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踏み躙られてこそ花は香る
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しおりを挟むやっと、私主演の2章の、私の中での山場が終わり、次は美凉華滅多刺しにしてからの第3章。
3章は3章で奔放な夫婦それぞれ愛人作りまくってみたいな、パリピ感に、気が重いのは確かなんだけどね。
美凉華殺してからそれって、本当にキッツいんだけどね。
ほら、世界が沸騰してる訳じゃん。
世の中夏だよね。
無駄に暑いし、世の中ギスギスして、生きにくいよねぇ…と、遠い眼差しのまま、広げられた写真に笑いしか出ない。
だから言ったじゃん。
って言うか、コレ、どうしたんでしょうかね?
広げられた写真では、なぜか私が、居酒屋で壮太に胸をまさぐられている物やら、粘っこいちゅーまでされいる訳で…。
撮られたんだぁ、とか。
良く撮れてんなぁ、とか。
写真だけ見れば、密接なアレだよなぁ、とか?
うん、所謂スッパ抜き?
現証拠、ここにあり?
でもさぁ…。
言い訳…いらんよね?
「私良い大人だし。放置で良くない?」
いや、そこに何かあって、お仕事全面に迷惑かけてとかなら、私も反省しますよ?
ですが、私も壮太も独身で、成人しており、肉体関係になろうがお付き合いが始まろうが、誰にも迷惑は掛からない。
序に言えば、共演者が盛り上がってくっついては離れるなんて話も、芸能世間一般では、アルアルな訳で…。
いや、これは、そう云うのではないんだけど、実際ベロちゅ-写真迄あるんだから、余計な言い訳せんで、そうですねって流しとけば良くない?
そのまま時が過ぎ、結局何もないままでも、だから業界人は…って、勝手に勘違いしてくれて終わるんだし。
本当に実際に、何でもないんですけどね。
そんな言い訳は、自分の中ですれば良いだけの話でしかなくて。
それを今見せつけられてるこの現状が、何とも面倒臭いというか?
だからナニ…とまでは言わないけれど、まあ、言いたいことは、その一言に尽きると云うか?
健吾君はでっかい溜息の後、口を開く。
「清牙に知られたら、どうする気だったんですか?」
いや、どうもしないよ?
別に、清牙に関係なくない?
いや、清牙だから、ぐちぐち煩く…下手したら、今やってるの途中降板させるとか、喚きだす可能性もあるのか?
だとしても、だ。
ここに現物として、わざわざ写真としてある、この状況。
「それ、わざわざ買い取ったの?」
「ええ」
金の無駄!!
幾ら使ったの?
え?
私の責任じゃないし、頼んでもないし、それが世の中に出て困る人って誰?
「その上、今回、叢雲とQEENBEに主題歌決まっているそうですね。うちに連絡がこないのは、なぜですか?」
それ、私に聞かないでくれないかな?
私は1出演者であって、私は音監の方はよう知りません。
「確か、清牙に言われて、確認すると仰られていましたよね?」
「先生には言ったよ」
そうやって言われたって報告の形で。
ただ問題は、作詞作曲なんだよ。
タテを歌い手に使うのは、なんら、全然問題ない。
ないんだけど…。
タテってば、あの企画に出てたこともあって、SPHYの手垢がついたみたいな評価になっているらしくて、他所が二の足踏んでるらしいんだよね。
なによりも、だ。
今回の話、相当なイロモノ感ある話だから、タテのあの清廉天使声にどう歌わせるのよって問題も、あるみたいなんだよね。
先生も、誰に頼めば良いのか…ってなってる感じ、みたい。
って言うか、そろそろ限界だと思うので、誰かに頼んでほしい。
最悪、双子に任せてみるのも有りかもしれない。
「楓さん」
そこでわざわざ、言葉を区切って重々しい空気を作り出す健吾君。
「まさかとは思いますが、清牙を本気で怒り狂わせてまで、疾風壮太と関係を持ちたいと? 血を見ますよ。双方、相当に荒い気性ですし」
そんな宣言聞きたくないと云うか、ですね…。
何をどう、拗れさせたいのか?
その忠告というか、お言葉が、そもそも、おかしくないですかね?
「私、良い大人、なんですよ」
本日、これ、2度目です。
交友関係は自分の意志で以って決定…したら、清牙怒るのかね?
まあ、私のこと相当好きだからね。
独占欲の塊みたいになってるけど、まあ、ねぇ。
「ソレ、そもそもが、そう云うんじゃないから」
写真だけ見たら、そうは見えないかもしれないが。
「じゃあ、なんでしょうねぇ、コレ」
トントンと、デスクの上の写真を指先で叩く、健吾君。
ですよねぇ。
世間一般じゃ、何もない男女に、そういう行為はない訳ですよね?
何もないのが真実だとしても、決定的な写真があるだけに、それを言う方が嘘臭い現実。
どうしろと?
って言うか、これぐらいでガタガタと騒ぎ過ぎじゃ!
キスなんて、国が変われば挨拶よ?
同性でもしてるからね?
狼なんて弱い順に、強いオスに皆していくんだよ?
強いオス狼のキス経験値、半場なくない?
大丈夫!
狼にやれて、人間様がやれない筈がない!
そんな言い分が、この状況で通るとまでは、流石に、私も思ってはいませんけどね。
逆切れ良くない。
「でもさぁ、今回、それぐらいの映像は、普通にあるよ」
多分、契約規定ギリギリぶっこんだ感じで、複数。
3章のが多いと、思うんだよね。
私、ソレ、今から不安。
また壮太に説教酒に連れ出されるのは、ごめん被りたい。
奴は酒が入ると、話が下にばっか走るので。
「清牙に見せるなと?」
「清牙に大人になれ……って、あははは」
無理か。
やっぱ無理か。
清牙激怒案件。
ただでさえ曲頼まないで、仲間外れ感あるのに、清牙ご立腹な濡れ場?
絶対、ギリギリまで言えんな。
正直今、私も清牙に会いたくない。
何でもないフリすればするほど、奴の野生が無駄に働くだろうから。
「まあ、なんにしろ。完全に、押さえ込むのは無理です」
「何が?」
「近い内に、上がります」
そう言って、キス写真を指先で押さえる健吾君。
つまり、私程度の為に、世間様をお騒がせすることになると?
わざわざ?
「え? じゃあ、ソレ、何の為に買い取ったの?」
「これ以外は言い訳出来そうな角度でしたので」
そう見えるんなら意味なくね?
どんな言い訳するか知らんけど、私、関わらないし、言い訳もしないけど?
「って言うか、私、これから用があるんだけど?」
緊急で至急で事務所に出頭しろとの絶対業務命令だったので、大人しく従ったのだ。
いや、叩き起こされて30分後には塩野君迎えに来たんだけどね。
逃げようもなかったんだけどね。
「清牙にこれ以上、何と言い訳を?」
「えぇぇっ」
いらないよね?
いやまあ、濡れ場あるし、今回やらかして、演技に余裕無いしで、清牙との直接対面を徹底的に避けてきたのは、間違いない。
アイツは野生動物なので、何かを感じ取られて突っ込まれても、こっちの返答に困る訳で。
そう。
アイツは今忙しい。
いや、売れっ子さんなので、基本忙しい。
アイツの予定さえ把握していれば、会わなくするのは簡単なのだ。
私だって役作り上手くいってないんだもん。
煮詰まる迄はないけど、毎回撮影のたんびに、追い込んでるもん、
人と無駄話、したくないんだよって、言い訳前面に出している訳で。
「役作りに、芝居に追い詰められており、誰かとまともに会話する気にならないんで、避けまくってます」
「そして、コレ、なんですね?」
だから、ベロちゅー写真は、もう、良いんじゃないかと…。
お互い、本心押し殺した笑顔の会話で何とか逃げ切り、やってきました。
駆郎君のご実家。
コレ、話せば長くなる。
端的に言うと、切羽詰まったのよ!
だって、双子って結局、音楽業界ではアレだった訳じゃない?
なので、先生としては、実績あってそれまでを知る、分かり易い結果が欲しくてですね。
ぶっちゃけ、清牙がダメなら駆郎君引っ張り出そうって話になった。
駆郎君だとか詩に不安が残るけど、そこは、先生が頑張るってことで。
脚本書くんだし、世界観は先生が一番分かってるんだから、何とかさせる的に。
だがしかし、当然、清牙に頼めない仕事を駆郎君に頼むなんて、真っ当な手続きでは有り得ない。
出来る、訳がない。
事務所通せば間違いなくバレるし…。
どう考えても、健吾君が清牙にチクる。
そんな状況で、清牙にも事務所にも内緒で…なんて言えば、駆郎君は見向きもしない。
わざわざそんな面倒臭い仕事を引き受ける理由が、駆郎君にはないのだし。
っていうか、清牙にチクって、終了案件である。
そこで、駆郎君を引っ張り出す奥の手、希更様頼りを使おうとしたところ、なぜか、希更がこっちに来ていることが判明。
いつの間にやら、駆郎君が姉ちゃん丸め込んで、希更を掻っ攫ってきていた模様。
ただ掻っ攫うだけでは問題大有りなので、実家のお母様を頼り、現在、実家に戻って希更とラブラブ同棲中。
とは言え、本日、なんの偶然か…まあ、忙しい奴らな上に、今は絶賛フェス連発で、駆郎君は見事に不在。
奴らが見事にいないのを良い事に、事情確認兼、ご挨拶兼、希更へのお願いとして駆郎君のご実家に日参することになったのだが。
デカイな。
いや、まあ、スタジオが家にくっついているって話は、前に聞いたことあったんだけどね。
SPHYのインディーズ時代、ここでデモとかDL曲とかも作っていたらしいので、結構頻繁に出入りしていたらしいとかの話も、聞きましたが…。
デカい。
さっき、希更にも連絡入れたしと、玄関チャイムを鳴らせば、インターフォンが軽やかに…鳴らない?
ふすーッと、気の抜けた空気音みたいな後に、聞き覚えのある我が娘さんの、声が聞こえた。
『カエちゃん?』
間違ってないけどな?
「誰かは先に、確認しろ」
『いらっしゃい』
いや、そこ、お前ん家じゃないから。
そう思いながら、待っていれば、見覚えのある娘さんが、なぜかヒラヒラフワフワの服でお出ましに。
「希更?」
「うん。ちょっと恥ずかしいけど。美咲ちゃんがね、可愛いって」
どうしよう?
ロリコンに親公認迄くっついた?
いや、まあ、気が早い様な?
っていうか、ミサキちゃんって誰?
駆郎君一人っ子だったよね?
謎の? 連発でいたら、落ち着いたサマーニットに細身パンツの、すっきりした美人さんが登場。
駆郎君に目元似てるな。
姉ちゃんよりは確実に上だろうけど、駆郎君のお母様には若くない?
「あの、初めまして。姪が、ご迷惑をおかけしております」
「あら、本当に、清牙君に酷い事されてたお嬢さんじゃないの」
にこやかな言葉に、身体…いや、心も振るえる。
ですよね?
息子さん係わってるんだから、アレやコレやも、当然見られている訳ですね。
私、化粧もしてないし、衣装も着ていないと、全然周りに気が付かれないんですけど?
分かっちゃうものなんですか。
はあ。
「始めまして。上田楓と申します」
「始めまして。駆郎の母の美咲です。とりあえず中入って。暑いでしょ?」
ですね。日焼け防止の長袖、暑いです。
促されるまま「カエちゃんこっち」と我が家のように振舞っている希更に、驚きである。
希更は元々人懐っこい上に、神経かなり図太く出来てるので、馴染むのは早い。
だとしても、馴染み過ぎじゃね?
その心配は、見事に的中するのであった。
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投稿は毎週水曜日と土曜日と日曜日になります。
今更ですが、不定期に、予告報告なく、先の話との帳尻合わせで投稿分も改稿します。
現在11章書いてますが、壊変になったらごめんなさい。
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