえて来い、と」
成程……確かにミラさんが助太刀してくれれば有難いです。
って何でコンテストに参加しているのでしょう?
「その……将来の為に持ち家を増やそうと思いまして、駄目元で参加してみたのですが」
デストさんとの関係は変わっていない様ですね……この分だとアトラさんと姉さんも同様でしょう。
まだ失恋を引き摺っているのでしょうか?
「因みにビスケットの作り方はデストに習いました」
それはミラさんにとっては役得だったでしょうね。
デストさんも嫌ではなかったでしょうけれど。
「では本戦だが……予選を通過した8人は屋台を出し、3日間の売り上げで決めようと思う」
その辺りはダニチのコンテストと同じですね……因みにクティは戻って来なかったから7人の勝負になります。
「あの……キュアさんにお願いがあるのですが」
「はぁ……とりあえず場所を変えて聞きましょう」
とりあえずミラさんを連れて宿に戻った所で……何やらお客さんが来ていますね?
ってあの人は予選に居たオカマのエルフ?
「おっと、戻って来たかい」
「ただいまです、それで確かアーチさん……でしたね、何でここに居るのですか?」
「ちょっと知り合いを見つけたから挨拶に、ね」
「知り合いというか、腐れ縁だろうよ」
ああ、アプさんの知り合いだったんですね……まあ同じエルフですし不思議でもありませんか。
「改めて私はアーチ、職業はウィザードよ」
という事は魔術ギルドに居る方ですか……ギルドに在籍したら自由に動けなくなるとか聞きましたけど?
「何故か知らないけど、私だけは自由に動く権利があるのよ」
「そりゃ同じギルドの男を喰い漁ってりゃそうもなるだろうよ」
男漁りをするオカマ……腐った女性が喜びそうですね。
あたしにはそういう趣味はありませんけれど。
というかそんな事してたら追い出されてもおかしくなさそうですが……実力はあると見て良さそうですね。
「で、あたいにどんな厄介事を持ってきたんだい?」
「つれないわねぇ……今回はそういうのじゃないわよ、あくまでもここにはコンテストの為に来たんだし、ちゃんと報酬だって出してるじゃない」
「釣り合いが取れてりゃこんな文句は言わずに済むんだけどねぇ」
「それは……その、私のポケットマネーから出してるんだから多少は、ね?」
魔術ギルドはケチの集団だったりするんでしょうか?
国から独立した勢力とか言ってましたし、援助は受けてないんですかね?
「それはさておき、コカちゃんはどうしたの?」
「ああ、コカならキュアの屋台を代わりに出してるよ」
あたしが審査員になったからコカちゃんには代理で屋台を出して貰いましたが……
まあラーメンは何度か一緒に作っていますし、手取り足取り教えたらすんなり覚えてくれましたから問題はありません。
キスをせがまれる頻度が増えたのがアレですけど。
「残念ね……ならこの本を渡して貰える?私からの転職祝いって事で」
「あいよ、ちゃんと渡しとく」
まあアプさんの知り合いなら面識はありますよね、うん。
ん?一瞬あたし……の後ろに居たミラさんに目配せをした様な?
「それとこれは忠告だけど……暫くンガイには近付かない方がいいわよ」
ンガイ……エリナ様の故郷で、弟さんが領主をしている果物とキノコが美味しい所でしたね。
シイタケがあれば嬉しいのですが、アプさんはキノコが苦手らしいですからね。
「今ンガイには王様に反旗を企てる連中が集まっててね……大量の赤を集めているらしいのよ」
ンガイに大量の赤って……神話通りになってしまうではありませんか!
そこに地の女神は居ない(多分)からより悲惨な事になりますよ!
「あんた……相変わらず忠告する振りしながら行かざるを得ない状況を作るのが上手いねぇ」
ああ、マリー様の専属護衛をしているミラさんが居るのを知ってて言ったんですね。
「それに、こういう機会でもないと故郷のンガイには近付こうともしないでしょ?おじ様とおば様も会いたがっていたわよ?」
「あたいに、じゃなくてコカに、だろう?」
「だってアプが最後に帰ったのはコカちゃんが赤ちゃんだった時じゃない」
「コカをひたすら甘やかすから嫌なんだよ!」
エルフでも孫が可愛いのは変わらない様で……というかアプさんもンガイで生まれたのですね。
もしかして子供の頃から食べさせ続けられたせいでキノコが苦手なのでしょうか?
「元々ンガイはエルフの村って言われていたのよ、今では普通の人間やオークなんかが出稼ぎに来たり、旅人が定住したりしてるけど」
エルフとオークって出会ったら即座に薄い本案件だと思っていましたが……オークにも普通に人権がある世界ですし、問題は起こっていない様ですね。
まあ、アプさんはそこらのオークより遥かに強いんですけど。
「はぁぁぁ……なるべく会わせたくないんだけどねぇ、でも危険な連中を見過ごす訳にも……はぁ」
アプさん、幽霊とキノコ以外にも苦手な物があったのですね……
とりあえず目的を果たしたアーチさんが帰って、ロウとコカちゃんが戻って来たので……改めてミラさんの話を聞かせて貰いましょう。
「で、何でミラがここに居るんだい?」
「マリー様から父上の代理として派遣されたのですが……キュアさんにお願いがありまして」
あたしにお願い……どんな料理を作れと仰るので?
一応言っておきますが、あたしが作れる料理はデストさんも作れますよ?
「キュアさんには私とジェネとデストの式で進行をして頂きたいと」
「兄貴が遂に結婚するのか!?」
「あ、はい……そうなんです」
ついに観念したんですねデストさん……って2人だけ?
「アトラさんはどうしたんですか?」
「アトラも一緒にとは思いましたが本人の希望で、ナクアと同じ日に式を挙げたいと言っていましたよ」
つまり5年後ですね、分かります。
妹離れはしたけどシスコンなのは変わらずですか。
それにしても年上趣味のデストさんを落とすとは……ノンケだったあたしを落としたコカちゃんといい、女の執念は恐ろしいですね。
……ロウが何かを言いたそうな目であたしを見てますが何かあったのでしょうか?
「式は半年後に挙げようと思っていますので、その頃までにボリアへ来て頂きたいと」
「そういう事なら了解しました」
結婚式を仕切るのもプリーストの勤めですし……この世界の結婚式について学んでおかなくてはいけませんね。
それにロウが絶対に生還しなくてはならない理由も出来ましたし。
「それと……屋台の組み方を教えて頂けないでしょうか?」
「それはあたいが教えてやるさ」
ああ、旅をしてた時はデストさんがやっていたんでしょうし、以降はマリー様の護衛に付いていたから……
あたしは審査員なので応援は出来ませんが……頑張って下さい。
ナクアちゃんとデュロックさんを除く全員に聞いた事を説明しましたよ。
デュロックさんも当事者と言えなくはないですが、宮仕えの身ですからね。
「まあ、何時かはその時が来ると思ってたよ」
意外とロウが冷静でした……てっきり慌てたりすると思っていましたよ?
「クティよりも前に宣戦布告されてたしな……相手も予想が付いてる」
何があったのかは後日聞かせて貰いましょう。
「ボクの相手は……きっと、あのスライム……だよね」
ロウを殺す、とは言っていましたがあたし達もとは言ってませんからね……
狙いがロウを殺すまでの足止めなら充分ありえます。
というかあのイケボなスライムの能力だとそれ以外の使い道がなさそうですし。
「あたいの相手が不明なのは不安だが……幽霊だけはないと思いたいねぇ」
数少ないアプさんの弱点ですからね……まあアンデット系ではないとは思いますけども。
「というより1番不安なのはキュアだろう?」
相手がクティだと宣言されてしまいましたからね……
あたしって戦闘ではそんなに重要な立ち位置ではないと思うのですが、何でクティがあたしと戦うのかが未だに解りません。
「いや、回復と支援を担うヒーラーが重要でなければ何なんだ?」
「そういえばそうでした」
まあそれはさておき、残り2体のモンスターが悪魔かアンデットというなら話は変わりますが、育てていると言ってたからそれはなさそうですね。
「ま、お嬢様の考えは解らないけど……今は強くなる事だけ考えればいいんじゃない?」
全くもってその通りですが……
「クティの狙いが幻獣使いの抹殺なら翡翠さんも危ないんじゃないですか?」
「私はこの世界では契約が出来ないからね……指輪も一杯一杯だし」
まあハイドラ様の世界から期限付きで来た訳ですから……
そういえば翡翠さんと契約した幻獣は一切知りませんね。
「何なら1体だけ呼んであげよっか?」
「あ、お願いします」
おお、翡翠さんの指輪から青い光が!
出てきたのは……魚の尾を持つインコ?
「この子は歌声が気に入ったから契約したセイレーンでね、名前はピーニャっていうんだよ」
「グルッヒャー!」
「それ、鳴き声ですか?」
「タダノアイサツデス」
どんな挨拶ですか!
というか一応会話は出来るんですね……通じなければナクアちゃんに頼れば済む話でしたけど。
一体どんな歌を歌うんでしょうか?
「因みにこの子の主食はクックー肉ね」
共食いじゃないですか!?
それしか食べないと言うなら用意はしますけど。
「見た目に騙されるなよキュア……あいつはかなり危険な奴だ」
ロウは既に見ていたんですね……何があったのかは聞かないでおきます。
「訓練の後に聞くあいつの演歌は凄く胸に来る物があるんだが、如何せん凶悪だからな」
よりによって演歌なんですか!?
逆に興味が湧いて来たんですけど……今度聞かせて貰いましょう。
日が進んでコンテストの予選最終日……
予選の最後に相応しい……かどうかは不明ですが、蕎麦のシフォンケーキやガレット、ビスケットなんかが並んでいます。
ビスケットは美味しかったので今度蕎麦粉でクッキーでも作ってみましょうかね?
うん、組み合わせはくじ引きで決めたとか言ってましたけどこれが本戦でもいいぐらいです。
ちょっと前日まではソバがきが固まり過ぎてましたね。
「さて、最後はどれがいいかね?」
「わたしはケーキがいーとおもいます」
シフォンケーキも悪くはなかったのですが個人的に一味足りない気がしたんですよね……
まあ、ケーキなのに甘くなかっただけなんですけれど。
「あたしはこのビスケットを推したいですね」
個人的に好きな味でしたし、こっそり食べてるサーグァ様が1番良い反応を見せましたからね。
「ふむ……私はこのガレットがいいと思ったのだかな」
パリパリのガレットに包まれたリンゴとチーズは確かに美味しかったのですが蕎麦の風味が消えてましたからね……論外です。
「ではこんかいもキュアのいけんをさいよーということで」
「うむ」
結局クティ以外の全員があたしの意見で決まってしまいましたね……
「ビスケットをだしたミラ、よせんつーかだぞ!」
「ありがとうございます」
何やってるんですかミラさん!?
もう何度言ったか知りませんが、マリー様の護衛はどうしたんですか!
あたし、この予選だけで4人の知り合いに遭遇してるんですけど……内2人は名前も知らない変態でしたが。
「今回はそのマリー様の御命令ですよ……以前逃がしたグヌット元伯爵を捕らえて来い、と」
成程……確かにミラさんが助太刀してくれれば有難いです。
って何でコンテストに参加しているのでしょう?
「その……将来の為に持ち家を増やそうと思いまして、駄目元で参加してみたのですが」
デストさんとの関係は変わっていない様ですね……この分だとアトラさんと姉さんも同様でしょう。
まだ失恋を引き摺っているのでしょうか?
「因みにビスケットの作り方はデストに習いました」
それはミラさんにとっては役得だったでしょうね。
デストさんも嫌ではなかったでしょうけれど。
「では本戦だが……予選を通過した8人は屋台を出し、3日間の売り上げで決めようと思う」
その辺りはダニチのコンテストと同じですね……因みにクティは戻って来なかったから7人の勝負になります。
「あの……キュアさんにお願いがあるのですが」
「はぁ……とりあえず場所を変えて聞きましょう」
とりあえずミラさんを連れて宿に戻った所で……何やらお客さんが来ていますね?
ってあの人は予選に居たオカマのエルフ?
「おっと、戻って来たかい」
「ただいまです、それで確かアーチさん……でしたね、何でここに居るのですか?」
「ちょっと知り合いを見つけたから挨拶に、ね」
「知り合いというか、腐れ縁だろうよ」
ああ、アプさんの知り合いだったんですね……まあ同じエルフですし不思議でもありませんか。
「改めて私はアーチ、職業はウィザードよ」
という事は魔術ギルドに居る方ですか……ギルドに在籍したら自由に動けなくなるとか聞きましたけど?
「何故か知らないけど、私だけは自由に動く権利があるのよ」
「そりゃ同じギルドの男を喰い漁ってりゃそうもなるだろうよ」
男漁りをするオカマ……腐った女性が喜びそうですね。
あたしにはそういう趣味はありませんけれど。
というかそんな事してたら追い出されてもおかしくなさそうですが……実力はあると見て良さそうですね。
「で、あたいにどんな厄介事を持ってきたんだい?」
「つれないわねぇ……今回はそういうのじゃないわよ、あくまでもここにはコンテストの為に来たんだし、ちゃんと報酬だって出してるじゃない」
「釣り合いが取れてりゃこんな文句は言わずに済むんだけどねぇ」
「それは……その、私のポケットマネーから出してるんだから多少は、ね?」
魔術ギルドはケチの集団だったりするんでしょうか?
国から独立した勢力とか言ってましたし、援助は受けてないんですかね?
「それはさておき、コカちゃんはどうしたの?」
「ああ、コカならキュアの屋台を代わりに出してるよ」
あたしが審査員になったからコカちゃんには代理で屋台を出して貰いましたが……
まあラーメンは何度か一緒に作っていますし、手取り足取り教えたらすんなり覚えてくれましたから問題はありません。
キスをせがまれる頻度が増えたのがアレですけど。
「残念ね……ならこの本を渡して貰える?私からの転職祝いって事で」
「あいよ、ちゃんと渡しとく」
まあアプさんの知り合いなら面識はありますよね、うん。
ん?一瞬あたし……の後ろに居たミラさんに目配せをした様な?
「それとこれは忠告だけど……暫くンガイには近付かない方がいいわよ」
ンガイ……エリナ様の故郷で、弟さんが領主をしている果物とキノコが美味しい所でしたね。
シイタケがあれば嬉しいのですが、アプさんはキノコが苦手らしいですからね。
「今ンガイには王様に反旗を企てる連中が集まっててね……大量の赤を集めているらしいのよ」
ンガイに大量の赤って……神話通りになってしまうではありませんか!
そこに地の女神は居ない(多分)からより悲惨な事になりますよ!
「あんた……相変わらず忠告する振りしながら行かざるを得ない状況を作るのが上手いねぇ」
ああ、マリー様の専属護衛をしているミラさんが居るのを知ってて言ったんですね。
「それに、こういう機会でもないと故郷のンガイには近付こうともしないでしょ?おじ様とおば様も会いたがっていたわよ?」
「あたいに、じゃなくてコカに、だろう?」
「だってアプが最後に帰ったのはコカちゃんが赤ちゃんだった時じゃない」
「コカをひたすら甘やかすから嫌なんだよ!」
エルフでも孫が可愛いのは変わらない様で……というかアプさんもンガイで生まれたのですね。
もしかして子供の頃から食べさせ続けられたせいでキノコが苦手なのでしょうか?
「元々ンガイはエルフの村って言われていたのよ、今では普通の人間やオークなんかが出稼ぎに来たり、旅人が定住したりしてるけど」
エルフとオークって出会ったら即座に薄い本案件だと思っていましたが……オークにも普通に人権がある世界ですし、問題は起こっていない様ですね。
まあ、アプさんはそこらのオークより遥かに強いんですけど。
「はぁぁぁ……なるべく会わせたくないんだけどねぇ、でも危険な連中を見過ごす訳にも……はぁ」
アプさん、幽霊とキノコ以外にも苦手な物があったのですね……
とりあえず目的を果たしたアーチさんが帰って、ロウとコカちゃんが戻って来たので……改めてミラさんの話を聞かせて貰いましょう。
「で、何でミラがここに居るんだい?」
「マリー様から父上の代理として派遣されたのですが……キュアさんにお願いがありまして」
あたしにお願い……どんな料理を作れと仰るので?
一応言っておきますが、あたしが作れる料理はデストさんも作れますよ?
「キュアさんには私とジェネとデストの式で進行をして頂きたいと」
「兄貴が遂に結婚するのか!?」
「あ、はい……そうなんです」
ついに観念したんですねデストさん……って2人だけ?
「アトラさんはどうしたんですか?」
「アトラも一緒にとは思いましたが本人の希望で、ナクアと同じ日に式を挙げたいと言っていましたよ」
つまり5年後ですね、分かります。
妹離れはしたけどシスコンなのは変わらずですか。
それにしても年上趣味のデストさんを落とすとは……ノンケだったあたしを落としたコカちゃんといい、女の執念は恐ろしいですね。
……ロウが何かを言いたそうな目であたしを見てますが何かあったのでしょうか?
「式は半年後に挙げようと思っていますので、その頃までにボリアへ来て頂きたいと」
「そういう事なら了解しました」
結婚式を仕切るのもプリーストの勤めですし……この世界の結婚式について学んでおかなくてはいけませんね。
それにロウが絶対に生還しなくてはならない理由も出来ましたし。
「それと……屋台の組み方を教えて頂けないでしょうか?」
「それはあたいが教えてやるさ」
ああ、旅をしてた時はデストさんがやっていたんでしょうし、以降はマリー様の護衛に付いていたから……
あたしは審査員なので応援は出来ませんが……頑張って下さい。
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