あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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首都で生活と資金稼ぎ

味もみておきました

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王様に家を貰って夕飯を出した翌朝の朝食……メニューはパンに目玉焼き、牛乳とサラダです。

本当なら米でいい感じに搾れた醤油に火を入れて瓶詰めしたのを試食しようと思ったのですが……

「何というか匂いはいいんだが食欲の沸く色じゃないねぇ」

「うん、まるで……豆汁みたい」

まあ魚醤と違って透明感のない黒ですからね、その反応は想定していましたよ。

コカちゃんとナクアちゃんはそれを楽しみに見てた気がしますが……まあいいです。

因みに豆汁とは簡単に言えばコーヒーの事ですね。

好きな人はこれがないと1日が始まらないそうですが、この世界じゃ圧倒的に人気がありません。

この場でコーヒーを好むのはロウとアトラさんぐらいですからね……他は全員牛乳を飲んでました。

あたしは出されれば飲むけど進んで飲もうとは思いませんね……現に今も牛乳飲んでますし。

話を戻して、何とか醤油の試食をさせようと思うも何を作ればいいのやら……

単純に目玉焼きでもいいのですがこれはから揚げと同様に何を掛けるかで戦争が起こりかねませんからね。

実際コカちゃんは塩、アプさんは魚醤、ナクアちゃんはチーズの粉末、アトラさんはマヨネーズを掛けてますし。

アプさんは魚醤使うぐらいなら醤油の試食をしてくれてもいいと思うんですがね。

因みにロウはレモン汁であたしは醤油です……この醤油はいい感じに仕上がりましたよ。

というかロウは醤油を使って下さいよ……パンに合わないのは知ってますけど。

あたしも意地で使いましたがパンの時は別の調味料にするべきでしたね。




そんなこんなで昼食は皆さんバラバラになるので試食は夕飯に持ち越しです。

ロウとコカちゃんは水晶集めに、アプさんはアトラさんと一緒に酒場へ直行して残ったのはあたしとナクアちゃんだけですね……

そのナクアちゃんも掃除が終わって暇そうにしています……カワイイ。

「……よし、オヤツを作りましょう!」

「オヤツ!食べるー!」

ハハハ、沢山食べて大きくなるのですよ。

醤油作りでダイズ豆が大豆と同じ物だと解ったので今回は黄粉を作りましょう。

空炒りしたダイズ豆を布で包んでひたすら叩き続けるだけの簡単な作業です……根気は必要ですけど。

ある程度砕いたらすり鉢に入れて擂り粉木で粉にします……これも根気と体力が必要です。

さて、問題はこれをどうやって食べるかですが……

オヤツといえば甘い物、市場にも砂糖や蜂蜜は存在しています。

ですがそういった甘味は貴族でも簡単には使えないというポクー以上の高級品……この世界の価値観が解りません。

という訳で安くて甘いリンゴを使います。

これを握ってジュースにして、煮詰めた物を少しずつ黄粉に混ぜて捏ねて……棒状に固めたら油でサッと揚げまして。

はい、棒きなこもどきの出来上がりです。

実際は黄粉と水飴か黒蜜と米粉を混ぜたりして作るのですが、ないんだから仕方ありません。

米粉は作れなくはないものの、そこまでやる気力がありません。

「出来ましたよ」

「わーい!」

ナクアちゃんは気に入ってくれた様ですね。

バクバク食べています……ってそこの棒きなこもどきはあたしの分ですよ!

うん、サッと揚げたからサクサクして粉っぽさがないしリンゴの甘味も生きてますね……市販の棒きなこはたまに黄粉でむせて服が汚れてしまいますから。

だがそれがいい、と言う人も居ますけど今回は清潔感を重視していますのであしからず。

「ねえキュアお姉ちゃん、これどうやって作るの?」

「ふむ……後で一緒に作ってみますか?」

「やるー!」




という訳でナクアちゃんと一緒に棒きなこもどき作りです。

ダイズ豆を出した時は嫌そうな顔をしてましたけど、さっき食べたのが美味しかったのか興味深く見てましたよ。

そうこうしてたらアプさんとアトラさんが戻って来ましたね……

「お姉ちゃん、これお豆さんで出来てて美味しかったんだよ!」

「え、これダイズ豆なんですか?」

「へぇ、中々美味いじゃないか……でもどうやって作ったんだい?」

はい、3回目が確定しました。

豆を粉にするのってかなり疲れるんですけど?

そのまま3回目を食べてる間にロウとコカちゃんが帰って来て4回目……やっと終わったと思えばサーグァ様と王様達が来て5回目と続きましたよ!

黄粉にする作業だけはアプさんがやってくれましたけど。




オヤツが終われば次は夕飯です……明日から2日間はコカちゃんが作るので頑張りましょう。

さて夕飯はこの世界にないメニューで醤油を使える料理……何がいいですかね?

材料は当然醤油、後は米とジャガイモ、他色んな野菜と王様のリクエストであるクックー肉、アプさんが調子に乗って作り過ぎた黄粉、メインは干物で決まっています。

……よし、黄粉のスープに醤油味の混ぜご飯でも作りましょう。

それにレモン果汁と油に醤油を混ぜたドレッシングでサラダを食べます。

クックー肉は固いので予めリンゴ果汁に浸けて柔らかくしたのを刻んで、同じ大きさに切ったトマト……じゃない、レッドと柔らかく煮たダイズ豆をお酒と醤油で味を付けて炊けたご飯に混ぜてしまいましょう。

レッドは味を付けずに食べる直前に混ぜてもいいですが手間が掛かるのでパスです。

因みにレッドじゃなくてケチャップを使えばいわゆるチキンライスになります。

次に干し肉の戻し汁に試しに作った豆乳と黄粉を溶かし混ぜて……弱火で煮込んで出汁殻の干し肉を刻んだ物を入れて醤油で味を付ければ簡単なきなこスープです。

本当なら昆布出汁に具は豆腐を使いたいのですがないんだから仕方ありません。

まあ豆乳は上手く出来たので後はニガリが手に入れば……この世界にあるのかは疑問ですけど。

因みに副産物のオカラはあたしがお昼に美味しく頂きました。

ナクアちゃんは材料が豆だと知って嫌がってしまいましたからね……美味しいのに。

豆嫌いも黄粉で改善出来たと思いたいんですが、一応ナクアちゃん用に豆を混ぜないご飯も用意しておきましょう。

これで後は干物を焼けばオーケーですね……アプさんとヴァレンさんにサーグァ様が絶対に飲むからお酒も用意しておきましょう。






結論から言うとナクアちゃんの豆嫌いは克服されましたよ。

恐るべし黄粉。

「お豆さんって美味しいね!」

「ああ……7年間何があっても食べようとしなかったダイズ豆を頬張る程に食べられる様になったなんて!」

アトラさんが感動の涙を流してますし……

というかそんなに長い間食べれなかったんですか?

あたしもセロリを食べられる様になった方が……無理ですね、諦めましょう。

「この国ではダイズ豆は塩茹でかお肉や野菜と煮るぐらいしかないですからね……子供の内は食べれない、好きじゃないという話はよく聞きますよ」

そういえばあたしも昔は煮豆が苦手でしたね……今は平気で食べれますけど。

「これが醤油の味なのかい?魚醤よりスッキリしてるが悪くないねぇ」

「そうかな?臭みがないから……ボクはこっちが好きかも」

「すまんがこのショウユ……と言ったかな?少し分けてはくれないか?」

王様も昨夜のタルタルソースに続いて醤油を気に入って頂けた様で何よりです。

一応パンには合わないという事と簡単に作れる焼きおにぎりのレシピを一緒に渡しておきましょう。

「おおそうだ、もう1つ君に頼みたい事があったのだ」

あたしに依頼とは……アバズレのモンスターか、あるいはまた料理関係でしょうか?

どの道王様からの依頼なんて断れる筈がないのでやらざるを得ませんけどね。

「君程の腕なら問題はないと思うのだがね、実は今ポクーを誰もが気軽に食べられる様にする為に各地で飼育数を増やして貰っているのだ」

成程……確かに高過ぎですからね。

何せ100グラムが1750ハウトでしたし。

気軽に食べられる様になれればロウの好きなトンカツを作れますが農家が泣く様な事はしないで下さいよ?

「だが現状のままでは安く出来たとしてもどうやって食べればいいのか解らないだろう?」

そりゃ庶民にとっては未知の食材ですからね……

この世界の料理レベルだと塩味のソテーか野菜と一緒に煮るのが精々でしょう……それはそれで美味しいでしょうけど。

「という訳で君に新しいポクー料理をいくつか考えて貰いたい、勿論依頼料は払うし材料はこちらで用意する」

「やりましょう」

やりましたねロウ、久しぶりにトンカツが食べられますよ。

「有難い、では期日は5日後の行商市の日に……その内の1つを屋台で出して貰おう」

また屋台で料理ですか……あたしは料理を作る為に転生した訳ではないのですが?

それにしても悪徳貴族や奴隷商人を殲滅しながらアチコチ放浪していて、更にこういう政策まで立てていたんですね……

実はかなりの働き者だったのですか王様?




「キュアちゃん、安請け合いして……良かったの?」

「まあ金も入るし反対する理由はないんだが、大丈夫なのかい?」

「久しぶりの豚肉……もとい、ポクー肉が楽しみ過ぎる」

うん、ロウはもう少し発言を考えましょうね?

でも幾つか、ですしあたしの知ってるレシピで足りるかどうかが不安です。

一応醤油はもう少し作っておきましょう……いざとなったら煮豚だけで3種類作れますから。

「あ、勿論ロウが好きなトンカツは作りますけど……キャベツはありませんよ?」

「大丈夫だ、問題ない」
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