泡沫の欠片

ちーすけ

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戯言から催事

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フリータイムギリギリの時間まで歌って、ファミレスで朝御飯兼時間潰し後公共移動機関動いて解散。
本来であれば、事務所出勤日ではあったが、おさぼり連絡して、その日は寝倒す。
そして翌日は、普通にスーパー勤務だったしで、結局はその次の日に事務所へ。
まあ、この日に集計結果、HPで晒す手筈になっていたからね。
そして、一応は結果の決まった、見事楽曲権勝ち取った相手との打ち合わせ…って事になっていたのだが。
「やっぱ、アンチ煽っちゃった。負けちゃった」
「あんたが、駆郎君と舞人君邪魔者発言したんだから、当然だよね?」
「だって、あのまんまじゃ歌い難かったんだもん!!」
「あれだけ歌えるなら、事前リハで聞かせてくれたら、合わせて編曲ぐらいしたんですけど? 後半、ちゃんと合わせましたけど?」
駆郎君のジト目に「いじわる」と私に抱き着くのは止めろ。
「つーか、お前、関係無いだろ!!」
怒鳴る清牙に、べーっと舌を出して、更に抱きこんで胸を掴まれる。
「カエちゃん。私、下手じゃなかったよね?」
まあね。
「ただ、SPHY曲縛りは完全に不利だった上に、SPHYファン相手に、SPHY演奏蹴るとか、暴挙でしかないだろ。そら、ポイント伸びねぇよ」
「ううぅっ、アイドルダンスに迄負けた」
「ミーは元々、SPHYの下僕達に可愛がられてるし、自分のファンも当然いるんだから、ポイントは嫌でも伸びるって」
「歌は、私の方が断然上だし」
「投票層考えて動けよ」
「カエちゃんまで意地悪」
両手で揉むなと手を叩き落したら、椅子ごと抱き上げて移動される。
そしてなぜか、骨ばって堅い、清牙の膝の上へ。
「清牙がカエちゃん取った!」
「もともと俺のだ!!」
「寝てもない癖に」
「寝た!」
「それ、雑魚寝な。清牙、聞いてる俺らが空しい」
「キシャアアア」
舞人君の突込みに唸るな。
それ、喉の負担大きいから止めろ。
「それで、甲池さんは、なにか希望はあるんですか?」
にこやかな健吾君の言葉に、姐さんは私を見て困った顔をする。
「あんまり高くない曲?」
要望が、温すぎる。
「姐さん、言う事言っとかないと、エロ曲にされますよ」
「エロの何が悪い」
開き直りやがった。
まあ、清牙の声と歌い方考えると、ソレ嵌まっちゃうんだから、仕方ないんだけど。
「その曲ですが、ネット配信スペシャルドラマの主題歌に、決まりました。女性探偵のハードボイルド物です」
淡々と眼鏡を押し上げ告げる健吾君の言葉に、感嘆が漏れる。
「おぉぉっ、流石健吾君」
この短い間に同時進行で、よく取ってきたものである。
「SPHYの初の楽曲提供ですからね。これくらいは当然です」
当然、なんだね。
「なので、初回配信後で、幾つかの音楽番組もオファー来てます」
「え? え? は?」
聞かされている張本人が、一番混乱中。
「ただ、時間がありません。来月中に上げて下さい」
言われた清牙は、それはもう、楽しそうに笑う。
「任せろ。エロい曲、作ってやるから」
「だから、エロい曲いらない」
「エロい方が燃えるだよ」
まあ、そこにモチベーションが加わるなら、仕方ないのか?
「ただ、PVどうするよ?」
そこでなんで、私を見るのか?
清牙も、言いながら私見るな?
「普通に、姐さんに何かして貰えば? 清牙と違って、演技出来るよ。私より巧いし」
「それはちょっと違うかなぁ。私は一般的な…犯罪者とかそっち系、あんま巧くないよ?」
姐さん?
私、そんなもんに特化した覚え、ありませんが?
養成所の成績、常にあなたの下でしたよ?
「ああ、楓さん、色物担当でしたね」
今まで黙っていたと思ったら、余計な事言うなよ、駆郎君。
「希更に言いつけてやる」
「希更ちゃんも言ってました。楓さんは怖い役が巧いって」
いらねぇよ、そんな評価。
そこにかかる、タテの呟き。
そこにすかさず返した清牙の言葉の、偉そうなこと。
「イイなぁ。楽しそうで」
「お前、最下位だったから関係ないし」
「ちっさ! みみっちい! 心セマ! そんなんだから、カエちゃんの股が締まるんだよ!」
「うっせえわ!!!」
そうですねぇ。
清牙が短気だろうが、心狭かろうが、全く関係ない話になってるし。
取り敢えず、曲が出来なければ話にならない。
まだ撮影は始まっていないけれど、脚本はあるとの事で清牙はそれをベースに曲作りへ。
ただ、この楽曲争奪戦イベントが、その制作側に伝わり見られたようで、姐さんの出演迄決定。
女探偵を美味しいところで助ける、ベテラン同業者?
その流れでのPVが決まり、なんでだか、私がそれを邪魔する悪徳同業者になっていた。
いや、まあ、参加するのは良いんだよ。
なんか、立て続けに仕事が決まって途切れない感がなくもないけど。
問題は、なぜに、また色物?
高笑いで銃を連発する危ない人って、私、その素養全くないからね?
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