あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

文字の大きさ
上 下
28 / 122
首都で生活と資金稼ぎ

事案が発生?しました

しおりを挟む
行商市で2回目の営業です、デストさんのアドバイスを受けて前回より3倍量のスープと麺を用意しましたが売り切れますかね?

それと今回はコカちゃんがラーメン作りを、ナクアちゃんも接客を手伝ってくれるのであたしとデストさんの負担は減りました。

「って、姐さんの方の屋台はいいんですかい?」

「ああ、有難い事にもう売り物がないんだよ……今はルイエのオーク共に追加の商品を運ばせてる所さ」

「特に干物がね、飛ぶ様に……売れたよ」

やはり干物の味は解る人には解るのですね……

って売り切れという事は当分お魚が食べられないじゃないですか!

それはそうといつの間にオーク達に連絡を?

「ヴァレンさんがね、干物が売り切れだって言ったら……伝達屋を出してくれたの」

そういえばヴァレンさんはお酒と干物が好きでしたね……まああたしも干物を食べたいので感謝します。

あ、そうだ……ついでにお酒に合うらしい烏賊の塩辛のレシピをオークの人達に渡す様にお願いしておきましょう。

実際に合うのかどうかはお酒呑めないから解らないし、アプさん達に試して貰って……合わなきゃあたしのご飯のお供にすればいいだけです。

というかあたしが食べたいのです。

「へぇ、これに書いてあるのが酒に合うのかい……絶対に渡しとくよ」

うん、これでよし。

「ついでだからデストの荷物に売れ残りがあるなら寄越しな、あたいが代わりに売っといてやるよ」

「ウッス、お願いします!」

それにしてもデストさんはアプさんに対してだけ体育系になりますね……

一体どんな指導を受けたらそうなるんでしょうか?




で、いざ開店してみればあっという間に行列が……先日も見た人が結構居ますね。

町の人達はまだしも、行商人の方々は仕事しなさいよ!

「少し見立てが甘かったな、もう少し用意しときゃ良かった」

「麺と具はまだ何とかなりますが、スープはこれで限界ですよ」

これ以上の量を作るなら鍋自体を大きくするしかありませんが重くて運べなくなってしまいます。

「それもそうか……なら追加用の寸胴鍋を作っておくぜ」

買うんじゃなくて作るんですか?

ってデストさんはスミスだから可能でしたね。

「でも、今回も全部……売れそうだね」

まあ売れ残るよりはいいのですが……

それに作った分だけサーグァ様が食べるでしょうから余りはしないでしょう。

「替え玉バリカタ、チャーシューマシマシで下さい」

「……サーグァ様、それで何杯目ですか?」

「今日はまだ3杯、替え玉はたったの6玉ですよ?」

まだ、たった、と言いましたか……普通に食べ過ぎなんですけど。

「というかサーグァ様、他の屋台を回らなくていいんですかい?」

「他は昨日の内に全部回ってきました、ですがここより美味しい屋台がなかったので」

食いしん坊にも程がありますよ!

何でそんなに食べて太らないのか教えてくれませんかね?

「ああ、それとデストさんにはお話がありますので夕飯の後王宮にお越し下さいね」

「へ?」

「もしかして……ボクと母さんにした、あのお話かな?」

そういえばデストさんも協力してくれる事にはなりましたが、サーグァ様の素性やトゥグア様の依頼については話していませんでしたね。

まあ味噌の件もありますし協力はしてくれると思いますけども。

「姐さんとお嬢にした話って……何故か嫌な予感しかしないんだが?」

「大丈夫です、(一応)選択権はデストさんにありますから」




営業と夕飯が終わってお風呂も済ませて……当然の如く完売しましたよ。

アプさんはコカちゃんを連れてオーク達から商品の受け取り、デストさんはアトラさんを連れて王宮へ(勝手に着いて行ったともいう)、ナクアちゃんはさっさと寝てしまいましたし……

「……やっと2人きりですね」

「ナクアが俺の膝の上で寝てるから2人きりではないと思うんだが?」

「細かい事はいいんです」

「まあ、言いたい事は解るがナクアを部屋まで運んでやろうぜ?」

「そうですね……」

流石にこのまま放ってはおけませんよね……風邪を引いてしまいます。

ですがその前に……

「いつも改めて向き合った辺りで邪魔が入りますからまずは」

「はいはい、解ったから目を閉じて……」

「んにゅ……ロウお兄ちゃんとキュアお姉ちゃんがちゅーしてる?」

しまった……ナクアちゃんが目覚めてしまいました!

「あー……見られたのがナクアで良かったな、何とか誤魔化せば」

「ナクアもするぅ……」

「え……んぷっ!」

おいぃ!

よりによってナクアちゃんが抱き抱えようとしたロウの唇を!?

「えへへ……スゥ」

「……寝惚けてただけか?」

「そう……みたいですね」

これは……うん、事故みたいな物ですし浮気ではないですね。

覚えていなければそれでいいのですが、ナクアちゃんが何か吹聴しそうになったら夢だったんじゃないか……で押し通しましょう。

というかシスコン気味なアトラさんに知られたら怖いですからね……

あの人は戦闘と無縁の職業な筈なのに、勝てる気が全くしません。

で、ナクアちゃんを部屋に運んでリテイクです。

今度こそあたしがロウとキスする……

「戻ったよ」

「た、ただいま……まだ、起きてたの?」

……うん、こうなるって知ってました。

おかしいですね……目から水が流れてきます。




翌朝……コカちゃんとアプさんはナクアちゃんを連れて屋台を出しに行って、あたし達は明日の仕込みをしてたのですが。

「ナクアがロウさんとちゅーしたと言っておりましたが……どういう事でしょうか?」

何故かアトラさんの背後に青白い炎が……

それに目が赤く光っていますし、あれは絶対に逆らってはいけない状態です。

「えっと……ナクアは夢でも見てたんじゃないかと思うのですが」

「ほう、つまり夢に出るぐらいのフラグを建築していたと?いつ、何処で、どの様に?」

「いや、身に覚えが全くない事を吐けって、かなりの無茶振りだろ!」

寝惚けてたとはいえ実際にキスされてしまった以上何とか誤魔化すしかないですよね。

ですがあたしではどうにも出来ませんし……

「デストさん、ちょっとアトラさんを宥めてはくれませんか?」

「仕方ねぇ、このままじゃ話が進まないからな」




「あー、まあ妹が心配なのは解るんだが……少し待ってくれないか?」

(ドンッ)

「あ……は、はい」

(バタッ)

何とかアトラさんを落ち着ける事に成功しました……というか気絶してしまいましたね。

流石デストさん、頼りになります。

「スゲェ……あの状態のアトラさんを壁ドン1発で黙らせるとは」

「いや、俺もあれだけで終わるとは思ってなかった」

アトラさん……気持ちは解りますよ。

惚れた異性からの壁ドンなんて、トキメかない人は居ませんからね。

ロウはあたしにやってくれた事ないですけど!

「昨夜サーグァ様から大体は聞いたが……お前等は中々面倒な事になってるな」

「スミマセン……まさかこっちでも巻き込んでしまうとは」

「いや、乗り掛かった船だし構わねぇよ……同郷のよしみだし、味噌の件もあるからな」

そこまで味噌を味わいたいのですか!

……味わいたいですよね、解ります。

「それに、姐さんの側に居る口実も出来たからな」

「もしかしてデストさんはアプさんを?」

「ハハ、既に8回も振られてんだけどな……それでも諦められねぇんだよ」

同じ相手に8回も告白して玉砕したにも拘らずまだ挑み続けるとは……

アトラさん、ちょっと勝ち目がなさそうですよ?

「デストさん、いや兄貴!尊敬するぜ!」

ロウがデストさんを兄貴認定してしまいましたね……

確かに頼れる兄貴分という雰囲気ですし、実際頼りになりますけども。

「ロウもウカウカしない方がいいぜ?下手したらお嬢に全部持ってかれちまうかもしれねぇぞ」

いやまさかそんな事ある訳が……ヤバいですね、否定出来る要素が少ないです。

ってあたしは同性愛者じゃないから大丈夫……大丈夫な筈……大丈夫だと信じたい。

「……さて、アトラを連れて昼飯の買い出しに行ってくるかな」



ハッ!いつの間にかあたしとロウが2人きりに!

「あー、その……何だ、昨夜の続きでもするか?」

「……もう少しムードという物を意識してくれませんかね?」

トンコツスープを煮込んでる鍋の前で、とかロマンの欠片もないのですが?

する事はしますけども。

「まあでも、ロウはそれぐらいでいいんですけどね」

「どういう意味だそれは……」

少なくともロウを好きになる物好きはあたしだけでいいって意味ですよ。

絶対に言いませんけど。




「初々しいですね……」

「ほっこりするな」

いや、入口の前で覗いてないで……買い出しに行くならさっさと行って下さいよ!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダークナイトはやめました

天宮暁
ファンタジー
七剣の都セブンスソード。魔剣士たちの集うその街で、最強にして最凶と恐れられるダークナイトがいた。 その名を、ナイン。畏怖とともにその名を呼ばれる青年は、しかし、ダークナイトをやめようとしていた。 「本当に……いいんですね?」 そう慰留するダークナイト拝剣殿の代表リィンに、ナインは固い決意とともにうなずきを返す。 「守るものができたからな」 闇の魔剣は守るには不向きだ。 自らが討った聖竜ハルディヤ。彼女から託された彼女の「仔」。竜の仔として育てられた少女ルディアを守るため、ナインは闇の魔剣を手放した。 新たに握るのは、誰かを守るのに適した光の魔剣。 ナインは、ホーリーナイトに転職しようとしていた。 「でも、ナインさんはダークナイトの適正がSSSです。その分ホーリーナイトの適正は低いんじゃ?」 そう尋ねるリィンに、ナインは平然と答えた。 「Cだな」 「し、C!? そんな、もったいなさすぎます!」 「だよな。適正SSSを捨ててCなんてどうかしてる」 だが、ナインの決意は変わらない。 ――最強と謳われたダークナイトは、いかにして「守る強さ」を手に入れるのか? 強さのみを求めてきた青年と、竜の仔として育てられた娘の、奇妙な共同生活が始まった。 (※ この作品はスマホでの表示に最適化しています。文中で改行が生じるかたは、ピンチインで表示を若干小さくしていただくと型崩れしないと思います。)

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

RD令嬢のまかないごはん

雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。 都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。 そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。 相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。 彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。 礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。 「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」 元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。 大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

処理中です...