あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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首都で生活と資金稼ぎ

出立します

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転職した翌日……ようやく旅立ちの時が来ました。

ボリアで仕入れた商品とルイエから送られた干物を積み込み、デストさんが作ってくれた新しい武器やロウの矢を装備して、と。

それと王様が夕食のお礼にと用意してくれたあたし専用の屋台の準備を済ませて……どう見てもインスタント麺の袋に描かれている様なオジサンの引いている屋台だったのは気にしたらいけないのでしょうか?

というか、どう見てもラーメンを作る為に作ったとしか思えない屋台です……何故か寸胴鍋が2つも付いてますし。

まあ、これで収入が増えるのは確かでしょうし、お礼代わりに夕飯を豪勢にしましたけれど。

それはさておき、行き先の候補は幾つかありましたが……ここから1番近かったレンの村に向かいます。

やはり情報にあった蕎麦の存在が大きかったです。

「それにしても随分と長い事ボリアに居たもんだねぇ」

「およそ1ヶ月でしたか……その間色々ありましたね」

行商市にカチコミに転職……ミラさんにジェネさんと出会って、デストさんとロウが義兄弟になって……

コカちゃんと結ばれたり、ナクアちゃんが嫁(予定)に来たりもしましたね。

ナクアちゃんはあくまでも嫁(予定)ですけれど。

転職後、あたしはジェネさんと同じ神殿の所属に、コカちゃんはサーグァ様専属のプロフェッサーになりました。

旅の名目はあたしの場合各地の神殿を回り神官を視察して報告、コカちゃんは各地の美味しい料理の調査となっています。

それってプロフェッサーの仕事なのか?と聞かれたら言葉に詰まりますが……一応王様の命令でもあるので問題はないでしょう。

本当に嫁に甘い王様ですね……今後ともお世話になります。

その嫁の1人であるサーグァ様は掌サイズの分体をあたし達に同行させているんですけどね。

因みに分体サーグァ様はあたしのポケットの中に入っています。

「そういえば翡翠さんも荷車を持っていたんですね?」

「ハイドラ様の世界じゃ人魚の薬って人気が出るからね……まあ私の薬は気に入った人にしかあげない非売品だけど」

非売品……それってあたし達は気に入られたと思っていいんでしょうか?

今度ゆっくりと聞かせて貰います。

「キュア、屋台引くの代わろうか?」

「まだ大丈夫ですよ、それより今はナクアちゃんの相手で忙しいのでは?」

というかナクアちゃんを背負いながら、かつトウカを頭に乗せながら屋台引くのは無理でしょうに。

当のナクアちゃんはトウカを撫でていますが…

「ミャー……」

「そうなんだー、トウカちゃん物知りだね!」

……ん?

「ナクアちゃん、トウカの言葉が解るのですか?」

「うん、解るよー!」

意外な特技が判明しましたね……もしかしたらロウと契約した者同士、通じる何かがあるのでしょうか?

「ミャミャー、ミャー」

「……今は何と言ったのですか?」

「たまには干物をほぐさずに、丸ごとで食べたいって言ってる!」

本当に味が解る猫ですね……夕飯はトウカの分も焼いてあげましょう。

「あ、そういやこの指輪で技能が解るんだったな」

「それは先に確認しましょうよ、失念するのも無理はありませんけど」

何せナクアちゃんですからね……幻獣という事実も言われないとつい忘れてしまいます。

「成程、ナクアの技能は【疎通】っていうらしい……言葉の通じない相手とも会話が出来る様になれる技能だ」

ほう、動物や植物からも情報が集められる技能と思えばかなり強力ですね。

使い所は難しそうですけれど。

「捕捉すると植物や魚類みたいな発声器官を持たない奴とは話せないみたいだが」

「となると一部の爬虫類も難しそうですね……」

まあ、便利な技能に変わりはないですし……

そういえばアトラさんはどんな技能を持ってたのか気になりますね。

「キュアちゃん、そろそろお昼に……しよ?」

もうそんな時間ですか……では準備しましょう。




ラーメンの為の屋台にしか見えませんでしたが、旅の途中で煮物やスープが作れるのは便利ですね。

ジャガイモ多めの肉じゃがにすいとんを入れれば手早くお腹が膨れます。

すいとん自体も塩と魚醤で味を付けるのを忘れずに。

「これ美味しー!」

「出来ればうどんで食いたかったがこれも美味いな」

流石にここでうどんは打てませんからね……村に着くまでは我慢して下さい。

「ニンジン入ってる……でも、食べなきゃ……キス、貰えない」

コカちゃん……まだ克服は出来ていませんでしたか。

それとキスは2人きりにならないとしませんからね?






~女神視点~

キュアさん達がボリアを立つ直前に水晶と……干物にずんだ餅まで送ってくれましたね。

実はこのずんだ餅という物は1度食べてみたかったんです……流石はキュアさんです。

……これであの詠唱がなければ文句なしなんですけれど。

『これがアルラの黒ですか……しかも2つ』

『ようやく半分です……はあ、出来れば中を見たくないんですけど』

『因みに他の2つには何と?』

『最初は妨害の動機で、次がスカでした……』

……思い出しただけでムカムカしてきましたね。

いっそ見ないで破壊してしまいましょうか?

『あの2人の核は入れ替えたとはいえ、このまま破壊したら何かしらの影響が出てしまう可能性がありますよ?』

『……ちょっと考えただけですよ』

あの2人はキュアさんに匹敵するラブコメの素質がありますし、このまま見守っておきたいですからね。

アルラの眷属が作った存在と思うとアレですが……ハイドラの娘が作った存在と思えば許容範囲です。

というかハイドラが自然に私の思考を読んでいるのが怖いんですが?

少なくともずんだ餅はあげませんよ?

『では、まず1つ……流しますよ』

さて、今回はどうなりますか……

【ハズレ】

『アールーラぁーっ!?』

『トゥグア、気持ちは解りますが落ち着きなさい!』

ぐぬぬ……まさか怒も司るハイドラに怒りを静められるとは。

私1人だったら絶対に暴れていたでしょうね……助かりました。

『気を取り直して、もう1つを見ますよ』

これで次が残念賞とかだったらハイドラの怒りが爆発しかねませんね。

『ハズレだと思った?残念、当たりでしたぁ』

……これはこれで頭に来ますね!

『因みにメッセージを込めた当たりは残り1つよ、頑張って当ててね』

つまり残る3つはハズレなんですね。

まあ、前もって解ってればそれなりに落ち着いて対処が出来るでしょう……多分。

『さて、私の予想では今頃トゥグアちゃんはハイドラの協力を得ていると思うんだけど……私がトゥールに協力しても文句はないわよね?』

忌々しいぐらいに鋭い勘をしてますね……確かにハイドラが協力してくれる事になりましたし。

後、アルラに協力が出来るとは思えませんけど……むしろ引っ掻き回している未来しか見えませんけど。

それにしてもこれってハイドラの娘を送り込む前に残したメッセージよね?

という事は私の妨害を決めたその時点で既に確信しているんじゃないですか!?

アルラに未来予知の力はなかった筈なんですけれど!

『あら、もう時間切れね……それじゃトゥグアちゃん、義母ハイドラに宜しく言っておいてー』

『あ、貴方に義母と呼ばれる筋合いはありませーん!』

『待ってハイドラ!そこにはキュアさんから頂いた干物とずんだ餅があるから!暴れるならせめてここから離れて!』

気持ちは解るけど、本当にそこで暴れるのだけは止めて!

私だってずんだ餅が食べたいんですから!

『そうそう、最後のアタリには妨害の手段を記してあげたから頑張ってねー』

って何か重大な事を言われた気がするけど時間切れならさっさと消えなさいよ!?




何とかハイドラを落ち着かせたのはいいのですが……嫌な予感が。

『くっ……まさか、同い年の女神が娘とそういう関係になるなんて!』

うん、それは想像しただけで寒気がしますけど……

『今日はとことん呑みます、付き合ってくれるわよねトゥグア?』

『わ、私はまだ17歳だし……』

『貴女も私と同い年でしょ!というか、この世界なら16で飲めるんだから問題はないでしょう?』

退路が絶たれてしまいました……今夜はこの泣き上戸なハイドラに付き合わされるのね。

今回の干物は全てお酒のツマミ行きですね……ハァ。

仕方ないからずんだ餅は明日美味しく頂ききましょう。

『そういうトゥグアは幾ら呑んでも全く酔う気配がありませんよね……羨ましい』

『体質なんだから仕方ないじゃないですか、というか介抱する身にもなって下さいよ!』
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