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後日談
その13
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突然後ろから白龍の声がしたと思ったら、早速楊才人が白龍を見て甘い声をあげ、その声に気がついた白龍が楊才人の方をちらりと見たのを確認してから、にっこりと微笑んで優雅にお辞儀をしたのだった。
おおお、アピール力がすごい。なんだこの可愛らしい生物は。
しかし白龍はそんな楊才人からはすぐに視線を外してこちらを向いて、なぜか私を睨むのだった。
「お前、また無駄なことを考えたらしいな? 夏南に聞いたぞ。いいかげん諦めたと思ったんだが」
「え? いや、無駄なことじゃあないでしょう? 知っといて損はないかなって」
ちょっと、こんな所まで追い掛けてきてまで、何を言い出したんだ。
まさか皇后の廃位の話を蒸し返すとは思わなかったよ?
しかし白龍はむっすーっとしたまま言う。
「無駄だ。だからお前も、起こらないことを考える必要はない」
「えぇ? いやそんなのわからないでしょう。あなただって、いつか古女房に飽きる日が来るかもしれないじゃない。新しい刺激とか欲しくなるかも。そういう人も多いみたいだし? その時に慌てても遅いから――」
「だからないって言ってるだろ! 俺だってお前と同じ倫理観の人間なんだよ! だから浮気はしない。俺が好きなのは今も昔もお前だけだ。どうせ俺はまた生まれ変わってもお前が好きだぞ。だからいい加減に諦めろ」
「ええ、また来世とかやだ……」
「おい……。だがお前がそうでももしまた来世があったら俺は迎えに行くからな?」
「……えー、こほん。楊才人は、もう行っていいですよ」
李夏さまが、ちょっと気まずそうに割り込んで言った。
あっそうだった、まだいたよ、楊才人が……。
「あ……はい、わかりました。それでは……失礼します……っ!」
思わず楊才人の方を見たら、それでも彼女は白龍の方を切なげにしっかり見つめてから優雅な所作で去っていった。
後には彼女のつけていた香水だろうか、なんとも良い香りがふわっと漂っている。
おお……引き際までもアピールに余念がない……すごい……これが女子力か……。
「だからいいな? もう俺から逃げようなどと二度と考えるなよ? 聞いてるのか、おい春麗」
しかし白龍のお説教は続いていたのだった。
「……あー、聞いてる聞いてる、大丈夫。耳はちゃんと聞きながら、ちょっと目で楊才人が切なげにあなたを見つめていたのを見てただけよ」
「は? 切なげ? そうだったか? それよりお前、もし万が一『また』繰り返したら、次は俺が出来るだけ早く迎えに行くから絶っ対に待ってろよ? どうせお前のことだから――」
そうしてなぜか白龍は、そのまま庭園を一周した後に皇后宮に帰ってお茶とお菓子が出てくるまで、延々とお説教を続けたのだった。
もう、散々である。
私は白龍のお説教を聞きながら、次はバレないように慎重に事を運ぼうと固く心に誓ったのだった。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
おおお、アピール力がすごい。なんだこの可愛らしい生物は。
しかし白龍はそんな楊才人からはすぐに視線を外してこちらを向いて、なぜか私を睨むのだった。
「お前、また無駄なことを考えたらしいな? 夏南に聞いたぞ。いいかげん諦めたと思ったんだが」
「え? いや、無駄なことじゃあないでしょう? 知っといて損はないかなって」
ちょっと、こんな所まで追い掛けてきてまで、何を言い出したんだ。
まさか皇后の廃位の話を蒸し返すとは思わなかったよ?
しかし白龍はむっすーっとしたまま言う。
「無駄だ。だからお前も、起こらないことを考える必要はない」
「えぇ? いやそんなのわからないでしょう。あなただって、いつか古女房に飽きる日が来るかもしれないじゃない。新しい刺激とか欲しくなるかも。そういう人も多いみたいだし? その時に慌てても遅いから――」
「だからないって言ってるだろ! 俺だってお前と同じ倫理観の人間なんだよ! だから浮気はしない。俺が好きなのは今も昔もお前だけだ。どうせ俺はまた生まれ変わってもお前が好きだぞ。だからいい加減に諦めろ」
「ええ、また来世とかやだ……」
「おい……。だがお前がそうでももしまた来世があったら俺は迎えに行くからな?」
「……えー、こほん。楊才人は、もう行っていいですよ」
李夏さまが、ちょっと気まずそうに割り込んで言った。
あっそうだった、まだいたよ、楊才人が……。
「あ……はい、わかりました。それでは……失礼します……っ!」
思わず楊才人の方を見たら、それでも彼女は白龍の方を切なげにしっかり見つめてから優雅な所作で去っていった。
後には彼女のつけていた香水だろうか、なんとも良い香りがふわっと漂っている。
おお……引き際までもアピールに余念がない……すごい……これが女子力か……。
「だからいいな? もう俺から逃げようなどと二度と考えるなよ? 聞いてるのか、おい春麗」
しかし白龍のお説教は続いていたのだった。
「……あー、聞いてる聞いてる、大丈夫。耳はちゃんと聞きながら、ちょっと目で楊才人が切なげにあなたを見つめていたのを見てただけよ」
「は? 切なげ? そうだったか? それよりお前、もし万が一『また』繰り返したら、次は俺が出来るだけ早く迎えに行くから絶っ対に待ってろよ? どうせお前のことだから――」
そうしてなぜか白龍は、そのまま庭園を一周した後に皇后宮に帰ってお茶とお菓子が出てくるまで、延々とお説教を続けたのだった。
もう、散々である。
私は白龍のお説教を聞きながら、次はバレないように慎重に事を運ぼうと固く心に誓ったのだった。
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最初から最後までずっと楽しい作品でした。
全ての脇役達が素晴らしく、設定や個性がしっかりしていたので、どこを読んでも楽しかったです。
最後に後日談として、2人の初夜を濃厚に書いて欲しいです。だって半世紀ループしたんですから✨✨
ご感想ありがとうございます!
このお話しのキャラたちは全員お気に入りなので、そう言っていただけてとっても嬉しいです……!
初夜は……残念ながら私にそのスキルがありません……すみません……
でもこの二人、子供は生まれると思うんですよ。
ということは白龍は幸せに……なれるかな!?
面白かったです!結局よく死んで回帰してしまったあの日は乗り越えられたのかな?あと、お子が恵まれたりとかイチャイチャもちょっとみてみたかったです。
ご感想ありがとうございます。
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ご感想ありがとうございます。
まあなかなか人間、そうそう変われないのではと……
春麗は常に安全な逃げ道を確保しておきたい人で、白龍は今ひとつ言葉が足りないので、堂々巡りなんですよねえ……
まあそのうちなんだかんだ言っているうちに子供が生まれ、その子をきっと白虎が猫可愛がりしはじめ、そのままずるずると二人は共白髪という未来は見えた気が今はしています笑