逃げるための後宮行きでしたが、なぜか奴が皇帝になっていました

吉高 花

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後日談

その2

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 後宮の一番皇宮よりにある、一番大きなお家、いや宮。そこは皇后の宮であり、そして普通に皇帝の家でもあった。

 まあ、時代によってはこの中でほぼ別居状態ということもあったらしいけれど。
 今は白龍の意向で完全同居になっている。

 妃嬪だったときは普通に皇帝のお家だと思っていたよははは。皇后のお家でもあったとは。

 皇后って、そういう扱いなのね……。

 まあ一応は正妻という立場であるのは毎日ひしひしとその重圧で実感中である。


「お前、その規模の屋根だけとか、出来るのかこの国の建築技術で」

 白龍が、ふとそんな事を言い出した。

「うーん、やればでき……ないかな……? 柱をたくさん立てればきっと……」

「この国にも台風あるからな? とりあえずプロ呼んで相談しとけよ。さすがに屋根が崩落して妃嬪に死者が出たらまずい。それに妃嬪は減らすから、そう大きなものを作らなくてもいいだろう。経費もかかるし、このまま一生はちょっと可哀相だしな」

 はい? 減らす?

「は? まだ跡継ぎが一人も生まれていないのにいいの? 官吏たちがまたやんや言うんじゃないの?」

 いや、私ももちろん産みたくないわけじゃあない。だけれどそういうものは天からの授かり物であるからして、絶対に生めるとは限らない。
 そして、こいつは結局この国の皇帝なので、跡継ぎは必要なのでは。

 そう言う意味では、あの白龍の言う皇宮の「頭の固いじじい」たちの言うことも無碍には出来ないと思ってはいるのだ。

 しかし。

「は? 忘れたのか? 跡継ぎは白が決める。だから俺たちに子が出来なくても、白が他の皇族から一番白がいいやつを選ぶ。俺だって元々は皇族としては随分端っこだったしな」

「ああー、そういえば。じゃあ別に血統が途絶えるとか考えなくていいのか」

「そう。そのためもあって皇族自体は結構たくさんいるから、一人くらい白も納得する人間がいるだろ。別に俺が頑張って子孫繁栄させる必要はない。別に自分の子に皇帝になって欲しいともそんなに思っていないしな」

「うーん。まああなたがそう言うなら……。じゃあ、妃嬪は誰を減らすの? あなたが選ぶの?」

 私は涼やかなゼリーと氷菓と甘い饅頭を頬張りながら言った。減らすのはいいけれど、またいろいろ言われそうだな。



 白龍の案では、とりあえずは希望者を募れと。
 しかしそれを実行するのは私、そして李夏さまである。

 なにしろ妃嬪といっても百人も居ればいろいろな事情や気持ちがあるだろうから、いきなり指名して強制的に放り出すわけにはいかない。
 しかし第二の人生を送れるなら、出来るだけ早いほうがいいということも確かで。

「このたび後宮の費用削減のため、皇帝陛下は妃嬪の数を減らすご決断をされました。ついては帰郷を希望する者は名乗り出るように。後宮を辞する人には今までの貢献と献身に対して報奨が支払われます」

 私は李夏さまと相談して、そう告知したのだった。
 妃嬪と、女官たちに。
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