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プロローグ
少なくともプリティではないと思う
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気が付けばあたしと兄は草原に居ました……近くに村が見えるのでアテもなく彷徨う事はないでしょう。
ああ、それにしても空気が美味しいですね。
出来たばかりの世界とは聞いてますし排気ガスとかがないのでしょう……多分。
「えっと……どうやら転移?は成功したみたいだな」
「そのようですね」
うん、ちゃんと喋れるし意識もハッキリしてますね……
まずは荷物を確認しましょう……
鞄、地図、通貨はハウトというらしいです……良し、全部ありますね。
次に装備……兄は短パンに布製のシャツと革製の胸当て、木製の弓に金属の矢。
あたしは真っ赤な生地でスリットのないチャイナドレスっぽい服にスチールで出来てる様な杖に……あ、パンツとブラは着てましたね。
というかこの世界にも下着があったりするんでしょうか?
「……よし、それじゃ村に行く前に決めておくか」
「決めるって何を……ああ、異世界から来ましたじゃ信じて貰えないから設定を考えるんですね」
「いや、そこは旅人か冒険者で通せばいいだろ……そうじゃなくて名前だよ」
「名前ですか?」
兄が決めたかったのはこの世界で名乗る名前だった様ですね。
普通なら親から貰った名前を大事にする所ですが、あたし達を殺したのがその親ですからね……さっさと変えてしまいましょう。
「じゃあ……兄は弓を使いますし、ロウでどうでしょうか?」
arrow、アローを弄って省略しただけですが人名っぽくなったんじゃないかと思います。
それに暗記が苦手な兄に長い名前なんて付けたらベッドでブツブツ言うだけの機械になってしまいますので、これぐらいの長さで丁度良いでしょう。
「覚えやすくていいな、ならお前はヒーラーだから……キュアってのはどうだ?」
大抵のゲームで回復職が使える魔法の名前ですね。
効果はHPの回復だったり状態異常を直すのだったりと様々ですけど……
「兄に付けて貰えるんならポチでもタマでも構いませんが?」
むしろ1文字でも、何ならあいうえおだって許せます。
「ならキュアで決定な」
「はい」
後から魔法より拳で語りそうな魔法少女っぽい名前になった気がしましたが可愛い名前なので問題ありませんね。
殴殺ヒーラーキュアちゃん……一考の余地はあります。
試しに唱えてみましたが何も起こらないのでこの世界にはないと思って良さそうですし、誤発動の危険はなさそうで安心しました。
因みにあたしは空手を習っていましたので拳と回し蹴りには自信があります。
「じゃ、名前も決まった事だし……」
「そうですね、まずはあの村で情報を」
さて行くかと思ったら唐突に後ろからハグられた……いわゆるあすなろ抱きって奴ですね。
って何故?嬉しいけど!
「まあ何だ……女神様のお陰であの約束も意味なくなったよな?」
約束……あたしと兄はお互いに愛し合っていますが、この関係は中学を卒業するまで、と決めていたのです。
といっても流石に膜を破ったりはしていませんけどね……精々朝と昼休みと寝る前の挨拶代わりにネットリ舌を絡めるキスをする程度でしたが。
実を言うと卒業と同時に兄の寝込みを襲って絞ってから無理心中なんて計画はしてたんですが、徒労に終わってよかったのかもしれません。
「だからこっからは……その、何だ、俺を兄と呼ぶのは禁止な」
それこそ何故ですか!もしかして生まれ変わった途端あたしに飽きたんですか!
あれ?そう考えると涙が……
「何か勘違いしてるっぽいけど……ほらアレだ、俺たち2年後には結婚するんだし」
そういえばトゥグア様とそういう約束をしてました……
そもそもあたしが嫌いならキスに応じてくれてはいませんよね……うん。
「なのに何時までも兄、お前じゃ変だろ?」
言われてみればその通りですね……とはいえ10年近く兄、お前で通してたので簡単に変えられるとは思えませんけれど。
「まあすぐは無理でも意識してれば慣れるだろ……だからな」
ああ……そんな耳元で囁く様に言わないで……内容が頭に入りきりません。
マズイです、このままじゃあたしの心臓が破裂してしまいそうです!嬉し過ぎて!
「これからは俺をロウって呼べよ……お前が、じゃなかった……キュアが俺に付けた名前でな」
「わ、分かりました……ロウ」
こうして始まったあたしと兄……じゃない、あたしとロウの異世界の旅は遠巻きから大勢のモンスターに睨まれながらしたキスから始まったのでした。
尚、がっつりと覗いていたモンスター共は責任を持って殴り倒しておきました。
飛び掛って来るのに合わせて拳を突き出すだけの簡単なお仕事でした。
「ふむ、この世界でも空手が通用しそうで安心しました」
「キュアはヒーラーなのに何で前に出るんだよ……矢の節約が出来たと思えば有難いけど」
こればかりはあたしの性格ですからね……ただ守られるだけなのは性に合わないのですよ。
「何だか逆に俺が守られそうだな……相当鍛えないとならんか」
はい、頑張って強くなりましょうね。
あたしはそれ以上に強くなりますから。
ああ、それにしても空気が美味しいですね。
出来たばかりの世界とは聞いてますし排気ガスとかがないのでしょう……多分。
「えっと……どうやら転移?は成功したみたいだな」
「そのようですね」
うん、ちゃんと喋れるし意識もハッキリしてますね……
まずは荷物を確認しましょう……
鞄、地図、通貨はハウトというらしいです……良し、全部ありますね。
次に装備……兄は短パンに布製のシャツと革製の胸当て、木製の弓に金属の矢。
あたしは真っ赤な生地でスリットのないチャイナドレスっぽい服にスチールで出来てる様な杖に……あ、パンツとブラは着てましたね。
というかこの世界にも下着があったりするんでしょうか?
「……よし、それじゃ村に行く前に決めておくか」
「決めるって何を……ああ、異世界から来ましたじゃ信じて貰えないから設定を考えるんですね」
「いや、そこは旅人か冒険者で通せばいいだろ……そうじゃなくて名前だよ」
「名前ですか?」
兄が決めたかったのはこの世界で名乗る名前だった様ですね。
普通なら親から貰った名前を大事にする所ですが、あたし達を殺したのがその親ですからね……さっさと変えてしまいましょう。
「じゃあ……兄は弓を使いますし、ロウでどうでしょうか?」
arrow、アローを弄って省略しただけですが人名っぽくなったんじゃないかと思います。
それに暗記が苦手な兄に長い名前なんて付けたらベッドでブツブツ言うだけの機械になってしまいますので、これぐらいの長さで丁度良いでしょう。
「覚えやすくていいな、ならお前はヒーラーだから……キュアってのはどうだ?」
大抵のゲームで回復職が使える魔法の名前ですね。
効果はHPの回復だったり状態異常を直すのだったりと様々ですけど……
「兄に付けて貰えるんならポチでもタマでも構いませんが?」
むしろ1文字でも、何ならあいうえおだって許せます。
「ならキュアで決定な」
「はい」
後から魔法より拳で語りそうな魔法少女っぽい名前になった気がしましたが可愛い名前なので問題ありませんね。
殴殺ヒーラーキュアちゃん……一考の余地はあります。
試しに唱えてみましたが何も起こらないのでこの世界にはないと思って良さそうですし、誤発動の危険はなさそうで安心しました。
因みにあたしは空手を習っていましたので拳と回し蹴りには自信があります。
「じゃ、名前も決まった事だし……」
「そうですね、まずはあの村で情報を」
さて行くかと思ったら唐突に後ろからハグられた……いわゆるあすなろ抱きって奴ですね。
って何故?嬉しいけど!
「まあ何だ……女神様のお陰であの約束も意味なくなったよな?」
約束……あたしと兄はお互いに愛し合っていますが、この関係は中学を卒業するまで、と決めていたのです。
といっても流石に膜を破ったりはしていませんけどね……精々朝と昼休みと寝る前の挨拶代わりにネットリ舌を絡めるキスをする程度でしたが。
実を言うと卒業と同時に兄の寝込みを襲って絞ってから無理心中なんて計画はしてたんですが、徒労に終わってよかったのかもしれません。
「だからこっからは……その、何だ、俺を兄と呼ぶのは禁止な」
それこそ何故ですか!もしかして生まれ変わった途端あたしに飽きたんですか!
あれ?そう考えると涙が……
「何か勘違いしてるっぽいけど……ほらアレだ、俺たち2年後には結婚するんだし」
そういえばトゥグア様とそういう約束をしてました……
そもそもあたしが嫌いならキスに応じてくれてはいませんよね……うん。
「なのに何時までも兄、お前じゃ変だろ?」
言われてみればその通りですね……とはいえ10年近く兄、お前で通してたので簡単に変えられるとは思えませんけれど。
「まあすぐは無理でも意識してれば慣れるだろ……だからな」
ああ……そんな耳元で囁く様に言わないで……内容が頭に入りきりません。
マズイです、このままじゃあたしの心臓が破裂してしまいそうです!嬉し過ぎて!
「これからは俺をロウって呼べよ……お前が、じゃなかった……キュアが俺に付けた名前でな」
「わ、分かりました……ロウ」
こうして始まったあたしと兄……じゃない、あたしとロウの異世界の旅は遠巻きから大勢のモンスターに睨まれながらしたキスから始まったのでした。
尚、がっつりと覗いていたモンスター共は責任を持って殴り倒しておきました。
飛び掛って来るのに合わせて拳を突き出すだけの簡単なお仕事でした。
「ふむ、この世界でも空手が通用しそうで安心しました」
「キュアはヒーラーなのに何で前に出るんだよ……矢の節約が出来たと思えば有難いけど」
こればかりはあたしの性格ですからね……ただ守られるだけなのは性に合わないのですよ。
「何だか逆に俺が守られそうだな……相当鍛えないとならんか」
はい、頑張って強くなりましょうね。
あたしはそれ以上に強くなりますから。
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