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「んっ、、クリス、、様、?」

頬に何かが触れたような気がして目を開けると馬車の中らしく私はクリス様の膝の上で眠っていたようで、クリス様はいつものように笑顔のままこちらを見ていた
「レティ、起きたの?今屋敷に向かってるからね」

「・・・クリスさま、、何かあったのですか、、?」

「え、、?」

私はそう言って彼の頬に触れた

「なんだか泣きそうな顔を、、しているから」

「ッ、、」

クリス様はどんなに怒っていても辛くても、悲しくてもそれを表に出さない
笑っているのは感情を隠すためだと知っている


それに気づいたのは婚約して3年が経ったある日、クリス様のお母様が亡くなった時だった
私もクリス様のお母様とはとても仲がよかったため、すごく悲しくて泣いてしまった
そんな私をクリス様はいつものように優しく笑いながら慰めてくれた

クリス様も泣きたいはずなのに、、
いつもの優しい笑顔のはずなのに、その日のクリス様の笑顔はすごく悲しそうだった

私は初めて、クリス様がいつも笑っている理由が分かった気がした

もしかしたらこれまでも辛い時や悲しい時があったのかもしれない
そう思った時、そんなことも気づけなかったのかと自分の情けなさに落胆した

頑張って涙を止めようとしても、二人のことを考えるとさらに涙が溢れてしまった

私は無理に笑う彼に何とか精一杯の言葉をかけたが、それも彼にちゃんと伝わったのかもわからない

それからは常に彼の表情を注意深く見るようになった
少しでもクリス様が我慢しなくてもいいように、助けになりたかったから


クリス様は私の言葉に少し驚いた顔をしたけれど、すぐまたいつものレラレラ顔にもどり
「気のせいだよ」と言われてしまった


「クリス様、、私は頼りないですか、、?」

「っ、、それは、、」

「クリス様が誰と何をしようと私は止めませんし、それに関しては何も言いません」

「・・・、」

「でも、、私が婚約者の間は、、クリス様が苛立ったり、悲しんでいたり、辛い時は私を呼んでください。頼りないかもしれませんが、、名ばかりとはいえ、婚約者なんです。婚約者に、私の前で無理してまでそんな顔はしてほしくありません。
クリス様には幸せでいて欲しいんです。
泣きたいときは私がいます。
怒りたいときは私も一緒に怒ります。
辛い時は私にもその辛さを分けてください
私をもっと頼ってほしいです」

「・・・っ」

私の言葉を聞くとクリス様は困惑しているようだった

ふふっ

「レ、レティ、、?」

「なんだか今日のクリス様は表情豊かですわね」

「え、、?」

「すみません、、先程話したことは私のただの願望です。ただの政略で結ばれた婚約者にそんなこと言われても困りますよね。わかっているです。あなたに私は必要ないということは。ただ、、私にはそれくらいしかできないから、、」

「レティ、、それはーー」
「重いですか、、?
 いつもあなたと婚約解消したいと言っておきながら、、」

「そんなこと、、ないよ」

「ふふっ
 いいえ、私は重いんです
 重くて欲深い嘘つきなんです
 クリス様が知らないだけ」

「レティ、なんだかいつもと違ーー」
「クリス様、どこにも、、行かないでください。
 ずっと、、私の側にいてください
 それが無理ならーー
 ''早く、、私を開放してください''」

「ッ、、」

そうして私はまた眠ってしまった
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