あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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首都に向かって

新しい出会いです

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盗賊のオジサンたちの一件から数えて5日が経ちました。

コボルトや人面犬、犬のスケルトンといったモンスターも倒しつつ順調な旅路を進んでいます。

やけに犬型モンスターが多いとか、何でファンタジーな世界に妖怪が居るの?とは思いましたが……まあキモかったので見つけたらきっちり倒しますよ。

それにしてもここまで多いと怨念じみた物を感じますね……トゥグア様って犬に何か恨みでもあるんでしょうか?

そんなこんなで辿り着いた次の村……【ダニチノムラ】です。

オジサン達の話ではここは畜産に力を入れてて、特にビフーのお肉が美味しいと言ってました。

話を聞いた限りだとこの世界ではビフーは牛の事で、豚はポクー、鶏はクックーと呼ぶみたいです。

ただポクーは貴族か王様でしか食べれない程値段が高いと言ってました。

日本じゃ牛肉の方が高いんですが……まあ世界が違えば価値観も違いますよね、うん。

尚、クックーは若い内にシメたりはしないそうで、味はともかく肉が固い上に独特の臭みもあって人気がないそうです。

「美味そうな肉があると聞くと……どうしてもラーメンが食いたくなってくるな」

「ラーメンですか……作れなくはないですが時間がかかりますからね」

一泊はするとしても次の村までの食料を買って、情報を集めて、ルートを見直したりする間に作れるという物ではありません。

そもそも必要な材料があるのか?という疑問もあります……何せ醤油も味噌もないんですから。

「っておいキュア、あそこに人が集まってないか?」

「確かに結構な人数が集まってますね……ちょっと見てみましょう」

そこにあったのは大きな掲示板で……貼ってあった告知にはこう書いてありました。

【ダイ8カイ ダニチノムラ ニクリョウリコンテスト】

ニクリョウリコンテスト……つまり肉料理コンテストですか。

ふむ、ロウは肉料理が好きだし覗いてみるのも悪くないですね。

それにしてもカタカナしかないとは聞きましたけど、いざ目にすると読み辛くて仕方ないですね!

「開催は3日後か……なあキュア」

「分かっています、あたしもこのコンテストは気になります」

はい、滞在が決定しました。

そうと決まれば宿を探さなくてはいけませんね。




と思ったのですが……コンテストの時期が近づくにつれて観光客が押し寄せているらしく、どこにも空き部屋がありませんでした。

ならテントでも買って野宿するかと考えても、既に同じ思考に行きついたらしい旅人が押し寄せた事によって売り切れていますし。

皆さんそんなに肉が好きなんですか!

とまあ不貞腐れる訳にもいかないし、ない物は仕方ないのでアテもなく歩き回りつつ水晶を売りながら旅の食料を買ってたら……

「……に手を出すんじゃないよっ!」

うおっ眩しい!

不意打ちで、おそらく黄の水晶と思われる光があたしの目に直撃!

え、一体何が起こったんですか!?チカチカしてよく見えないんですけど!

「目がー!目がぁー! って一度言ってみたかったんです!」

「キュア……実は結構余裕あるだろ?」

「いえそんな事はありませんよ?」

っていうか何でロウは平気なんですか?

「クソッ!覚えてやがれ!」

はて、何か捨て台詞が聞こえるんですけど?

「あー、チンピラっぽい奴が屋台の娘さんにイチャモン付けて、腕を掴んだ所でお姉さん?が水晶の光を浴びせたって所か」

説明ありがとうございます。

「巻き込んじまって済まなかったねぇ……目は大丈夫かい?」

「あ、はい……もう大丈夫です」

うん、大分見える様になりました……ってこのお姉さんは色白で銀色の髪と青い眼に長い耳……まさかエルフですか!

そういえばトゥグア様も異種族婚について語ってたし、ファンタジーな世界なら居ても不思議はないですね。

とはいえ出会いの度に目を潰されるのはゴメンですけどね、次から知らない場所に来る時はサングラスをかけましょう……あればの話ですけど。



で、さっきのお詫びにとお姉さんは自分の家に泊めてくれると言ってくれました。

宿代浮いたのでラッキーと思っておきましょう。

「そういやまだ名乗ってなかったねぇ……あたいはアプ、見ての通りエルフで行商人、職業はタンクだよ」

タンクって重そうな鎧を纏って大盾を構えつつパーティーの前線で攻撃を受け続けるという、あのタンクですか?

でもアプさんは大盾は持っていますが鎧が見当たりませんよ?

「あ、ボクはコカ、です……母さんと一緒に、行商人をしてます……職業は魔導師マジシャンです」

姉妹かと思いきや母娘だったんですか!

まあエルフは長生きだと聞きますし、若い時間が長くても不思議ではありませんよね。

「ではこちらも……あたしはキュア、ヒーラーやってます」

「俺はロウ……狙撃手(アーチャー)だ」

おや、ロウの様子が……まさか美人3人に囲まれてムラムラしたんじゃないでしょうね?

あたし以外に劣情を抱いたらオシオキですよ?

「……アプさんは行商人だって言ってたけど、これぐらいの家っていくらするんだ?」

ああ、ムラムラじゃなくて品定めしてたんですね。

初見でするのは失礼だと思いますが将来を考えてくれてるのは嬉しいので黙っておきます。

「さあねぇ……何せここは死別した旦那が寄越した家だし、値段なんて考えた事もないよ」

何やら込み入った事情がありそうですね……

こういう事は深入りしないに限ります。

家を渡したといった辺り相手は貴族か、それぐらい稼いでいる商人で間違いないでしょうけど。

「そういやあんた達、今度のコンテストまでこの村に居るのかい?」

「ええ、肉好きのロウが絶対に見たいと駄々を捏ねてましたので」

「オイコラ、駄々を捏ねた覚えはないぞ」

捏ねる前にいいと言いましたからね。

「なら料理は出来たりするのかい?」

「ええ、まあ人並みには」

「俺は食う専門だ」

ロウ、それは威張って言う事じゃありませんよ。

あたしの料理を美味しそうに食べてくれるのは嬉しいんですけどね。

「……よし、なら決まりだね」

ん?何やら嫌な予感が……

「あんた達、あたい達と一緒にコンテストに出て貰うよ?」

……ファッ!
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