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第七幕 更に待つ再会
食の事実
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照り付ける太陽の光とともに送り込まれる熱と被っている布に籠もった湿気と熱、重い石を運ぶという労働によって内から発せられる熱、気合いによって沸かされる熱。何もかもが人々を蒸し焼きにしようとしていた。
そんな中に熱い声援、例え少女のものであったとしても、寧ろ少女の良く通る声であることが耳を突くように響いてきて、男たちにある想いを抱かせた。鬱陶しい。
「みんながんばってー」
そのことにも気が付かないままに遠慮という言葉を知らずに迷惑行為に応援という名をつけて振りかざしていた。
「がんばれがんばれがんばって!」
勘違いとは実に恐ろしいものだ、幹人は直に教え込まれたものだ。この前まで滞在していた街で好評だったからと言って他の国でもどの町でもなどといった世界共通の意識などそうそう存在しない。経験による知の差はその実態を伏せて、匿名の感情としてここぞとばかりに幹人の中で騒ぎ立てていた。そうした心の波紋に触れて幹人は思うのだった。
――やっぱり女って分からね。俺たちと同じ生き物じゃないよな
植え付けられて増長して、構築された大きな負の想いは揺らぐ気配すら見せてはくれない。
そうした旅の人々などに構うことなしに男たちは石材を運び続けていた。きっと内心邪魔者の到来に耐えながらではあるのだろう。
労働は幹人たちが訪れてから十分も続かなかった。
幹人の後ろから大きな声が響いてきたのだ。
「昼食の時間よ!」
大きな声を出した後、幹人たちに顔を向けて、言葉を思いやりでラッピングして贈る。
「あなたたちもどうぞ」
言葉に甘えて出された鍋から皿につぎ分けられたそれを受け取って目を落とす。香辛料の主張は鼻から入って心を伝って外へと声を引き出して流れて行った。
「カ……カレー!?」
熱々で辛いために拷問の道具だと思われてしまったのだろうか。彼らの噂から来る想像とは全く異なる美味の到来にはしゃぎそうな心を押さえるのに必死だった。
そんな様子を目の当たりにしてリリは幹人に訊ねた。
「これ、知ってるのね? どんな料理?」
幹人の説明によると元の世界での人気メニューで、とても美味しいのだという。幹人は喜んでスプーンでカレーを掬って口へと運ぶ。喜びの感情が空の何倍もの明るさを咲かせていて、リリは思わずニヤけを浮かべてしまう。
幹人に続いてリリも茶色のドロドロとした液体がかかったご飯を口に入れ、下の中で心地よく跳び回って暴れる感激と広がる香りに心を充たしていた。
「スパイスがよく効いてるし香りも味もいいわ」
この場所で食べるには熱いのが難点だけど、そう付け加えて口に再びカレーを放り込む。静嬉はただ美味しいとだけ言って味に夢中になっていた。
リリが喜んでいる様を見ているだけで幹人の頬はついつい緩んでしまう。そんな一人だけが感じている甘みとともに辛味の強いカレーを頬張って染み入るおいしさに浸りつつも例の建造物を創り上げる男たちに声をかけてみた。
「これ美味しいですね」
「ああ、だろう。スタミナが付く料理なんだ」
塩分や炭水化物は肉体労働で疲れた身体が強く欲するもの。彼らにとっては必要不可欠なエネルギー源なのだ。
幹人は更に質問を盛り付けて行く。
「砂漠の向こうの港の国であなたたちが奴隷っていうウワサが流れてたんですけど、絶対違いますよね」
絶対に違う、確信を持って言うことができた。その雰囲気の良さは強要される無賃労働では得られないと思っていた。間違いはなかった。
男たちは明るい笑いを捧げていた。その内のひとりが笑い飛ばしながら答える。
「こんなに暑い中だからな、無理やり働かされてるように見えたんだろ」
実際の話によると砂漠国での仕事はそう多い物でもなく、資本主義を取ってしまった時点で過ちだったのだという。牧歌的な生活から半ば抜け出すことも出来ず、新商品を作り出す技術も材料の安定した確保も見込めなくて踏み出すことも出来ない。旅行人の手によって持ち込まれて消費される金だけが一方的に貯まって行って一部の人物しか金を持てなくて生活が出来ないと言った事態に陥っていた。と言えども農家は既に充実しており、これ以上広げたところで食料を余らせるのみ。
そこで国のような規模の国の王は考えた。王の墓を作らせよう。それを仕事と擦ればどうにか金が回る。この国に必要な仕事の定員から溢れてはみだしてしまった者たちの中からやる気のある人物を集めて仕事を与えるといった形。
つまるところ、公の施設の建設業務という立派な仕事とも言えた。
そんな話の果てに、噂が飛んできた。それは現実からかけ離れた、魔法や不思議な力のある世界の中では現実的な話題。
「知ってるか? この施設の中でもひとつだけ完成を急いだものがあるんだが、そこの真ん中で色々凄い現象が起きるらしいぞ」
そう切り出されて始まったうわさ話。それによるとおかしな声が聞こえるのだという。更に得体の知れない景色が映されたという人物も現れ始め、完成を最も急いだ施設なのだそうだ。
それをしっかりと聞き届け、幹人は元の世界と関係があるかも知れないと言ってそこへ行ってみるのだとリリに話し、三人足並み揃えてピラミッドへと揃えた足を速めて向かって行った。
そんな中に熱い声援、例え少女のものであったとしても、寧ろ少女の良く通る声であることが耳を突くように響いてきて、男たちにある想いを抱かせた。鬱陶しい。
「みんながんばってー」
そのことにも気が付かないままに遠慮という言葉を知らずに迷惑行為に応援という名をつけて振りかざしていた。
「がんばれがんばれがんばって!」
勘違いとは実に恐ろしいものだ、幹人は直に教え込まれたものだ。この前まで滞在していた街で好評だったからと言って他の国でもどの町でもなどといった世界共通の意識などそうそう存在しない。経験による知の差はその実態を伏せて、匿名の感情としてここぞとばかりに幹人の中で騒ぎ立てていた。そうした心の波紋に触れて幹人は思うのだった。
――やっぱり女って分からね。俺たちと同じ生き物じゃないよな
植え付けられて増長して、構築された大きな負の想いは揺らぐ気配すら見せてはくれない。
そうした旅の人々などに構うことなしに男たちは石材を運び続けていた。きっと内心邪魔者の到来に耐えながらではあるのだろう。
労働は幹人たちが訪れてから十分も続かなかった。
幹人の後ろから大きな声が響いてきたのだ。
「昼食の時間よ!」
大きな声を出した後、幹人たちに顔を向けて、言葉を思いやりでラッピングして贈る。
「あなたたちもどうぞ」
言葉に甘えて出された鍋から皿につぎ分けられたそれを受け取って目を落とす。香辛料の主張は鼻から入って心を伝って外へと声を引き出して流れて行った。
「カ……カレー!?」
熱々で辛いために拷問の道具だと思われてしまったのだろうか。彼らの噂から来る想像とは全く異なる美味の到来にはしゃぎそうな心を押さえるのに必死だった。
そんな様子を目の当たりにしてリリは幹人に訊ねた。
「これ、知ってるのね? どんな料理?」
幹人の説明によると元の世界での人気メニューで、とても美味しいのだという。幹人は喜んでスプーンでカレーを掬って口へと運ぶ。喜びの感情が空の何倍もの明るさを咲かせていて、リリは思わずニヤけを浮かべてしまう。
幹人に続いてリリも茶色のドロドロとした液体がかかったご飯を口に入れ、下の中で心地よく跳び回って暴れる感激と広がる香りに心を充たしていた。
「スパイスがよく効いてるし香りも味もいいわ」
この場所で食べるには熱いのが難点だけど、そう付け加えて口に再びカレーを放り込む。静嬉はただ美味しいとだけ言って味に夢中になっていた。
リリが喜んでいる様を見ているだけで幹人の頬はついつい緩んでしまう。そんな一人だけが感じている甘みとともに辛味の強いカレーを頬張って染み入るおいしさに浸りつつも例の建造物を創り上げる男たちに声をかけてみた。
「これ美味しいですね」
「ああ、だろう。スタミナが付く料理なんだ」
塩分や炭水化物は肉体労働で疲れた身体が強く欲するもの。彼らにとっては必要不可欠なエネルギー源なのだ。
幹人は更に質問を盛り付けて行く。
「砂漠の向こうの港の国であなたたちが奴隷っていうウワサが流れてたんですけど、絶対違いますよね」
絶対に違う、確信を持って言うことができた。その雰囲気の良さは強要される無賃労働では得られないと思っていた。間違いはなかった。
男たちは明るい笑いを捧げていた。その内のひとりが笑い飛ばしながら答える。
「こんなに暑い中だからな、無理やり働かされてるように見えたんだろ」
実際の話によると砂漠国での仕事はそう多い物でもなく、資本主義を取ってしまった時点で過ちだったのだという。牧歌的な生活から半ば抜け出すことも出来ず、新商品を作り出す技術も材料の安定した確保も見込めなくて踏み出すことも出来ない。旅行人の手によって持ち込まれて消費される金だけが一方的に貯まって行って一部の人物しか金を持てなくて生活が出来ないと言った事態に陥っていた。と言えども農家は既に充実しており、これ以上広げたところで食料を余らせるのみ。
そこで国のような規模の国の王は考えた。王の墓を作らせよう。それを仕事と擦ればどうにか金が回る。この国に必要な仕事の定員から溢れてはみだしてしまった者たちの中からやる気のある人物を集めて仕事を与えるといった形。
つまるところ、公の施設の建設業務という立派な仕事とも言えた。
そんな話の果てに、噂が飛んできた。それは現実からかけ離れた、魔法や不思議な力のある世界の中では現実的な話題。
「知ってるか? この施設の中でもひとつだけ完成を急いだものがあるんだが、そこの真ん中で色々凄い現象が起きるらしいぞ」
そう切り出されて始まったうわさ話。それによるとおかしな声が聞こえるのだという。更に得体の知れない景色が映されたという人物も現れ始め、完成を最も急いだ施設なのだそうだ。
それをしっかりと聞き届け、幹人は元の世界と関係があるかも知れないと言ってそこへ行ってみるのだとリリに話し、三人足並み揃えてピラミッドへと揃えた足を速めて向かって行った。
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