あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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首都に向かって

宿敵との出会いです

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はい、やって来ました夜の墓地です。

修学旅行でやった肝試しを思い出しますが……今回はそんな暢気な物ではありませんね。

「なあキュア、こういう墓地に出るモンスターってどういうのが多かったっけ?」

「スケルトンとゾンビが多かった気がしますが、その辺ならあたしの魔法で一掃出来ますので安心して下さい」

念の為に赤と黄の水晶は多めに用意しましたからね。

サンクチュアリを覚えてて良かったですね……ありがとうございます、盗賊のオジサン達。

「か、母さん……アンデットなら、キュアちゃんが……一掃出来るって」

「そ、そう……なのかい?」

何か違和感があると思ったらタンクであるアプさんが最後尾……それもコカちゃんの背後に張り付く様に?

しかも生まれたての子鹿みたいにガクガクと震えていらっしゃる!

何で最年長のアプさんが率先して職務放棄してるんですか!これでモンスター来たらどうするんですか!

「えっと、母さんはね……アンデットの類……大の苦手、なの」

ボス戦になるかもしれない重要な場面で、予想外にも女の子らしかったアプさんの弱点が!

「いや、ゾンビやスケルトンなら平気なんだ……で、でも……ゴーストとか、レイスとか……殴れない奴が……ちょっと」

ああ、つまり物理じゃどうにもならない存在が駄目なんですね。

その辺はあたしとコカちゃんで対処するしかないですからね……

女の子ですし、オバケや多足系の虫とかに苦手意識を持つのは分かります。

因みにコカちゃんは虫全般が苦手らしいです。

「あのサーグァ様……この状況何とかなりませんか?」

因みにサーグァ様も同行なさってくれていますが……現在あたし達の中心で黄の水晶の明かりを照らしてくれてるだけです。

足元が暗いと歩き辛いですからね、助かります。

「予想もしていなかった事態に神頼みしたくなる気持ちは分かりますけれど……今の私は神じゃないんですよ?」

そうでした……眷属と書いていもうとと読む、そんなお方でしたね。

「職業も詩人ですし……戦闘を支援するのも無理です」

日本でいう所の歌手とかアイドルといった職業でした。

そりゃトゥグア様にソックリな美貌を持つ詩人ならすぐにでも話題になって王様の目にも止まりますよね。

……で、何でそんな人がこの場にやって来てるんですか!?

しかもサーグァ様、王様の夫人でしょうに!




止むを得ずロウをアプさんの背後に付けて進む事20分……ようやく問題の場所に付いたのはいいのですが。

「この倒れてる達磨、もとい肉塊……もとい豚ともう1人はもしかして?」

「何回言い直しているんですか……しかもどれも不正解ですよ」

正直ロウ以外の男はどうでもいいです。

王様や仕事の依頼があった時の雇い主の名前を知ってればどうとでもなりますからね。

でも一緒に倒れてるのはコンテストに居たお抱えの料理人だって事は分かりますよ……名前は忘れましたが。

「で、この腐れ貴族が何でこんな所で倒れてんだ?」

おお、アプさんが物理でどうにかなる存在を前に調子を取り戻してくれた様ですね。

それにしても原因を調べる振りして頭を踏みつけるアプさん……マジ尊敬します。

「えっと、トドメ……ちゃんと刺した方が、いいよね?」

何物騒な事言ってるんですかコカちゃん!

まだ殺っちゃ駄目です!殺るのは容疑を自白させてからでなければいけませんよ!

「ふむ……どうやら2人共生気と魔力を根こそぎ吸われて気を失っただけですね」

魔力はともかく生気を吸われて生きているというのは凄いですね……悪党がしぶといのは生命力が強いって事なんでしょう。

というかよくこんな奴等のを吸う気になれましたね…本当に。

「生気を吸うって事は……サキュバスの仕業か!?」

「ロウ、ちょっと歯を食い縛って貰えますか?」

何でモンスター……しかも正体不明の存在に期待しているんですか!

「落ち着きな、まだそうと決まった訳じゃないだろう?」

「それに……サキュバスだったとして、墓地に居るのは……おかしいと思う」

それもそうですね……物語では魔界か夢の中にしか現れないというのが定番でしたし。

そうなると一体何者が?



「フフフ……始めまして、炎の女神の眷属とその使途の皆様」

っ!?

いつの間にあたし達の背後に!

「フフ、そう睨まないで頂けます?今回はほんのご挨拶に伺っただけですわよ」

この人……何でメイド服を?ってそうじゃなくて全然隙がない!

それ所か少しでも気を抜いたら……一瞬でやられてしまうかもしれない、そんな気迫と威圧感があります。

「あんた……只者じゃないねぇ、何者なんだい?」

「ああ、ごめんなさい」

スカートを少しだけ持ちあげての一礼……それだけの造作に恐怖すら感じますね。

全員で掛かったとしても……恐らくは勝てないでしょう。

「わたくしはクティ……【地】と【楽】を司る女神、アルラ様の眷属しもべでございます」




「……成程、この世界で生まれる筈のなかったモンスターは貴女が作ったのですね?」

「その通りですわ、それがアルラ様からのご命令ですから」

アッサリ肯定しましたね……

まあ、とぼける意味はないんでしょうけど。

「解らねぇな……お前なら直接暴れるだけでこの世界滅ぼせるんじゃないのか?何でそんな回りくどい事してんだよ?」

ちょっとロウ、何相手を刺激する様な事言ってるんですか?

その気になっちゃったらどうするんですか!

「それは勿論、滅ぼすつもりはないからですわ」

……え?

全く予想してなかった答えが返って来たんですけど……どういう事なんですか?

「皆様……というよりそこのお2人は、アルラ様を邪神か支配者だと勘違いしていらっしゃいません?」

あの恐怖と威圧感は何処へやら……もうその辺に居る人と大差ない雰囲気になってますね。

さっきまでのシリアスな緊張感を返せ……いえ、戻さなくていいです。

でも確かに言われてみれば、某神話に出てくる名状しがたい存在と名前が似ているという理由でそういう物かと思ってしまっていたのは否定出来ませんね。

勿論トゥグア様が違うのは知っていますけど!

「アルラ様だって、ちょっと性格に難があるだけで立派な女神ですのよ?人間を滅ぼすなんて考えたりはしませんわ……多分」

おい、今多分とか言いましたね?

そこは断言して欲しかったんですけど!

「まあ、世界を滅ぼす気がないのは解ったよ……なら何でモンスターを作ったりしてんだい?」

ああ、それは確かに気になりますね……

この際だから聞ける事は聞いておいた方がいいでしょう。

「さあ?アルラ様のお考えはわたくし如きには計り知れませんもの」

うん、まあド定番な答えですね……

やっぱり力ずくで問い質すしかないでしょうか?

「じゃあ……ここで、何をしようと……していたの?」

「この地の怨念を集めて食人鬼グールでも作ってみようかと……」

その一言でアプさんとコカちゃんが戦闘体勢に……つられてあたしとロウも武器を構えましたが、あのクティとやらは微動だにしてませんね。

「と思っていたのですけれども……肝心の怨念も、必要な魔力も集まらず」

ああ、怨念は知りませんが魔力についてはサーグァ様が浄化してたそうですし。

「そこの豚共に甘言を持ちかけて手っ取り早く回収しようとしたら貴女達に邪魔されてしまいましたの」

うわ、一時でも利用しておきながら名前じゃなくて豚呼ばわりですか。

そういえばこの肉ダルマとお供の名前って何でしたっけ?

「ああそうそう、その豚共は仕事を果たさなかったばかりか逆上した挙句わたくしに欲情して襲ってきたので衰弱させておきましたわよ……一応死んではいない筈ですわ」

別に死なせたって誰も文句はいいませんし、正当防衛の範疇でしょうけどね。

まあクティは良い人……と断言は出来ませんが無闇に人を殺したりしないと解りました。

「そういう訳ですので……今回はわたくしの不戦敗という事で、これを差し上げますわ」

こっちに向かって投げた物を慌ててキャッチしたのはいいのですが……何ですかこの黒い水晶?

「いい事を教えてあげますわ、わたくしがアルラ様から預かった黒の水晶は8つ……それは最後の1つですわ」

えっと、もしかしてこれって……クティの作ったモンスターの核になってる水晶?

つまりクティのモンスターは7体居るって事ですか……数が解っただけでも収穫でしたね。

「そして黒の効果は【保存】、その中にはアルラ様からトゥグアへ向けたメッセージが入っていますわ」

つまりこれを手に入れたらトゥグア様に渡せって事ですね……直接言いに行きなさいよ地の女神!




「フフフ、それでは……」

いきなり後ろに向いて……ああ、帰るんですかね?

って思ったら消えた、じゃなくてロウの真正面に!

「うぉっ!ビックリした!」

「それは申し訳ありません、ではお詫びに……」

クティはロウの左頬……それも限りなく唇に近い所にキスしやがりました!

おのれクティ!ロウの全てはあたしの物ですよ!

「あら怖い、その怒りの炎に焼かれる前に立ち去るとしますわ」

そう言ってあたしの拳が当たる前に消えた!

ええ、この瞬間クティはあたしの抹殺対象に入りました!生涯を通して不動の1位です!最優先事項ですよ!

「ではごきげんよう、またお会いしましょう」

二度と会いたくないですよ!

でも会えないと抹殺出来ません!

あーもう、どうすればいいんですかこれ!
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