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第16話 迫撃!トリプル・ガール

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 俺達は晩ご飯を街の屋台で調達した。三人娘が大量に調達してきたが、食べ終わってみると、テーブルの上に残されていたのは、ヨーグルトソースのホットオークが一つ、魚のフライが一つ、焼きトリスの手羽先が一本、バナナとサクランボのクレープが一つ。以上。四人分の朝食としては心細い。

「みんなずいぶん食べたねぇ。とりあえず、残りを包んで宿に持ち帰ろう。それから改めて、風呂だ」

 俺は立ち上がると、みんなも立ち上がり、ホットオークを包んでいた布に残りをまとめて包む。

「分身に持って帰らせようか?」
「今はマントは貸せないよ?」

 今マントを手放すと全裸になる。俺もそろそろ腰巻くらい買ったほうがいいのかもしれない。みんな開放的なので、俺もなんとなく全裸マントで過ごしてきてしまった。

「料理を包んでいた布が余っているから、大丈夫だよ」

 テーブルには、魚のフライを包んでいた布と、じゃがバターの布と、クレープの布と、りんご飴の布が残っている。

「分身とは、そんなに大盤振る舞いして良いものなのか?」

 リリアが尋ねる。

「もう夜だから。魔力を余らせても仕方ないし。それでは、分身!」

 街の往来に全裸のアザミが現れる。本体のアザミが結び合わせた布を渡し、分身のアザミが腰回りを覆う。

「上はどうするのですか?」

 ルシルが尋ねる。布が足りない。

「料理の包みを抱えて持てば……ほら」

 おっぱいが隠れた。しかし後ろから見ると、下半身も含めてほぼ全裸だった。

「じゃーねー」

 分身のアザミは全裸の後ろ姿を見せて去って行った。

「さて、風呂だな。アザミについて行けばいいのかな?」
「公衆浴場は街の真ん中にあるよ」
「王都の公衆浴場も真ん中近くにありますね。ど真ん中にはお城がありますけど」
「一日の訓練が終わると、良くそこで汗を流したものだ」

 リリアの言葉にルシルとアザミも頷く。やがて街の真ん中に近づいてきた。王都から街の東の門へ伸びている街道が、そのまま街の真ん中を通っていて、西の門から外へ伸びていた。

 公衆浴場は、街の真ん中の街道の南側にあった。北側には聖なる紋章を掲げた店があり、市場があり、神殿もあった。神殿は、八角形の二階建てなのは王都の神殿と同じだが、一回り小さく、中庭はなく、王都のものより小さい神の鳥の像が、屋上に祀られていた。

 公衆浴場は真ん中に大きな八角形の浴槽があり、浴槽の各辺の真ん中から浴槽と同じ高さの縁を持つ溝が伸び、浴槽と同じ高さで湯が張られ、各溝を挟むように小さな丸い椅子が並べられている。椅子は一本の溝に対して左右合わせて八個のようだが、固定はされておらず、近くには予備の椅子もある。これが浴場で、その周りを八つの施設が囲んでいる。

 真南にある建物はボイラー室で、煙突があり、中から三本の管が出ている。一本は近くの溝の上へ伸びていて、時折そこへ湯を足している。残りの二本はボイラー室の左右から、両隣の建物の中へ繋がっている。その管が繋がっている南東の建物はサウナ室。真東には井戸があり、真ん中の浴槽と繋がっていない四角い浴槽があって、水が張られている。水風呂だ。北東にはトイレがある。

 ボイラー室から管が繋がっている南西の建物は洗濯場。真西の建物は、中にベッドが並べられたマッサージ室。北西には脱衣場。真北にある建物がロビーで、中にはテーブルと椅子が並べられ、公衆浴場の外へ繋がる出入口があった。扉は開いていて、中の明かりが漏れていたが、出入口の前には衝立があり、その左右から出入りするようになっていた。

 各建物の間には、公衆浴場の外周を形作るように、人の丈の高さの白い幕が張られている。公衆浴場の中は石畳で、何本か柱が立てられ、天幕を張ることもできるそうだが、今は張られておらず、露天風呂になっていた。

「大人四人です。湯桶の貸し出しと洗濯も人数分お願いします」

 ルシルがロビーの出入口の近くにある受付で小銭を払う。受付では、飲み物なども売っていた。みんなで湯桶を受け取る。タオルと石鹸が入っている。ルシルは脱衣かごも受け取る。

「公衆浴場は日中の入場は無料だが、夜は有料なんだ」
「洗濯場にかごを預けておけば、帰る頃までには洗っておいてくれるよ。かごを預ける時にガウンも貸してくれる」

 リリアとアザミが教えてくれる。公衆浴場の外への出入口の向かい側には、公衆浴場の中への出入口があった。こちらには扉はなく、左右には窓が開いていた。そこからみんなで浴場の中へ入っていく。

 洗場にはちらほらと小さい人影が見える。小人ドワーフだ。街の通りでも見た。今は全ての装備を外しているようだが、顔を上半分に被さっている濃い灰色の髪と、顔の下半分から胸元までを覆っている濃い灰色の髭、小柄ながらも筋肉隆々の体つきは、どの個体も同じ様で見分けがつかない。みんな男性なんだろうか。それともこの中に女性も居るのか。

 浴場の真ん中を左側に見ながら、ロビーの隣にある脱衣場へ向かう。脱衣場の正面も、浴場の中から見たロビーと同じで、扉のない出入口があって、左右に窓が開けられていた。

 脱衣場の中は、真ん中にそれぞれ台に据えられたランプが二つ、少し間を空けて置かれていた。両側の壁の上半分に窓が設けられ、下半分に細かく区切られた棚が設けられている。正面の奥に台があって、お婆さんが一人座っていた。お婆さんは目を細めていて、起きているのか眠っているのか分からない。みんなで右側の棚の前へ行く。ルシルが棚の前に脱衣かごを置いた。

「ここに脱げばいいのかな?」

 俺はかごを指差しながら、ルシルに聞いた。

「はい。わたしが洗濯場へ持っていきます」
「じゃあ、よろしく」

 俺はさっとマントを脱いで、洗い場へ向かう。今の俺は賢者ではない。勇者だ。

「待って、勇者」

 アザミの声で俺は足を止め、両手で持った湯桶を股間の前に置いて振り返った。

「お話があるんです」
「何の話だ?」

 リリアは知らないらしい。

「ねえ、勇者。魔王攻略を成し遂げた後、最初に契りを交わしたい相手って誰か決めているの?」

 答えはすぐ頭に浮かんだ。しかし答えて良いものか。

「まだ決めていないの?」
「いや……」
「決めているのなら、お願いです。答えてもらえませんか?」

 ルシルは両手を組んでいる。リリアも俺に目を向けている。アザミは「最初に」と言った。王都の宿の風呂場での流れも考えると、契りはみんなと交わすんだ。それでもアザミは「最初に」と言った。契りはみんなと交わしても、最初の相手は一人だけだ。この世界でも、順番は重要なんだ。

 いきなりすごい選択肢が出て来たぞ。どうする。答えないという選択肢もあるのか? いや、俺達は全てを見せ合った仲だ。そんな選択肢はない。ここは素直に行くんだ。失敗しても、素直に行った結果なら悔いはない。はずだ。

「それは……ルシルだ」

 するとアザミとルシルは顔を見合わせ、そしてにっこり微笑み合った。

「ほら、あたしの言ったとおりだったでしょ」
「はい」

 ルシルはアザミに深く頷き、俺に微笑んだ。リリアも笑みを浮かべて頷いている。

「実は宿を取りに行く時、ルシルと話し合ったんだよ」
「これから魔王攻略を成し遂げるまで、節度を守るため、勇者様は毎日搾り出す必要があるんですよね?」

 ルシルの視線が湯桶で隠された俺の股間に注がれる。

「あたし達みんな、勇者の中に入って、勇者の体の仕組みを体感したから」
「あれはすごかったな。私の節制は、ただ心を落ち着かせていればいいが、あれはいくら心で堪えようとしても、到底体が堪え切れまい」

 アザミとリリアも俺の股間に視線を注ぐ。

「いや、必ずしも毎日って訳じゃあないし、これは俺がちゃんとやっておくから」

 俺は股間をみんなの視線から外すように一歩引く。

「いやいや、それをあたしが手伝うって話し合ったんだよ」
「リリアの節制は手伝えませんが、勇者様を手伝うことはできます」

 アザミとルシルは俺の顔に視線を注ぎながら一歩迫る。

「いやいやいや、これは俺一人でできるから」

 俺は二人の視線に仰け反りながら一歩引く。

「ほんとに一人で? 誰のことも思わずに?」
「それとも、わたし達以外の人を思い浮かべているのですか?」
「今朝は私の体の感触を使ったと言っていたな」

 三人娘が一歩迫る。

「それは……」

 俺は言葉を詰まらせた。

「あたし、勇者の中に入って天使達にやられている時、正面にあったあたしの体から目が離せなかったよ。もしもっと近くだったら、体中にたっぷり注ぎ込んでいたよ」
「私もあの時、左にあった私の体が目の前にあれば、聖騎士の資格など構わず、思い切り貫いていただろう」
「わたしもです。右にあったわたしの体が傍にあったら、無理やりにでも繋げていたと思います。最初の夜に勇者様が励んでいたのは、そうしないためだったのですね」

 三人娘が再び俺の股間に視線を注ぐ。

「さっきさっさと脱衣場を出ようとしていたのは、あたし達の体から、それを遠ざけようとしたんだよね?」
「節度を守るためですか? でも、節度を守るためにわたし達から離れるというのは違うと思うんです」
「そうだな。私も聖騎士として節制しているが、みんなと離れたりはしないぞ」

 三人娘がさらに一歩迫る。俺はその場でたじろいだ。

「だから、あたしが手伝うんだよ。あたしの分身で搾り取ってあげるよ」
「わたしも手伝うと言ったのですが」
「ルシルは自分の体で受け止めることになっちゃうからね」
「そんなことを話し合っていたのか」

 リリアはアザミとルシルを見る。

「わたしは、自分の体で受け止めても節度は守られるのではないかと食い下がって……」
「どこで区切りをつけるかは難しいと思うんだよね。でもせっかくあたしは分身を使えるんだし、勇者が最初に契りを交わしたい相手はきっとルシルだから、それまでの世話はあたしにさせてって言ったんだよ。そして言ったとおりだった」
「無理に答えてもらってすみません。わたしったらわがままですね……」
「そんなことはないぞ。勇者殿を呼び出したのはルシルだ。私は、ルシルが勇者殿の最初の相手で納得している」
「そうだよ。リリアには最初の相手にできない理由があるけど、あたしにはないんだよ? これは出番が欲しいあたしのわがままだよ」

 三人娘が全裸の俺を置いて盛り上がっている。奥の台に座っているお婆さんは、目を細めていて、起きているのか眠っているのか分からない。

「わがままついでに言わせてください。勇者様、契りを交わせる時が来たら、わたし、子供が欲しいです」

 ルシルが両手を組んで少し腰を落とし、上目遣いで俺を見る。

「ここに居るみんなと家族になれましたけど、わたし、もっと家族が欲しいです」

 俺はようやく落ち着きを取り戻し、ルシルに深く頷いた。

「そうだな。俺も欲しい。いっぱい子供を作ろう」

 そして見つめ合う俺とルシルの間に、アザミがすうっと入り込む。

「それまではあたしが、勇者が節度を守るのを手伝うってことでいいよね?」
「分かったよ。お願いするよ」

 俺は苦笑いしながら承諾した。

「私は何もできないが、必要な時はいつでも私の体を思い浮かべて使ってくれ」
「お、おう」
「丁度今から脱ぐから、じっくり見て構わない。見られるのは全く問題ない」
「い、いや、アザミに手伝ってもらうから大丈夫だ」

 俺は再び落ち着きを見失う。

「それじゃあ、分身!」

 そんな俺の前に全裸のアザミが現れる。

「さっそく今夜のお手伝いをするね」
「うお」

 分身のアザミの右手が俺の左腕を掴む。

「あ、眼鏡貸して」
「ほいよ」

 本体のアザミが眼鏡を外し、分身のアザミが伸ばした左手に渡す。

「眼鏡で何を?」

 俺は分身のアザミに聞く。

「目にかかったら痛いでしょ」

 分身のアザミは眼鏡を掛けながらニヤリと笑った。

「それじゃあ、みんなお先に。しっかり搾って、搾り立ての勇者をお届けするよ」

 分身のアザミは三人娘に左手を振りながら、右手で俺を引っ張って脱衣場を出た。
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