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踏み躙られてこそ花は香る
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しおりを挟むなんだかんだと、ライブは楽しかった。
まあ、折角のELseed様のライブなのに、最初の一曲は緊張とタイミング合わせに世界観同調で、まともに聞く余裕はなかったんだけど、新曲2曲の生歌は尊い。
後のギナちゃんは、気分的には楽だったし。
そのまま背後に誘導されて叫んでしまえば、私のお仕事はお仕舞い。
どうせなら、そのまま後ろで聞いていたかったのだけど、背後から爆音響かせた元凶は、撤収するしかないのである。
袖で、やっぱ、ギナちゃんの生歌もカッコいいと喜んで、そのまま打ち上げはライブハウスで。
機材撤収しつつ、ビールとか飲んで…。
楽しそうなお2方が、ビール飲んで、素敵です。
そのままCMになったら、そのメーカー、暫く飲みます。
まあ、味の好みもあるので、1ヶ月しか持たんと思うけど。
まあ、何よりのご褒美は、稲本様の「良かった。ありがとう」に、松葉様の「無理言ってごめんね。本当に良かった」この2つである。
ああ、なんか、音声録音出来るモノ!!
いや、本日、荷物をメグさんに預けて来たんで、手ぶらなんですけど。
って言うか、こんなことなら、差し入れの一つや二つ!!
やっぱ、ギナちゃん怨む!!
そんな思いのまま、ルンルンで浮かれ、ギナちゃんに小突かれつつ、御二方の尊いお姿眺めていたら、塩野君が一時間もしないうちに迎えに来た。
私、呼んでないよ?
スマホ持ってないしで、呼びようもないんだけどね。
何故、このタイミング?
ああ、メグさんからの言いつけなんですね。
仕方がないかと、まだまだ楽しそうな皆様に挨拶をして、メグさんのところで化粧落としてお着換え。
預けていた荷物を受け取ってお家まで送って貰ったのですが、最後の一言が意味不明だ。
「自分は、清牙に言いませんから」
えっと、メグさんと塩野君が黙っていても、2人が動いているって事は、健吾君には筒抜けな訳で、当然ギナちゃんだって清牙に黙ってはいないだろうしで、?
そのまま、次の撮影は、SPHYの横槍で飛んだので、その合間に、駆郎君のご自宅に、先生もタテも連れてのご訪問中。
いや、駆郎君が曲が出来たって言うから、その曲の調整って奴ですね。
希更は、拓斗がいないから、ちょっと拗ね気味。
タテが本格お仕事するのに、拓斗連れはちょっと無理だろうが。
まあ、小さな、自分に懐いている生き物ってのは、ちょっと……とんでもなく可愛いけど。
そんな思いは、話が進むにつれ、どうでも良くなると云うか、私の疎外感が半端ない。
曲が出来たから聴かせる。
そこで、タテと先生の意見が入り、駆郎君が微調整。
当然歌詞でも、ここが歌い難い、ここだけは残して欲しい、この表現、言い回しはどうよとなって、意見が飛び交っているのは分かる。
だが、そこに、当たり前に参加している希更の存在が、よく分からない。
まあ、タテや駆郎君に言いたい放題なのは、奴の性格上分かるが、先生に迄負けていない。
元の、先生自らの歌詞に、普通に総ダメ出ししやがった。
言い回しが固い。
分かり難い。
もっと単純な方が良い。
いや、お前、その人、日本では、有数の監督さんだからね?
割と好き勝手して、スポンサーから金引き出せる、偉い監督だからね?
まあ、言っても無駄と云うか、元々先生は穏やかな方なので、希更の暴言も全く気にしない。
あの清牙と会話出来る人なので、清牙を説得出来る人なので、希更の暴言くらいは気にならないらしい。
だが、怖いもの知らずは、そのお偉いさんと真っ向勝負をしています。
「殺戮、破壊衝動、その全てに先の献身と慈愛は」
「駄目です。折角の曲に、そんな難しい単語入れちゃうと、重くなる。絶対に、『殺して壊して、好き』の方が可愛いんです!!」
「可愛いかどうかは」
「曲が可愛いし、カエちゃん可愛いから、可愛い方が良い!!」
「いや、可愛いだけでなく、大人の」
「可愛いは正義! ねえ、駆郎君」
「そうだね」
駆郎君?
希更にイエスマン?
それは先生も感じたのか、すぐさま、相手を切り替えた。
「マユラ君。あまり言葉が軽いのはどうかと思うんですよ」
「あんまり可愛くしちゃうのもアレだけど、きーちゃんの方が歌い易いかな」
「マユラ君」
「歌ってみて。それが一番分かり易い!」
ちょっと困り顔の先生は、何のその。
希更の言い分が通り、スタジオ内に移動していく面々。
駆郎君が希更に対してイエスマンなのはまあ、良いんだけど、タテ迄希更寄りなのはどうなのか。
先生は、映像監督だから、音楽ではの感覚で言っている部分があり、どうしても年代として格式を付けたくなるのか、何なのか…。
「私のいる意味って、なんですかね?」
「専門家以外の、第三者意見じゃないの?」
美咲さんに淹れていただいたコーヒーを飲みつつ、駆郎君の演奏に、タテが合わせ、何度か歌ってみて、戻ってきた。
「カエちゃんどっちがイイ?」
いや、よく分からんがな。
歌詞が違うのは分かるけど、音は同じ。
単語数が違ってくるので、そこのアレンジが変わるのは分かるけど、曲調が変わる訳でもないし。
違いが良く分からんと云うか、突き詰めれば、籠められた思いは同じな訳で。
思わずタテに助けを求めれば、タテは頷いた。
「きーちゃんの歌詞の方が歌い易いし、もう少しテンポよく、上げて欲しい。途中音が下がるの、歌い難い」
「そこは、マユちゃん頑張れ」
あ、またもや希更のダメ出し。
「音はそのままでイイです。だが言葉が安っぽくないですかね?」
「分かり易いし、可愛い曲には、絶対こっち」
先生は固い言い回しを使いたい。
分かり易く響かせたい希更との真っ向勝負である。
そこに、ギターを鳴らした駆郎君が呟く。
「先生の歌詞なら、文字数から言ってもこっちだけど、いきなりここでここ迄上げ下げしちゃうと、マユラさんでも無理。ギナくらいしか歌えない」
「いや、頑張れば歌えるけど、正直、ここでそれは、歌って、気持ち良くない。それなら前のままが良い。って云うか、もうちょい、下げ幅何とかして」
「こうすれば、なんとか出来るけど」
そう言って駆郎君の鳴らすギター音に、希更は顰めっ面。
「それ、嫌! 可愛くないの。前のままに、キーこうしちゃったら、可愛くない?」
そう言ってなぜか、キーボード迄弾き出す。
そこにギーターと合わさって、確かにキラキラ軽い音が深くなって響き、耳に心地良いかも。
え?
「希更、あんた、ピアノ辞めたんじゃなかったの?」
「また始めた。駆郎君と遊ぶのに、弾けた方が良いモン」
そんな理由?
いや、ある意味そうなるべくの、理由なんですが、プロに当たり前に、言いたい放題で口出すお子様。
序に言えば、サラっと、初めて聞くっぽいメロディライン、いきなり弾いたんですが?
え?
「イントロ、こう…駆郎君」
良く分からない指示らしい名前呼びだけで、希更の弾いてるキーボード音がオルゴール調になる。
「ここから、ギターで入って」
そのまま駆郎君が弾き、音がピアノに戻ってからの、タテの出だし。
暫くして曲が止まり、希更は先生を睨む。
「この出だしで、硬過ぎる言葉は絶対に合わない」
「なるほど」
あれぇ?
そこで、先生引いちゃうの?
「ならば、ここの前に、単語並べたコーラス入れるのは如何でしょう?」
「うーん、あんまり重くしたくない」
「ですが、今のままでは、軽過ぎるんですよ」
「それは、マユちゃんが本気で歌えれば、なんとかなると思う」
「え? そこで私なの? え? 重く、この曲で歌うの?」
そこでまた、音楽家と、構成のプロが唸りだしたんですが、素人目には違いがよう分からんと云うか、今この場にいるより結果だけ、聞かせていただきたい。
なにより、希更、偉そうじゃね?
「希更が、出しゃばり過ぎな気が、しないでもないんですけど」
控えめに美咲さんに言えば、なぜか首を振られた。
「あの曲、ほとんど希更ちゃんが作曲してるから、当然の立場なのよ」
は?
「細かい微調整は駆郎だけど、出だしとか、サビのラインとか、駆郎のギターにまで散々手直し入れて、結局はほぼ、希更ちゃんがああしてこうして言って、駆郎が言いなりに…」
え?
ウチの娘、何やってんの?
「なんかね。駆郎のギター弄ってるのを聞いて、時々どっちが良いかって聞かれてる内に、色々思うところがあったらしくて、ピアノ習い直して、感じるままに弾いているらしいわね。意見、遠慮する方が、駆郎に失礼だからって。SPHYの曲にも、色々言ってたわよ。次のアルバムの編曲、とかに」
え?
本気でナニやってんの?
いや、あれだけギター弾いてる駆郎君にべったり楽しそうだったから、曲というか、音楽全般が好きなのは、分かってはいたんだけど…。
「特にこの曲、駆郎には、純愛はまだ早いみたいで。何度もダメだしされて、結局、殆ど、希更ちゃんが」
そこでお母様が笑わないで下さい。
相手、貴方の息子さん。
天下のSPHY様の作曲編曲担当なんですが?
「まあ、それに納得して、だけど、時々お互い言い合ってて、面白いわよ。駆郎と清牙君の時は、喧嘩始まっちゃうってハラハラしたんだけど、希更ちゃんだと、言葉と音だけで何とかしようって、駆郎が右往左往して面白いのよ。また、希更ちゃんが頑固で、大抵競り勝っちゃうんだけど」
ホント、ウチの娘さん、何してんの?
え?
そうこう話している間に、タテが歌いだし、そして何度か止まり、最初から最後まで歌い切って、なぜか、先生と希更が握手している。
意味が、分からない。
そして娘さんは、またもや何かを言い出す。
「音にね、こう、高い、響くのいれて、冒頭直前に締めて、サビでもタカダカダカピータラララって感じにしたいのね」
希更の頭の悪そうで偉そうな言葉に、先生が? を浮かべ、駆郎君がしばらくした後、パソコンを操作する。
「こんな感じの音?」
「ああ、それ!!」
それは、龍笛ですか?
そんなもん迄ぶっこむの?
あれ、相当甲高いけど?
「それだと、音、もうちょい上げとかないと、まとまりが悪いかも」
「だから、ここで、少し下げて上げて」
楽譜を指して偉そうに言っている当たり、希更には、それもちゃんと、分かっているらしい。
「いやそれだと、私のキーが厳しいってば」
タテがむくれたように声を出すが、キョトンとした希更は強かった。
「えぇぇ? でも、この方が絶対、可愛いしカッコいいよ」
至極当たり前とでも言い切った、希更の純粋な目に、大人達が負けた。
素人には分からない、拘りの完成度的な納得が、そこにあったらしい。
何か修正しているのか完成しているのか、希更がキーボード弾いて駆郎君がギター弾いて、それが譜面になってパソコン画面に出ており、希更もそれを見ながら何度か頷いて、先生を見て頷きあう。
なんか、完成した?
そのまま希更がキーボードを弾き、タテが歌いだし、歌い切ったと思ったら、先生が希更とタテに何かを言っている。
え?
ほぼほぼ今、完成した?
本格的な歌入れ直前に移行してる?
そんな慄きの私に、ちょっと疲れたらしい駆郎君が寄ってきた。
「楓さん。希更ちゃんの名前の由来って何ですか? 希更ちゃん、聞いても、教えてくれないんですよ」
いや、なんで、今ここでソレ?
嫌な予感しかしない。
「流石に、本名そのままは不味いですよね」
「いや、何が?」
「今回のコレと、次のアルバム、希更ちゃんの名前入れて金出さないと、絶対に、不味いレベルです」
マジか?
いや、ここ迄偉そうにしている以上、これが初めてではないんだろうなって事は分かるけどさ。
「えっと、そこまで行くと、私の領分では如何ともし難く?」
「実は、甲池さんの時にもその話、紅葉さんにしたんですけど、今回は勘弁してくれって言われて、先送りにしたんですよ」
え?
そこから?
そこから、もう、なの?
「これ以上は無理です。今回のは特に、俺が作ったとは、とても言えません」
いや、もう、それで良い気がするんですが?
対外的にも、ネームバリュー的にも、駆郎君の名前で納めておく方が、絶対にイイって。
「これ、作詞作曲は希更ちゃんで、俺が編曲ですよ」
え?
そこまでのレベルなの?
「でも、ほら、色々が駆郎君だって」
「俺が作曲とは言えないです。そんなの無理」
えぇぇぇ?
ウチの娘さん達は、どこに向かっているんでしょうか?
いきなり芝居にのめりこんでみたり、音楽傾倒して壊れてみたり?
えぇぇ?
「えっと、ウチの姉様に言って下さい。ちょっと時間をおいて」
現物無しに話をしても、姉ちゃんも理解し難いだろうし。
「まあ、そうですよね」
だって、清牙に言えないじゃん。
どう考えても、契約云々は健吾君の領域。
言ったら全部バレて、ややこしい事になるじゃん。
まあ、薄々勘付いてはいるだろうけど。
「だからせめて、名前だけでも、なんとかして下さい」
ああ、希更の名前だけ前面に出して、自分は編曲だけとか、清牙の勢い希更の存在で打ち消そうとか、希更がタテに懐いているのとか、諸々なのね。
いや、まあ、大人は汚いもんですよ。
だけど、だ。
「ぶっちゃけ、作詞作曲って、利益馬鹿デカくない?」
「歌い手より上ですが何か?」
だよねぇ。
「序に言えば、今回の作詞も、希更ちゃんの意見がデカいです」
それは、そう、だよね。
あれだけぶっこんでたの見てたんだから、私にだって分かる。
「一応先生の名前も入れますが、先生はどうします?」
「僕はいらないかな。彼女の名前で良いよ」
「先生止めて!!」
そんな怖い話、聞きたくない。
「必至だねぇ。そこまで言うなら、まあ、僕は名前くらいで良いんだけど」
「きっちり半分は、持って行って下さい」
利益収益全部から。
「なんか、心苦しいよね。あれ、大半、あの子だよ? まあ、将来楽しみ。次は直接、彼女に頼んじゃえばねぇ」
「許しませんよ。まだ、希更ちゃんに1人では、早いです」
「皆過保護だよね」
「あなたも含め、契約を都合よく解釈し過ぎるからです! 彼女を好きにはさせません」
なんか、駆郎君がまともに見えてきた。
うわぁぁぁ。
「ぶっちゃけ、あの子、どうなんですかね?」
聞きたくはないけど、聞かねばなるまい。
素人過ぎて、その辺、さっぱり分からんので。
「個人で曲依頼でも、任せられそうですよね」
先生?
「駄目ですよ。希更ちゃんにはまだ、大人の捻くれた汚さには勝てません。なにをどう言い含められるか」
「僕は悪いようにはしませんよ」
「好き勝手に使い潰される訳にはいかないんです。希更ちゃんは、繊細なんで」
えっと、あの豪胆娘とはかけ離れた単語が…。
「確かに、芯が強くて真面目で我慢強く、責任感はあります。けど、夢中になると、ちょっと心配です。他を見る余裕、本当に無くなるし、希更ちゃん自身が、体力ないし」
「それ、貴方が言わないでくれる? 私の前で何度、寝食忘れて倒れたと? 夜勤帰り、玄関先で倒れてる息子を見つけた私の衝撃は?」
それは酷い。
酷いけれど、美咲さん看護師さんだし。
多分、冷静に処置してたんだと思われる。
そんなお母様の突込みに、駆郎君は一瞬で目を逸らし、そして溜息。
「俺は倒れてもすぐに回復したけど、希更ちゃんは違うでしょ。適度な加減を、誰かが見ていないと、危険です。それに、やっぱり、得手不得手もあるし」
「まあ、エロは無理だよね」
純粋培養な、無垢なお子様だし。
「それを求めるのが、頭、おかしくないですか?」
駆郎君は分かっているのかね?
希更はもう中学生。
何時、色恋言いだしてもおかしくないんだよ?
男性経験がどうのって。
まあ、駆郎君がいるので、言い出すんじゃなくて言われる方が高そうだけど。
「ですが、アレを止めるのですか?」
楽しそうに、タテにダメ出しして、タテの不貞腐れているらしい言葉を受け、また笑ってキーボードを弾く。
間違いなく楽しそうである。
まあ、この道に進みたいと云うのなら、止める理由はない。
と云うか、私には理解が及ばないが、その先達が近くにいる、凄く、恵まれた環境にいるのは間違いない訳で。
加減も助言も事欠かない。
才能云々は、私には分からない。
分からないけれど、今確実に、アレの意見と奏でる音が曲になり、その道のプロが、その結果を認めたのだ。
Ok、決定を出した。
それが全て。
「えっと、色々、本格的な何かを考えるべきなのかね?」
「そう言うのはいらないですよ。俺がいるんで」
ですよねぇ。
駆郎君が、何があっても希更を守るんだろう事は分かる。
分かるけど、そこに色恋関係縺れたらとか…今、言うのは違う気がする。
まあ間違いなく、駆郎君が希更に今必要であるものを、見せ聞かせ教え、そしてダメなところも分からせる。
最高の先生で先輩で、導き手として、そこにいる。
「出来れば、近くにいていただけると、お仕事頼みやすいんですがね」
先生?
貴方、言った傍から何言ってます?
「専門の学校にまで行く必要はありませんが、高校はこっちで、普通に。俺がすぐ近くで確認出来るくらいで、良いんじゃないですか? そのままゆっくりと色々なものを好奇心とか状況に合わせて学ぶのは良いとは思いますけど、仕事はまだダメです。俺のサポートぐらいじゃないと、希更ちゃんが、すぐに倒れます」
まあ、希更、体弱いしな。
体力もないし。
色々制限もあるし。
「希更君に頼めば、自動的に、駆郎君がサポートするので問題ありませんよね?」
「自分の作曲家にするのは止めて下さい。希更ちゃんは、誰かに歌わせたい、みたいなんで」
まあ、劇中音楽は、歌わせるよりも響かせ、世界観を支えるモノだからね。
分野が違う。
「いや、まあ、そっちも出来たらで、良いですよ。だけど、マユラ君との相性、悪くないですよね?」
まあ、仲は良さそうだよね。
って云うか、タテの精神年齢が若干…かなり低めであるので、確りした、言葉を濁さない、生意気希更との相性が、悪くないのも事実。
「駄目ですよ。本格的な希更ちゃんの一曲は、ウチで貰って、次は甲池さん、その次にマユラさんです」
えぇぇぇ?
もう、順番迄出来上がってんの?
って云うか、だね。
「清牙に、希更の純愛路線歌わせるの?」
「希更ちゃん、カエさんの影響で、テクノ系好きですよ。ドラム叩き込むのとか」
え?
いや、まあ、子守唄にELseed聞かせていたのは私ですが…。
「特に、今時珍しく、イントロと間奏に拘るし、G音にはちょっと耳が良過ぎです」
それ、大半、君の所為だからね?
駆郎君のG聞き慣れていたら、他がダメなの、仕方無くない?
「歌詞も行けそうなんですけど、もうちょっと…かと」
まあ、年齢経験における語彙や世界が、アレな訳で。
表現、言葉の重み、掛け合いetc.が、色々、足りないのは、仕方がない。
「今回は好きに言わせてたよね?」
「先生の歌詞よりは断然、希更ちゃんの方が良いです」
うわぁ、バッサリ。
「台詞と歌詞は違います。語数が限られるので、希更ちゃんの言う通り、分かり易く、耳に聞き慣れている音の方が良い。まあ、それを狙った曲だというなら別ですけど」
まあ間違いなく、今回は狙う意味がないわな。
それは素人でも分かります。
先生が最初から勝負になってなかった案件。
「あんまりやりたくないですけど、舞人巻き込みましょう。もう少し、歌詞、詰めたいです」
ああ、やっぱ、希更の語彙では限界あるか。
先生の固過ぎる台詞表現でも。
「清牙どうすんの?」
舞人君だって、駆郎君に、希更迄巻き込んでいるので、言えば協力はしてくれると思う。
けど、駆郎君と同じ、嘘迄吐いては…って立場であることに、変わりない。
「それはそちらでどうぞ。希更ちゃんの折角の曲を、中途半端にしたくないので」
そうか、それは分かる。
分かるんだけどなぁ。
「今、現状で、頑張ってるタテの立場は?」
今の歌詞、変わるんだよね?
歌い手、大打撃じゃね?
「マユラさんは大人ですから」
駆郎君も、大概、身内と云うか、絶対的な相手以外には酷いよね。
まあ、タテの最初の所業を思えば、それくらいは仕方がないかと思うけど。
「じゃあ、もう一度、打ち合わせですね」
何で、先生は嬉しそうなんですかね?
「舞人巻き込めば間違いなく、龍笛奏者の伝手が出来るんで」
そこか。
そこも重要か。
仮音源はあっても、その手のプロ伝手は、駆郎君でも難しかったか。
まあ、オジサマ巻き込めば何とかなっただろうけど、息子の意地もあるだろうし?
何より、時間があんまりないし。
「それで、曲と言えばPVですよね? どうしましょう? 叢雲は鈴鹿君の映像挟み込んでって、こちらが関われそうにないんですけど、マユラ君のはそんなの、面白くないですよね?」
貴方この状況で、更に、自分を追い込んでどうする気ですか?
撮影、無茶苦茶押してますよね?
まあ、世界観自分で作るのが大好きな人だってのは、分かってる。
分かってるんですけどね…。
何で、そこで、私をにこやかにって…。
それ、しか、無いですわな。
「私、また撮影ですか?」
「希更君! その曲の映像についても話しましょうか!!」
そこで、希更まで巻き込むの?
いや、まあ、作詞作曲が希更だと、関係者が言っている以上、それも仕方がないんだろう。
だけどさぁ…。
それを受け、希更は目を輝かせてこっちを見る。
「絶対、天使が良い!!」
どこでそうなった?
なぜに、そんな単語が出てくる?
「カエちゃんちょっと可哀想だけど、可哀想にしたい!」
言いたい事はなんとなく分かるが、娘さん、馬鹿っぽいよ?
でもまぁ、娘さんの中でも、私は酷い目に遭わされるんですね?
そうですか、そうなりますよね。
うん。
私の撮影は、まだまだ終わりそうにないのである。
一体、いつまで続くんでしょう?
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