霞の森の魔女

焼魚圭

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アーシャとリリアンヌ

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 アーシャは肩を落とす。研究の発表を待っていた魔女たちの変わり果てた姿は言葉に表すことを憚る程に惨いものであった。
 落ち込む少女を見ていたリリアンヌは少女が動き始めると共に魔女たちを森の中に埋めてその場を後にする。
 アーシャの落ち込む姿を窺い、リリアンヌは肩に手を置いて言葉をかける。
「魔女たちは……残念だったけど、どうしようもなかった」
 アーシャは愛しい声にすらも言葉を返すことが出来ないでいた。
「帰るのいつ? 時間があったら……一緒にいたい」
 アーシャはから笑いをしながら言うのであった。
「あーあ、私の研究、発表出来なかったよ」
 本当に言いたいことはそんなことではない、それはもうアーシャにもリリアンヌにも分かってはいた。しかし、それにはもう触れたくもなくて、遠ざかる。
 それから宿にてふたりの虚しい夜を明かして質素な朝食を済ませて電車に乗り込んだ。
 ふたりとも未だ浮かない顔をしていたが、それでも電車から降りてから一度深呼吸をして、明るい表情を無理やり咲かせるのであった。
「私、リリアンヌに会えて凄く嬉しかったよ」
 いきなり入る話題にリリアンヌは目を見開いて、そして頬に熱を感じながら目を逸らして答える。
「そ……それなら良かった。私も……アーシャに会えて嬉しい」
 アーシャはリリアンヌの手を取って歩き出した。
「それじゃ、残された時間で少し楽しもうよ」
 リリアンヌは照れと嬉しさが混ざったぎこちない笑みを浮かべて頷いた。
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