あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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首都で生活と資金稼ぎ

命が狙われているらしい ※ロウ視点

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ボリアから王様に同行して2日……やっとルルイに到着した。

道中は兄貴がヴァレンのオッサンやジェネさんに絡まれてるぐらいしかなかったから割愛する。

「ハァ……娘を嫁にくれと言いに行く男の気持ちが解った気がするぜ」

「大変だったな兄貴……実際の所ジェネさん達とくっ付く予定はあるのか?」

ん?兄貴が周りを確認して……ああ、そういやジェネさんも同行してるからな。

本人はコカと何か話してるけど。

「正直何とも言えん……2人が好きなのは確かだが、俺はまだ姐さんを諦めてないからな」

アプさんは何で兄貴を振り続けてんだろう?

というか2人って……

「アトラさんは?」

「アトラは……何と言うか、確かに美人だけど親戚の子供ぐらいにしか思えんからなぁ」

そういや兄貴は年上趣味だったっけ……

「そもそもアトラの場合は吊り橋効果って奴だろ、告白すらされてないし」

まだしてなかったのか……いや、俺もキュア言われるまで気付かなかったけど。

俺が言うのは違うよな……うん、黙ってた方が良さそうだから言わないでおこう。



で、そのまま決行されたカチコミは大剣を振り回すヴァレンのオッサンと、西洋剣2本を使いこなす王様の無双だったから割愛だ。

……俺達って必要だったのか?

「ではルルイ伯爵の処遇だが……私財没収と爵位剥奪、それと5年の投獄を」

「それは困る」

……何だ?

って伯爵のオッサンが消えた!?

「違う、上を見ろ!」

兄貴に言われて上を見たら……黒装束の人が伯爵のオッサンを抱えてやがった!

まさか忍者か?

「この豚、大事な餌、だから貰って行く」

豚とか餌とか、扱い酷いな!

その伯爵のオッサンはオークだったから間違ってはいないんだろうけど。

扱い方からして投獄された方がマシなんじゃないか?

「君は何者だい?」

「名前、ザトー、13歳」

口数少ないなオイ!とりあえず逃がす訳にはいかないんだが……

「……ミャーァ」

お、さっきから俺の頭の上で寝てたトウカが起きたか、いいタイミングだ。

「……トウカ、【水縛】!」

「ミャッ!」

ハイドラ様に聞いた話によると幻獣には幾つかの技能があって、成長するにつれて増やしていくらしい。

今の所トウカが使える技能は水で相手を捕まえる【水縛】と水で攻撃する【水弾】の2つ……技能の名前と効果は指輪を通して理解した。

まあ、契約者の指示がないと使わないし、トウカは殆ど寝てるから使ったのはこれが2回目なんだが。

「……水の縄、鬱陶しい」

水縛はゴブリン10匹を纏めて動けなくさせられるんだが、あいつ普通に動いてやがる!

このままじゃ逃げられちまうな……ここは兄貴が作った青の水晶の矢の出番だ。

てっきり水が出るのかと思ってたんだが、兄貴の説明によると当たった所から凍りつくらしい……どういう理屈なのか聞きたいがそれは後回しだ。

兄貴自身が理解してない可能性が高いし。

とにかく、こいつを水縛に当てれば氷の檻の出来上がりってな。

「氷った……動けない」

あいつ結構余裕がありそうだな。

「よし……コカ、死なない程度の威力で奴を落としてくれ!」

「安心しろ、死んでさえいなければジェネが治せる!」

「デスト!無茶振りはしないで!」

「解った……【フレイムボール】!」

よし、直撃した!

まず伯爵のオッサンが落ちて来たが……まあ悪党はしぶといから生きてるだろ。

で、肝心の奴は……



「……今の攻撃、面白かった」

「うそ……全然、効いてない?」

マジかよ……コカの魔法ってかなり高威力な筈なんだが。

確かにダメージはなさそうだけど装束が燃えてトップレスに……ってあいつ女の子かよ!

「大丈夫、謎の光と海苔、仕事してる」

いや少しは隠せよ、目のやり場に困るわ!

後謎の光とか海苔とか何処で誰から聞いたんだ!?

ってかそれは第三者の目線から隠すだけで、俺達には普通に見えちまってるから!

「あの子……ボクより年下なのに、リンゴみたいに……大きい」

コカもマジマジと見るのは止めとけ……

ダメージは自分に返って来るぞ。

「デスト!見ちゃ駄目!」

「見るつもりはないってか離せ!目が潰れる!」

しまった、兄貴とジェネさんが戦線離脱してしまった!

王様とヴァレンのオッサンは……何か伯爵のオッサンの部下がゾンビみたいになって、対処に追われてる!

「ザトーの技能、【傀儡くぐつ】……あいつ等、死んでない、大丈夫」

それって死体蹴りされる事を強要させられてる様な物だろ……

可哀想だから止めてやれよ!

「それより……その猫、幻獣?」

幻獣の事を知ってる?

この世界では幻獣って名前は余り知られていないって聞いたんだが……まさか?

「お前……クティの関係者か?」

「ムッ……様、付けろ、童貞……クティ様、ザトー作った、偉い人」

ど、ど、ど、童貞で悪いかチクショウ!

お、俺がその気になれば何時でも卒業出来るわ!

「抜け駆けは、ダメ……する時は、一緒」

あ、うん……そりゃこの流れなら誰でも察せるよな。

でもコカにはキュアの秘境を切り開く為のモノはなかった筈だが……熱ぅい!

ゴメン、もう考えないからその炎を消して!熱いから!

「クティ様、知ってる?……もしかして、童貞の名前、ロウ?」

「……だとしたら?」

というか人を童貞って呼ぶのはヤメロ!

事実だけど!

「そう……なら、クティ様、報告する……だから、帰る」

ってあっという間に消えた!

と思ったら伯爵のオッサン抱えて戻って来た?

「言うの、忘れてた……ザトー、クティ様に作られた、人工生命体ホムンクルス、職業、しのび

マジで忍者だったのかよ……

この世界って中世風のファンタジーな世界だと思ったんだけどなぁ。

「覚えておいて、幻獣使いの童貞ロウ……お前だけは、ザトーが殺す、これは決定事項」

色々とツッコミを入れたい所はあるが1つだけ言わせろ……

「人を呼ぶ度に童貞って付けるんじゃねーっ!?」

後そのルビも止めろぉ!?



……結局ザトーには逃げられて、伯爵のオッサンも連れてかれてしまった。

流石は忍者って所か。

でも何であいつは俺を殺そうとしてるんだ?

「ふむ……逃げられてしまったが最低限の目的は達成したから良しとしよう」

「幸い奴の貯め込んだ私財は手付かずで残っていたし、現金はこの村に返還して撤収しよう」

宝石とか美術品、水晶なんかも山程あったからな……利益はちゃんとあるんだな。

「ならその間に……ロウ、昆布を探しに行くぞ」

「お、おう」

「私は怪我人の治療に当たります」

「ボクは……ジェネさんを手伝うね」

そういや無理やり死体蹴りさせられた可哀想な人達が居たっけ……

キュアだったら迷わず治療を理由に女神の信者に洗脳してたんだろうな……




「ワカメはあったけど昆布が見つからないな」

「……仕方ない、ちょいと潜ってみるか」

兄貴が上着だけ脱いで海に入った……と思ったらすぐに出てきたな。

「……槍を構えた魚人がズラッと並んでいやがった」

あー、ここで魚は食えないって聞いてたけど理由が解ったわ。

仕方ない、ワカメが手に入っただけでも良しとしよう。

って兄貴の背中に深そうな古傷……何か動物の爪で切られた様な痕がある?

「兄貴、その背中の傷はどうしたんだ?」

「こいつか?昔ちょっとヘマをしてな……まあ、今じゃいい思い出だよ」

何があったのかは気になるけど楽しそうな顔だし、多分ミラさんやジェネさん絡みなんだろうな。



「まだ時間はあるが……ロウ、水の神の神殿に行ってみたらどうだ?」

「そういやここはハイドラ様の神殿があるんだっけ」

ハイドラ様には世話になったからな……

一応トウカが幻獣だって事と、ハイドラ様に聞いた話は兄貴とアプさん、サーグァ様には話しておいた。

キュアは聞いたら宗教戦争起こしそうだし、コカも間違いなくキュアの味方になる可能性が高いって事で……アプさんの指示で2人には黙っておく事にした。

「俺はもう少し探してみるよ、美味い味噌汁を啜りたいからな」

「解った」

俺も味噌汁は啜りたいし、ここは兄貴に任せよう。




「ここか……思ったより立派な神殿だな」

「ミャー!」

ん?トウカが急に頭から降りて神殿の裏手に……って追いかけないと!

「どうしたんだトウカ、こっちに何かあるのか?」

「ミャー」

目的の場所に着いたからかまた俺の頭に……そんなに俺の頭の上が気に入ったのか?

って魚の頭にムッキムキな人間の身体……あれが兄貴の言ってた魚人か。

何で一斉に海草を砂浜に並べているんだ?

「おやおや、その子は随分とキミを気に入っているんだね」

海の中から凄く綺麗な水色の髪と瞳をしている美人……ってどちら様ですか?

後その海の中には魚人が居るらしいから危ないですよ?

「私は翡翠っていってね、ハイドラ様の眷属ペットをしている人魚だよ……職業はアルケミストで、キミと同じ幻獣使いなの」

いもうと、しもべ、の次はペットかよ!

あ、海から上がって来た……って人魚なのに普通に足がある!

「そりゃ足ぐらいないと、色々と不便だからねぇ……気合いで生やしたよ!」

それ気合いでどうにかなる物なのかよ!?

人魚って嵐を起こす歌とか、ヤバい薬を作ってるってイメージだったんだけど……流石に童話みたいな話はないか。

職業がアルケミストならヤバい薬は作ってそうだけど……これは言うまい。

「私がこの世界に来た目的は2つ、まずはキミに幻獣使いについて教える為だよ」

それは非常に有難いのでお願いします。

「そして2つ目はお嬢様を折檻する為ね」

「お嬢様って……ああ、クティの事か」

ハイドラ様はクティを娘だって言ってたし、眷属なら面識があっても不思議じゃないよな。

「キミ達と一緒に居ればすぐに会えるだろうし、暫くは同行させてね」

「それは俺の一存じゃ決められないんですが」

とりあえず同行する件についてはボリアの家に帰ってから話す事にして貰って……後キュアの前ではハイドラ様の話はしない様に念押ししておいた。

とはいえ王様の馬車は馬に乗る人を含めて8人が限界だからなぁ……どうした物か。

「私は幻獣使いだって言ったでしょ?トウカちゃんの魔力を辿れば幾らでも後を追えるから大丈夫だよ」

ストーカーかな?

こんな美人に追われるならむしろ羨ましいんだが……ってこの場合追われるのは俺になるのか?

「……私にだって相手を選ぶ権利があると思うんだけど?」

はい、スミマセン。

おかしいな……何故か涙が出てきたぞ。

って俺の肩を叩くのは誰だ?

「ギョギョ、ギョーッギョ、ギョー(訳:翡翠の姐御が世話になるらしいな、これ持っていけ)」

「え……何だ?この乾燥昆布?って貰っていいのか?」

「いいみたいだよ?」

解るのか!

って翡翠さんは人魚って言ってたもんな……魚人の言葉が解っても不思議じゃないか。
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