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本編
6、ご主人様を探せ
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ピピピ、とアラームが鳴る。
手を伸ばしスマートフォンのアラームを止めると、見慣れない天井が視界に入る。
「…宇留島家じゃなかったんだった。」
すぐさま桜堂学園の寮の自室である事を思い出した。
手に持つスマートフォンの画面に通知が表示されていた事に気付き、その名前に眠気も吹き飛んだ。
「そ、創哉様!昨日、電話が…!?」
すぐさま創哉様に電話をと通話ボタンを押してから時間を考えずかけてしまった事に後悔した。
数コール後、電話が繋がる。
「おはようございます。創哉様。」
「…ゆい、と?…おはよ。早起きだね。何、モーニングコールしてくれたの?」
少し寝起きの掠れた声を聞き、睡眠を妨げてしまった事に落ち込む。
「ぅ、そうなってしまいました。そして、昨日は申し訳ございません。」
「んー、あぁ、昨日ね。いいよ、こうして声が聞けたから嬉しい。…無視されたかと思った。」
「!無視だなんて、あり得ません…!ただ、ご主人様から電話をいただいたタイミングで出られなかったという失態…どう償えばいいのか…」
「大袈裟だな、…でも、そうだな。また、モーニングコールしてよ。」
「っ創哉様がお望みであれば、毎日でも致します。」
「ははっ、家だとそれが毎日だったしね。ま、時々声聞かせて?結斗からの電話も待ってるよ。」
その後、数回やり取りをした後、短かったが、通話を終える。
自身の失敗に落ち込みつつも、朝からご主人様の声を聞けた事に嬉しくなった。
会話の余韻で、携帯を少し見つめていたが、しばらくしてベッドから降りた。
……
………
顔を洗おうと洗面所に行こうとしたが、姿見に写る自分をみて、変装をしていなかったと慌ててドアノブにかけた手を戻した。
鏡をテーブルに置き、自身の髪色より明るいウィッグを被る。
それだけで随分と雰囲気が変わるが、さらに伊達眼鏡をかけて、顔を隠し、これでとりあえずは準備ができたと部屋を出た。
洗顔を終え、顔を拭いていると、同室者の八重坂も起きてきた様だった。
「おはよう。八重坂くん。」
「おはよ、佐藤…。……うわーっ、」
「…な、何?急に手を合わしてどうしたの?」
「拝んでんの…、パジャマを着る系ね。個人的にはゆるふわニット系も捨てがたいけど、良い。チェック柄似合う。少し体のラインが見えて、隙がある感じがいい。」
朝から絶好調の様子だ。
こちらを見ずにブツブツと言っているため、どうやら妄想の世界に旅立ったようだった。
八重坂の横を通って、キッチンへ向かう。
パンをトースターにセットしながら、ササっとハムエッグを作り、ケトルでお湯を沸かす。
沸いたお湯でカップスープを作り、牛乳をコップに注いだ。
自然と2人分作っていた為、八重坂を呼ぶ事にした。
「朝食出来たけど、食べる?」
「…はっ!朝食、食べます!」
手を合わせてから、朝食をぱくつく。
俺を眺め、時折ニヤニヤしてマイペースに食べている八重坂へそういえばと声をかけた。
「僕、今日から登校なんだけど。教室じゃなくて先に職員室に行って、担任の先生と会わないといけないんだ。…僕たちの担任の先生ってどんな人?」
「んーどうと言われると、美人受けだね。サラサラの長めの髪を後ろで縛ってる。すらっとして背丈あるし、チワワ軍団からも人気あるけど、あの人…受けだと思うんだよなぁ…名前も響きよくて涼風(すずかぜ)先生っていうんだけどね。時々髪解いてんの!あれは絶対キスマーク隠してるね。独占欲強い系の攻めがいるんだと思う!」
「犬?…えーっと、髪の毛長めの、涼風先生ね。」
必要な情報以外聞き流した。
時間が近づいていたため、まだゆっくりとしている八重坂を残して片付ける。
自室に戻って、制服に着替え最終チェックを終える。
「…今日こそは創哉様を見つけて、出来れば行動パターンを把握したい…。可能であれば接触を…。」
指折り今日やる事をあげる。
気合いを入れるようにネクタイをキュッと結び直した。
八重坂のいってらっしゃい、という送り出す言葉に少し暖かい気持ちになり、小さくて手を振りかえす。
まだ、人がまばらな廊下を抜けて、職員室へ歩いて行った。
……
…………
……………
「君が、佐藤唯さんですね。」
職員室に入り、髪の長い先生を探す。
自身で探し出す前に、1人の先生が近づいてくる事に気づいた。
どうやらその人が担任の先生のようだ。
「はい、よろしくお願いします。」
「えぇ、よろしくお願いします。担任となります涼風です。」
先生が左手首に巻いている腕時計に視線を向ける。
「もうそろそろ朝礼の時間となるので、向かいましょう。歩きながら、自己紹介の流れを確認する形でいいですか?」
「はい。」
荷物片手に職員室を後にしようとする先生の後を早歩きでついていった。
廊下の空いた窓の隙間から風が入る。
先生の髪が揺れ、ムスクの香りがふわりと香る。
「復学、無事に出来て良かったですね。…自身の受け持つクラスの全員が揃って、嬉しいです。」
笑う涼風先生に、八重坂の言った通り綺麗な人だと目を奪われつつも、こくりと頷く。
「何か困り事があれば、相談にのるので、なるべく早く話して下さいね。…迷惑をかけられたくないので。」
ぼそと、トーンを落として話された言葉に、思わず先生の方を向く。
何事もなかったように、前を向いて歩く先生に聞き間違えかと思うが、確かに先生の声であった。
見た目よりもドライな先生なのかと考えているうちに教室へと着いたようだった。
手を伸ばしスマートフォンのアラームを止めると、見慣れない天井が視界に入る。
「…宇留島家じゃなかったんだった。」
すぐさま桜堂学園の寮の自室である事を思い出した。
手に持つスマートフォンの画面に通知が表示されていた事に気付き、その名前に眠気も吹き飛んだ。
「そ、創哉様!昨日、電話が…!?」
すぐさま創哉様に電話をと通話ボタンを押してから時間を考えずかけてしまった事に後悔した。
数コール後、電話が繋がる。
「おはようございます。創哉様。」
「…ゆい、と?…おはよ。早起きだね。何、モーニングコールしてくれたの?」
少し寝起きの掠れた声を聞き、睡眠を妨げてしまった事に落ち込む。
「ぅ、そうなってしまいました。そして、昨日は申し訳ございません。」
「んー、あぁ、昨日ね。いいよ、こうして声が聞けたから嬉しい。…無視されたかと思った。」
「!無視だなんて、あり得ません…!ただ、ご主人様から電話をいただいたタイミングで出られなかったという失態…どう償えばいいのか…」
「大袈裟だな、…でも、そうだな。また、モーニングコールしてよ。」
「っ創哉様がお望みであれば、毎日でも致します。」
「ははっ、家だとそれが毎日だったしね。ま、時々声聞かせて?結斗からの電話も待ってるよ。」
その後、数回やり取りをした後、短かったが、通話を終える。
自身の失敗に落ち込みつつも、朝からご主人様の声を聞けた事に嬉しくなった。
会話の余韻で、携帯を少し見つめていたが、しばらくしてベッドから降りた。
……
………
顔を洗おうと洗面所に行こうとしたが、姿見に写る自分をみて、変装をしていなかったと慌ててドアノブにかけた手を戻した。
鏡をテーブルに置き、自身の髪色より明るいウィッグを被る。
それだけで随分と雰囲気が変わるが、さらに伊達眼鏡をかけて、顔を隠し、これでとりあえずは準備ができたと部屋を出た。
洗顔を終え、顔を拭いていると、同室者の八重坂も起きてきた様だった。
「おはよう。八重坂くん。」
「おはよ、佐藤…。……うわーっ、」
「…な、何?急に手を合わしてどうしたの?」
「拝んでんの…、パジャマを着る系ね。個人的にはゆるふわニット系も捨てがたいけど、良い。チェック柄似合う。少し体のラインが見えて、隙がある感じがいい。」
朝から絶好調の様子だ。
こちらを見ずにブツブツと言っているため、どうやら妄想の世界に旅立ったようだった。
八重坂の横を通って、キッチンへ向かう。
パンをトースターにセットしながら、ササっとハムエッグを作り、ケトルでお湯を沸かす。
沸いたお湯でカップスープを作り、牛乳をコップに注いだ。
自然と2人分作っていた為、八重坂を呼ぶ事にした。
「朝食出来たけど、食べる?」
「…はっ!朝食、食べます!」
手を合わせてから、朝食をぱくつく。
俺を眺め、時折ニヤニヤしてマイペースに食べている八重坂へそういえばと声をかけた。
「僕、今日から登校なんだけど。教室じゃなくて先に職員室に行って、担任の先生と会わないといけないんだ。…僕たちの担任の先生ってどんな人?」
「んーどうと言われると、美人受けだね。サラサラの長めの髪を後ろで縛ってる。すらっとして背丈あるし、チワワ軍団からも人気あるけど、あの人…受けだと思うんだよなぁ…名前も響きよくて涼風(すずかぜ)先生っていうんだけどね。時々髪解いてんの!あれは絶対キスマーク隠してるね。独占欲強い系の攻めがいるんだと思う!」
「犬?…えーっと、髪の毛長めの、涼風先生ね。」
必要な情報以外聞き流した。
時間が近づいていたため、まだゆっくりとしている八重坂を残して片付ける。
自室に戻って、制服に着替え最終チェックを終える。
「…今日こそは創哉様を見つけて、出来れば行動パターンを把握したい…。可能であれば接触を…。」
指折り今日やる事をあげる。
気合いを入れるようにネクタイをキュッと結び直した。
八重坂のいってらっしゃい、という送り出す言葉に少し暖かい気持ちになり、小さくて手を振りかえす。
まだ、人がまばらな廊下を抜けて、職員室へ歩いて行った。
……
…………
……………
「君が、佐藤唯さんですね。」
職員室に入り、髪の長い先生を探す。
自身で探し出す前に、1人の先生が近づいてくる事に気づいた。
どうやらその人が担任の先生のようだ。
「はい、よろしくお願いします。」
「えぇ、よろしくお願いします。担任となります涼風です。」
先生が左手首に巻いている腕時計に視線を向ける。
「もうそろそろ朝礼の時間となるので、向かいましょう。歩きながら、自己紹介の流れを確認する形でいいですか?」
「はい。」
荷物片手に職員室を後にしようとする先生の後を早歩きでついていった。
廊下の空いた窓の隙間から風が入る。
先生の髪が揺れ、ムスクの香りがふわりと香る。
「復学、無事に出来て良かったですね。…自身の受け持つクラスの全員が揃って、嬉しいです。」
笑う涼風先生に、八重坂の言った通り綺麗な人だと目を奪われつつも、こくりと頷く。
「何か困り事があれば、相談にのるので、なるべく早く話して下さいね。…迷惑をかけられたくないので。」
ぼそと、トーンを落として話された言葉に、思わず先生の方を向く。
何事もなかったように、前を向いて歩く先生に聞き間違えかと思うが、確かに先生の声であった。
見た目よりもドライな先生なのかと考えているうちに教室へと着いたようだった。
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