13 / 38
第11話 コユキの魂
しおりを挟む
次の依頼のターゲット、それは俺の妹『コユキ』。
目を疑って何度もスマホの画面を確認した。
そこには間違いなく『鎌倉 小雪』の文字。
今回の件に関しては、「はい、分かりました」と二つ返事をするわけにはいかない。
そもそも、なぜコユキがターゲットになってしまったのか。それが分からない。
何かの間違いの可能性もある。
同姓同名の別人かもしれない、そう思った俺は日が暮れないうちにメフィストの元へ向かった。
「メフィスト、メールの件で聞きたいことがある」
俺は感情が昂りそうになるのを抑えながら尋ねる。
「ああ、次のターゲット『鎌倉 小雪』さんの件デスか? どうかされたんデスか」
メフィストは俺がここに来た理由にピンときていないような反応を見せる。
「ターゲットが『鎌倉 小雪』で間違い無いのか? ほかの誰かと間違っているんじゃないのか」
「……いえ、確認しましたが『鎌倉 小雪』さんで間違いないデスね」
「俺の妹も同じ名前なんだが、同姓同名の人か?」
「ご住所もフブキさんと同じデスので、妹さんで間違いないデス」
――どうやらターゲットの『鎌倉 小雪』とは俺の妹のことで間違いないようだ。
「……俺の妹だと分かって俺に依頼したのか?」
「断るのというのであれば他の方に依頼するだけデスが……」
他の死神に頼む……? それは絶対にダメだ。かと言って俺がその依頼を受けるわけにはいかない。
――じゃあ、どうする?
俺は無意識に、鎌の青白い刃をメフィストの首元に突き付けていた。
「何のマネデスか……?」
メフィストは両手を上げ、苦笑いをしながら固まる。
――もう後には引けない。
「……この依頼を取り消せ」
「できない、と言ったら……?」
「お前の魂を刈る。それだけだ」
メフィストは少し黙り込んだ後、口を開く。
「分かりました、少し冷静になりましょう」
その言葉を聞いた俺は、突き付けていた鎌を下した。
「今朝届いたばかりの美味しい紅茶があります。特別にお淹れしましょう」
メフィストは嬉しそうに紅茶を淹れ始める。その間、俺は黒い大きなソファーに座って待つ。
依頼の件で頭がいっぱいだったので、どれだけ時間が経ったかは分からないが、紅茶の香りが漂ってきた。
どうぞ召し上がれ、と熱い紅茶が入ったティーカップを差し出される。
強い香り。普段紅茶を飲まない俺にとっては良い香りとは言えず、むしろ苦手だ。
メフィストは、俺の反応が気になるのか向かい側のソファーに座り、ずっとこちらを見ている。
せっかく出されたので、とりあえず一口。思わず眉間にしわが寄る。
「おや、お口に合いませんでしたか」
「いや、普段紅茶は飲まないから……。好きな人にはたまらないんだろうな」
「あまり無理なさらず」
「せっかく淹れてくれたんだから、全部頂くよ」
「それは助かります」
……助かる? 残したものを処理しなくていいってことなのだろうか。
その言葉に少し引っかかったが、紅茶をグイっと飲み干した。
紅茶の香りが口の中いっぱい、そして鼻に抜ける。……正直、吐きかけた。
「では、話を戻しましょうか。今回の依頼、受けてくれるんデスよね」
「は? 俺は取り消すように言ったはずだぞ」
紅茶一杯で気が変わると思うな、むしろ嫌いだと言いかけたがガマンした。
「散々他の方の魂を刈って来たのに、妹の魂は刈れないと? それは都合がよすぎるのではないデスか」
俺はその言葉にガマンならず、ソファーから立ち上がり再び鎌を取り出し、メフィストの首元に刃を突き付ける。
しかし、なぜかメフィストは余裕の表情を見せる。
「アナタにワタシは殺せない」
「――は? どういうことだ」
「時期に分かりますよ。まぁ、分かる頃にはアナタには分からなくなっているはずデスが。今回の件も、本日中に任務が遂行されなければ無かったことにしますので、ご安心を」
メフィストの言うことの意味は分からなかったが、考える余裕がない。さっきから立ち眩み、目まいがする。
「どうかされたんデスか? 顔色が良くないようデスが」
「少し気分が悪い……今日はもう帰らせてもらう」
頭に血が上ったせいだろうか、冷静になるためにも一旦家に帰ることにした。
何事もなければ今回の件は無くなる。俺がコユキに手を出さなければいい、簡単なことだ。
コユキと一緒の夕飯。普通に振る舞っているつもりだったが、様子がおかしいことを悟られてしまった。
そして、なぜかコユキの行動一つ一つが煩わしく感じてしまった。こんなこと今までなかったのに……。
――夜も更け、いつものようにコユキと一緒に布団に入る。俺は眠るつもりはないが、目を閉じ寝たふりをする。30分ほど経った頃、コユキに眠ったことを確認するために小さく声を掛ける。
「……コユキちゃん? 起きてる?」
「……」
……返事がない。どうやら眠ったようだ。
俺はバレないようにゆっくりと布団から出る。しまっていた白いローブを羽織り、棒状態の鎌を手に取る。
布団で寝ているコユキの側に立ち、俺は愛鎌スノードロップにスイッチを入れると、青白い刃が姿を現す。
「ごめん、コユキ」
目を疑って何度もスマホの画面を確認した。
そこには間違いなく『鎌倉 小雪』の文字。
今回の件に関しては、「はい、分かりました」と二つ返事をするわけにはいかない。
そもそも、なぜコユキがターゲットになってしまったのか。それが分からない。
何かの間違いの可能性もある。
同姓同名の別人かもしれない、そう思った俺は日が暮れないうちにメフィストの元へ向かった。
「メフィスト、メールの件で聞きたいことがある」
俺は感情が昂りそうになるのを抑えながら尋ねる。
「ああ、次のターゲット『鎌倉 小雪』さんの件デスか? どうかされたんデスか」
メフィストは俺がここに来た理由にピンときていないような反応を見せる。
「ターゲットが『鎌倉 小雪』で間違い無いのか? ほかの誰かと間違っているんじゃないのか」
「……いえ、確認しましたが『鎌倉 小雪』さんで間違いないデスね」
「俺の妹も同じ名前なんだが、同姓同名の人か?」
「ご住所もフブキさんと同じデスので、妹さんで間違いないデス」
――どうやらターゲットの『鎌倉 小雪』とは俺の妹のことで間違いないようだ。
「……俺の妹だと分かって俺に依頼したのか?」
「断るのというのであれば他の方に依頼するだけデスが……」
他の死神に頼む……? それは絶対にダメだ。かと言って俺がその依頼を受けるわけにはいかない。
――じゃあ、どうする?
俺は無意識に、鎌の青白い刃をメフィストの首元に突き付けていた。
「何のマネデスか……?」
メフィストは両手を上げ、苦笑いをしながら固まる。
――もう後には引けない。
「……この依頼を取り消せ」
「できない、と言ったら……?」
「お前の魂を刈る。それだけだ」
メフィストは少し黙り込んだ後、口を開く。
「分かりました、少し冷静になりましょう」
その言葉を聞いた俺は、突き付けていた鎌を下した。
「今朝届いたばかりの美味しい紅茶があります。特別にお淹れしましょう」
メフィストは嬉しそうに紅茶を淹れ始める。その間、俺は黒い大きなソファーに座って待つ。
依頼の件で頭がいっぱいだったので、どれだけ時間が経ったかは分からないが、紅茶の香りが漂ってきた。
どうぞ召し上がれ、と熱い紅茶が入ったティーカップを差し出される。
強い香り。普段紅茶を飲まない俺にとっては良い香りとは言えず、むしろ苦手だ。
メフィストは、俺の反応が気になるのか向かい側のソファーに座り、ずっとこちらを見ている。
せっかく出されたので、とりあえず一口。思わず眉間にしわが寄る。
「おや、お口に合いませんでしたか」
「いや、普段紅茶は飲まないから……。好きな人にはたまらないんだろうな」
「あまり無理なさらず」
「せっかく淹れてくれたんだから、全部頂くよ」
「それは助かります」
……助かる? 残したものを処理しなくていいってことなのだろうか。
その言葉に少し引っかかったが、紅茶をグイっと飲み干した。
紅茶の香りが口の中いっぱい、そして鼻に抜ける。……正直、吐きかけた。
「では、話を戻しましょうか。今回の依頼、受けてくれるんデスよね」
「は? 俺は取り消すように言ったはずだぞ」
紅茶一杯で気が変わると思うな、むしろ嫌いだと言いかけたがガマンした。
「散々他の方の魂を刈って来たのに、妹の魂は刈れないと? それは都合がよすぎるのではないデスか」
俺はその言葉にガマンならず、ソファーから立ち上がり再び鎌を取り出し、メフィストの首元に刃を突き付ける。
しかし、なぜかメフィストは余裕の表情を見せる。
「アナタにワタシは殺せない」
「――は? どういうことだ」
「時期に分かりますよ。まぁ、分かる頃にはアナタには分からなくなっているはずデスが。今回の件も、本日中に任務が遂行されなければ無かったことにしますので、ご安心を」
メフィストの言うことの意味は分からなかったが、考える余裕がない。さっきから立ち眩み、目まいがする。
「どうかされたんデスか? 顔色が良くないようデスが」
「少し気分が悪い……今日はもう帰らせてもらう」
頭に血が上ったせいだろうか、冷静になるためにも一旦家に帰ることにした。
何事もなければ今回の件は無くなる。俺がコユキに手を出さなければいい、簡単なことだ。
コユキと一緒の夕飯。普通に振る舞っているつもりだったが、様子がおかしいことを悟られてしまった。
そして、なぜかコユキの行動一つ一つが煩わしく感じてしまった。こんなこと今までなかったのに……。
――夜も更け、いつものようにコユキと一緒に布団に入る。俺は眠るつもりはないが、目を閉じ寝たふりをする。30分ほど経った頃、コユキに眠ったことを確認するために小さく声を掛ける。
「……コユキちゃん? 起きてる?」
「……」
……返事がない。どうやら眠ったようだ。
俺はバレないようにゆっくりと布団から出る。しまっていた白いローブを羽織り、棒状態の鎌を手に取る。
布団で寝ているコユキの側に立ち、俺は愛鎌スノードロップにスイッチを入れると、青白い刃が姿を現す。
「ごめん、コユキ」
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる