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ホムンクルス計画

悠菜の潜入

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 指に絡まる赤い糸を辿っていく。きっとその先に待つ愛しい君と再会していつもの日常を再開出来る事を信じて。
 無機質な建物の壁、背の低い雑草たちに支配されかけている地面、草の青い香り、固くあれども悠菜の踏み出す足を優しく受け止めてくれる地面。
 悠菜は思い返す。
ー正面突破が無理なら忍び込むまで、待っててね、私の太陽さんー
 正面入り口にはふたりの男が待ち構えていた為、そこから遠い壁をよじ登って入る事にしたのであった。
「もう少し壁低くして欲しかったなあ」
 到底登れそうもないコンクリートとも金属とも見当のつかない壁、登れそうな窪みのひとつもなかったため近くの電柱をよじ登って飛び移る形で忍び込んだのであった。
ーあとはどうにか中にー
 何一つとして窓が見当たらない研究所の周りを歩いていく。
ーどこかにないかな。流石に1箇所くらいはー
 少しばかり高い位置にある窓、悠菜はそれを見つけた。
「あった。でもどうやって忍び込もうかな」
 悠菜は地面を見渡しそして見つけた石、それを掴み取って思い切り窓に放り投げる。石が勢い良く飛んで行く先に待っていた窓ガラスはそれを受け止めて、そして身を砕く気持ちのいい音を立てて割れた。立て続けに投げ続け、透き通るその壁を破壊し続ける。
 手を伸ばし、軽く飛び跳ねて窓の縁をつかむ。悠菜は掴んだ手に鋭い痛みを感じつつもそれらの苦しみ全てを抑え込んでいた。
ー大丈夫、綾香を助ける為だよー
 そして登り、金属で作られた無機質な建物の中へと忍び込む事に成功したのであった。
 悠菜は手に刻まれた傷を、自らの手が破れそこから溢れ出た紅い水を眺め、その手を1度大きく振る。そして歩き出した。
 悠菜は傷付いた手の痛みすらも忘れていた。その手の傷は塞がり、そんなものがあった事すら忘れていた。
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