あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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首都で生活と資金稼ぎ

最初の営業です

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意外ながら料理の出来るデストさんが協力してくれる事になったお陰で仕込みがかなり楽になってから早2日……

いよいよ行商市の準備も終わり開催を待つだけとなりました。

味噌作りはこの行商市が終わってから始める事になってますが、デストさんもそれは承知してくれたので助かりましたよ。

「そういやデストさんならこの世界の豚肉がやけに値段が高い理由を知ってたりするか?」

「ああ……確か5代ぐらい前の王様が大のポクー好きで、食べるのを禁止してたせいだって聞いたな」

ほほう、それはちょっと興味深いですね。

この国の歴史は知る機会がありませんでしたからね……王族の恥は聞かされましたけど。

「それを撤回したのが先々代の王様らしいんだが……実際解禁された所でどう食べればいいのか解らず、抵抗なく食えたのは隠れて食ってた貴族や金持ちぐらいだったそうでな」

そりゃ食べ方も教えずに解禁されたらそうもなりますよ……

っていうか似た様な話を日本史の授業で習った様な気がするのですが……確か生類憐れみの令とかいいましたっけ?

まあそれはどうでもいいとして。

今の王様の性格から考えると、その解禁も悪徳貴族のふるい分けの手段だったんじゃないかと疑ってしまいますね……

「それで当時の人達も恐る恐る食べてはみた物の【ビフー肉の方が美味いんじゃね?】って結論が出て、ポクー肉は貴族に売れるんならなるべく高く売ってやろう、となって今に至るそうだ」

日本では牛肉の方が高い上に人気がありますからね……ある意味納得の結末でした。

もしかしてこれも王族の恥なんですかね?

「まあ話を聞く限りだと少しずつでも値下がりしてくだろうが……あー、ポクーの話をしてたから味噌カツ食いたくなってきた」

「止めてくれ……それを言われたら俺もトンカツが食いたくなってきた」

この男共は……というかロウから振った話題でしょうに。

2人揃って揚げ物を食べたいと仲が良いのは結構な事ですけど、ロウはあたしにも構って下さいよ!

アトラさんだってそんなデストさんにはさぞ呆れて……

「ミソカツ……一体どういう料理なのでしょうか?というか私でも作れるでしょうか」

ませんでした。

完全にデストさんを墜とす事しか頭にないですね。

「あーもー、そろそろ始まりますから皆さん準備を急いでくれませんかね!」

「あ、悪い」

「スマン、すぐに終わらせる」

何であたし1人で準備しなきゃいけないんですか!

新手のイジメなんですか!






「この白いスープが美味いなぁ……」

「いやいや、この固い麺があってこそだろ」

「これがポクー肉なのか……うめぇなぁ」

「あ、タマゴだけ追加いいっすか?」

「アトラちゃんに踏まれたい」

例の如く変態が湧いてますがそれはスルーして、ラーメンは割と好評ですね。

あ、デストさん煮玉子の追加お願いします。

「キュアさん、テーブルのガリクが切れそうです!」

「またですか!急いで皮を剥いて下さいロウ!」

「いかん、スープがなくなる!追加取りに行ってくる!」

「マジですか急いで下さい!」

この屋台は立地があまり良くないのに、やけに忙しいですね!

そりゃまあ高級の代名詞になってるポクーの料理が10ハウトで食べられるなんて言われたらこうもなるでしょうけれど……

日本円にすればワンコイン、500円ですし。

余りの安さに釣られたのか町の人達のみならず屋台を放って来た人まで……行商人ならちゃんと働きなさい!

っていうかこんな大盤振る舞いして王宮の財政は大丈夫なんですかね?

「今回の出費は全て悪徳貴族から押収した私財から出しているので御心配には及びませんよ、因みにその私財もまだ余っていて使い道に悩んでいる様です」

悪人から強奪した資金をそう使いますか……

そりゃ民からふんだくったお金なんだろうから民に返還するのは間違いじゃないんでしょうけど。

「それはそうとキュアさん、替え玉ハリガネに煮玉子下さいな」

「……サーグァ様、もう14杯目かつ替え玉42玉ですよ?」

相変わらず恐ろしい食欲ですね……というか何故ここに居るのですか?

「美味しい物があるなら何処にだって行きます!」

うん、知ってました。

それはそうと替え玉とかハリガネなんて用語は教えた覚えがないのですが?

「ロウさんに聞きました」

納得しました。




そして夕方、集計に来た騎士の人に売り上げを渡して片付けてようやく一段落です。

「あー……やっと終わったか」

「行商市は後6日、この屋台は後2日はやりますからね……明日はまたスープの仕込みをしなければいけません」

2日おきの営業でいいのは正直助かります……流石に毎日では財政も破綻しかねない様ですね。

しかも食べるのはほぼサーグァ様という。

とりあえず明日は倍の量のスープを仕込まねば。

「お疲れ様でした、そういえばデスト様はどちらへ?」

「デストさんなら一足先に戻って鍋を洗っている筈ですが……あれ?」

あっという間にアトラさんの姿が消えた!

メイドって瞬間移動が出来るんですか!?

「……俺達も帰るか」

「それもいいですが、今は久しぶりの2人きりですよ?」

特に最近はコカちゃんのみならず、何故かナクアちゃんがロウに懐いているから甘い空気になれませんからね。

加えてロウもデストさんと居る時間が増えましたし……女性だらけの家に男が2人だけですから理由は解らなくもないですが。

まあナクアちゃんの場合は恋愛感情に至っていないし、デストさんも年上の女性好きというのが救いです。

とにかくこのチャンスを逃す訳にはいきません!

正面からハグりつつこのままキスに……

「いや、でも後ろ」

「後ろ?」

「キュアちゃん……夕飯、出来てるよ?」

振り向いたらやたらと良い笑顔をしたコカちゃんが迎えに来てました……

そりゃ帰らなきゃ不味いですよね……グスン。

帰り道はロウにくっ付きながら、あたしもコカちゃんにくっ付かれながら……かなり歩き辛かったですよ。

町行く人達の嫉妬の視線はあたしに向いていたのかロウに向いていたのか……うん、考えるのは止めておきましょう。

因みに夕飯はデストさんが作った汁だく牛丼 (半熟玉子乗せ)でした。





「キュアさん、私にミソカツの作り方を教えて下さいませんか!」

「アトラさん、まず肝心の味噌がないのでもう暫く待ってくれますか?」

デストさんの胃袋を掴む前に告白した方がいいですよ?
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