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第3話 悟りの戦い
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ルシルが紹介してくれた宿屋の部屋には一台のベッドと二つの枕あった。隣のルシルはにっこり微笑んでこっちを見ている。
「この宿には露天風呂があるんですよ。それともご飯にしますか?」
「先に汗を流そう」
まずは水でも被って落ち着きを取り戻すんだ。俺は背負い袋を下ろした。向かい側にも扉がある。開けてみた。暗い。物入れのようだ。中には蝋燭と短い鞭が入っていた。
「蝋燭ぅ!? ああ、予備の照明ね! しかし鞭は!?」
「蠅叩きですね」
「なるほどね! 大事だね」
早く水でも被って落ち着きを取り戻すんだ。俺はマントを脱ぎ、兜も脱いだ。
「小手はわたしが」
ルシルが手伝ってくれる。俺は鎧の紐を緩めると、ルシルに背を向けて脱ぎ、さっとマントを羽織った。
「お風呂はどこかな?」
「ご案内します」
ルシルはベッドの上のガウンを二着とも手に取ると、ついて来るように促した。俺はルシルのお尻ではなく背中を見るように努めた。視界の縁で二つの盛り上がりがちらつく。部屋を出て廊下を階段のところまで戻り、左に伸びる廊下を少し進む。
「こちらです」
扉ではなく布が掛けられた入り口があった。ルシルが中に入っていく。入り口は一つしかない。
「中で分かれているのかな?」
俺も中に入ってみた。部屋の真ん中には向かい合わせの長椅子が二組ある。右側の壁には鏡が張られている。向こう正面には窓があり、外に浴槽が見える。誰も入っていないようだ。壁には大きな団扇が備え付けられていた。そして手前の壁には細かく区切られた棚があり、ルシルが今まさに装備を外そうとしていた。
「ルシルさん! 男湯はどこ!?」
ルシルはすんでのところで手を止めて振り向いたが、首をかしげた。
「男湯って何ですか?」
……何……だと……。ここは男湯という概念がない世界なのか!? 男湯がなければ女湯もない。ならば風呂場は一つでいい。そういうことか。なんて素晴らしい世界だ。
「いや、何でもない」
俺は先人の教えを思い出した。ローマではローマ人のするようにせよ。俺は本能に従うんじゃあない。ローマ人に従うんだ。俺はルシルを追い越し、奥の棚の前で止まった。
「棚に脱いでおくと、宿が洗濯してくれるんですよ」
「なるほど、それは便利だな」
俺はルシルを見ずにマントを脱いで棚に入れた。脱衣完了。棚の下側にはタオルと石鹸が入った湯桶が並べられている。その一つを取って右側の奥を見ると扉がある。近づいて開けるとそこが浴場だった。
誰も居ないようだ。床にはタイルが敷かれ、手前の壁と向こう正面の壁に沿って床より少し高さを上げて溝が設けられ湯が張られている。右側の壁は大きく開けられ、その外に広い浴槽があった。浴槽と溝は同じ高さで繋げられ、溝の前には小さな丸い椅子が並べてある。椅子の前の壁には鏡が張られていた。
「わあ、貸し切りみたいですねぇ」
今、俺のすぐ後ろに全裸の女の子が! 髪を下ろしたルシルは俺を追い越し、浴場へすたすたと入っていく。今日ずっと見ていたお尻の完全体がついに姿を現した。
「入らないのですか?」
ルシルは首だけ振り向いて尋ねた。俺はとっさに湯桶を股間の位置へ下げる。
「ああ、入るよ」
ルシルの足が向こう正面へ向かっているのを見て、俺は手前側の椅子へ向かった。
「お背中流しましょうか?」
「いや! 一人で洗うから大丈夫だ」
俺は椅子に座って湯桶からタオルと石鹸を出し一息ついた。鏡に映った己の顔を、少し顔の角度を変えならじっくり見る。頬に手を当て、鏡に顔を近づけて良く見る。頬はつるつるしていた。一日が終わろうとしているのに、髭が生えてくる気配はない。両腕を交互に挙げて、鏡に両脇を交互に映す。腋毛もない。腕を下ろして脚を見る。脚はすでに見ていたが、脛をさする。脛毛もない。股間もすでに見ていたが、改めて見る。下の毛もない。
王様は髭を生やしていた。武具屋の主人も生やしていた。街の往来でも髭を生やしているお爺さんを見かけた。生えてくる時期が違うのかもしれない。まあ、生えてきたら剃ればいい。下の毛じゃあない。髭をね。
鏡にはルシルの背中も映っていた。俺は溝から湯を汲んで頭から被った。さらに湯を汲んで頭から被り、もう一度湯を汲んで頭から被り、改めて湯を汲んで石鹸を湯桶の中に少し浸け、手の中で泡立て、洗髪に取り掛かった。
いける気はする。露出度に対する寛容さを脇に置いても、二人用のベッドがあるあの部屋を選んだのはルシルだし。もちろんここは異世界。愛について俺の想像を超える概念が待ち構えている可能性は十分にあるが、その時はまた考えればいい。
鏡の向こうではルシルも髪を洗っていた。体を傾け、腕の間から少しおっぱいがこぼれている。手の動きに合わせておっぱいも揺れる。
しかし何かもやもやする。踏み込んではいけない気がする。なぜだ。ルシルは受け入れてくれそうなのに。……いや、果たしてルシルは俺を俺として受け入れてくれるのか?
俺は湯で髪をすすいだ。タオルで髪を拭き、湯を汲み、体を洗い始める。ルシルも髪をすすぐとタオルで丁寧に水気を拭き、頭の上にまとめて体を洗い始めた。ルシルは左腕から洗う派!
そう、ルシルは俺をあくまで勇者として受け入れているだけではないのか。例えば俺の目の前に全く好みではない女が現れたとする。しかし彼女には俺を救う力があるとする。俺は彼女を邪険には扱わないだろう。それどころか愛想良く受け入れることも厭わない。だって俺を救ってくれるのだから。
ルシルは左手で左のおっぱいを支え、右手のタオルで根元から先端へ優しく洗っていく。持ち上げて付け根もしっかり洗う。タオルを置いて、先端は人差し指の腹でほぐすように洗う。左が終わったらタオルを持ち換えて右のおっぱい。おっぱいはタオルの動きに完全に服従し、柔らかく形を変える。
ましてや俺は勇者。世界の命運を担う者。それにそうだ、俺は契約を交わしていない。約束はしたが、俺に魔法的な束縛はない。俺を任務に繋ぎ留めるために、ルシルがその身を犠牲にしようとしているのだとしたら。そんなルシルに迫っていいのか。
おっぱいの次はお腹。ルシルはへそを中心に円を描くようにタオルを動かす。時計回りで二回転。反時計回りで三回転。ルシルの腹筋が柔らかくうねる。再び時計回りで二回転。タオルを置いて、右手の中指をへその中へ滑り込ませる。指をリズミカルに動かし、クチュクチュと音を立てる。
俺はまだ何もしてないじゃあないか。魔物一匹倒していない。まずはやるべきことをやるんだ。冒険を続けていけば見せ場もたくさんあるだろう。そこで期待に応えていけば、ルシルが俺をただの勇者ではなく俺として認めてくれる時もきっと来る。その時こそ、この思いをぶつければいいんだ。
ルシルは左の太腿に両手でタオルを当て、付け根から膝へ洗い上げる。膝を立て、膝から足首を洗う。タオルを置いて左手で足首を持ち、膝を倒して脚を開き、右手で足裏を撫でるように洗う。足指に指を絡ませ、クチュクチュと音を鳴らす。続いて右脚。左右反転。それが終わると両手で石鹸を泡立て、右手を股間に伸ばす!
バシャアア、俺は肩から湯をかけて石鹸を流した。湯桶に湯を張ってタオルをすすいだ。そして一式を湯桶に入れて持ち、胸を張って浴槽へ向かった。外に出る。近くで見ると浴槽には深い部分と浅い部分が交互にあり、王都を眺めながら座れるようになっている。足を浸けてみた。ぬる過ぎず、熱過ぎない。そのまま入って浅い部分に腰掛ける。胸の下辺りまで浸かった。夕日が照らす王都の眺めが美しい。
「湯加減はどうですかぁ?」
パシャ、トプン、チャプン。今、俺のすぐ後ろに全裸のルシルが! 理性との話し合いはついている。しかし、本能との闘いはこれからだった。思いをぶつけるその時まで、湧き起こる邪念は俺の右手で始末せねばなるまい。しかし、それで持つのか? 今晩いきなり一緒のベッドで寝るのだ。冒険初日でバーサーカーにジョブチェンジしちゃうかもしれない。どこかで折り合いをつける必要がある。
「勇者様?」
見るのはいいんじゃあないか? 無理やり見ようって訳じゃあない。こっちからは手を出さないんだ。出されたものを見るだけなんだ。それにおっぱいの一つや二つや三つや四つ、見たことない訳じゃあない。全部画面越しだけど。本能を完全に封じるのは無理だ。この辺りが妥協点。いざ征かん、素晴らしい世界へ。俺は華麗にターンした。
「いいお湯でしょう?」
微笑むルシルはタオルで髪をまとめ腕を後ろで組んで――そんなことより生おっぱい! 薄い布とはいえ拘束から解き放たれた双房は、半分湯に浸かって重力からも解き放たれ、ゆっくりと揺れてその柔らかさを存分に示しながら漂っていた。伝説は本当だったんだ。おっぱいは水に浮く。
「エウレカ!」
そしてついに完全公開された山頂の聖域は広すぎず、狭すぎず、その色はフレッシュチェリーブロッサムピンク! 真ん中にプックリとそそり立つ乙女の蕾が――右手の出番だ。
「この近くにトイレある?」
「洗い場を出てすぐ左に……」
俺は前傾姿勢でルシルの脇を抜けて浴槽を出た。
「いってらっしゃい」
「イッてきます」
そのままの姿勢で出口へ前進。洗い場を出て脱衣場へ。左を見る。扉があった。入ってしゃがむ。蓋を取る。そして構えた。滾る邪念よ、全て搾り出してやるぞ。俺の右手が激しく動く。
「ほわあああああ!」
……戦いを終えて、俺はルシルの元へ帰って来た。
「ただいま」
「おかえりなさい」
流石のルシルも苦笑していた。ともあれ、これで悟りの境地でルシルの全てを眺められる――と思ったのに滾ってきた、滾ってきた、これが若さか!
「再びイッてきます!」
結局俺はさらに二度往復してようやく悟りを開いた。陽はすっかり沈み、各所のランプが灯されていた。脱衣場に戻るとマントがない。ルシルが言っていたように宿の者が持って行ったのだろう。全裸のルシルがガウンを渡してくれる。俺は普通に受け取って着る。ルシルも着る。ガウンは薄く、帯を締めるとボディラインがぴったり出たが、俺は穏やかな心で浴場を出て、ふらふらとした足取りで部屋に戻った。
「この宿には露天風呂があるんですよ。それともご飯にしますか?」
「先に汗を流そう」
まずは水でも被って落ち着きを取り戻すんだ。俺は背負い袋を下ろした。向かい側にも扉がある。開けてみた。暗い。物入れのようだ。中には蝋燭と短い鞭が入っていた。
「蝋燭ぅ!? ああ、予備の照明ね! しかし鞭は!?」
「蠅叩きですね」
「なるほどね! 大事だね」
早く水でも被って落ち着きを取り戻すんだ。俺はマントを脱ぎ、兜も脱いだ。
「小手はわたしが」
ルシルが手伝ってくれる。俺は鎧の紐を緩めると、ルシルに背を向けて脱ぎ、さっとマントを羽織った。
「お風呂はどこかな?」
「ご案内します」
ルシルはベッドの上のガウンを二着とも手に取ると、ついて来るように促した。俺はルシルのお尻ではなく背中を見るように努めた。視界の縁で二つの盛り上がりがちらつく。部屋を出て廊下を階段のところまで戻り、左に伸びる廊下を少し進む。
「こちらです」
扉ではなく布が掛けられた入り口があった。ルシルが中に入っていく。入り口は一つしかない。
「中で分かれているのかな?」
俺も中に入ってみた。部屋の真ん中には向かい合わせの長椅子が二組ある。右側の壁には鏡が張られている。向こう正面には窓があり、外に浴槽が見える。誰も入っていないようだ。壁には大きな団扇が備え付けられていた。そして手前の壁には細かく区切られた棚があり、ルシルが今まさに装備を外そうとしていた。
「ルシルさん! 男湯はどこ!?」
ルシルはすんでのところで手を止めて振り向いたが、首をかしげた。
「男湯って何ですか?」
……何……だと……。ここは男湯という概念がない世界なのか!? 男湯がなければ女湯もない。ならば風呂場は一つでいい。そういうことか。なんて素晴らしい世界だ。
「いや、何でもない」
俺は先人の教えを思い出した。ローマではローマ人のするようにせよ。俺は本能に従うんじゃあない。ローマ人に従うんだ。俺はルシルを追い越し、奥の棚の前で止まった。
「棚に脱いでおくと、宿が洗濯してくれるんですよ」
「なるほど、それは便利だな」
俺はルシルを見ずにマントを脱いで棚に入れた。脱衣完了。棚の下側にはタオルと石鹸が入った湯桶が並べられている。その一つを取って右側の奥を見ると扉がある。近づいて開けるとそこが浴場だった。
誰も居ないようだ。床にはタイルが敷かれ、手前の壁と向こう正面の壁に沿って床より少し高さを上げて溝が設けられ湯が張られている。右側の壁は大きく開けられ、その外に広い浴槽があった。浴槽と溝は同じ高さで繋げられ、溝の前には小さな丸い椅子が並べてある。椅子の前の壁には鏡が張られていた。
「わあ、貸し切りみたいですねぇ」
今、俺のすぐ後ろに全裸の女の子が! 髪を下ろしたルシルは俺を追い越し、浴場へすたすたと入っていく。今日ずっと見ていたお尻の完全体がついに姿を現した。
「入らないのですか?」
ルシルは首だけ振り向いて尋ねた。俺はとっさに湯桶を股間の位置へ下げる。
「ああ、入るよ」
ルシルの足が向こう正面へ向かっているのを見て、俺は手前側の椅子へ向かった。
「お背中流しましょうか?」
「いや! 一人で洗うから大丈夫だ」
俺は椅子に座って湯桶からタオルと石鹸を出し一息ついた。鏡に映った己の顔を、少し顔の角度を変えならじっくり見る。頬に手を当て、鏡に顔を近づけて良く見る。頬はつるつるしていた。一日が終わろうとしているのに、髭が生えてくる気配はない。両腕を交互に挙げて、鏡に両脇を交互に映す。腋毛もない。腕を下ろして脚を見る。脚はすでに見ていたが、脛をさする。脛毛もない。股間もすでに見ていたが、改めて見る。下の毛もない。
王様は髭を生やしていた。武具屋の主人も生やしていた。街の往来でも髭を生やしているお爺さんを見かけた。生えてくる時期が違うのかもしれない。まあ、生えてきたら剃ればいい。下の毛じゃあない。髭をね。
鏡にはルシルの背中も映っていた。俺は溝から湯を汲んで頭から被った。さらに湯を汲んで頭から被り、もう一度湯を汲んで頭から被り、改めて湯を汲んで石鹸を湯桶の中に少し浸け、手の中で泡立て、洗髪に取り掛かった。
いける気はする。露出度に対する寛容さを脇に置いても、二人用のベッドがあるあの部屋を選んだのはルシルだし。もちろんここは異世界。愛について俺の想像を超える概念が待ち構えている可能性は十分にあるが、その時はまた考えればいい。
鏡の向こうではルシルも髪を洗っていた。体を傾け、腕の間から少しおっぱいがこぼれている。手の動きに合わせておっぱいも揺れる。
しかし何かもやもやする。踏み込んではいけない気がする。なぜだ。ルシルは受け入れてくれそうなのに。……いや、果たしてルシルは俺を俺として受け入れてくれるのか?
俺は湯で髪をすすいだ。タオルで髪を拭き、湯を汲み、体を洗い始める。ルシルも髪をすすぐとタオルで丁寧に水気を拭き、頭の上にまとめて体を洗い始めた。ルシルは左腕から洗う派!
そう、ルシルは俺をあくまで勇者として受け入れているだけではないのか。例えば俺の目の前に全く好みではない女が現れたとする。しかし彼女には俺を救う力があるとする。俺は彼女を邪険には扱わないだろう。それどころか愛想良く受け入れることも厭わない。だって俺を救ってくれるのだから。
ルシルは左手で左のおっぱいを支え、右手のタオルで根元から先端へ優しく洗っていく。持ち上げて付け根もしっかり洗う。タオルを置いて、先端は人差し指の腹でほぐすように洗う。左が終わったらタオルを持ち換えて右のおっぱい。おっぱいはタオルの動きに完全に服従し、柔らかく形を変える。
ましてや俺は勇者。世界の命運を担う者。それにそうだ、俺は契約を交わしていない。約束はしたが、俺に魔法的な束縛はない。俺を任務に繋ぎ留めるために、ルシルがその身を犠牲にしようとしているのだとしたら。そんなルシルに迫っていいのか。
おっぱいの次はお腹。ルシルはへそを中心に円を描くようにタオルを動かす。時計回りで二回転。反時計回りで三回転。ルシルの腹筋が柔らかくうねる。再び時計回りで二回転。タオルを置いて、右手の中指をへその中へ滑り込ませる。指をリズミカルに動かし、クチュクチュと音を立てる。
俺はまだ何もしてないじゃあないか。魔物一匹倒していない。まずはやるべきことをやるんだ。冒険を続けていけば見せ場もたくさんあるだろう。そこで期待に応えていけば、ルシルが俺をただの勇者ではなく俺として認めてくれる時もきっと来る。その時こそ、この思いをぶつければいいんだ。
ルシルは左の太腿に両手でタオルを当て、付け根から膝へ洗い上げる。膝を立て、膝から足首を洗う。タオルを置いて左手で足首を持ち、膝を倒して脚を開き、右手で足裏を撫でるように洗う。足指に指を絡ませ、クチュクチュと音を鳴らす。続いて右脚。左右反転。それが終わると両手で石鹸を泡立て、右手を股間に伸ばす!
バシャアア、俺は肩から湯をかけて石鹸を流した。湯桶に湯を張ってタオルをすすいだ。そして一式を湯桶に入れて持ち、胸を張って浴槽へ向かった。外に出る。近くで見ると浴槽には深い部分と浅い部分が交互にあり、王都を眺めながら座れるようになっている。足を浸けてみた。ぬる過ぎず、熱過ぎない。そのまま入って浅い部分に腰掛ける。胸の下辺りまで浸かった。夕日が照らす王都の眺めが美しい。
「湯加減はどうですかぁ?」
パシャ、トプン、チャプン。今、俺のすぐ後ろに全裸のルシルが! 理性との話し合いはついている。しかし、本能との闘いはこれからだった。思いをぶつけるその時まで、湧き起こる邪念は俺の右手で始末せねばなるまい。しかし、それで持つのか? 今晩いきなり一緒のベッドで寝るのだ。冒険初日でバーサーカーにジョブチェンジしちゃうかもしれない。どこかで折り合いをつける必要がある。
「勇者様?」
見るのはいいんじゃあないか? 無理やり見ようって訳じゃあない。こっちからは手を出さないんだ。出されたものを見るだけなんだ。それにおっぱいの一つや二つや三つや四つ、見たことない訳じゃあない。全部画面越しだけど。本能を完全に封じるのは無理だ。この辺りが妥協点。いざ征かん、素晴らしい世界へ。俺は華麗にターンした。
「いいお湯でしょう?」
微笑むルシルはタオルで髪をまとめ腕を後ろで組んで――そんなことより生おっぱい! 薄い布とはいえ拘束から解き放たれた双房は、半分湯に浸かって重力からも解き放たれ、ゆっくりと揺れてその柔らかさを存分に示しながら漂っていた。伝説は本当だったんだ。おっぱいは水に浮く。
「エウレカ!」
そしてついに完全公開された山頂の聖域は広すぎず、狭すぎず、その色はフレッシュチェリーブロッサムピンク! 真ん中にプックリとそそり立つ乙女の蕾が――右手の出番だ。
「この近くにトイレある?」
「洗い場を出てすぐ左に……」
俺は前傾姿勢でルシルの脇を抜けて浴槽を出た。
「いってらっしゃい」
「イッてきます」
そのままの姿勢で出口へ前進。洗い場を出て脱衣場へ。左を見る。扉があった。入ってしゃがむ。蓋を取る。そして構えた。滾る邪念よ、全て搾り出してやるぞ。俺の右手が激しく動く。
「ほわあああああ!」
……戦いを終えて、俺はルシルの元へ帰って来た。
「ただいま」
「おかえりなさい」
流石のルシルも苦笑していた。ともあれ、これで悟りの境地でルシルの全てを眺められる――と思ったのに滾ってきた、滾ってきた、これが若さか!
「再びイッてきます!」
結局俺はさらに二度往復してようやく悟りを開いた。陽はすっかり沈み、各所のランプが灯されていた。脱衣場に戻るとマントがない。ルシルが言っていたように宿の者が持って行ったのだろう。全裸のルシルがガウンを渡してくれる。俺は普通に受け取って着る。ルシルも着る。ガウンは薄く、帯を締めるとボディラインがぴったり出たが、俺は穏やかな心で浴場を出て、ふらふらとした足取りで部屋に戻った。
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