泡沫の欠片

ちーすけ

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踏み躙られてこそ花は香る

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千客万来。
今度はノックもなく開く扉に、扉横にいた浅見さんがぎょっとし、そして部屋にいる皆様がぎょっとした。
「うわ、なんか、過密してんな」
え?
なんで、稲本様?
あれ?
ああ、姫も困った顔で入ってきて、手を振られたので振り返そうとしたらいつもの奇声が。
「キシャアアア」
だから、喉に負担がかかる妙な声を出すなと。
「ん? 清牙、お前良い場所陣取ってんな。代われよ」
「死ね」
清牙、それは止めなさい。
「ははっ、まあ、だよな。代わる訳ないか」
それでいいの?
大物感が半端ないんだけど?
いや、本当に大物だった。
って、腹痛い。
つねるなと腕を叩いていたら、松葉さんが苦笑いしつつ扉をきっちり閉めた。
「駆郎。なんで、アレンジャーの名前出さない? アレ、お前だけじゃないよな?」
え?
「聞く奴が聞けば分かる。そんな事すれば、後でどうなるか、分かってる筈だ」
あ、もしかして、物凄く心配してきてくれた、とか?
って云うか、流石大物ミュージシャン。
実力半端ないな。
多分、稲本さんが言ってるのは姐さん…甲池さんの曲。
そこを確かに、希更が弄っていたらしいのだけど、ソレって、ほんのちょっとの部分だけの筈。
それでも、分かっちゃう、流石のプロ。
って云うか、その辺の曲まで、聞いてくれてるんですね。
とっても、イイ人達!
「俺らも、お前らなりの事情があるとは分かっているんだけどな。なんかあるんなら、出来る事、あるだろうからさ」
どうしよう。
大物2人が…!!
「痛いッっとんじゃ!!!」
べしっと、清牙の背中を叩いた音が鳴り響いた。
私の間抜けな声と共に。
「清牙。お前、空気読め」
舞人君の言葉に、嫌そうに顔を上げた清牙は、駆郎君を見て希更を見て、稲本さんを見る。
「なあ、アンタ、息子いたよな?」
「あ? まあ、いるな」
「そいつ、爆発する?」
「あ?」
「こう、アイデアって云うか、溢れてきて止まらなくなって、他が手につかなくなるヤツ」
「ああ、それな。あるな。ってか、最近は自分で、待避する方法覚えたらしいけど、どうした?」
「じゃあ、ダメか」
清牙が何を言おうとしているのかは分からない。
分からないけど、それが、希更の為なのは分かる。
「どうした? 知り合いのガキに、出たか?」
清牙を見ながら言った後、稲本さんは美凉華を見て、希更を見る。
それからちょっと考えた後、また口を開いた。
「日本で、その手の理解のある学校は限られるぞ。まず、公立じゃダメだ。精神疾患扱いで、潰される」
ああ、そう、なっちゃうよねぇ。
日本の教育は、平均水準を保つ為のモノであって、特化した能力を育てるノウハウが一切ない。
だから、金持ち達はこぞって、子供達を海外の学校に放り込むのだ。
日本は教育機関に金と尽力を省き過ぎている。
集団行動が当たり前。
それを乱すのは精神疾患。
突飛な行動は全て、精神疾患。
だけどそれで病院へと案内されるならまだしも、日本では精神疾患がとても危ない特別過ぎる悪質な、許され難い事であるかの様に扱われる為か、見なかった事として放置されるのだ。
遠ざける。
その判断決断を先送りする為に。
自分が下したと責任追及から逃れる為だけに。
保健室登校に図書室授業として、隔離される。
まあ、放置やちょっとした隔離されるくらいなら、まだいい。
それは間違っているからと勝手に、知識もない癖に思い込みだけで矯正とか言い出して、人格から壊してしまう勉強不足の人間が、当たり前に教師を名乗れる不思議大国が、日本、だからねぇ。
日本の場合、教師1人の負担が大き過ぎるからこそ、自分の勉強する時間も持てずに、誤った知識を正すことなく、間違った経験則だけで、周りとの相談もなく自己判断で勝手に何とかしようとする、ごり押し馬鹿ばかりになってしまう。
特にテレビドラマ見て教師に憧れてなんてのが、このパターン。
夢と現実が違うって理解していれば、間違ってもそんな理由で教師目指したりしないって気付け?
自分の精神疾患にも気が付かないまま教師になっているので、まず、善悪と法律が良く理解出来ていない。
良かれと思ってしていることだから、悪意はないのだからそれで良い…なんて事は、あり得ない。
社会では絶対にあってはならない筈なのに、熱意人情愛情なんて温い言葉で、あり得ない事を美談にすり替える。
未成年教育への影響力を考えれば、何か一つでも間違えれば重罪。
終身刑ぐらい、基本ルールとして設けるべきなのに、認識が甘過ぎる。
未だに改善が見られない、熱意と誠意とで何とでもなるなんて言う教師のノリと質こそを、徹底的に追及するべきなのだけど、現状、厳しいのも理解出来なくも無い。
優秀な人材揃える為には、どうしても金と時間かかるし。
優秀な人間ほど、割に合わない職には就かない。
教師なんてのは、勘違いした馬鹿と思い込み激しい、夢見過ぎて常軌を逸した糞が大半だし。
過程の責務放棄も酷いしな。
なんで、深夜俳諧で学校の先生が呼ばれるのかが理解出来ない。
それ、学校関係ないじゃん。
普通に親呼べよ。
万引きだろうが、暴力だろうが、全部親呼べよ。
学校、一切関係ないじゃん。
あったとしても、そこの制服着てたってだけだろ?
そして学校も、犯罪者の面倒は見切れませんで、犯罪発覚したら、全員退学で良いのだ。
義務教育だろうが何だろうが犯罪者として放逐し、そこの受け皿となる犯罪者学校に放り込むようにすればいい。
より強い権限を持った警察が運営するような学校で。
そこにかかる費用は強制回収の奨学金として、個人から。
親親族の支払いは一切認めない。
支払えるのは本人のみ。
アメリカみたいに、決まった年齢になっても回収出来なかったら自衛隊強制入隊で、危険地区強制派遣決定とかで、死んでも遺族への補償金も出さない。
生きて帰ってきた時の治療費のみ。
精神的云々は個人差があるので、鑑定結果によってはそのまま強制収容所への移行。
元々まともに働かない奴なので、そこまでしてやる義理も無い。
生命維持の飯と寝床さえ確保出来ていれば、立ち直ろうともしない犯罪者に他はいらない。
何かする必要はない。
国民と言える犯罪者は、立ち直り社会復帰に向けて努力している人のみで十分。
犯罪者に金掛け過ぎ、甘やかし過ぎ。
だから刑務所行きたいって、犯罪犯す馬鹿が後絶たないんだし。
そこでも役に立たなかったら、強制収容の上で国営組織で生涯労働。
終身軽罰刑。
本人が真面目にやり直す気が無いのだから社会に出す必要はない。
親だって、いくら言っても聞かない馬鹿と、永遠付き合う必要もなくなる。
これで、犯罪者が社会に出る可能性が減る。
やってしまえば、簡単なことなのに。
「やっぱ子供は特に、自分の興味に特化して突っ走るからな。余程の特殊環境でもない限り、偏執的な執着を持つ落ちこぼれ扱い。そのまま中途半端に終わるか、突き抜けてくるかは、相当な運になる」
その言葉を聞き、清牙は私を見る。
「一応、健吾に説明に行かせた」
姉ちゃんか。
その辺りを理解出来るのか、理解出来ないままに、大らかに対応するのか…。
「多分、私の話を聞きたがるだろうね」
頭硬い人では、間違ってもないんだけど。
「ああ。だが、早めに覚悟、決めろ」
まあ、義兄は、大反対だろう。
美凉華の事でも、相当ご立腹。
ただ、美凉華はもう高校生で、遅いか早いかの問題であり、遅くなって成人の名で自分勝手にされるよりは…って事みたい。
自分達の監視が出来るうちに。
気が済んだら戻ってくるだろうって、安易な考えで。
あの人、頭悪いから、現状、全く理解出来てないみたいだし。
それでも家族は一緒に過ごし、年に何度も親戚一同集まってイベントこなして、一緒に暮らして過ごして、誰が何をしているのかを常に把握しているのが当たり前。
それどころか、一緒に暮らす家族なら、休みは常に一緒に行動するべきとか、特殊な家庭、だからね。
未成年が一人暮らしなんて…の、ノリ、だからな。
希更迄もとなれば、何言われるやら。
だが、覚悟、決めなきゃならんだろうね。
姉夫婦に、今の希更は、ちょっと理解、出来ないだろうから。
「お前ら、今から言うことは他言無用だ」
「清牙!」
駆郎君の言葉に、嫌そうに髪をかき上げ顔を上げた清牙は、希更を見る。
「少なくとも、ここにいる奴らは、出てくる杭を地下で叩き折る馬鹿じゃねぇ」
清牙らしい、ひねくれた言い方。
まあ、素直に信頼している…だなんて言葉は、出てこないよね。
メンバーがメンバーだけに。
私の好き大好きは関係ない筈!!
「ウチの新しいアレンジャーっていうか、もう、作詞作曲もしてる。楓のドラマの主題歌『鈴百合』は、そこの希更だ」
その言葉に、希更に視線が集まり、大人達の目に希更が戸惑いつつ私を見て、駆郎君を見て清牙を見て、泣きそうになる。
「あの、ダメ、だったよね? あの、Hなお話の曲、年齢、引っ掛かちゃうし」
そこ?
気にするのソコなの?
今、大御所に見られ、実力派俳優だのロックバンド歌手だの、注目の的なのに?
周り芸能人だらけなんですけど?
美形だらけ、なんですけど?
「ああ、うん。女の子って、可愛いな。ウチの糞息子の万倍、可愛い」
「稲本、話が違う」
ですよねぇ。
「希更はまだ、自分で制御、出来ねぇんだよな?」
「何が?」
清牙の言葉に希更がコテンと首を傾げ、駆郎君がその肩を抱き寄せる。
「吐き出してしまえば問題ない。けど、俺が傍にいない時、どうなるかが分からない」
「溜め込むと…希更は、どうなるか、だよな」
「多分、身体が弱いから」
「そっちか」
清牙の言葉に静まり返る空気。
近寄ってきた美凉華が私の袖を引く。
「カエちゃん」
どう云う事か、美凉華には意味、分からなかったか。
「ミーも先生に追い込まれて、色々遭って、受けた情報に作品へどう反映させるかで、頭それだけになって、情緒不安定になったでしょ。他の話も音も聞こえなくなって、それしか分からなくなって。アレの音楽版が希更に出てる」
「あの、ちょっとした切っ掛けで、ワーッとなって、ギャーってなっちゃうの?」
説明、すっごく馬鹿っぽいけど、ソレな。
「それって、役作りの過程で集中し過ぎて、時間分からなくなったりする、アレ?」
永井君の苦笑いに、頷く。
「それが音楽になるから、まあ、多少は違うと思うけど、子供だからね」
なによりも、だ。
「アレは、誰かに見られたくないよねぇ」
「俺も、1人で部屋に籠りますけど、中には全然平気なのもいますよね」
「切っ掛けきたら、どうしようもないで落ちて、開き直っちゃうんだろうね」
「強いですよね」
「それ、制御と云うか、後回しと云うか、移動とかそう言うの、出来るモノなの?」
今回、ミーはそれで、随分面白い事になってたからねぇ。
壮太には、散々遊ばれていた。
少しでも回避、時間稼ぎが出来るなら…って事だよね。
「まあ、慣れれば、安全圏に移動するくらいは」
どうしようもなくなって、人気のない公園で叫んだりとかもう、黒歴史だ。
「私は、降りてくると楽しくって仕方がないけど?」
音楽も、突然降りて来るって言うしね。
ギナちゃんのハイテンション。
なかなか怖いね。
「清牙もそっち。ハイテンションで、叫ぶ怒鳴る暴れる。迷子。とにかく隔離が先になる」
舞人君、苦労してるんだね。
「まあ、慣れてくれば、声出しくらいで、五月蠅いくらいで、それ程?」
「それ、端から見るとかなり、アレだよ? 無言で本読みって、セリフ入れるなら良いけど、役作りは別もんだしね」
「ああ、それ、無理かな? 声に出してみないと、なんとも」
だよね。
節、凹凸、やってみないと、結局は分からない。
舞台なら、それを色々試してみる時間はあるけど、他は、限られてくるので、実際の、型を予め作っておかなければ、本番対処が難しいし。
幾ら相手があってこその芝居でも、実際、何度ものリテイクは恥ずかしい。
それも受け損なってとか、カラ滑りとか、居た堪れない。
自分の基礎固めは必要。
だけど、相手あっての芝居なので固め過ぎても失敗する。
何事も塩梅だよねぇ。
「駆郎は動かなくなってたよ。懐かしいね」
姫?
姫迄こっちに参戦ですか?
「一回、ウチの馬鹿息子に会わせてみるか? 同じくらいだろ」
「いや、もっと下だろ」
大御所2人が顔を見合わせ、希更を見る。
流石の希更も、今回は自分の事だと分かったのか、素直に自己申告。
「中1です」
「「え?」」
どうしてだろうねぇ。
こんなに縦に育ってるのに皆して、希更が小学生に見えるらしいんだよ。
まあ、言動が純粋培養で幼く感じるからだけど。
「ウチのは今中3」
まあ、似たようなもんだろ。
その頃の1年2年差ってでっかいけど、まあ、大人の大局で見れば大差はない。
「今夏休みだろ? 明日でもウチ来るか? 夏休みだし、家にいるだろ」
「却下」
駆郎君の返答が早い!
「アンタの家になんて行かせない」
「っっっ!!!!」
だからなんで、私の腹をつねる!?
「あぁぁ、まあ、ほら、次の収録とかに連れて行ってみるとか、あるだろ。なんなら、SPHYのライブ、ウチのに連れて行かせるか?」
「玲央だと、確実に清牙にぶん殴られる気がするが?」
「ああ、まあ、うん」
ナニ?
姫の息子さん、清牙並みに勝気なの!?
いや、っっっっっ!!
「清牙!」
「噛みつく」
いや、嚙みついた後に言うなよ。
「カエちゃん。希更、ピアノがちょっと、弾けるくらいじゃないの? いや、作曲って、結構凄いピアノ弾かなきゃダメとか?」
なんか、美凉華まで混乱。
気持ちは分からんでもない。
美凉華はここんところ忙しかったもんねぇ。
希更が途中で辞めちゃったピアノ、復活したのも言ってなかったか。
「なんか、また習い始めて、色々駆郎君と遊んでいる内に、目覚めたらしいよ」
「遊び相手が駆郎な時点で、切っ掛けには十分だよなぁ」
そう、ですよねぇ。
駆郎君も天才側だし。
その素養とそっちに突き抜けた好奇心有れば、環境相手に事欠かない訳で、全部が全部、突き抜けちゃうよねぇ。
絶対、感覚天才派の清牙も混ざっている訳で。
「えっと、でもね。あの曲は、駆郎君じゃ、ダメだったからね。私頑張った。けどちゃんと、監督さんもマユちゃんにも手伝って貰ったからね。私1人じゃなくて、お手伝いだから。駆郎君がいないと、ダメ、だったんだよ? そう云う…見ちゃったけど! カエちゃんちょっと脱がされてたけど! そう云うっっ」
「ああ、なんか、泥水ぶっかけてやりたくなってきた」
「ギナ」
なんかねぇ。
娘さんはまだそこから、抜け出せてないらしい。
誰も、希更が年齢制限引っ掛かるエロ映像込みのドラマ見た事は話してないからね?
今の話の流れ、そう云うんじゃないでしょ?
話聞いてた?
そう言ってしまいたいけれど、目の前に御大が!!
「清牙、コレ、放置すると不味いぞ」
稲本様に苦笑いでコレ扱いされている希更。
「分かってる」
希更、純粋なのは悪くないんだけどね、無邪気過ぎて、アレなのよ。
物事深く考えず無防備に只管強気。
人によっては敵対心しか煽らない。
まず間違いなく、勘違いした老害は敵だ。
後は、頭と下半身緩いお馬鹿系。
希更は基本、純粋清廉潔白糞真面目なので。
「なあ? この子がその爆発? しちゃったからって、清牙やギナみたいに、人様に迷惑かけるとは思えないけど? どっちかって言うと、具合悪いのを心配した振りのオッサンとかに、拉致られそうな?」
永井君の言葉はご尤もである。
「それも心配だけど、希更ちゃんはいつどんなタイミングで出て、どの程度まで爆発するのか、まだ、分かんないんだよ。大抵、俺が一緒にいる時で、遊んでる間に盛り上がって、今、なってるな…って、分かる事がある程度なんで」
「ならさぁ」
「だから、俺が適度に必要な情報を与えて、滞りなく発散させてるから、今は何の問題にもなってないだけ」
駆郎君がいない時に起きたら?
駆郎君がいたとしても、駆郎君が与えた情報では納得出来ず燻ぶって、更なる爆発に繋がったら?
その爆発が上手く出せなかった場合、身体にどんな影響が出るのか?
まあ、さっきも言ってた通り、中にある情報を上手く出せず、体内でくすぶって、それが体調反応を狂わせて…って事になりそうなんだけどさぁ。
希更はただでさえ、爆弾抱えてるしな。
「あのねぇ、永井君。幼く見えても、希更も中学生、怪しいオッサンの後、ついて言って誘拐なんて「知り合いのオッサンなら?」」
そこで、稲本様が言われます!?
そしてなぜか、羨ましいくらいに息さえ触れそうな近い位置で、にこやかな顔で希更の前に立ち、希更の頭を撫でてから話し出す。
「お嬢ちゃん。俺の息子も似たような年頃だ。今、夏休みで暇してる。ギター好きでな。遊んでみるか?」
「ギター好きなの? 私も好き!」
ああ、ダメなパターンが‥‥。
「楓さん」
永井君、ほら見ろと言わんばかりに見ない!
「無理でしょ! 稲本様から言われたら、普通無理でしょ!?」
「カエさんじゃないんですから」
いや、私はまあ、返事なんて聞くまでもなくギブギブギブギブ!!
だからつねるな!!
「希更ちゃん。知らないオジサンと話しちゃダメでしょ」
にこやかに失礼な駆郎君の言葉に、希更は首を傾げる。
「今日初めましてだけど、声、知ってるよ。カエちゃんの好きな人」
「「「「「……」」」」」
いや、まあ、私の所為だよ!
私が、2人の姪には、生まれて間もない頃から、いや、まあ、間違いなく生まれる前から、極当たり前に、子守唄代わりに数々の名曲を、聞かせてましたよ!
悪いですか!?
好きなんですよ!!
「声は知ってるかもしれないけど、今日初めて会った人でしょ」
その通り、なんだけど…。
この声姿、何か言えますか!?
国民知名度も、半端ない、御二方ですけど?
「でも、セイちゃんも駆郎君も仲良しでしょ? ギナちゃんも、舞人君も皆知ってるんだよね? じゃあ、悪い人じゃないよね? それに優しそうで、綺麗なオジチャンだよ!!」
それはもう、にこやかな顔に、晴れやかなお子様な言葉に、何かが壊れた。
「「ぶふっ。オジチャン」」
堂々と笑っているのは、相方である姫と、長年の付き合いのある駆郎君です。
この辺りは付き合いの長さ、親密さ、なのかなぁ。
他も大なり小なり、肩を震わせているのは、見なかった事に。
だけど、稲本さんはその上を行く。
「オジチャン言われるなら、佑ちゃんのが良い」
なんか、清牙と同じ要素がここで発動。
当然、希更がその辺りに戸惑う筈もない。
「ユウちゃん?」
「馬鹿たれ!!!」
お前、恐れ多過ぎるわ!!!
「カエさん煩い」
「本人そう言ってるんだから良いじゃない。ちょっと年齢考えなさいよとは思うけど」
「稲本。それこそ間違いなくお爺ちゃんだぞ」
「実の息子とそう変わらないんだから「どう若く見積もっても、オッサンだよな?」」
清牙迄参戦しなくて良いのに。
ああ、なんか項垂れる稲本様も…ギブギブギブギブギブ!!!
「ユウちゃん、悪い人?」
「いいや「悪いオッサンだから、単体では近付くな」」
稲本様と清牙の言葉に、希更は更に首を捻り、私を見てから駆郎君を見る。
「セイちゃん。ユウちゃんもセイちゃんも綺麗だけど、今は、ユウちゃんの方がカッコイイよ」
あ、今度は清牙が力尽きた。
「希更ちゃんは、ここのオッサン達にもその息子にも、一人で近付いちゃいけないからね」
駆郎君の優しい嘘臭い笑顔に、希更は「なんで?」とまた首を傾げる。
「人気が有り過ぎて、カエさんについているみたいな危ないストーカーに、希更ちゃんが、命狙われるからね」
「ああ、うん。分った」
駆郎君。
本日最大級の出鱈目をありがとう。
だけど、効果は抜群だ!!
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