二度捨てられた白魔女王女は、もうのんびりワンコと暮らすことにしました ~え? ワンコが王子とか聞いてません~

吉高 花

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東屋3

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 マルガレーテの言葉に王妃様とイグナーツ先生がぎょっとした顔をしたので、マルガレーテの方が驚いてしまった。

「え? あの、ルルベ草を抜いた後の土が、ちょっとキラキラした感じになっていましたよね……?」
「いや?」
「あら?」
「んんん?」

 思わず顔を見合わせて首をひねる三人。
 王妃様が目で侍女たちにも聞いてみたが、全員一様に首を横に振るのだった。

「あら……?」

 驚いたのはマルガレーテである。
 キラキラしていた……わよね……?

 それはまるで小さな妖精が舞っていたような、ほのかだけれど綺麗な微粒子が漂っているように見えたのだけれど……。

「……姫様。もしかして、こうしたら何か見えますか?」

 そう言ったのはイグナーツ先生だった。
 そして右手の手のひらを上に向けて差し出す。

 その手のひらの上を、まさしくマルガレーテがルルベ草を抜いた後に見たような金色のキラキラした微粒子が舞っていたのだった。

「同じようなキラキラが見えます」
「全く同じですか?」
「そうですね、全く同じに見えます」
「この魔術師の手が何と一緒なんだ?」

 王妃様がしきりに不思議そうにしていたのが妙に印象的だった。

「おそらくですが。マルガレーテ様は、魔力を見ることが出来るのだと思います」

 イグナーツ先生が静かに言った。

「魔力を? そんなもの見えるものなのか?」

 王妃様が驚いたということに密かに驚くマルガレーテ。しかしイグナーツ先生は続けた。

「実はレイテの魔術師には、魔力が見える者がいると聞いたことがあるのです。実際に今、私の手から魔力を放出してみたのです。それをマルガレーテ様はご覧になりました」

「まさかそれが見えたのか。聞いたこともなかったぞ。そしてマルガレーテには、ルルベ草を抜いた後にも魔力が見えたということか」

「はい。同じように見えました」

 マルガレーテがそう答えると、王妃様は考え込みながら言った。

「ルルベ草が魔力を生んでいるのか魔力のあるところにルルベ草が生えるのか……」
「魔力のあるところに生えると仮定すると、ルルベ草を移植しても根付かない理由として納得できます」
「では魔力のあるところに生えるのか」
「可能性はあります。昔から、魔力の湧き出るところに魔術師ありという言葉もありますから、魔力が地面から湧いている場所もあるかと」
「そんな素晴らしい場所がわかれば苦労はしないのだがな。一体誰が見分けられると言うんだ。聞いたことないぞ」
「レイテの一部の魔術師ならば、あるいは」
「レイテの?」
「はい。先ほども申し上げたとおり、レイテの魔術師には魔力が見える者が希にいると聞きます。すでにもう見えているらしいレイテの方がここにいらっしゃるのがその証拠でしょう」

 そして一斉に注目を浴びてしまったマルガレーテだった。なぜか我感ぜずといった感じで寝そべっていたクラウス様までが首を上げてマルガレーテの方を見ていた。
 ただ静かに会話を聞いていただけなのに、突然話題を振られて驚くマルガレーテ。

「え? あの……?」

「マルガレーテ様はすでに魔力を感じる目をお持ちですから、訓練次第ではさらによく見えるようになるのではないかと。姫のお気持ち次第ではありますが」

「おおもしそうなれば、とても貴重で素晴らしいスキルだな」

 もちろん、そんな二人から熱い視線を向けられて、それを無視出来るようなマルガレーテではなかった。

「私がお役に立てるのでしたら、頑張ります」

 ついつい張り切ってしまったマルガレーテだった。
 
「ありがとうマルガレーテ。そなたは本当に優しい子だのう」

 王妃様が温かな微笑みをマルガレーテを見た後に、イグナーツ先生の方に向いて言った。

「では、すぐに始めてもらおうか。特別手当は好きなだけ言うがいい」
「承知いたしました。最優先でやらせていただきましょう」

 そしてイグナーツ先生は、その場の誰もがうっとりするほどの極上の微笑みを浮かべたのだった。

 
 結論から言うとこのイグナーツ先生は、さすが本当は齢八十才の大魔術師様なのだった。
 この国最大の貴族ラングリー公爵家お抱えなだけあるのだ。

 そのおかげでマルガレーテもめきめきと頭角を現し、あっという間に「魔力を見る」ことができるようになった。

「姫の素質がよろしいのですよ。大変教え甲斐があります」

 そう相変わらず美麗な微笑みで満足げに言うイグナーツ先生ではあるが、それでも教え方が上手だということもあるだろう。
 マルガレーテも頑張って日々復習して最大限早く成長できるように頑張った。

 王妃様からは興味津々で「魔力が見える」とはどういう感じなのか聞かれることもあったので、本当に王妃様には見えないのだとマルガレーテは不思議な気がした。

 なにしろマルガレーテには、今やそれは普通に見えるものだったから。

 でもイグナーツ先生の教えを受けるうちに、それはますますはっきりとした姿に見えるようになって、そして今まで見えなかった弱い魔力も見えるようになってきた。

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