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業界的展開の迷走
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しおりを挟むその気になった、清牙の仕事は早かった。
私、AI役やって、その翌週のドラマゲストの3日後には、PV撮影させられてたんですが?
それも、その曲聞かないまま。
まだ、肌荒れ微かに残ってる状態だったんだけど、アップはないからって脱がされる不思議。
いや、肌色スーツでしたよ?
だけど、男物ワイシャツ一枚で海から上がってくる女って、どんな痴女?
そのまま海辺に隠されたボディスーツ、それに着替えて、襲撃?
SPHYが歌う会場に暗殺目標がいる設定。
無駄に銃ぶっ放してるところに姐さんが飛び込んできて、私逃げる。
後は姐さん運転トラックとバイクのカーチェイス。
それ、私、一切関与してません。
だが姐さんに追い詰められて一騎打ちで、撃たれてまた海へ。
撃たれるのは良いし、海に落ちるのもまあ、仕方がない。
だがしかし、ボディスーツのおっぱいの見え方でリテイクは納得いかん。
アップで乳首分かる様にとか言った、清牙のケツは蹴り上げておきました。
今回は姐さんがメインなので、清牙達のピン撮りは無し。
だけど、SPHYライブ中の映像はいる。
時間は無駄にかかるよね。
あっちこっち、移動してから撮影したし。
お外撮りも多かったし。
翌日も撮影していた姐さんはともかく、私は朝方帰宅で寝倒して、慌てて夕方診療時間ギリギリで皮膚科へ。
またもや先生に怒られる。
頻度が高いと。
そんな事言われてもと言い訳しつつ、空けて翌々日はスーパーのお仕事。
そしてやってきました事務所に入った途端、駆郎君に両腕をがっつり掴まれた。
「なんで、ですか?」
ごめん。
意味が分からない。
「俺、楽しみにしてたんですよ?」
「だから、何?」
「希更ちゃんが来るの、断ったんですよね?」
あぁぁ、なんか、希更が夏休みがどうの言ってた奴か。
「そら、断るよ。未成年を預かるに足る、お家じゃないんだもん」
色々理由はあるが、総合して、治安が良いとはとても言えない環境なので。
防犯上で以ってしても、絶対無理。
なによりも、だ。
「私、お仕事しないと、お金稼がないと、生きていけないの。希更の面倒、半月も見てらんない」
「お金なら出します!」
ここに、馬鹿がまた一人。
「時間が空いた時に「フェスが、あっちこっちであるんですよ」」
連れ回す気だったんか?
「私、フェスに同道出来ないからね?」
撮影関係もだけど、スーパーの仕事だってあるし。
なにより、先生のドラマも控えているので、日焼けは不味い。
「ふざけんな! お前も関係者だろうが!!」
あ、清牙もいたんだ?
「あのね。撮影控えてるの。日焼け出来ない」
「日焼け止め塗れよ。それこそ全身塗ってやるわ!!」
阿保だろうか?
「化粧もまともにできない女が、日焼け止めに耐性があるとでも?」
そこで、ジト目で睨むな、若人2人。
「1日2日ぐらいなら、なんとかするけど、それ以上は無理」
一緒にホテルに泊まるなり、なんとか出来るだろうけど、それ以上は無理。
財政的にも、私のスケジュール的にも。
「ドラマの撮影もあるんだけど? その間、希更1人放り出せと?」
「……」
自分が一緒にいると言いたい。
言いたいけれど、打ち合わせはあるし、各種音楽番組もある。
当然SPHYの音合わせ云々やらもある。
時期的に、フェスにも行かねばならないし、それは下手したら、行って歌って別県フェスへの鬼移動。
それに、希更を付き合わせれば、間違いなく倒れる。
希更は気が強いし負けず嫌いではあるけれど、体力あんまりないし、虚弱だから。
「移動が難しい時は、こちらの事務所で預かる事も出来るんですが」
幾ら希更が人懐っこいとはいえ、ここに放置はさすがにない。
健吾君は知っているけど、懐くほど親しい訳でもないし、ここでなにしろと?
何より、健吾君だって、なにするか分からんこいつらを放置って事がまず無理では?
だとすると、ここにいるの岡野さんだけだよ?
岡野さんただでさえ忙しいのに、希更の面倒まで見ろと?
無茶もいい加減にしようね?
希更は駆郎君さえいれば、何も出来なくても文句一切言わないどころかご機嫌だろうけど、知らないオッサンに黙って囲まれて…まあ、すぐに懐いている気がしないでもないが、流石にそれは扱いが酷い。
ミーでもいれば、まだマシかもだけど、ミーは鬼修行中だしな。
「あのねぇ。希更は確かに、幼い感じだけど、根はかなり確りしている。だけど、まだ子供だからな? 保護者がいるの。少なくとも、ギターに夢中になって食事も忘れる、自己管理が出来ないお子ちゃまや、我が儘放題で後先考えないお子ちゃまに、保護者は務まりません」
「夜なら、時間あるんだって」
清牙?
お前の夜基準は深夜以降だろ?
一般的なお子様は、睡眠時間だからな。
自分が睡眠時間短くて行けるからって、それを基準にしない。
「希更も、SPHYのライブは楽しみにしてるし、袖からだとしても、見れるなら喜ぶ。それに合わせて、こっちこれるように調整する…して、健吾君。希更に泣かれちゃう」
ミーもこっちに来て、私も急遽でこっちに来る事になったから、頭では分かっていても、淋しいとか仲間外れとか、結構拗ねてんのよ。
「調整は、しますが…」
そこで清牙を見ない!
清牙、関係ないし。
「それで、お家にお招き出来ない希更ちゃんを、どこに連れて行くんです?」
あらぁ?
駆郎君が、何かに気付いた?
「お前、マユラも泊めない、ミーも行った事ない、希更も泊められない、部屋に住んでるって事だよな?」
あ、清牙まで気が付いた。
「いや、ほら。最初はね。部屋を借りるのも大変で」
「健吾!!」
あ、清牙が煩い。
「楓さんとの契約により、清牙を含め、SPHYの3人には住所が開示出来ません。その時点で契約打ち切り。今楓さんを野に放てば、セキタプロが喜んで掻っ攫っていきます」
「健吾!!」
「仕方ないのです。それ飲まないと、契約しないと仰るので」
だから、そこで、私睨まないでくれるかな?
「あれ? そう言えば、舞人君は?」
「他所の助っ人です」
舞人君も忙しいね。
「楓さん、結構働いてますよね?」
ジトっと、駆郎君が見てくるけど知らない。
役者仕事はまあ、そこそこだけど、この事務所で雑用もしてるし、スーパーの仕事もある。
あっちにいた時とは雲泥の差ってぐらいの、稼ぎがあるのは確かなんだけど、まあ、物価もあるしなぁ。
「私も、何度も、引越しをお願いしているんですよ。こちらで部屋も用意すると言ってるんですが」
「つまり、健吾がすぐに引越しさせたくなるようなトコ、なんだな?」
あらぁ?
今日は、清牙ちゃん鋭い。
「引越しってさぁ、お金かかるのよ」
「お前、俺の専属だって、自覚あんのか?」
清牙が怖いなぁ。
「私、案外、外歩いていても、誰も気が付かないんだよね」
「色物特化ですし」
駆郎君?
本気で、希更と接触禁止にするぞ?
「何より、引越しの諸々の手続き、本当に面倒臭いんだよ」
書類仕事も面倒ならば、各種のアレやコレや?
何日も、休み潰して動かなきゃならんしな。
何より、私は掃除に整理整頓が好きじゃない。
出し入れ片付け、超面倒。
「もう、このままで良くない?」
何の問題も、今のところないんだし。
「健吾。こいつの問題無いは、どこまで信用出来る?」
「……」
無言の笑顔が、答えでした。
「お前、もう、ここに住め」
なぜに、事務所をお家にしようとするのか?
「阿保なの? 役者なんだし、自分時間が最大限に、必要なんだけど?」
「貴方に何かあると、希更ちゃんも美凉華ちゃんも、泣くんですよ」
まあ、そう、なんだけどさぁ。
「ここに通える範囲ってなると、もう、家賃高すぎて」
「だから、交通費はお支払いしますと」
「ここから、カエさんの感覚で通えて、最低レベルの賃貸料」
だから、そこで検索掛けようとしない!
「あんま、ガタガタ言ってっと、ウチで飼うからなっ」
清牙の巻き舌に首を振る。
「そんな貞操捨てた危険地帯、絶対に嫌」
「俺は、お前のこと、襲った…な?」
PVでそれはもう散々に。
「だけど、嫌がる相手になんかする、趣味ねぇけど?」
「間違いなく、嫌がってるのに、胸は揉まれるね」
「それは愛情だろ」
「そんな愛情、ごめん被る!」
「我が儘言うな」
「お前がな!」
怒鳴りあっていた私に、駆郎君は言った。
「せめて、夏休み、3回くらい呼べませんかね?」
あんたは結局、そこが最大理由か!!
「希更、ウチに連れ込めば、楓ついてくるか?」
「「させるか!!」」
そこは、駆郎君と同意見。
清牙の住宅は、青少年育成環境には間違っても、適合しない。
「若者は元気ですねぇ」
岡野さん、それも違うからね!
その時は、それで解決したと思っておりました。
そんな甘い考えが通る訳ないじゃんと、後で、溜息しか出ないんだけど。
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